第13話 完全燃焼
例のごとくスキル研究の結果、メタルクラフトLv2は鉄ではなく、『ライト鉱石』という上質な金属を生成することが分かった。
これでまた俺は良い装備を作れるようになったわけだ。
それでもってモンスタークラフトLv2だが、これが全く分からない。
スキルを使って生まれてきたスライムは全く同じで無色透明。
ただ意志を持っているようで、俺の周りを周っている。
まったく分からん。
何の役に立つんだこれ?
そんなゴミスキルは置いといて、ポーションクラフトはちょー役に立ちそうだ!
各ステータスをアップさせるという単純で強い効果!
作りだめして家においてある。
俺は次なるレベルアップの場所を考えていたが、中々いいアイデアが浮かばない。
戦争地帯は簡単に負けてしまったし、かといって弱すぎると経験値にならないし。
まあ現状困ってもないし、別に良いかな。
ていうか俺、今何も困って無くね?
そもそもは、金がないしどっかギルドに行くためにもレベルアップとかが必要だったから途方に暮れてたわけだ。
でも今じゃ、衣食住に困ることはない。
ここ住むのも食うのもめちゃいい環境だし。
え、じゃあ俺もう何もしなくてよくね?
人生勝ち組エンドじゃね?
女神さまは俺の作るロボットで暇つぶししてるけど、俺はそもそもロボットなんてよく分かんないし、このままダラダラ過ごせるじゃん!
という思考から、ダメ人間生活を謳歌すること1週間。
生まれてからずーっと多忙を極めていた人生、ここまで何もすることがないのは初めてであった。
実にいい人生。
このまま死んでも良し!
とか思ってた矢先のことである。
「ぎゃあああああああああああああ」
森が火事になりました。
「どどどどどどどどどうしよう!」
「どどどどどどどどどうするのよ!」
「水系のスキルは持ってないよ!」
「私だって何もできないわよ!」
「そうだ! ロボットを使おう! 水をばらまけばいいんだ!」
「その水はどこにあんのよ!」
「あるじゃないか、こんなに!」
「これはただの水じゃないの! 魔水なの! もしあの炎が魔法だったら促進させて燃え広がるわよ!」
「誰かが燃やしたってのか!?」
俺達は焦ってうろうろと泉を周っていた。
「あ、いた」
うろうろと歩いていた俺らの前に、一人の人間が立っていた。
真っ赤な髪が女性のように美しく伸びている。
その顔も女性のように淀みなく美しい。
「だれだ!」
男は笑った。
「知らないのか。これでも魔王なんだけどな」
魔王?
「あんた、何しに来たの」
え、なに知り合いなの?
「久し振りだねクルエ」
「何しに来たって聞いてんの」
「君を殺しに来たんだよ」
「へえ、恩を仇で返すんだ」
「そうだよ。これ以上強くなる存在を残しとく訳にはいかないんだよ」
男は俺を見た。
一体、なんなんだこいつは……。
クルエを殺すとか。
森を燃やすとか。
「森がなくなれば魔素の循環はなくなりその泉はなくなる。そうすれば不死身の女神も死ぬわけだ」
「それじゃあわざわざ挨拶に来たのね」
「そういうことだ。感謝してるんだ、こうみえて」
森がこのまま燃えたら、女神は死ぬ……?
なんとかしないと。
「ああそこの君、この炎は消えないよ。俺の炎だからね。それじゃあ挨拶も終わったし帰るよ。城で君の死にゆくさまを見ておくよ。君は逃げれるんだから逃げた方が良いよ」
それじゃあ、と言って男は炎に包まれ消えた。
「お、おい、クルエ。どうすんだよ、このままじゃ……」
クルエは俯く。
泣いてるのか? 無理もない。
「ぷっ」
ぷっ?
「ぷっはははははははははははははははは!!」
おかしくなっちゃった。
「クルエ、落ち着け」
「あ、あいつぷぷぷぷぷぷ。あの嘘信じちゃってるしぷぷぷぷぷ」
「うそ?」
「泉がなくなったら私が死ぬって、そんなわけないしぷぷぷ。神なめんなぷぷぷぷ」
なぜだかすこし、ほんのすこし、ムカつく。
「それが嘘だとしても、これなんとかしないと!」
「あーもむいいわよ。さっきはとっさのことであせっちゃたけど、冷静になったら、別にいいじゃん」
「別にいいじゃん!?」
「うん。この森は私にとって呪いなのよ。神として生まれた瞬間からの使命。でもなくなったら自由よ。指名のなくなった神なんてうんといるわよ。天界はそんな暇人の集合体」
「そう、なのか……」
「そ。それじゃ逃げましょうか」
こうして泉の森は跡形もなく綺麗に燃えて消えた。
「あーっ、ようやく出れた。さいっこうの気分ね」
「おい、でもまたあいつが来るんじゃないか?」
「来ないわよ」
「なんで?」
「あいつ、一定以上の水のある場所にしかワープ出来ないの」
「あ、そうなの?」
「そう。あの泉より大きな水のたまり場ここら辺にはないから平気。海も湖も超遠いし」
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