目標
エリーから沢山の蜂蜜飴を受け取り、イリスは自分の育った教会へと向かう
「げ、ダグラス」
教会の庭で、子供たちに剣術を教えているらしい
「げってなんだよ。今日は冒険者のバイト休みだから」
「私も薬の納品終えた所。みんな、蜂蜜飴だよ」
群がる子供達の口に一個ずつ入れてあげる
「その剣、魔鉄製?」
「ああ、無理して買った。今は魔力流す練習中」
「…ふーん。魔力少ないからあんま意味ないかもだけど。ていうか、土属性ってあんまり攻撃向きじゃなくない?」
ダグラスは、がっくりと項垂れる。
「ひでぇ」
「魔法しか効かない敵も居るからまあ、それで遠距離攻撃も出来るようになればいいかも」
それだけ言ってイリスは、教会の中に入って行った
歴史あるといえばいいのか、広さはそれなりだが、あちこち傷みが酷い。それでも丁寧に修繕されていて、大切に扱われているのが良く分かる
「イリス姉ちゃん、神父様、今お客さん来てるぜ」
「ありがとうキッタ、はい、飴」
イリスはお盆を持った少年にも蜂蜜飴を舐めさせ、自分は奥の部屋にある薬箱の中身をチェックする。足りなくなってきた薬を補充していると、神父が来た
「いつもありがとう、イリス。丁度良かった。こちらに」
神父に連れられて私室に入ると、老齢の男性が座っていた
「どっかで見たような…」
「イリス、ドルニエ学園長ですよ」
イリスの呟きを聞き取った神父がこっそり教えてくれる。そういえば、この人のお陰で自分はアカデミーに入れたんだと思いだす
「ぅぁ…ええと、こんにちは、ありがとうございます」
「ふむ。学園は楽しいかね?」
「とっても!お陰で魔法の扱いも上手くなりましたし、錬金術も。…勉強は、ついていくの大変ですけど、友達に教えて貰ったりとかして頑張ってます!」
「そのようだ。私も推薦して良かったよ。…だが、少々元気過ぎるようだ」
ドルニエの言葉にイリスの目が泳ぐ
「それはええと、ダグラスと一緒にドアも蹴破った事…それとも、魔法の威力間違えて校庭に大穴あけちやった事…ごめんなさい!でもちゃんと直したし!」
「ふむ。そんな事もあったのか」
まずい!やぶ蛇だった!!
「新種の魔獣を討伐したのは君だと聞いてね。生徒に無茶はしてほしくないのだが、逃げられなかったのかね?」
「警戒は、していたつもりだったんですけど…すみません」
「国内唯一かもしれない太陽の属性、高い魔力。君には期待しているのだ」
「太陽…光属性の人と比べてちょっと違うって思ったんです。やっぱり…。なら、太陽属性の魔法もあるんですか?」
「残念ながら聞いたこともないな。総本山であるケントニスにならあるいは」
「むう…国外で更に海の向こう側、ですか」
「先ずはしっかりと勉強をして、卒業して大人になってからでも遅くはないだろう」
子供扱いも仕方がない。やっと魔法もまともに扱えるようになったばかりだ。お金もないし。それよりもイリスは、南にある砂漠の国、ドムハイトに行きたいと思っていた。自分の故郷かもしれない国…