採取、そして… 2
荷馬車に揺られて北に一日半。ヴィラント山のふもとに広がる広大な森。山菜やキノコ、薬草の種類も豊富だけど、普通の人はまず立ち入らない。猪や大蛇など、夏や秋でなくとも危険な魔物が沢山居るからだ
「じゃあ私とシスカさんで食材調達行って来るから、あとお願いね」
「いいのかな、私食材調達一回もしてないのに」
「それ言ったら俺も料理出来ねぇし、自分の出来る事をやるのが一番だって。」
ダグラスは、石を慣れた手つきでくみ上げ、枯れ木を並べる
「それにエリーの飯、旨いし」
「それ位しか、出来ないし」
「気にする必要ねぇって、大体、魔法職なのに前線で活躍出来るアイツが異常だっての…げ」
イリスがズルズルと、頭を切り落とした自分より大きな蛇を、引きずって来る
「お昼と夜の、メインになるかな?」
「そっ…そうね。解体だけ手伝ってくれる?」
イリスは力仕事を終えて、一休みしているダグラスをみる
「あーはいはい、行ってらっしゃい」
「という訳でエリー、遠慮なく使っていいから」
イリスは大きな籠を背負い、森に入って行った。
「ほんとにイリスって、ダグラス先輩に容赦なさすぎですよね」
「昔の色々知ってる俺が、気にいらねーんだよ」
「3年前のイリスかぁ、でもそれ聞いたら」
「俺が殺される」
「…ですよねー」
入れ替わるようにして、シスカが戻って来た
「メインはバイパーか、とりあえずキノコとか葉野菜、採って来たわよ」
「丁度よかった!(ウォーター)」
エリーの魔法で出した水で洗い、シスカと一緒にテキパキと料理を作っていく
タレに絡めたバイパーの切り身と野菜を、固めに焼かれたパンに挟んで出来上がり
「いい匂い~」
タイミング良く現れたイリスは、種類毎に束にされた薬草を荷台に張られた紐に干し、早速サンドイッチに齧りつく
「ウマウマ~、濃い目のタレが敢えて味付けしてない生野菜に絡んで、パンに合うー!」
サポニの実を詰めた袋をこすって泡立て、鍋などを洗い、立て掛ける
「よし、じゃあ本格的な採取に向かおう?まずは蜂蜜!」
鬱蒼と茂る森に入り、奥へと進むと30㎝はある蜂がちらほらと目に入る
「気をつけて、熊かも」
見えてきたのは、普通の熊の倍はありそうなシルエット。只の熊じゃない!変異種?
「逃げる、か?」
「駄目、気づかれた!」