身長は必須?
いよいよ初授業!一応ダグラスから1年生の教科書貰って半年は勉強はしてきたけど、神父様や近所の大人たちは難し過ぎるって、殆ど進める事が出来なかった。
一番前の席に座り、教科書を開く。
「…これはいわゆる物理的差別?」
机が高すぎる。椅子が低い。
「どうしたのー?あ、私はエリー、よろしく」
隣に座った子は、栗色の髪に、緑の瞳の優しそうな女の子。…うーん、ジャストサイズ
「イリスだよ。今、人生の不条理について考えてた所」
「ええ~?」
戸惑うエリーに、頬を膨らす
「少なくとも、1年生の教室は、椅子を高く造るべきかと」
「あぁ~。あはは」
曖昧に笑って誤魔化したエリーに、ジト目を向ける
「エリーって、いくつ?」
「14だよ、来月15。イリスは10歳?」
「そうだけど…ちがくて身長」
「…どんまい!これからだよ!応援するね!」
いい子なんだけど…何かが違う気がする
「ちょっと、静かにして下さる?」
物憂げな表情で教科書を読んでいる
「ごめんね、うるさかった?」
振り向いたイリスの、黒い大きな瞳に戸惑う
「…少し、イラついていたのよ。私は、アイゼル ワイマールよ」
「あ、貴族の人だったんだね」
「…別に、ここではそんなの、関係ないでしょう。そういう規則ですし」
そんな風に真っ直ぐこられたら、怒る気持ちも失せてしまう
「じゃ、アイゼルで。敬語とか苦手だから」
「だからって、初対面の相手になれなれしいですわ」
わざと素っ気なく返したけれど、相手の裏を探り合わなければならない関係とは違う事に、アイゼルはほっとしていた。
まあ、裏なんて全くなさそうですけれど!
その日の帰り、イリスは図書館に寄った。授業に役立つ参考書もだけど、錬金術の事を知りたかったからだ
「んー、探すだけで首痛くなりそう」
ため息ついてると、後ろから失礼な声が聞こえた
「嘘、あの子生徒なの?」
「生徒でなければ、ここには入れないとは思うが」
4人グループの一人、一番背の高い男が歩み寄る。ダグラスよりも大きいその人の迫力に、イリスは一歩下がる
「そう怯えるな。何を探している?」
無愛想だけど、優しい人なのかもそれに…
「数字の参考書…あと、錬金術の本?」
「何故に疑問系?錬金術は、習うまでは一人でやらない方が、いいと思うぞ?」
言いつつ、後ろの棚から本を抜き取る。
「ありがとうございます。あの…髪」
「ああ、この国で黒髪は珍しいらしいな」
「先輩は、虐められたりしないですか?」
「?あぁ…お前はその目で虐められたのか?…気にする事はない。見かけをどうこう言う奴は、所詮その程度だ」
結局それ一冊だけ持って、イリスは出て行った。何やらニヤニヤしている仲間の元に戻ると、案の定弄ってきた
「何々、エンデってば見かけによらずロリコン?」
若葉色の髪の上で狐耳がピクピク動く。
エンデは大きくため息をついた。
「そんな訳あるか。子供は苦手だ」
「違うんだ?エンデにしては長く喋っていたから」
一番年下の少年が、眼鏡の奥の空色の瞳を興味深く見開く
「…違います。ただ…何か不思議な感じのする子供でしたね」
「そうかい?強い魔力は感じたけど」
「レン様がそう云われるなら、相当なものなんでしょうけど、俺達みたいなのにはここに居る半数以上がすげぇとしか感じられませんからね。んでエンデ、彼女の名前は?」
「知らん。カミルも無駄口閉じて勉強しろ。ミーア、どこに行く」
「えへっ、ちょおっと調査に…痛っ!」
エンデがミーアの狐耳を引っ張る
「…悪ノリがすぎるぞ」