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プロローグ

 帝国領と魔族領を隔てる数千キロにも及ぶ山脈に、神々の住む天界へと通じる霊峰オルティノ山があった。その頂へは、Sランクの冒険者ですら到達するのに困難を極めるという。


『我が寝ている間に、随分と下界の様子も変わったものだな……』


 五百年ぶりに巣穴から出てきた漆黒の竜オルガは、霊峰のてっぺんからグランデイル帝国の雄大な景色を感慨深げに見下ろした。燃えるような深紅の双眸に、朝陽を浴びて輝く緑の大地が映る。


 はじめてこの地に降り立った時は、まだ国とも呼べないような小さな村の集まりでしかなかったのを覚えている。その頃は精神的にも未熟で、血気盛んな若竜であった。冒険者との熾烈な戦闘に明け暮れ、数えきれないほどの冒険者を葬り去った。その中には、SSSランク冒険者のパーティーや、勇者パーティーもいたような気がする。


 苦戦して追いつめられることも無くなり、ただ一方的な殺戮。


 いつしか、討伐対象から外され戦いを挑まれなくなった。神竜と崇められ、ついた名は『深淵の竜』である。

 強くなり過ぎてしまったせいで、生き甲斐だった戦いを奪われ生きる意味を失くしてしまった深淵の竜は、次第に全てのことが無関心になっていった。


 そして、思うようになった。


 死の恐怖に打ち勝ち、自分より強い者に挑んでいた頃は心底楽しかった。また、挑戦者として戦いに明け暮れる日々を生きてみたい――――と。


 そこで、脆弱で非力な人間に転生することを決意した最強のドラゴンは、五百年もの年月を費やして転生術をつくり出すことに成功した。といっても、その転生術の機能が成功するかどうかは別問題である。なぜなら、


『残りの寿命を魔力に変換するため、練習なしの一発勝負になるが、まあ、失敗したとしても、死期が早まるだけのこと。無意味な時をただ生きるよりは遥かにいい……ククッ』


 数百年ぶりに、オルガは笑い声を漏らした。


『――竜族である我の命を代価に、人族として新たなる生を与えよ』


 これまで生きた二千年の想い出に浸ることもせず、全魔力を開放するように深紅の眼を見開いた。次の瞬間、深淵の竜の頭上に、巨大な魔法陣が展開する。七色に輝く魔法陣から降り注ぐ光に、漆黒の身体が包まれていく。やがて、光の粒子と化した深淵の竜は、魔法陣と共にこの世界から姿を消したのであった。

 その日、澄み切った早朝の空に、霊峰オルティノ山から神々しい光が放たれた。この神秘的な現象は、数十キロ離れた場所からも確認できたという。


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