第6話 赤は正義の色で3倍
「いやいや、なんでロボット? 武器とか防具でしょ」
「いやいや、なんで武器とか防具? ロボットでしょ」
この言い合いはかれこれ数十分続いた。
それでまあ結局、とりあえず武器とか作って、また取りに行けばいいっしょ、となった。
「んじゃ早速……」
わくわくと、カッコいい武器防具を妄想する。
「神の……」
「グアアアアァァアァァアアアアア!!!!」
「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」」
振り返るとそこには巨大な熊の魔物『ブラッディ・ベア・ダディ』がいた。
前進黒く、所々赤い。
身長は5メートル程。
A級ギルドのクエストに討伐要請が出されるレベルだ。
「ど、どうすんの!!」
「どうするって言われても、あんなのに勝てるわけないよ!!」
とにかく走る。
「逃げちゃダメ!」
急にブレーキをかけ、クルエが言った。
「あのモンスターから、何よりも自分から」
「逃げちゃダメだ……」
「そうよ逃げちゃダメ、ぷふっ」
「逃げちゃダメだ……分かりました。俺がやります……ってなに笑ってるんですか。人が真剣になってるのに」
「ごめん」
袋一杯の『レッドカーネスト』を前に置く。
イメージ、イメージ……。
浮かび上がってくるイメージはいつものそれとは違う。
いつもの真っ白な機体が一転、光沢のある赤に染まっている。
白は装飾程度で赤がメインだ。
「神の粘土!!」
いつもの真っ白な機体に赤色のカラーリングが施される。
す、すごい。カッコいい!!
「やっぱ赤! 赤は情熱、男の色! どう、カッコいいでしょ?」
「ああ! ……でも、色だけ変わっても」
「違うのは色だけじゃないわ」
「え?」
「乗ってみれば分かる」
まるで自分が作ったように自信満々に言うクルエ。
「やっぱりなんも変わってない」
いつものように操縦席につくが、変わっている点はない。
まあそもそもこの操縦席でどうやって操作出来ているのか分かってはいない。
全部、イメージと勘。
その場の乗りで凌いでいる。
「さあ、行きましょう……ええと名前は……」
「そんなことより、そこ邪魔なんだって」
操縦席に座る俺の肩を抱きしめるように立っている。
「だって他に席ないし、狭いし」
「じゃあ降りて」
「いや! 外から見てるんじゃつまんない!」
「つまるつまらんの問題じゃないだろ! 死活問題じゃこっちは!!」
「いーやーだーーーー!!」
「分かった分かった、だから暴れるな」
座席をぶっ壊す勢いでじたばたする。
「分かればよろしい。そんじゃあ、発進!」
ガシン、ガシンと足音を立てて歩き出す。
慣れたもんさ。
『ブラッディ・ベア・ダディ』が警戒して距離を置いている。
「こっちの先制攻撃じゃあ!」
「うおりゃああああああああ!」
赤色に装飾された剣を振りかぶり魔物目掛けて突進する。
しかしなぜか、魔物を通り過ぎる。
「な、なんだこれ」
「どう、驚いた? 言ったじゃない、違うのは色だけじゃない」
「す、凄い……以前の3倍の速さで動けるぞ」
「ま、当然よ」
機体の性能を理解し、今度はしっかりと狙いを定める。
「どおおおおりゃああああああ!!」
キーンッ!!
剣と爪がぶつかり合う。
「うおりゃ!!」
がら空きになった腹を蹴り飛ばす。
敵はひっくり返る。
「こちとらドラゴンと戦ったんだ! お前なんてこれで終わりだアアアア!!!」
転んだ敵に剣を突き立て、勝利が決まった。
「っしゃああああああ! ……ってあれクルエ?」
いつもなら調子を合わせて叫んでくれるクルエがなんだか不服そう。
「どうかしたか?」
「うーん。なんか勝った気がしないのよねえ」
「なんで? 敵はこうやって倒したじゃないか」
「……あ! 分かった爆発がないんだわ!」
「爆発?」
「そうよ! ロボットアニメは大体戦闘後に敵が爆発するのよ。ロボットの機体爆発だったり、敵の十字架型の爆発だったり」
「そう、なのか?」
「よし決めた! 次は爆発系の武器をイメージしましょう」
一人で疑問し、一人で納得してしまった。
この女神が何を言っているのか、俺にはさっぱり分からない。
「ともかく、一件落着だな」
「あんたの言っていた洞窟の主は多分、コイツだったんでしょうね」
「あ、ということは、『レッドカーネスト』取り放題だ!」
これで武器も防具も作れる!
でも正直、このロボットさえあれば必要ないな。
ロボットから降りて、クラフトを解除する。
機体はどこかへ消えた。
「予想はしてたけど、あれ作るためには毎回『レッドカーネスト』が必要になるんだなあ」
となると使い所は難しい。
けれども性能はピカイチだ。
あれならドラゴンでも勝てちゃうかもしれない!
そんな期待を持てる一戦であった。
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