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モフ★クマ ~怪獣戦闘記~  作者: 功野 涼し
MOFU KUMA 御披露目会
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御披露目に向けて

「たはぁ~たまりませんナァ 露天風呂完備トカ天国デスヨこのやろう」


 アネットが頭にタオルを載せ、露天風呂の縁に背中をつけご満悦な顔で天を仰ぐ。

 そんなアネットに寧音が器用に湯船を横にスライドしながら移動し近付く。


「アネットさんや、これをどーーぞ」


 寧音が一緒に連れてきたお盆の上に置いてあるサイダーを渡す。


「シズズ、お主もワルよノ」


 悪代官のような台詞を吐きペットボトルのキャップを開け喉を鳴らしながら飲むと腰に手を当て立ち上がる。


「ぷはぁ~この一杯の為に仕事頑張れてマスナ」

「美味しいのは分かるけどねぇ~アネット色々と丸見えですがな。絶景状態ですってよ」


 寧音の指摘にも動じることなくケタケタ笑うアネット。


「シズズ以外に誰が見てるってんでヤガルデス。むしろ見れやガレデス」

「ほほう、スタイルに自信のある方の発言は違いますなぁ」

「いえいえ、シズズさんも誰もが羨むお体でゴザイマスデスことヨ」


 互いを誉めちぎり満足した2人は横に並んで湯船に浸かりサイダーを飲む。寧音がアネットを横目に見ながら口を開く。


「で、アネット今の状況どう思う?」

「そうデスね~2年前に集められ128人いた候補生から選ばれた私たち3人。各MOFU KUMAの性能。

 私達専用のカスタマイズって言ってますケド、ちょっと出来すぎデスね」

「アネット、ここにくる前は何してた?」


 寧音の質問にアネットは片目を開け寧音を見て答える。


「孤児院にいた……()()デスヨ」

「含みのある言い方するねえ」

「そう言うシズズは?」

「お父さんとお母さんと3人で九州の長崎県に住んでいた()()だね」


 少し黙って同時に言う。


「記憶が不鮮明」「記憶が曖昧デス」


「128人が綺麗に4分割され皆が同じ分野が得意……」

「今思えば気持ちのワルい状況でしたネエ」

「それに4分割されて3人か……」

「どのみちモドラーと戦闘が始まれば色々と分かることもあるデショよ」

「待つしかないってことね。瑠璃はどうする?」

「アヤツは真面目ですからナぁ、もう少し待った方がよかあないでしょカ?」


 そこまで話すと2人とも空を仰ぎ黙る。少し静寂が訪れる。


 ふふふふふふふ……

 くくくくくくく……


「今日はここまでだね! 次の課題は記憶について! OKアネット?」

「合点デス、そいじゃあワタクシは先に上がりマスヨ。出たら一緒にアイス食べようゾ」


 寧音が親指を立て良いねのサインを送る。



 ***



 パーーン! っと銃声が響き人の形を型どった的に穴が開く。

 続け様に銃声が響きその度、的の穴が増えていく。


 ビーーとビープ音がすると構えていた銃をおろし防音用のイヤーマフを外しテーブルに置く。


 テーブルに据え付けられている端末を操作し結果を確認する。


「中心は10発中8発。1発はカスってもう1発は5㎜ズレか」


 瑠璃が椅子に座りタオルで汗を拭きながらスポーツドリンクを飲む。

 ライフル・クレー射撃の選手だった父親の事を思い出す。オリンピックにも出場したこともある父親とそれを支える優しい母親。そして生意気ながらも可愛い妹。

 幸せな日々の中で厳しくも楽しく育てられて今の自分がいる。

 お陰で成績、運動神経とも地域でもトップだった自分はMOFU KUMA操縦者候補生に選ばれ更に128人の中から3名と言う狭き門を突破したのだ。


「たまには手紙書くか。電話くらい許してくれても良いだろうにな」


 そう口には出すが瑠璃はこのMOFU KUMAのプロジェクトが日本にとっていかに重要な事であるか理解していた。

 16歳の自分が電話で家族にポロっと国家機密に成りうることを喋るかもしれない事を懸念してると言うことを。

 電話だけでなくスマホなども没収され外部と連絡する手段はない。

 手紙も検閲が行われOKなら郵送してくれる。初めは人に見られていると思うと恥ずかしかった瑠璃だったが今は大分慣れていた。


「あぁホームシックとか情けねぇ~」


 寂しさを口に出して紛らわす。すぐに寧音とアネットの顔が浮かんでくる。


「あいつらに笑われる。あいつら成績良いけどバカだから俺がしっかりしないとな!」


 両頬を軽く叩き射撃場を後にする。



 ***



「前から言っているが2週間後の7月20日、日曜日MOFU KUMAの実践演習による御披露目会がある」


「わーーーーお!」

「ヒャっほいデス!」


 寧音とアネットがテンション高く諸星の発言に答えるが瑠璃は冷めた目で見ている。

 諸星が咳払いをして話を続ける。


「良いか、演習とは言えモドラーを模して作った演習用ロボとの戦闘と言う本格的なものだ。これが成功すればMOFU KUMAの予算アップも期待出来る」


「予算アップだって~大人は汚いですなあ」

けがれたくありませんデス」


 茶化す2人に対し諸星がニヤリと笑う。


「予算アップ即ちそれはこの施設も充実すると言うこと。敷いてはお前らの生活も潤うと言う訳だ」

「よっしゃ、いっちょやりますかな」

「くっくっく、私の本気を見せる時がきたようデスネ」


 悪い顔で笑う3人を更に冷めた目で見ていた瑠璃が手を上げる。


「教官、当日の実践訓練のスケジュールはどうなっているんですか?」


 瑠璃の質問に諸星が資料を配る。


「今時紙で配る資料なんて珍しいですね。しかも手書き」

「情報漏洩対策を突き詰めた結果、紙に手書きって言う本末転倒な事が起きたわけだ。

 しかも紙の方がデータが消えたりしないし停電にも強く、ハッキングもされないときたもんだ」

「そのうち火にも強い石に文字を掘り出すんじゃないデスカね」

「おぉ! 今日から石を掘る練習しなきゃね」


 きゃーーきゃーー騒ぐ2人に対し瑠璃がボソッと呟く。


「んだよ石を掘るって、時代戻り過ぎ。せめて竹簡に字を書くぐらいにしとけってんだ」


 そんな瑠璃を寧音とアネットが同時に驚いたような表情で見る。


「るりが面白いこと言おうとしてる……」

「内容はともかく姿勢は評価したいデスネ」

「おい! なんで俺が可哀想な感じになってんだよ。そもそも面白いこととか言ってねえし!」


 怒る瑠璃を哀れむ目で慰める2人、そんな光景を見て瑠璃に同情する諸星であった。

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