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モフ★クマ ~怪獣戦闘記~  作者: 功野 涼し
安寧の音を求め
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狂暴怪獣 シュレッケン

 火口から吹き出すマグマと共に姿を現すモドラーは大きな翼を広げマグマの様に赤い体を宙に浮かせる。

 ゆっくり地上に降りる姿は誰がどう見ても同じ名前を叫ぶだろう。


「ドラゴン!?」


 その姿は正に物語に出てくる西洋のドラゴンの姿をしており赤い鱗は熱を持っているのか空気が陽炎のように揺らめき、太い腕と大きな体を支える逞しい足に尻尾も太く長い。背中に今は畳んでいるが既に体よりも大きい羽が空を飛んで直ぐにそっちに行くのだと主張してくる。


 顔は爬虫類の顔ではあるが鼻先の立派な角と頭部の左右に大きく尖る角がドラゴンを感じさせる。

 そしてその目は眼力のせいだけでない迫力と明確な意思を感じさせる。


 今までのモドラーのようにすぐに移動を開始せず自分の体を確かめるように周囲の自衛隊の車両を破壊する。

 太い手を地上の戦車に伸ばすと掴んで握力を試しているかのようにゆっくり握りつぶす。

 太く長い尻尾を横に凪ぎ払い地上の部隊を一掃すると次は空を飛び回る戦闘機を睨む。

 鋭い牙の隙間から炎が漏れて口を開けると一気に噴出される炎は空気ごと焼いていき戦闘機を次々と破壊していく。


 チリチリと燃え落ちる鉄の破片を見て満足したのか顔を真上に向け大きな唸り声をあげる。


 ぐおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


 声が地面を震わせる。近くにいた隊員達はこの声の音圧だけで意識を失い倒れてしまうほどの凄まじい声が響く。

 モドラーは背中の大きな羽を広げる。赤い骨格に赤黒い膜が張ってある様な羽は力強く羽ばたくと大きな体をゆっくりと宙に浮かべると意思のある目が瑠璃たちのいる弓が浜の方角を見て羽を大きく羽ばたき勢いをつけて飛び始める。



 ***



 前回の戦いからまだ4日、この基地はプラントンによってボロボロにされたままである。地上にある迎撃システムも殆ど使用できず武器換装システムも機能しておらず使える武器を並べ隠す作業を瑠璃と穂花が進める。


「コルグイスの爪で作ったバールも心許ないです。アーマーモドラーのプレートも耐久性に不安があります。カブトガーの頭はヒビが入ってますし後は──」


 スナイパーグマが他の武器の中で唯一綺麗に光る武器を手に持つ。


「このグロルヴルフのドリルか……」

「ええ、憎たらしい武器ですが使えるものは使わないと生き残るためにも」


〈モドラーの名前をこれよりシュレッケンと呼称します。シュレッケン、まもなく到着します。速やかに戦闘体制をとってください!!〉


 港の声が操縦室に響くと瑠璃がライフルを手にして海上に狙いを定める。スコープにその姿はまだ映らないがレーダーは近いことを知らせてくる。


「なんだこれ……速い。前のヴォルコンに匹敵する速さだぞ」


 レーダーのシュレッケンを示す緑の点が物凄い勢いで進んでくる。そのお陰でスコープにすぐその姿が映る。速いがその大きな体を外す訳もないと操縦桿のボタンに指をかける。

 スコープに映るシュレッケンの口が開く。


「瑠璃くん!!」


 穂花の叫ぶ様な声がしたと思ったら大きく揺れ空中に浮く様な感覚。そして地面に当たる衝撃が伝わってくると大きな衝撃と熱ダメージを受けたことを知らせるアナウンスが操縦席に響く。


「瑠璃くん立って! これは不味い……」


 穂花の声で現状把握より先に立ち上がることを選択させスナイパーグマの体を起こす。鳴り響く警告音だが軽微なダメージであるとモニターが知らせている。

 さっきまで持っていたライフルは先端が曲がり溶けていたので投げ捨て近くにあったカブトガーの頭を手に取る。

 さっきまで自分がうつ伏せでいた場所が大きく抉れ火が燻っていた。

 少し離れた場所でラダルグマが戦っているのは分かるが周囲に火が燃え空気が揺らぎ視界が悪い。


「穂花が助けてくれたのか……くそっ助けられてばかりかよ」


 自分が情けなくなるがシュレッケンに向かい急ぐため火を潜り進む。



 ***



 穂花は珍しく焦りの色を顔に出す。スナイパーグマを蹴り直撃を防いだ後すぐに地上に降りてきたシュレッケンはラダルグマを見つけるなり突進してくる。

 ギリギリでかわしバールを振り下ろすが読んでいたとでもいうように左腕で受け止められ右の拳で殴られる。

 倒れるラダルグマに尻尾を振り下ろし叩きつけると足を持ち放り投げられる。

 流れるような攻撃で操縦が追い付かない今だ倒れる穂花のラダルグマを数回踏みつけ横に蹴り飛ばす。

 転がるラダルグマを見てゆっくり近付くと体に装着しているアーマーモドラーのプレートの隙間に指をかけると引き剥がし始める。


「な、こいつラダルの装甲を剥ぎ取るつもりなの!?」


 焦る穂花に通信が入ってくる。映るその顔は以前三滝と話していた細身の男の姿。痩けた頬に神経質そうな顔が嬉しそうに笑っているのが実に腹立たしい表情だと穂花は画面を叩きたくなる気持ちを押さえる。


〈穂花さん、言葉遣い元に戻ってますよ。気を付けないといけませんね〉


「なんの用ですかね山部さん。こっちは忙しいんですよ」


〈ふふふ、珍しく焦ってるじゃないですか。その子強いでしょ。本当はそんな鉄屑すぐ粉砕出来るんですけど恐怖の演出ってやつです〉


「悪趣味なことで、まあ死ぬ気なんて更々ないから」


 ラダルグマが自ら装甲を引きちぎる様に体を反らすとシュレッケンの右足を内から刈るように蹴りながら胸元を押すとシュレッケンの巨体が背中から倒れる。


 そこに走ってきたスナイパーグマが軽くジャンプしカブトガーのハンマーをシュレッケンの顔面に向けて振り下ろすと間髪入れずラダルが近くにあったメイスを手に取り体に向かって叩きつける。


「瑠璃くん信じて待っててくれてありがとう」

「ああ、怖い思いさせて悪かったな。……山部とか言ったか、後で説明してもらうからな」


〈瑠璃くんの方にも回線を繋いでいた……まあ良いでしょう。こっちも準備出来たからこそ穂花さんに通信入れたんですからね〉


 山部の癇に障る笑顔がモニターに映し出される。

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