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白波の騎士物語~滅ぼした世界を救う~  作者: 555
第二章 終わりへの分岐点
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2-5 末路の痕


 一方その頃、カインたち。

 ポロリと眉間に刺さった雹が落ちてカインが目を覚ます。


「あ、俺……死んでた?」


 呑気に言うカイン。

 現実逃避や感覚が麻痺していたわけではなく本当に死んでいたことを自覚してこの発言だった。

 死という絶対的な絶望に対してまるで抵抗がなく、寝て目が覚めたのと同程度の感覚しかない。

 あるいはこれが亡者というものなのだろうか。

 そこへ「起きたなら歩け」というように白波はカインを床へ放る。

 頭をぶつけて痛がりながら立ち上がるカインは白波に睨みつける。

「てめぇ、白波ィ」

「あの場に放置されたらただじゃ済まないから持ってきてやったのにその礼もないのか?」


 ぼそぼそとかろうじて聞き取れる声で白波が声を出した。

 寡黙を貫いてきたがこの状況で声を出さないと意志疎通ができないと認めたのだろう。


「いきなりマリア並みに饒舌な毒を吐いてんじゃあねえよ……ってどこに行く?」

「出口だ。お前たち二人を外に逃がせたらマリアを助けにいく」

「マリア?」


 そう言われてカインは周囲を見回し、初めてマリアがいないことに気付いた。


「マリアはどこだ?」

「俺たちを助けるために残った」

「は? 普通、残るならお前だろ」

「…………」


 ヴァンピレスの社会構造がどういったものかカインは知らない。

 だが今までの関係を見る限りマリアが主で、白波が従者だ。

 主が従者のために残ることなどありえない。


「もしかしてお前たち、主従じゃなくて……」


 言い切る前に白波の剣がカインの鼻先に突き付けられた。

 無言の圧力にはそれ以上言うと殺すという意思表示がされている。

 カインは両手を上げて降参の意志を表した。

 剣を鞘に納めると白波は歩き始め、それにカインは追随した。


「さっきまで何もしゃべらなかったくせにおしゃべりになったな」

「……」


 無視である。

 ただ白波から「無駄に話しかけるな」という圧が向けられているのは理解した。

 そこへ何も知らないルナが声を出す。


「ねぇ」

「なんだ?」


 カインが話しかけても無視されるが、ルナに関しては反応する白波。


「おしっこ行きたい」

「……」


 流石の白波もこれには反応が困ったようで足を止めて呆然とする。


「ルナちゃん。今はそういう時間がないんだ」

「でも漏れそう!」


 白波がルナをカインに押しつけると背後を指さした。


「先ほど通り過ぎた通路にトイレがあった。そこに連れて行って用を足させてやれ」

「はぁ!? 何で俺が。というマリアが戦ってんだから早く外に行くべきだろ?」

「どのみち出口に敵がいればお前じゃあ勝負にならん。俺が先に行ってみてくるから三分経ったら来い」


 勝負にならんのは事実なので不承不承にルナを預かるカイン。

 するとルナが慌て出した。


「だ、ダメ! お兄さん! みんな一緒じゃないと!」

「いや、流石にみんな一緒で用を足すのは色々まずいだろ……というか男の俺も一緒はまずいだろ……」

「ちょ、ちょっと待って!」「待たない!!」


 ポカポカと頭を叩くルナを抑えながら漏らす前にトイレにいかねばと駆け足で向かった。


 カインの足音が遠のいたのを確認すると白波は前へ向き直す。

 そしてひっそりと呟いた。


「あの子は気付いていたな……」


 白波は抜剣して歩き、通路を塞ぐ壁を切り裂いた。

 その先の小部屋は異形が待ち受けていた。

 紅い衣、灰色の肌、人間にしては大きすぎる身体。

 ルナが封印されていた白い部屋で実験をしていた終世教の使徒である。

 いや、だったというべきだろう。頭と胸が雹で潰された上に念入りに首まで切られている。

 しかし遺体は動いていた。床に転がっている頭部の瞳がぎょろりと白波を睨む。

 そして胴体には頭と足の代わりに緑や赤い光を放つ黒い輝石が生えていた。

 遺体が立ち上がり左腕を伸ばして落ちていた首を持ち上げた。

 骨と皮だけとしか表現できない怪人の四肢は脆弱というではなく、むしろ圧倒的暴力が凝縮されている。


「あの枢機卿も詰めが甘い。原形も残さずに殺してくれればよかったのに」


 終世教は三頭騎士のように人間を繋ぎ合わせて人工的に妖精獣を作ろうとする実験を行なっている。

 当初は一人の信者から一体の妖精獣を作ろうとしたが失敗したのだ。

 その産物が『使徒』と呼ばれるこの妖精人間であり『出来損ないの妖精獣』のさらに出来損ないである。


 しかし単純な戦闘能力を鑑みれば侮れない。

 生きている間は人間よりわずかに身体が優れている程度であるが、死後は埋め込まれた妖精が暴走するのだ。三頭騎士のように頭に指揮杖(アンテナ)を突き刺して思考制御されていないため敵味方の識別もなく殺しまわるようにできている。


「あいつらを通してもらうぞ。五体満足でな」


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