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小椋夏己のア・ラ・カルト  作者: 小椋夏己


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 12 レフェリー

 ある国、仮にA国とB国しておくが、そこが戦争をしていた。

 国境線を争ってもう何年も何年も戦争し続けている。

 

 最前線以外の町はそれなりに平和な生活を送ってはいるが、時に遠くから爆弾が飛んできたりもする。国中のどこにも完全に安心な場所はない。


 ある時、片方の国が膠着状態を思い余って残虐な武器を使用した。

 それは人だけではなく動物も、それ以外の生きとし生けるもの全ての命を奪う恐ろしい武器だった。

 

 その武器はどんどんと飛距離を伸ばし、もう一つの国の首都へとぐんぐんと向かって行った。


 そして、とうとう首都の大統領府に落ちる、という瞬間、


「ピピー!」


 空にホイッスルが鳴り響き、恐ろしい兵器が消滅した。


「カード1枚。その武器は国際法によって使用を禁止されています。A国は今すぐ撃つのをやめなさい」


 レフェリーの声だった。


 どのぐらい前のことになるだろう。

 世界中あっちこっちで規模は違えど戦争のない日はない、そんな地球の頭上に、突然光り輝く「空飛ぶ円盤」としか呼びようがない物の集団が姿を現した。


 円盤の集団は地球より高次元の宇宙生命体の代表で、


「この星はあまりに争いが多過ぎる。監視のためにやってきた」


 と言った。


「戦争をやめなさい」


 宇宙からの代表者たちの主張はそれだけだったのだが、それだけ言われても、さあどうやってやめればいいのかが分からない。


 地球の代表者たちはどうすべきかを侃々諤々(かんかんがくがく)喧々囂々(けんけんごうごう)と口に泡して唾を飛ばしながら論議したが、元々何をしてもまとまるということができなかった集団だ。


「あの、どうにもなりません」

 

 とうとう最後にはそう言ってひたすら頭を下げることになった。


 宇宙の代表者たちは呆れた。


「なんと、終わらせる方法も分からずにずっと争いを続けているのですか、それはなんとも情けないことです」

 

 ため息をつき、


「ではこうしましょう」

 

 と、一つの提案をした。


「今起こっている戦争、それからこれからも起こるだろう戦争を今のあなたたちではどうすることもできないでしょう」

「あいすまんことで……」

「ですからルールを決めましょう」

「ルール?」

「はい。今もあるのでしょう、一応ルール」

「あることはあります」


 と、戦争に関する国際法、国と国との約束とか、そういうことに関係する資料を片っ端から提出した。

 代表はふむふむとそれらを吟味していった。


「いいでしょう。これをまとめてルールブックを作りましょう。そして我々がレフェリーになります」

「レフェリー?」

「はい。戦争はどうぞ続けてください。ただし、その中でルールを破る国があったり、この星全体に深刻な影響を与えるようなことが起きそうになったらこうします」


 そう言うと、


「ピピー!」


 と、世界中にホイッスルが鳴り響いた。

 

 代表が地球にやって来た時期、ちょうどスポーツの世界的大会が開かれていたのだ。


「そこに存在するレフェリーという存在と、審判に使う道具を我々も使用することにしました。いつかあなた方が自分で終わる方法を見つけられるその日まで、我々がレフェリーを続けます」


 そうして、戦争はそれぞれの判断に任せられ、中には終わったものもあるが、まだまだ戦い続ける国も、新しく起こる戦争もあり、今までと特に変わりなく同じ世界情勢のままで世界は動き続けていた。


 そうした日が続き、誰もがいつの間にかいるのかいないのかも分からないレフェリーの存在を忘れてしまった頃、


「ピピー!」


 世界中の空にホイッスルが鳴り響いた。


「カード1枚」


 空に声が続ける。


「カード3枚で退場です」


 それだけ言うとまた元の沈黙に戻る。


 その言葉に一度はどこの戦いの火も鎮火したように思われたが、しばらくするとまた何もなかったようにドンパチドンパチが再開し、それが続いたまたある日、


「ピピー!」


 またホイッスル。


「カード2枚。次回で退場です」


 前回と同じ国に対して吹かれた笛であった。


 そしてまたしばらくはどこの国も大人しくしていたが、やがて、


「結局声だけで何もしてこられないじゃないか」


 そう思ったのかとうとうその国に対して3回目の笛が吹かれることになった。


「ピピー!」


 またか。

 今度は空を見てみんなが対して恐れることもなくそう思った。


「カード3枚。退場です」


 次の瞬間、まばゆい光が世界中に広がり、その国は一瞬にして消滅した。

 その国の領土内のすべての物が一瞬でこの地上から消え去ったのだ。

 残ったのは草一本生えていない地面だけ。


「ではどうぞ続けてください」


 その言葉に世界中の人間がゾッとした。

 そしてルールを破る国はほとんどいなくなったが、戦い自体はなくならず、忘れた頃にふいっと笛を吹かれるようなことが時々ある。


「しかし人間も馬鹿だよな。あんなもん目にしてもまだあっちこっちで戦争してる」

「本当だよな」


 今の今、戦争をしていない国の人間がホイッスルを耳にして気楽にそう言っているが、いつどこで何が始まるか分かったもんじゃない。明日には自分がその当事者になる可能性もあるのに。

 

「どうすれば戦争はなくなるのかなあ」


 この先そんな日が来るかどうかは分からない。

 今日も今日とてレフェリーの視線の下、どこかで戦いは続いている。

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