表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小椋夏己のア・ラ・カルト  作者: 小椋夏己


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/68

 19 鳩サブレー、頭から食べるか尻尾から食べるか

 「今年の大河ドラマにちなんでるのが面白かったから」


 と、鎌倉旅行に行った友人から大河仕様の鳩サブレーをお土産にもらった。


「へえ、こんなのがあるんだね」

「中身は普通だけど、面白いね」


 黄色い四角い缶に大河キャラが13人描いてあるが、中身は馴染みのあるあの鳩の形のビスケットだった。

 サブレーとビスケットの違いは分からないけど、バターをたっぷり使ったあの食感は私の好みのお菓子でもある。


 夫と二人、いただきますと袋をやぶり、ぱくりと口にした。


 すると、


「え、そっちから食べるの?」


 見ると夫は鳩の頭の部分からぱくりといっていて、


「え、そっちこそ尻尾から食べるの?」


 と、不思議そうに言われた。


「だって、頭から食べるなんてかわいそうじゃない」

「かわいそうってお菓子でしょ? 全部食べるんじゃない」

「それはそうだけどさ」


 そして夫がふと気がついたように聞く。


「ねえねえ、たい焼きどっちから食べてたっけ?」

「そりゃ尻尾から」

「それもかわいそうだから?」

「う~ん、たい焼きはあれかな、あんこが後でたくさん残るように?」

「やっぱりそういう理由かあ」


 言って夫が笑う。


「あ、なによ、意地汚いみたいに思ってる?」

「いやいや、そんなことはありませんよ?」

「じゃあ、あなたはどっちから食べるの?」

「そりゃ頭からだよ」

「ええっ、じゃあ最後は尻尾の生地の部分だけになっちゃうじゃない」 

「え、だって生地だっておいしいし、甘いところを食べてからあっさりした生地を後味(あとあじ)にしたらさっぱりするじゃない」


 異議あり!


「だってたい焼きの肝はあんこよ? だったら最後まであんこが残った方がいいわよ」

「いやあ、俺は尻尾でいいと思うけどなあ」

「いいえ、最後は頭!」

「あんこは残らなくていいって」

「じゃあ、じゃあ今川焼は?」

「え?」

「あれはどこから食べても一緒だけど、あなたはそれでも生地だけ残して食べるの?」

「いや、いやあ」


 夫はしばらく考えていて、


「言われてみれば、たしかにあれは最後にあんこを生地と一緒に食べるかな」

「ほらあ、ごらんなさい」


 勝訴!


「だけどわざわざあんこを残そうと思って尻尾からは食べないなあ」


 夫はまだそう主張する。


「それはあれよ、たい焼きの場合は形がいびつだから、それであんこも偏ってるからよ」

「つまり、偏ってなければ尻尾からは食べない?」


 ちょっと考えてしまった。


「どうかしら」

「どうだろうね」


 二人して考える。


「じゃあひよこは?」

「え?」


 本家は博多銘菓でありながら、今では東京銘菓ともなったあの定番のおまんじゅうだ。


「ひよこは、やっぱり頭からかな」

「私はやっぱり尻尾から食べるわ」

「それもかわいそうだから?」

「うん。でもあれはたい焼きほど中のあんの偏りがないから、もしも頭から食べるって人がいてもそれほどおかしいとは思わないかも」

「なるほど」


 ひよこに関しては別にどっちから食べても問題がなかろうという結論になった。


「話は戻るけどさ、つまり、たい焼きもあんこがなかったら尻尾から食べる理由もないってこと?」

「いえいえ、その場合はかわいそうだからよ」

「じゃあ今川焼はどこから食べてもかわいそうじゃないから、中から食べて外を残さなくていいよね」

「確かにそうかも」


 その点は譲歩するしかなさそうだ。


「じゃあさ、鳩サブレーはあんこが入ってないから顔からでもいいと思う」

「でもいきなり頭からぱっくんちょはかわいそうよ」

「いやあ、いっそ頭から一気にいってやる方が武士の情けだよ」

「なにそれ」


 思わず笑ってしまった。


「まあ、これは大河仕様、鎌倉武士にちなんで首から一気にってのを認めましょうか」

「おいおい、物騒だな」


 そう言って笑い合って続きを食べた。


「ああ、首がなくなってもう何の形か分からないじゃない」

「でも顔だけ残るってのも結構残酷かも」

「そんなことはないって」


 そう言って思い出したことがあった。


「あのね、子どもの頃、ひな祭りにお雛様ケーキっていうのを買ってもらったのよ」

「うん」

「上にお内裏様とお雛様が乗ってるひし形のケーキなんだけど、私それを、顔を食べるのがかわいそうだ~って、後ろからほじって食べてね、お雛様の前面だけ残したことがある」

「ぶっ」


 夫が鳩サブレーのお供に飲んでいた牛乳を吹き出しそうになる。


「もう、汚いわね、牛乳はこぼすと臭くなるんだから」

「そっちが笑わせるから。それで、そのお雛様どうなったの?」

「うん、それがね」


 私は思わずため息をついた。


「顔を食べるのかわいそうかわいそうって食べずに毎日眺めてたんだけどね」

「うん」

「ずっと置いてたらカビが生えてきて母に捨てられてしまったわ」

「ぶふっ」


 今度こそ夫は牛乳を吹き出した。


「ほらあ、だから言ったのに~」

「ごめんって」


 テーブルを拭きながら夫が笑い続けてる。


「それ、どっちがかわいそうなんだろうな、頭からきれいに食べ尽くしてあげるのと、カビさせるの」

「この場合はカビさせた方ね」

「やっぱり頭からパクっといくのが親切だな」

「あら、でもやっぱりたい焼きは負けられないわよ?」

「おいおい」


 こうしていつも、どこまでも話は続いていくのだった。


 鳩サブレーがぽっぽーと笑ってるみたい。

友人にいただいた鎌倉土産から思いつきました。

そしてたい焼きを尻尾から食べるのもお雛様ケーキをカビさせたのも私です。

反省……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