3話「探索と探し物」
〜前回のあらすじ〜
魔女の隠れ家を探索した主人公。
今一番足りない物は衣食住の「食」だとわかり、外に探索に出ることに。
このゲームには、インベントリなどと言う便利な機能は存在しない。
いや、スキルだか魔法だかに有るのかもしれないけど、今の私にはどちらにしろ使うことはできない。
そんな私が思ったことは……
「……袋でも用意すれば良かった」
と言う後悔だった。
果物に関しては、結構早くに見つかった。
魔女の家からまっすぐ歩いた先、10分も歩かない距離に小さな湖があり、そこに生えてる木にはいくつか木の実がなっていた。
手の届く高さのものを何とか3つ手に入れ、盾とは逆の手で抱えて、早速持ち帰ることにした。
けどそこで問題になったのが、盾の重さだ。
やったら重い盾は、持ってる腕がすぐに疲れる。
何回も何回も、持つ手を左右入れ替えて家まで戻ってきたわけだけど、いちいち持ち替えるのが大変だった。
後になって考えてみれば、盾を皿みたいに使って持って帰ればよかった気が……。
まぁ、次からはもっと考えて行動しよう。
うん。
「まぁ良いや。そんなことより、動いてお腹減ったし早速皮剥いて食べよ」
取ってきたのは梨のような果実だった。
《植物知識》の結果でも、普通にそのまま食べることができる、と出てる。
では早速、と。
梨(仮)を調理用作業台に置き、包丁で皮を剥いていく。
リアルでも、料理はそれなりにできる。
特別美味しいって程でもないけど、一人暮らしが長いから、簡単なものなら結構レパートリーもある。
こうも何も無いと、料理できて良かったって思う。
まぁ、今は梨の皮剥いてるだけなんだけど。
そんな感じで、梨の皮を剥き、早速食べてみた。
「ん……んー? あんま美味しくない?」
食感や瑞々しさは、完全に梨。
ただ、味はかなり薄く、水っぽさがある。
「はぁ、不味くないだけマシかな。満腹度回復できたし良いや」
丸々一つ完食し、満腹度は2割回復した。
結果、今の満腹度は8割弱。
もう一つ食べれば、ほぼ全回復だけど、正直食べる気は起きないかな。
「さて……この後どうしようか」
やることが無い。
やらなきゃいけない事は沢山あるんだろうけど、何をどうして良いかわからない。
どうしたものかと周りを見渡しても、大量の本か使い道のわからない器具しか無い。
「……本でも読もっか」
本はそれなりに好き。
けど最近は、疲れて読む気力が保たない事が多かった。
たまには現実を忘れて、ゆっくり本でも読むのも良いかもしれない。
スローライフ、そのために始めたゲームなわけだし。
そう心の中で言い訳しつつ、本棚から手近な本を手に取る。
「……何これ、読めな」
表紙のタイトルを見ると、私の知ってる言語では表せないような文字が書かれていた。
無理に表そうとするなら、『#L-‘Wl*l#l/l^l7Wl7王』って感じ。
「言語的なスキルが必要なのかなぁ。それか自力解読?」
解読は無理。
教えてくれる先生がいるわけでも無いのに、これを勉強して覚えるのも無理だと思う。
そう考えると、やっぱスキルかな?
