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白波の騎士物語~滅ぼした世界を救う~  作者: 555
第三章 白波の騎士
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3-6 終わらない明日へ①

 白波の騎士が戦いで生み出した激震は孤児院全体を崩壊へと導いた。

 当然アリアンロルデのいた封印の間も耐え切れずに崩落する。

 白い天井がひび割れ、砕け、そして瓦礫となって降り注ぎ彼を生き埋めにした。

 そして一通りの崩壊が終わると聖歌のみが残った。


“主よ。我々はあなたの僕です。

 主よ。我々はあなたの剣です。

 主よ。我々はあなたの鎖です。

 主よ。我々はあなたの眼です。

 我々はあなたの敵を剣で突き刺し、鎖で繋ぎ、永遠の檻に入れ、

 とこしえに見張るでしょう。

 悪しき者よ、ここで終われ。

 汝はどこにも行けず、留まらねばならない。

 天下の平穏を乱してはならない。神の秩序に逆らってはならない。

 悪を行く者よ。足を止めよ。

 汝がまだ日向を望むなら、まず最初に躊躇せよ”



 封印の要となる聖歌は魔術によって永久に復唱(リピート)する。

 魔術の行使に必要な魔力は封印対象の魔力や孤児院の建材に埋めこまれた光る石──妖精石によって半永久的に供給され、魔力の流れが乱されない限り対象を永久に封じられる。

 仮に妖精石を砕いたところで石片から魔力が失われるわけではなく、そうした事態に備えて何重にも魔力の経路は整備されている。

 ゆえに部屋自体が崩壊してもマリアの封印は続く。

 一方、アリアンロルデはというと──


「“聖なる盾”──シールドバッシュ!」


 瓦礫の山を吹き飛ばして健在であることを示した。

 崩落の直前に奇蹟の盾で守ると防御の力を反転させて落ちてきた岩盤を吹き飛ばすほどの衝撃波を生み出したのだ。

 砂利が降り注ぐなかアリアンロルデが高らかに空へ宣言する。


「ドッソドーン討ち取ったり」


 勝利を噛みしめながら枢機卿は同時に次なる手を考えていた。

 逃げたヴァンピレス二体と霄の少女を指名手配し、騎士の方は守護騎士を総動員させて殺さねばなるまい。今回の失態は責任を問われるだろうが四大血貴族の一角を封じたとあればそれなりの酌量を得られるだろう。

 それに、もしかしたらこの崩落に巻き込まれて生き埋めになっているかもしれない。

 少女の方は不死だが非力な矮躯では瓦礫の山から抜け出せまい。そうなれば瓦礫をどけて探す必要もあるだろう。

 いずれにせよ注力すべきはドッソドーンの封印を完遂させることであり──


「ちょっと待てよ」


 ──まさか逃がした獲物が戻ってくるなど考えもついていなかった。


「これは僥倖、いや祝福か」


 霄の少女。白い鎧に覆われた騎士が瓦礫の上に立っていた。

 残り一人、眉間を撃ち抜いた者はいないが逃げたのだろう。あるいは隠れてこちらの隙を伺っているのか。どちらにせよ関係ない。


「神エルドゥよ。そして天上人アズレールよ。感謝します。あなたがたの思し召しで逃した獲物が戻ってまいりました」


 悦に入りながらアリアンロルデは懐から短杖を出して構えた。

 連戦で体には疲労が溜まっているが使命を果たそうという気概が活力を与えていた。


「“アリアンロルデの名の下に阻害機構を停止する”」


 管理者権限を用いて魔術や奇蹟を不発にする機構を停止させる。

 聖歌の封印も一時停止するが、完全に封印が解かれるまで時間がある。

 その間にルナを捉え、同時に封印すればいいと思っていた。

 どちらにせよ奇蹟を用いて戦うアリアンロルデはこの機構を止めねば戦えない。


「“清めの──”」

「遅い」


 枢機卿が浄化の波動を撒くより早く白騎士が剣を抜いた。

 剣の間合いではないにも拘らず大気を切り裂く”何か”がある。

 人間の動体視力では目視は困難。だが、さきほど雹を弾く時に既に見た。


「それはもう見た」


 無詠唱で展開された”聖なる盾”が鞭剣(ウィップソード)の刃を阻んだ。

 同時に"清めの浄動"が発動し、場に蒼き神の気を満たした。

 浄められた空間はヴァンピレスを始めとした蒼き神エルドゥ以外の神の眷属の力を封じる。

 だがそれ以外にも天使教の奇蹟を強化する力がある。


「"往聖のために破邪なす力をここに。

 雷冠の荊棘。其は神威なり。

 善なる人々よ。滅ぼされる者をみるがいい。

 砕けた鎧。打ちのめされた犬。焼け落ちた旗。暴君の首"」


 さらに完全なる詠唱を加え、アリアンロルデの最高火力が放たれる。


「”聖雷の威光”」


 数十から数万倍に強化された聖なる稲妻は文字通り光の速さで空間を満たした。

 超電圧からなる電熱があらゆるものを焼き尽くし、

 轟雷の衝撃波があらゆるものを粉微塵にして消し飛ばす。

 周囲を更地に変え、昼であろうと分かるほど巨大な雷光が立ち上った。

 これを喰らえばなんびとたりとも生きてはいられない。


「なん……だと……!?」


 だが白い騎士は立っていた。

 ありえぬことに。


「貴様、どうやって……」

「どうした? お前の祈りとやらはその程度なのか?」

「────貴様ッ!!」


 疑問と戦慄は怒りによって塗り替えられた。


「"主の偉大なる威光をここに!”」


 ──如何なる策を弄して聖雷を回避したのかは分からない。


「"あらゆる闇は退け。あらゆる悪は影の中で果てよ!”


 ──だがその小癪な肉体を消滅させる手段は一つではない。


「”主のおわす天下に汝らの居場所なし!

 我らはその恐ろしさを礼賛し、また拝跪する!"」


 ──潰れて死ね。お前の主のように!!


「”天の聖圧”」


 アリアンロルデの号令と共に超重力場が発生した。


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