第1話 ろぼっと……ってなんですか?
みなさんはロボットが好きですか!?
私は好きです大好きです!! By 超絶美少女女神
「お前、もう来なくていいよ」
目の前に居るのは赤髪の男。
名前はジェイ・レイザ。
歳は俺と同じで21になる。
「ど、どうして急すぎるだろ!」
「お前のそのゴミスキル『製作』が用済みになったんだよ」
「どういうことだよ! 今だってこうやって、ギルドの為にアイテムを作っているじゃないか!」
そう言って俺は、目下にある回復瓶の数々を見せる。
「ふんっこんなもん」
ポケットに手を入れたまま、俺の作ったポーションを蹴飛ばす。
ガラス瓶は割れ、中身が散らばる。
「なんてことするんだ!」
「うるせえよ。お前のポーションなんかもういらねえんだよ。俺達はあの頃とはちげえ。てめえが作れる程度のアイテムなんて荷物を圧迫するだけだ。もっと強えのを調達できるんだからな」
そう言って仲間と共に笑う。
「なあ、待ってくれよ。俺達ギルドの初期メンバーじゃないか。今まで頑張って来たじゃないか」
「うっせえよ。黙って出てけ。さもないと……」
ジェイが腰の剣に手を当てた。
「わ、分かった。分かったから」
俺はギルド出口に近づいて歩いた。
「そうそう。分かればいいんだ」
俺はギルドのメンバーのあざ笑うような視線を背に、ギルドを去った。
「あーーあー。これで俺も、『追放者』ってわけか」
森の泉で横たわって、俺は呟いた。
森の泉は俺の好きな場所だ。
人がおらず、静かなので、一人になりたい時はよく訪れる。
「これからどうしよっかな」
俺はExスキル『製作』を使って、おもちゃを作った。
それはゴーレムだ。
と言っても、巨大な人型のものなど作れないので、手のひらサイズだが。
小さなゴーレムはとことこと歩き回る。
特に指令などを与えていないので、勝手に動き回る。
俺はバカみたいに動き回るゴーレムをぼうっと眺めて、考え事をしていた。
……無職かあ。ついに。お金ないなあ。ていうか、家どうしよ。ギルドに寝泊まりしてたからなあ。
ゴーレムは俺の周りをくるくる回っている。
……ジェイの言う通り、このポーションにあんまり価値もないしなあ。だからこそ量で誤魔化してたけど、売るとなると、買い手がなあ。
ゴーレムは泉の方へ歩き始めた。
「落っこちるぞー」
別にどうでもいいように声を掛ける。
しかしゴーレムに耳はなく、ぽちゃんと、落ちた。
……落ちちゃったか。まいいや。もう一体……。
新たなゴーレムを作ろうとしていたその時。
「ぶっっっっっっはあああああああああああああああああ!!!!!!」
池の中から、黒髪の美少女が飛び出してきた。
「うわあああああ!」
俺は驚き、のけぞった。
「ひっさびさにこっちきたあ! ん? あんたね、これ落したの。――んっ、んん。あーあー。マイクチャック。チェケラ。ワンツーサンシ。シチミトウガラシ。……あなたが落としたのはこの……って何よその顔。今から大事なこと言おうとしてたのに」
「えっと、どなた様でしょうか」
「よくぞ聞いた! この私はこの泉の女神、クルエ! あなたのような人が来るのを待っていたのです!!」
「は、はあ……」
「なにその信じてないような顔。なーんか興ざめ。もういいわ。で、金のゴーレムと銀のゴーレムどっち落したの」
「えっと俺はもっと普通のを落しました」
「んじゃこれ両方上げる」
「え」
「じゃあね」
そう言って、自称女神は退屈そうに池に戻っていった。
俺は目をぱちくりさせた。
現実、だよな。
誰かが、からかってるのか?
