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小椋夏己のア・ラ・カルト  作者: 小椋夏己


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68/68

 68 コーラの森の妖精さん

 わさわさと葉が生い茂る背の高い木が集まって、こんもりとした森になっています。


 木のてっぺんが揺れる度に木漏れ日ゆらゆら、木の根元に座っている小さな妖精さんたちも木が揺れる度におひさまが当たってきらきら。思いっきり首を上に向けて何かを見ている目がまぶしそうです。


「あ、落ちたよ」


 木の上から何かが一つ、ぽとんと落ちてきました。


 黒くて丸いコーラの実です。


 この森はコーラの森、生えているのはコーラの木。コーラの木にはコーラの花が咲き、コーラの実ができて熟すと自然に落ちてきます。


 コーラの実は小さな妖精さんたちの頭ぐらいの大きさです。高い高い木の上から落ちてくるのに、不思議に妖精さんに当たることはありません。全部座っている妖精さんのすぐ横に落ちるのです。


 落ちてきた実から一番近くにいる妖精さんは、その実を両手で頭の上に掲げて、コーラ工場に運びます。


「わっせ、わっせ、わっせ、わっせ」


 掛け声をかけながら元気よく、一生懸命走ります。


 実を運ぶのは一番小さな妖精さんのお仕事です。足元に気をつけて、転ばないようにできるだけ急いで運びます。コーラの実はとても熟しやすく、時間がかかると皮がはじけて中の汁がこぼれ出してしまうこともあるのです。

 時々歩くのが遅かったり、転んだりしてコーラの汁で真っ黒になっている妖精さんがいますが、それはまだまだ小さな妖精さんだからです。みんな一度は真っ黒になってべそをかいて、それでも毎日走っているうちに運ぶのが上手になっていきます。


 工場に着いたら運んできた実を大きな大きな木の桶に入れます。もちろんこの桶の木もコーラの木で作ってあります。年を取って実ができなくなった木は切って桶になるのです。切った木の切り株からは新しい芽が出て、大きくなって、また元のように黒くてツヤツヤしたコーラの実をつけるようになってくれます。


 大きな桶に入れられたコーラの実は、今度は実を運んできた妖精さんよりもうちょっと大きい妖精さんたちが踏んでつぶしていきます。


「よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ」


 コーラの実の真ん中には妖精さんの握りこぶしぐらいの大きさの種があります。その実を踏まないように気をつけてどんどんどんどん踏んでいきます。時々うっかり種を踏んで痛がったり転んでしまう妖精さんもいますが、その妖精さんはつい最近、実を運ぶお仕事から実を踏むお仕事に変わったばかりの妖精さんです。みんな一度はやっぱり真っ黒になってべそをかきますが、慣れたらどんどんどんどん実を上手に踏めるようになっていきます。


 踏み潰されたコーラの実は、大きな木綿の袋に入れて吊るしておきます。こうして一晩置いておけば、次の朝には汁がすっかり下の樽の中にたまっています。もちろんこの樽もコーラの木から作られています。


 木綿の袋の中に残った種と皮も捨てません。皮は乾かして粉々にして、コーラの木の根元にまいて肥料にします。種も干して乾かしておきます。乾かした種の中からいい種を選び、もう芽が出なくなった木のあとに植えておくと、そこからまた新しい木が生えてくれるのです。まかなかった種は炒って中身をおやつにします。お仕事の間にちょっと一休みして口にぽいっと入れてカリカリと噛むと、ほろりとコーラの香りがします。


 絞った汁はもっと経験を積んだ妖精さんたちがじっくりと小さな火で煮詰めていきます。あまり大きな火で沸かしてしまうと汁の大事な部分がだめになってしまうので、小さな火でとろとろとろとろじっくりと、半分ほどの量になるほどに煮詰めます。これがとっても根気と経験が必要な仕事なのです。この仕事をする妖精さんたちは、一番脂が乗り切っているベテランさんたち、工場の花形です。実を運ぶ妖精さんたち、実を踏む妖精さんたちの憧れです。早く自分もああなりたいなと、尊敬の目で見ています。


 そんなベテランさんたちが仕上げた煮詰めてとろっとした汁は、二重にガーゼをかぶした樽で熟成させます。おひさまが顔を出したら光が当たるところにおいてやると、汁はぶつぶつと元気に発酵してくれるのです。きちんとフタをしないのは、ぶつぶつと発酵するガスがたまって樽が壊れてしまってはいけないからです。発酵が活発な明るい時はガーゼ、おひさまがおやすみを言って寝てしまったら汁も眠ってしまうので、ガスが抜けないようにきっちりとしたフタをかぶせます。そうしないとせっかくできたガスがガーゼから逃げてしまいますからね。


 そんなことを繰り返して、コーラの素が完成したら、それをきれいな冷たい清水で割ってみんながよく知っているコーラの完成です。昔は全部同じびんに入っていましたが、今は色々な大きさのペットボトルや缶もあり、それぞれにうまく入れるのもまた技術がいるんです。ベテランさんを卒業したちょっと年取った妖精さんたちは、一線を退いたみたいでちょっとさびしかったりしましたが、今は丁寧にゆっくりとコーラを詰めるお仕事を充実してやっています。


 あなたの家の冷蔵庫にもコーラ入っていますか? それはみんな、妖精さんがこうやって一生懸命作って運んでくれているコーラです。大事に味わって飲んでくださいね。

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