たぶんスキルが無くても読める簡単な本があって、それを読んでスキル習得して、熟練度上げて、読めるのを増やしていくんだと思う。
ちなみに、このゲームでのスキル取得は、特定条件クリアか、同じことの繰り返しによる習得、またはスキルを取得できるアイテムによって取得できる。
「ならそう言う本を探さないとなんだけど。……この中から探すのかぁ」
私の周りには、壁三面を埋め尽くす大量の本。
この中から、そんな簡単な本を見つけ出すのは至難の技だ。
最悪、無いかもしれない。
ここは魔女の家なわけだし、専門的な本しか無いってことも……。
「ここの運営はやりかねないからなぁ」
便利さより、リアリティを求めるのがここの運営らしい。
もしかしたら、この家には無いと言うこともあり得る。
「……まぁ、他にやりたい事ないし、探すかぁ」
読めなかった本を棚に戻し、覚悟を決める。
大げさかもしれないけど、正直、量が量だから。
タイトルだけ見るにしても、最低でも数時間……場合により今日中に見つからないかもしれない。
「よーし、探すぞー……」
───────────────────
約1時間半後。
ちょくちょく休憩を挟みつつ探したところ、ようやく見つけることができた。
縦10段、横幅5メートル弱の本棚が左右にふたつずつと、奥にひとつ。
この大量の本の中からどうやって探したかと言うと、まずは右の本棚から探すことにした。
わかりやすいよう、本棚の一番右上から順に。
まさかそれが逆効果だったとは……。
私にも読める文字で書かれた本は、右の本棚の一番下の段で見つかった。
それも、一番下は全て同じ様に、読める文字で書かれた本が並んでいた。
背表紙にタイトルが書かれてない本が多すぎて、見つけるまで気づかなかった……。
なら、他の面の本棚もそうかと、一番下の段を見てみたけど、左の本棚は読めなくはない感じだった。
まぁ穴抜けみたいに読めない文字が沢山あったから、何かしら条件が足りてなさそうだけど。
真ん中の本棚は論外だった。
タイトルを読むことも出来なければ、本を開くことさえできなかった。
まるで、そう言う置物であるかの様に。
まぁこれも、何かスキルか条件が足りないんだろう。
そうして、本を見つけられたわけだけど、他にちょっとした収穫もあった。
《条件達成により、Skill《直感Lv.1》を取得しました》
1時間以上、物を探し続け、諦めずに見つけることが条件らしい。
効果は、探してる対象が何処に有るか、何となくわかるって能力。
曖昧過ぎて、使えるんだか使えないんだか。
まぁきっと役に立ってくれるだろう。
「それにしても……一番下の段だったかぁ」
せっかく、屋根裏から踏み台になる物を取ってきてまで、上の段から順に探してったのに。
その分時間かかったし。
たぶん配置的に、必要スキルで棚が分けられてて、スキルレベルで段が分けられてる感じかな。
「はぁ……。今日はもうどうするかなぁ。疲れたし、本読むよりゴロゴロしたい」
いつもの。
今日はまだあと1時間くらいゲームできるけど、残った1時間を、本読むのに使うのもどうなんだろうと思う。
ゴロゴロしてるよりは有意義だろうけど。
「……そう言えば、庭で何か育てたいって思ってたけど、あの梨ってどうなんだろ」
流石に木を育てるのは難しいだろうけど、そこはゲーム的な何やかんやで、どうにかなる可能性も。
ゴミ箱代わりに使ってた、朽ちた草が入ってたチェストから梨の種を取り出す。
「んー……『水辺の、水分が豊富な場所でしか育たない』、と。植えても育たなそうかなぁ」
これを育てるなら、まずは池作りから始めないといけないかも知れない。
それは流石に面倒。
「魔女のいた森なわけだし、薬草でも生えてないかなぁ。ハーブとかも。食べれる野草とかならもっと良い」
森の探索は面倒だけど、家の周りには、背の低い草が大量に茂ってるのを思い出す。
「……草むしりついでに、薬草探しでもするかなぁ」
道具箱から軍手と籠を用意し、その日はもう草むしりに費やした。
何してるんだろ私。
けど、《直感》が働いたのか、薬草がそれなりに見つかった。
保存方法もわからないし、いくつかは採取し、いくつかはわかりやすい様にして抜かずにおいた。
採取した分は、何か回復薬とかに使えないか、明日いろいろ試してみよう。
抜かなかったものは、そのまま繁殖することも期待して。
《Skill《採取Lv.1》を習得しました》
新しいスキルも手に入った。
満足満足。
そうして、ゲーム一日目が終わった。
いやぁ、自由だ。
まさにスローライフって感じ。
けど、流石に足りない物が多すぎる。
こんな俗世から離れた生活じゃなく、せめて田舎暮らしまでスローライフの格を上げられるよう、頑張っていかないと。
──────────────────
Name「キャスリス・ヘクセ」
Role【魔女】Lv.1
Class「見習い」
Skill
《魔術才能Lv.1》
《植物知識Lv.1》
《直感Lv.1》New
《採取Lv.1》New
Title
〈見習い魔女〉
使命
『神薬、またはそれに匹敵するレアリティの薬品を自作すること』
こんにちは。
読んでいただきありがとうございます。
これでゲーム内1日目は終了です。
どうでしたでしょうか?
ここから、足りない物を補っていくため、開拓や探索していくことになりますかね(未定)
質問、誤字脱字、日本語が不自由なところ等あれば是非、感想欄で言ってください。
高評価など貰えれば、作者は狂喜乱舞します。
ちなみに、評価は作品の最新話の下の方から行えるみたいですね。作者は最近知りました()
次回更新は土曜日の朝起きたらの予定です。
ではでは。