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モフ★クマ ~怪獣戦闘記~  作者: 功野 涼し
情熱の花言葉を添えて
24/47

休暇

 前回のカブトガー出現から1週間、モドラー出現の兆候はなく、モドラーの休眠期に入ったのではないかという意見もちらほらと出始める。

 ただ確証は無いため緊急体制を解くまでには至っていない。


「休暇デス!!」


 瑠璃の部屋の扉が勢いよく開けられアネットが入ってくる。ノックもせず入ってくるアネットに少し呆れるがそんなことお構いなしにベットで寝転んで雑誌を読む瑠璃の横に座る。

 瑠璃が上半身を起こすと横にいそいそと移動して距離を詰めるてくる。

 前に素のアネットをみたいと言って以来、前ほどのボディータッチはなくなり今みたいに距離は詰めてきても抱きついたりはしなくなっていた。


「で、休暇ってなんだ?」

「ルリ端末を見てないデスか?」


 アネットに言われ端末を見ると明日1日休暇が決まったこと、町へ移動したい場合は申請書を出せと書いてあった。


「ルリ、ワタシと行こう! 一緒にショッピングしたいデス!」

「ああ、楽しそうだし行こうか」


 喜ぶアネットを見て瑠璃にも笑みがこぼれる。



 ***



「で、なんでシズズとホノカも一緒にいるのデスカ」


 ハンバーガーチェーン店にて横に並ぶ瑠璃とアネットの前に座る寧音と穂花。


「それは~ 休暇だからですよ~」

「そういうことを聞いてるんじゃないデス! なぜワタシとルリについて来るのデス」


 右の頬に指を立てて首を傾げる穂花に切れるアネットの横で寧音が瑠璃に話しかける。


「あのさ私この辺の地理詳しくないんだよね。瑠璃案内してよ。なるべくなら2人で行こうよ」

「ああ! 寧音もどさくさに紛れて瑠璃を誘うなデス!」

「ん~ アネットちゃんは~ まだ彼女じゃないよね~ チャンスは平等~」

「なっ!! この猫かぶりがなに言うデス!!」


 折角の休暇を無駄に過ごす3人を見てうんざりした顔の瑠璃にアネットが横から抱きついてくる。


「ルリ! ここはもうバシッと言うデス! ぼくはアネットを愛してます! 結婚するのデスと」


 アネットに激しく横に振られる瑠璃に寧音と穂花の視線が集まる。

 瑠璃はこの争いの原因が自分であり、前に瑠璃を振り向かせるまでアタックするとは言われたが、ハッキリさせておくことは大事だと判断し決意する。


「結婚するかは知らないけど俺はアネットが好きだ」

「むっ」

「まあ~」


 宣言する瑠璃にアネットが頬を擦り寄せ喜びを爆発させる。


「あーーーーーーもう大好きです!!」


 その前で面白くなさそうな寧音と表情こそ変わっていないが不服な雰囲気を出す穂花などハイテンションのアネットが気付くはずもなく2人を見ると宣言する。


「これでワタシとルリは恋人なのデス! なのでここからは2人で休暇を楽しむので邪魔しないで欲しいデスネ」


 勝ち誇った顔のアネットが瑠璃の腕を組み立たせようとする。立ち上がろうとする瑠璃の唇に穂花が人指し指をあてると微笑む。

 あからさまに同様する瑠璃に気付くより穂花の態度に激怒するアネットが穂花の手を遮る。


「ホノカしつこいデス! ルリにその気はないのデス」

「そうだね~ 今はアネットちゃんを見守ることにするよ~ ね、瑠璃くん」


 アネットに引っ張られていく瑠璃ににこやかに手を振って見送る穂花を見て関心したように寧音が言う。


「穂花ちゃん凄いね。私さ諦めないって言ったけど既に心折れそうだよ」

「自信がありますから~」


 2人で並んでポテトをモグモグ食べる。


「……」

「あのさ、私たち振られたんだよね?」


 目に涙を溜める寧音が美味しそうにポテトを食べる穂花を少し信じられないものを見る目で見る。


「そうですね~ でも~ 結婚は分からないって言ってたから~ 入る余地はあると思うよ~」


 穂花が自信ありげにハッキリ話す姿を見て溜まっていた涙をこぼし始める寧音。


「寧音ちゃんは、昔から泣き虫だよね。真瑚ちゃんによく怒られてなかった?」

「え!?」


 雰囲気の変わった穂花に戸惑う寧音のことなど構わず話を続ける。


「濁った瑚は割れたの。割れた珊瑚は安寧の音を奏で一羽の鳥を生むの」


 そこまで言ってポテトを口にいれると元の感じに戻った穂花が寧音に微笑む。


「思い出せそう~? なにか思い出したら教えてね~」

 

 穂花が立ち上がると伸びをして店から出ていってしまう。1人残された寧音が頬に涙の跡を残したまま呆然としていた。



 ***



「おお! これは欲しかったやつデス! どうデス? 似合いますか?」


 白いショルダーバッグを肩にかけくるくる回って楽しそうに瑠璃に披露するアネットを見て瑠璃まで楽しくなるのを感じる。


「可愛いバックだな。似合ってるよ」

「本当デスカ!? どうしよう買おうかな。うーん」


 値札を見てひきつった顔になる。


「5万……」

「今の俺らなら買えない金額でもないだろう。俺が出そうか?」


 しばらく鞄を眺めて考えていたアネットが鞄を元の場所に置く。


「今はいいデス。基地にいたら使うところありませんカラ。そうデス! ペアで身に付けれるものが欲しいです」


 アネットに手を握られ引っ張られて違うお店に連れていかれる。瑠璃の手を強く握り楽しそうにするアネットの表情は明るく、幸せを体全身で表現しているようだった。



 ***



「結構買いましたネ。付き合ってくれてありがとうデス」


 手に沢山の荷物を抱えるアネットと瑠璃。瑠璃のはほぼアネットの分だが。

 アネットが右手を見てニヤニヤしているのにつられ瑠璃も自分の右手の薬指を見る。ピンクゴールドのリング。そしてアネットにも同じ色のリングが光っている。


「ちょっと休憩しようか」


 デパートの休暇場のソファーに腰をかけ休憩する。平日のデパートは人気(ひとけ)もあまりないことも手伝ってかアネットが瑠璃に寄りかかってくる。

 頭の重さを肩に預け右手を重ねるとうっとりした表情で微笑む。

リングを見つめた後、互いに熱を帯びた視線を合わせる。


「お揃いデス」

「ああ」


 どちらからともいうわけでなく気が付けば唇を重ねる2人。

 長い時間そのままだった2人の端末が同時に震える。


「空気の読めないヤツデスネ」


 ぶつぶつ文句を言いながら端末の画面を見る。


「分かってはいたがモドラーか、タイミング悪いな」

「とっとと終わらせてまたショッピング行くデス」

「だな」


 2人は荷物を抱え送迎の車に戻るため急いで移動を開始する。


 そんな2人の背中を見る人物はおもしろく無さそうに言う。


「邪魔だなぁ、いなくなればいいのにな」

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