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密会はお風呂で

「つはぁ~何度でも言うデス。お風呂は最高デス」


 アネットが露天風呂の縁に頭をのせ体を少し浮かし足をパタパタと動かす。ペットボトルの紅茶を飲みながら星空を眺めうっとりした表情を見せる。

 建屋内の風呂場から露天風呂を繋ぐドアが開くと寧音が入ってくると外気と繋がってドアの間を通る空気が大きな音をたてる。


「遅かったデスネ? ほいお茶デス」

「サンキュ~」


 寧音がペットボトルを受け取り地面に置くとかけ湯をして露天風呂に入る。紅茶を飲むと幸せそうな顔で湯船に浮かぶ。


「露天風呂にお茶を持ち込んで2人っきりで貸し切り状態なんて贅沢の極みだよねぇ」

「お風呂でしか話せない事が多いデスからネ。水分補給しながらじゃないと倒れマスカラネ」


 寧音が湯船に体を浮かしたまま顔だけをアネットに向ける。


「お風呂以外は盗聴されてるってこと?」


 アネットは寧音を見るとフフンとなにやら意味ありげな笑い方をする。


「なに? 気になるじゃんよーーってまさか!?」

「そうワタシの調べによるとデスネ、トイレ以外は全部盗聴されてマスヨ」

「うえぇぇ最悪」


 心底嫌そうな顔をする寧音だが何かに気づいたようで少し慌ててアネットに訪ねる。


「ってことは今までのお風呂の会話聞かれてるんじゃ。アネットが壊したとか?」

「壊したらバレマスヨ」

「じゃあどうすんの?」

「盗聴マイクの隣にワタシ達の会話をランダムで作り出し流すスピーカーを取り付けてるのデス。これで盗聴者はワタシ達の恋バナからムフフフな会話まで聞いて満足してるはずデス」


 自慢げに胸を張るアネットに称賛の拍手を贈る寧音。


「あ、でもそのスピーカーとられない?」

「その辺も抜かりないデス。このお風呂に入るのは基本ワタシ達と掃除のオバチャンだけデス。盗聴機に一時期テープを貼って音が若干聞き取り辛くなるようにしてみマシタとこ、オバチャン達が掃除に入った後も剥がされたりした形跡はありませんデシタカラ」


「なるほどそれなら、今入ってくるオバチャン達の顔はみんな知ってるからその中にテープを剥がす怪しい人がいるか絞れるし、もし知らない人が入ってくればすぐ分かるってことね。

 それならさ、あえて壊して怪しい奴をおびき寄せた方が良くない?」

「それもありデショけど、警戒される可能性があるのデスヨ。情報が漏れにくくなるのは得策じゃないデスネ」


 2人とも湯船に浮かんで空を眺める。


「なんなんデショネここまでワタシ達を監視する理由ッテ」

「気持ち悪いねぇ。本題だけどさ、港さんから聞いたんだけど──」


 寧音が港から聞いた話、諸星と三滝が一緒のロボの操縦者でモドラーと一緒に海底に沈み1ヶ月行方不明になって帰還した話をする。


「1ヶ月デスカ。しかも諸星サンは重症で帰還して謎の出世と……怪しさ満点デスナ」


 アネットが紅茶をグイッと飲み「ぷはぁ~」と声をあげる。


「ワタシもちょっと面白い話聞いてきましたヨ。梅岡さんから聞いたんデスガネ、MOFU KUMAは4体アリマス。これは秘密事項でもなく当初から計画されてたことで周知の事実らしいのデスガ、このKUMAの性能は索敵だソウデス」

「索敵?」


 寧音が首を傾げる。


「モドラーって火山から出てきて海を渡り富士山目指すんでしょう。しかも1体。

 索敵ってあまり有効性を感じないよね。今後の進化の可能性を見越してとか?」

「シズズは候補生で4グループに分けられたとき各々のグループのトップが1回だけ顔を合わせたの……そう言えばシズズはそのときは確か──」

「そのときは私はトップじゃないねぇ、音道(おとみち) 真瑚(まこ)ちゃんだね。途中でやめちゃってスライドで私がトップになったんだ。すごーーく優しくて面倒見も良いのに勉強も運動も出来てねってあぁ……」


 話それたねごめんって感じの顔をして寧音が続けてとジェスチャーをする。


「それで、1回だけ顔を合わせたんデスケドその『真瑚』ワタシ『アネット』『瑠璃』でもう一人『常門(つねかど) 穂花(ほのか)』って不思議ちゃんがいたのデス。そのグループの特化していた能力が索敵、観察、情報処理だったのデス」

「索敵……穂花……4体目のMOFU KUMA。単純に計画として頓挫したのか、なにか問題があった。もしくは今はその時じゃないか。もしそうならなぜ時期が分かるのか……」


 寧音がバシャバシャとお湯で顔を洗う。


「わかんない事ばっかりだね」

「デスネ~」


 2人が湯船に浸かりどこを見るわけでもなくボーーとする。お湯の流れる音が心地よい音色を奏でる。


「話変わるけどさ」


 寧音が静寂を破り口を開く。その声色こわいろはどことなく鋭さを感じさせる。


「アネット、この間モドラーの卵の映像見たときさ、瑠璃と手を握ってなかった?」


 いつもの軽いノリではなく真剣な目で寧音がアネットを見つめ答えを待っている。


「ええ、握りマシタヨ。しかもルリリの方から握ってくれマシタ! 震えるワタシの手を優しく包み込んで、大丈夫俺が側にいるよッテ──」

「ぬぬぬぬ、それは嘘だあぁ! 瑠璃はそんなこと言わない!」


 余裕のアネットに対し焦る寧音。アネットが恥ずかしがる様に両頬を手で押さえながらモジモジする。


「ワタシ、ルリリに好きだって告白したのデス」

「にゃ、にゃんですとーーーー!?」


 寧音が立ち上がりモジモジしてるアネットを揺さぶる。


「で、でで、返事、瑠璃の返事は!」

「それがデスネ~(だんま)りで返事してくれなかったのデス」


 残念そうなアネットに対して湯船にザブンっと浸かりホッと胸を撫で下ろす寧音。


「でもデス、その後手を握ってくれたからこれはもうワタシに──」

「うりゃああぁぁ!」


 寧音がアネットに飛び付いてそこから先の台詞を阻止する。


「うひゃああ! どこ触ってるデス!」

「うわぁぁんアネットがアネットが悪いんだぁぁ」

「ひゃふ、そこはやめ、やめるデス。る、ルリリに捧げる体デス」

「にゃぬーーーー!!」


 2人の長い入浴は続く。この時、瑠璃は自室で本を読んでいたが途中からくしゃみが止まらなくなり、体調を気にして早めの就寝をするのだった。

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