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成果

 この拠点で鍛錬を続けて5ヶ月は経っただろうか。

 

 今日も僕はディンシアと組み手を行っている。

 といっても、初期の頃より格段に成長したと自分でも実感している。

 

 魔力の流れの感覚を掴むのには本当に大変だった。

 毎日雑巾のように精神を絞られ続ける日々である。

 何度心が折れかけてルスと励まし合ったか……。


 やっと見つけたコツとしては、魔力を使いたいと思うのではなく、魔力を一点に集中させたいと思うことである。


 要は、魔力をその部分に集めれば莫大に強化される。口では簡単に聞こえるが、これを戦いの中で瞬間的に集めるのが極めて難しい。


 ディンシアは回数あるのみだと常々言っていたが、最近身に染みて分かるようになってきた。


 生まれた時からこの仕組みを知っていればなぁと、もしもの妄想を何回考えたことか。


 ルスも着々と成長している。

 鍛錬をして気付いたことがあって、どうやら真紅として魔王の直属の配下になってから魔力量が爆発的に増えたらしい。

 どうやら胸の紋章が影響しているみたいだ。

 

 ディンシアも最初は魔力の活用の仕方を教えるだけのつもりだけだったみたいだが、その魔力量から戦闘に参加できるという事で今ではルスも組み手に参加している。

 本人は少し嫌そうだったが、強くなるためには必要と励まして無理やり頑張らせた。


 そういえば、ディンシアも幹部に出来ないのかと思い脳内に話しかけてみたら、例の如く無機物な声が響いた。


『――個体名:ディンシアを第二の幹部:菫として登録しました』


 やはり、仲間として登録されると魔力量が増えるみたいでディンシアもより役に立てると喜んでいた。

 ディンシア曰く、当時の魔王様に仕えていた時は執事だった為か幹部にはさせて貰えなかったそうだ。

 だからなのか涙を流してめちゃくちゃ喜んでいたのを思い出す。


 もう一つ余談だが、魔族3人組である獣人のナーズとサティ、モル族のラックは幹部として登録できなかった。

 いまいち原因が分からない。まだまだ加護紋について知らない事は多そうだ。


 


 僕は現在小休憩中である。目の前ではルスがディンシアと組み手を行なっている。


 ルスの戦い方は一言で言うなら翻弄させて一方的に攻撃するという戦法だ。片足が義足である為普通に戦っては分が悪いのだ。

 常時飛行状態を維持して戦う事で普通の人間には不可能な360度方向のステップが可能なのだ。


 初見で絶大な威力を発揮する上に、分かっていてもどうしようもできないだろう。

 この前模擬戦でルスと戦った時はなす術無くボコボコにされた。

 あんなのズルだ、動きを読める気がしない。でも本当の敵として戦うわけではないので心配ご無用だな。うん。

 

 因みに空の精霊で使える魔法は攻撃系もあるが本領は飛行系とサポート系である。


 僕はまだ精霊と契約出来てないので魔法は使えない。ルスが羨ましい限りだ。

 

 でもディンシア曰く、僕は保有する魔力が人より多いので魔力の流れを理解出来れば強さは十分すぎるみたいだ。



 物思いに耽っているとルスの組み手の時間が終わったようでルスが戻ってくる。


「つかれたー! ラト聞いて、私2つの魔法一緒に使えるようになったよ!」


「凄いじゃないか。ルスの成長は著しいな」


「ラトに負けてられないからね! もっと強くなるよ」


 もしかしたらルスの方が既に強いんじゃないかと思っているがそれは口に出さないでおく。


 次は僕の番だなと意気込んでいると、向こうで待っているはずのディンシアもこちらに来ていた。


「ラト様もルスも素晴らしい成長を見せて下さって私は喜ばしい限りで御座います」


「ありがとう。ディンシアの教え方が上手いからだよ」


「いえ、そんな事はありません。お二人ともセンスがとても良いからです」


「そういえば次は僕と組み手じゃないのか?」


「当初の予定ではまだまだのつもりでしたが。そろそろ次に進もうと思います。なので今日はもう終わりにしようと思います」


「それぐらい大変なのか?」


「ナーズ達にこの周辺をずっと探索させていたのですが、人間の手に堕ちている魔族の小さな村を見つけたようなのです。そこを解放しに行きます」


 斜め上の回答にルスが騒ぎ出した。


「そんなの無理だよ! 人間と戦うってことでしょ?」


「もしもの時のために私もついて行きます。しかし、ラト様もルスも自分たちが思っている以上に強くなっておりますので、私は不要だと思いますがね」


「わかった。ルスと2人でやればいいんだな。やってみるよ」


 自分がどれほど強くなったのは知りたかったのだ。丁度いい。

 ディンシアは強すぎて自分達が強くなったのか全くわからないのだ。


「そう仰って下さると思っておりました。貴方様なら大丈夫です。今日はゆっくりとお休みください」


 

 ――次の日の朝になり僕はディンシアに詳細を教えてもらう。


「今から我々が向かう村はメルムンク村といいます。昔は全員が仲の良い村人全体が家族のような村だったと聞いております」


「今はどんな感じなんだ」


「勇者に堕とされてからはひたすら作物を作り続ける農奴となって軍の下で働き続けていると何度か聞いたことがあります」


「農奴か……大体人数はどれぐらいなんだ」


「ナーズによると王国軍はおおよそ数十人程だと聞いております。奴隷紋により支配しているのでそんなに人数は必要ないのでしょう」


「わかった」


「ラト様、一つ忠告を。ラト様は強さは十分ですが、精神面はまだまだです。あの村の有様を見ても取り乱さないで下さい。それ有様が今の魔族の現状で御座います」


「どうゆうことだ?」


「ラト様はとても優しい心をお持ちで、自分の中の正義をお持ちだと思います。しかし、あの場では正しい事や間違っている事の主張は通じません。人間に情を持ってはなりません」 


「わかった。気をつける」


 少し不安になるが、ディンシアの忠告をしっかりと胸に刻む。


「それでは向かいましょうか」

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