表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/19

第1話 ろぼっと……ってなんですか?

 みなさんはロボットが好きですか!?


 私は好きです大好きです!! By 超絶美少女女神


「お前、もう来なくていいよ」


 目の前に居るのは赤髪の男。

 名前はジェイ・レイザ。

 歳は俺と同じで21になる。


「ど、どうして急すぎるだろ!」

「お前のそのゴミスキル『製作クラフト』が用済みになったんだよ」

「どういうことだよ! 今だってこうやって、ギルドの為にアイテムを作っているじゃないか!」


 そう言って俺は、目下にある回復瓶の数々を見せる。


「ふんっこんなもん」


 ポケットに手を入れたまま、俺の作ったポーションを蹴飛ばす。

 ガラス瓶は割れ、中身が散らばる。


「なんてことするんだ!」


「うるせえよ。お前のポーションなんかもういらねえんだよ。俺達はあの頃とはちげえ。てめえが作れる程度のアイテムなんて荷物を圧迫するだけだ。もっと強えのを調達できるんだからな」


 そう言って仲間と共に笑う。


「なあ、待ってくれよ。俺達ギルドの初期メンバーじゃないか。今まで頑張って来たじゃないか」

「うっせえよ。黙って出てけ。さもないと……」


 ジェイが腰の剣に手を当てた。


「わ、分かった。分かったから」

 

 俺はギルド出口に近づいて歩いた。


「そうそう。分かればいいんだ」


 俺はギルドのメンバーのあざ笑うような視線を背に、ギルドを去った。




「あーーあー。これで俺も、『追放者』ってわけか」


 森の泉で横たわって、俺は呟いた。


 森の泉は俺の好きな場所だ。

 人がおらず、静かなので、一人になりたい時はよく訪れる。


「これからどうしよっかな」


 俺はExスキル『製作クラフト』を使って、おもちゃを作った。

 それはゴーレムだ。

 と言っても、巨大な人型のものなど作れないので、手のひらサイズだが。


 小さなゴーレムはとことこと歩き回る。

 特に指令などを与えていないので、勝手に動き回る。


 俺はバカみたいに動き回るゴーレムをぼうっと眺めて、考え事をしていた。


 ……無職かあ。ついに。お金ないなあ。ていうか、家どうしよ。ギルドに寝泊まりしてたからなあ。


 ゴーレムは俺の周りをくるくる回っている。


 ……ジェイの言う通り、このポーションにあんまり価値もないしなあ。だからこそ量で誤魔化してたけど、売るとなると、買い手がなあ。


 ゴーレムは泉の方へ歩き始めた。


「落っこちるぞー」


 別にどうでもいいように声を掛ける。


 しかしゴーレムに耳はなく、ぽちゃんと、落ちた。


 ……落ちちゃったか。まいいや。もう一体……。


 新たなゴーレムを作ろうとしていたその時。


「ぶっっっっっっはあああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 池の中から、黒髪の美少女が飛び出してきた。


「うわあああああ!」


 俺は驚き、のけぞった。


「ひっさびさにこっちきたあ! ん? あんたね、これ落したの。――んっ、んん。あーあー。マイクチャック。チェケラ。ワンツーサンシ。シチミトウガラシ。……あなたが落としたのはこの……って何よその顔。今から大事なこと言おうとしてたのに」

「えっと、どなた様でしょうか」 

「よくぞ聞いた! この私はこの泉の女神、クルエ! あなたのような人が来るのを待っていたのです!!」

「は、はあ……」

「なにその信じてないような顔。なーんか興ざめ。もういいわ。で、金のゴーレムと銀のゴーレムどっち落したの」

「えっと俺はもっと普通のを落しました」

「んじゃこれ両方上げる」

「え」

「じゃあね」


 そう言って、自称女神は退屈そうに池に戻っていった。


 俺は目をぱちくりさせた。

 現実、だよな。


 誰かが、からかってるのか?


 でも、これもらったし。


 ……。


 ちょっと見て見よう。


 俺は、泉に誰かいるのではないかと覗き込んだ。


 やっぱり誰もいない。


「って、うわっ」


 貰ったゴーレム達が俺の尻を押し、俺は泉に落ちてしまった。


 なんだこれ、上がれねえ。

 落ちていく。


 やばい、息が……。


 このままじゃ、死、ぬ……。


 