でも、これもらったし。
……。
ちょっと見て見よう。
俺は、泉に誰かいるのではないかと覗き込んだ。
やっぱり誰もいない。
「って、うわっ」
貰ったゴーレム達が俺の尻を押し、俺は泉に落ちてしまった。
なんだこれ、上がれねえ。
落ちていく。
やばい、息が……。
このままじゃ、死、ぬ……。
「ちょっと、ちょーーーっと」
ほっぺたが痛い。
「起きなさいってば!!」
「いたあああああい」
ビンタによって、俺は目を覚ました。
場所は変わらず、あの泉の横。
「ちょっと、人が落ちるのは聞いてないんですけど」
「す、すみません」
「以降、気を付けなさい」
「はい」
「ところであんた」
「なんでしょう」
「ちょっと何か作ってみなさいよ」
「え?」
「あのね。私はここに落ちたものの質を上げて陸に戻すのよ。つまり、あなたの質を上げてあげたのこの私が。んでまあ、ちょっと、気になることがあって」
「はあ……」
「いいから早く、男なら迷わず、Go!」
話が見えないまま、俺はスキル『製作』を使った。
両手を前に出し、目をつむってイメージする。
ゴーレム、ゴーレム。ゴーレム。
あれ。
だが、イメージがいつもと違う。
なんだこれ、なんか、巨大な、なにこれ、超、カッコイイ……。
し、知らない。なんだなんだ、これは……。
俺の意識とは裏腹に、それは徐々に出来上がる。
なんだ、何を作っているんだ、俺は……。
全てを吐き出した朝のようなすっきりとした感覚を得る。
完成だ。
目を開き、作ったものを見る。
身長約5メートル。辺りの木々より少し小さい。
それは人型。
全身が真っ白の人形だ。
しかし、やけにきちんと彫刻がなされている。
「すっごおおおおい!! ガソレムだよガソレム!! 真っ白でちーっとちっちゃいけど」
「な、なんですか、それ……」
「あー。こっちの人は知らないか。異世界の文化、ロボットアニメだよ。ってそんなこといいの。え、これ動かせるのかな。ちょっと乗ってみてよ」
この人は、何を言っているんだろう。
「こんな人形に、乗れるんですか」
「乗れるに決まってるでしょ、ロボットなんだから」
さあさ、と急かされ、俺はロボット? の足を観察する。
すると階段を見つけた。
大分高いところまで登った。下は……見たくない。
ロボットの胸のあたりに、開くドアが用意されていた。
それを開き、中に入る。
真っ暗な部屋が、途端に明るくなる。
中央には椅子がある。
他にもなにやら複雑な形状のアイテムがいっぱい用意されている。
なんかの儀式でもやるのか?
もしかして祭壇?
「ほらほら、動かしてっ」
「うわあああああ」
いつの間にか、隣に女神がいた。
「どうしてここに?」
「おもしろそうじゃん、これ。いやー。実際私も天界でアニメ見るばっかで暇だったからさ」
えへへ、と笑う女神にちょっとキュンとした。
「それで、どうやって動かすんですか?」
「分からん」
どや顔で言う。
「え!? そのあにめ? とか言うので勉強したんじゃないんですか!?」
「アニメでロボの操作なんか説明しないわよ。あ、いいのがあった。んっんっ、男なら、気合いで動かせええええ!!」
「んな滅茶苦茶な」
「いいからほら、そこに座って」
言われるがまま座ると、またも何かが光り出す。
その瞬間、目の前に外の景色が広がった。
「よーしいい調子。今度は歩いて」
「どうやって」
「気合いよ気合い!!」
気合いを込めてガチャガチャとあたりをいじる。
「ダメダメそんなんじゃ。重要なのは歩くイメージ。はい、3、2、1」
歩く、イメージ。
ドシンっ。
「出来た!」
「やるじゃん!! さすが私が見込んだ男」
それから徐々にコツを掴み、森をうろうろと出来る程に成長した。
「結構、楽しい」
「でっしょおお? やっぱりロボットは男のロマンね」
「ところで、どうして俺は知らないロボットとかいうのを作れたんでしょうか」
「そりゃあ私があなたの能力を強化するときに、私の記憶も入り込んだからでしょう。うんうん。大成功ね。でもまだ、足りないわね」
「何がですか?」
「うーんと、全部ね。大きさや、武器、それに何より、カラーリング! これが一番大事。原因は多分、あなた自身のレベルが低いから、あとは素材不足ね」
「なるほど」
「まずは頑張ってレベルを上げましょう。私も協力するわ。最終目標は、オリジナルの最強ロボよ!! 私の記憶だけじゃ、つまらないでしょ? 新しいものを作ってこそ!」
「は、はあ……」
俺はこの女神さまとやらが何を言っているのか全く分からず、置いてけぼりになった。
でもまあ、ちょっと面白そうだ。
このロボットとかいうのもカッコいいし。
それに何より、暇だし。
こうしてこの日、俺は初めてロボットに乗ったのであった。
次 回 予 告
ロボットを製作出来るようになった少年
そんな折、街に最強種族『ドラゴン』が飛来
燃え盛る街
逃げ惑う人
少年は、戦うことを決意する。
次回『巨大なヤツ』