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小椋夏己のア・ラ・カルト  作者: 小椋夏己


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 35 シャンプーとSDGs

 私は困ってる、非常に困ってる。


「なんでこういうことしてくれるんだか……」


 シャンプーが切れそうなのだ。それで数回分入った大きい詰め替え袋のを買って帰るつもりでドラッグストアに寄ったところ、悩むような物を見つけてしまった。


「お試し用シャンプー&コンディショナーセット(ミニトリートメント付)」


 これは詰替え用じゃなくて普通のボトル入りのセットに小さなトリートメントのおまけがついているのだが、明らかに詰め替え用を買うよりお得なのだ。

 実は同じことで悩むのは初めてではない。これまでも何回も悩んで結局お得セットを買ったことが何回もある。


「というわけでね、今回も負けてしまったのよ」


 翌日、職場のお昼休みにお弁当を食べながら同僚に愚痴る。


「分かる分かる、私もそれ考えたことある」

「よね」

「元々はさ、毎回ボトルを使い捨てるのはもったいないからって詰め替え用ができたはずなのに、そんなことされちゃ本末転倒よね」

「そう、そうなのよ」

「それに値段も安いときちゃね、薄給会社員はついお得用買っちゃうよね」

「うん、その上おまけのトリートメントついてるのよ。買うしかないよね」

「思う思う」


 そうなのだ、いつもそうやってお得セットを買って、そしてボトルをどうしてるかというと、


「とりあえず前のは洗って置いてある」

「え、私、それはすぐ捨ててるわ」

「え、そうなの?」

「うん、だって新しいボトルあるのに」

「そうなんだけどさ、なんかもったいないってか、かわいそうで」

「だけど置いててももう使わなくない?」

「うん、そうなのよね」


 そうなのだ、結局いつも置いておいてしばらくしたら捨ててしまう。


「だから使い切ったらとっとと捨てる方がいいって」

「うん、だけどさあ、元々が詰替え用入れましょうってボトルじゃないの、どうもそれがひっかかって」

「それはメーカーに文句言うしかないね」


 同僚はきっぱりと言う。


「結局作る方の事情ってわけかあ。売りたいからああいうセット作るんだもんね」

「そうよ、そういうこと」


 仕事が終わって家に帰り、お風呂に入ったらとうとうその時がやってきた。


「はあ、詰替え用が安ければなあ」


 前に使ってたボトル、もう中に水を入れて振って振って使い切る段階まできている。

 今日からは新しいボトルを下ろすことにするけど、そうなるとこれを捨てなければならない。


「君にはお世話になったけど、今日でお別れです、ありがとう」


 そう言ってお風呂場から出し、新しいシャンプーのボトルを下ろした。


 さて、そうしてもう一つの問題ができる。


「コンディショナーのボトルばっかり残ってくるのよね」


 翌日のお昼休み、また同僚に愚痴る。


「何よそれ」

「だってシャンプーは二度洗いすることもあるから結構減るけど、コンディショナーはそんな使わないからどうしても残ってくるのよね」

「じゃあがんばってコンディショナーをいっぱい使えば?」

「そんな必要ないのに?」

「まあもったいないよね」

「うん」

「で、今はコンディショナーの新しいボトルが2本あるわけね」

「ううん」


 私は思い切り首を振る。


「5本」

「はあ?」


 同僚は呆れた顔になる。


「なんでそんなことになってるわけ?」

「いや、だからさ、お得用買うからよ」

「だったら今度はもう詰め替え用だけ買えばいいじゃない」

「いや、だからさ、やっぱりお得だから」

「いくらお得でもそうやってコンディショナーだけ余ってきたら、結局無駄じゃない」

「それはそうなんだけどさ」

「だから次回はシャンプーだけ買いなさいって」

「いや、でもさ、お得用にはトリートメントが」

「だったら余ったコンディショナーは捨てるの?」

「いや、それはもったいない」

「じゃあシャンプーだけにする」

「うーん」


 なんとなく釈然としない。


「結局、何がどうお得でどれが地球にやさしいんだろうね」

「さあねえ」

「ついでに言ってしまうけどね」

「なによ」

「ずっと詰替え用使うつもりで専用のボトルもあるの」

「は?」

「袋のやつそのまま入れられて、詰替え用の手間がいりませんってやつ」

「100均の?」

「ううん、もっと高いの」

「いくら?」

「3本セットで6000円ぐらいした」

「はあ?」


 同僚はますます呆れた顔になる。


「だって、だって、ずっと詰替え用買うつもりだったから」

「その6000円のボトルはどうしてるの」

「うん、ボディソープにだけ使ってる」

「ああ、あれはセット売りないもんね」

「そういうこと」

「だったらボディソープ用の1本だけ買えばよかったのに」

「いや、1本だけだったら2500円ほどしたの。だから3本買った方がお得で」

「今分かった」


 同僚はこれ以上言うことはないという顔で続けた。


「あんたはSDGsに向いてない」

「そんなこと言わないでよ~」

「考えれば考えるほど地球に優しくない選択をすると思う」

 

 言われればそうなのだろうなと思う。


「はあ、メーカーがあんなお得用さえ作らなければなあ」


 私はため息を深くつく。


「それは同意」

 

 同僚はそう言ってくれた。


「だから今度からシャンプーの詰替え用だけ買って手間いらずのボトルに入れなさい」

「わかった」


 シャンプー問題の方向性は決まった。

 だがやはり私はSDGsに大きな疑問を感じずにはいられない。

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