「ちょっと、ちょーーーっと」


 ほっぺたが痛い。


「起きなさいってば!!」

「いたあああああい」


 ビンタによって、俺は目を覚ました。


 場所は変わらず、あの泉の横。


「ちょっと、人が落ちるのは聞いてないんですけど」

「す、すみません」

「以降、気を付けなさい」

「はい」

「ところであんた」

「なんでしょう」

「ちょっと何か作ってみなさいよ」

「え?」

「あのね。私はここに落ちたものの質を上げて陸に戻すのよ。つまり、あなたの質を上げてあげたのこの私が。んでまあ、ちょっと、気になることがあって」

「はあ……」

「いいから早く、男なら迷わず、Go!」


 話が見えないまま、俺はスキル『製作クラフト』を使った。

 両手を前に出し、目をつむってイメージする。


 ゴーレム、ゴーレム。ゴーレム。

 あれ。

 

 だが、イメージがいつもと違う。

 

 なんだこれ、なんか、巨大な、なにこれ、超、カッコイイ……。

 し、知らない。なんだなんだ、これは……。


 俺の意識とは裏腹に、それは徐々に出来上がる。

 なんだ、何を作っているんだ、俺は……。

 

 全てを吐き出した朝のようなすっきりとした感覚を得る。

 完成だ。


 目を開き、作ったものを見る。


 身長約5メートル。辺りの木々より少し小さい。

 それは人型。

 全身が真っ白の人形だ。

 しかし、やけにきちんと彫刻がなされている。

 

「すっごおおおおい!! ガソレムだよガソレム!! 真っ白でちーっとちっちゃいけど」

「な、なんですか、それ……」

「あー。こっちの人は知らないか。異世界の文化、ロボットアニメだよ。ってそんなこといいの。え、これ動かせるのかな。ちょっと乗ってみてよ」


 この人は、何を言っているんだろう。


「こんな人形に、乗れるんですか」

「乗れるに決まってるでしょ、ロボットなんだから」


 さあさ、と急かされ、俺はロボット? の足を観察する。

 すると階段を見つけた。


 大分高いところまで登った。下は……見たくない。

 ロボットの胸のあたりに、開くドアが用意されていた。

 

 それを開き、中に入る。


 真っ暗な部屋が、途端に明るくなる。


 中央には椅子がある。

 他にもなにやら複雑な形状のアイテムがいっぱい用意されている。


 なんかの儀式でもやるのか?

 もしかして祭壇?


「ほらほら、動かしてっ」

「うわあああああ」


 いつの間にか、隣に女神がいた。


「どうしてここに?」

「おもしろそうじゃん、これ。いやー。実際私も天界でアニメ見るばっかで暇だったからさ」


 えへへ、と笑う女神にちょっとキュンとした。


「それで、どうやって動かすんですか?」

「分からん」


 どや顔で言う。


「え!? そのあにめ? とか言うので勉強したんじゃないんですか!?」

「アニメでロボの操作なんか説明しないわよ。あ、いいのがあった。んっんっ、男なら、気合いで動かせええええ!!」

「んな滅茶苦茶な」

「いいからほら、そこに座って」


 言われるがまま座ると、またも何かが光り出す。


 その瞬間、目の前に外の景色が広がった。


「よーしいい調子。今度は歩いて」

「どうやって」

「気合いよ気合い!!」


 気合いを込めてガチャガチャとあたりをいじる。


「ダメダメそんなんじゃ。重要なのは歩くイメージ。はい、3、2、1」


 歩く、イメージ。


 ドシンっ。


「出来た!」

「やるじゃん!! さすが私が見込んだ男」


 それから徐々にコツを掴み、森をうろうろと出来る程に成長した。


「結構、楽しい」

「でっしょおお? やっぱりロボットは男のロマンね」

「ところで、どうして俺は知らないロボットとかいうのを作れたんでしょうか」

「そりゃあ私があなたの能力を強化するときに、私の記憶も入り込んだからでしょう。うんうん。大成功ね。でもまだ、足りないわね」

「何がですか?」

「うーんと、全部ね。大きさや、武器、それに何より、カラーリング! これが一番大事。原因は多分、あなた自身のレベルが低いから、あとは素材不足ね」

「なるほど」

「まずは頑張ってレベルを上げましょう。私も協力するわ。最終目標は、オリジナルの最強ロボよ!! 私の記憶だけじゃ、つまらないでしょ? 新しいものを作ってこそ!」

「は、はあ……」


 俺はこの女神さまとやらが何を言っているのか全く分からず、置いてけぼりになった。


 でもまあ、ちょっと面白そうだ。

 このロボットとかいうのもカッコいいし。


 それに何より、暇だし。


 こうしてこの日、俺は初めてロボットに乗ったのであった。

次 回 予 告


 ロボットを製作出来るようになった少年

 そんな折、街に最強種族『ドラゴン』が飛来

 燃え盛る街

 逃げ惑う人

 少年は、戦うことを決意する。

 

 次回『巨大なヤツ』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