2話「魔女の隠れ家」
こんにちは。
前話を読んで、続きを読もうって思って開いてくれた方、本当にありがとうございます。
たった1000文字という短さでもブクマしてくれた方々、本当に感謝しています。
〜前回のあらすじ〜
主人公は、リアルの疲れからの現実逃避にゲームを始める。
【魔女】になった彼女は、とりあえずボロ小屋の探索から始めることに。
後ろを振り返り、ボロ小屋を確認する。
木で建てられたその小屋は、別に穴が空いていたり、崩れかけているわけでもない。
それでも、とても長い年月を感じさせる。
柱の表面が黝ずんでいたり、至る所に蔦が這っていたり。
家の周りも、背の低い草が茂っていて、最近人が住んでいたような痕跡は全くない。
魔女……この体の元の持ち主は、今日初めてここに来たのかな。
まぁ今日サービス開始なのだし、システム的にそうなってるだけなのかも知れないけど。
とりあえず、外だけ見てても意味無いし、中に入ろう。
“ ガチャ……ギギィ…… ”
古びた木の扉は、見た目とは裏腹に重い感触と音を立てて、ゆっくりと開いた。
中に入ると、予想以上にすごい光景だった。
左右と奥、三方の壁を覆い尽くす本棚。
入り口の左右には作業台があり、調薬や料理の器具と思われるものが並べられている。
天井からは、部屋の中心に向け、よくわからない球体がぶら下がり、柔らかい光を放っている。
そして、その下。
部屋の中心には、大きな魔法陣が描かれ、その上には魔女らしいと言えばらしい、大きな鍋が置かれていた。
「……すごい」
外から見たイメージとは全く違う、充実した設備。
予想を良い意味で裏切られた気分。
「あれ……?」
そう言えば、外はすごい古びた見た目だったけど、この設備はしっかり手入れがされてるように感じる。
物によっては、新品と言っても通じそうなくらいに。
「んー……まぁ、いっか」
ファンタジーな世界だし、気にしてもしょうがないか。
それよりも、今は中を探索しよう。
◆◇探索中◇◆
……しばらく中を探索した感じ、他に見つかったのは作業台の下にあったチェスト。
中には、朽ちた薬草やら何やらが入っている。
それと、屋根裏部屋への梯子だった。
梯子を登り、屋根裏部屋へ。
屋根裏部屋には、カーテン付きの窓に、ベッド。
服をかけられるクローゼット。
机とドレッサー。
あとは、いろんな工具や器具が入った、道具箱がいくつか。
押入れにも、ごちゃごちゃと道具類が入っていた。
「ん〜、料理はできるみたいだけど、火を起こす何かがあるわけでもなし。冷蔵庫も。前にここに住んでただろう魔女はどうやって暮らしてたんだろ?」
調理道具の置かれた作業台には、水道さえ無かった。
その下のチェストにも、特に食べられそうな物は無かった。
クローゼットにも、チェストにも、机の引き出しにも、何も無い。
前の魔女は、道具以外の私物を、全部持って出てったのかも知れない。
何て不親切な。
まぁ食べ物とかあっても、時間経ってて食べれなさそうだから、そっちは良いけど。
とりあえず、クローゼットには何も無かったけど、服は今着てるのがある。
ベッドもあるし、最低限どころでは無いレベルの、しっかりした家がある。
衣食住の「衣」と「住」は何とかなってる。
つまり今すべきことは……。
「食料調達……」
それしかない。
むしろ、それをしないと飢え死ぬ。
このゲーム、死んだ場合のデスペナルティは2時間のステータス半減と、所持アイテムのランダムドロップ。
デスペナ中のデスペナはさらに重複する。
食料問題が解決しない中、そんなことになればプレイングがかなり制限される。
どうしたものか。
「武器は……包丁? んん……。杖? 魔法だか何だかの使い方もわからないし論外。……あ、剣と盾見っけ」
道具箱と一緒に、武器の入った箱を見つけた。
魔女が剣と盾持って、獲物を狩りに行くってどうなんだろ……。
「あ、そもそも火が使えないんじゃ肉手に入っても意味無いじゃん」
はぁ、しょうがない。
なら探すべきは獣じゃなく、食べられる植物。
「果物でもあれば良いなぁ」
狙うは、調理せずとも食べれそうな果物。
そのうち、庭に畑でも耕して、楽に野菜とか取れるようにしたい。
今から耕したところで、すぐには収穫できないし、今はしょうがない。
と言うわけで、森を探索するかぁ。
幸い、スキル《植物知識》がある。
食べられるか食べられないかくらいはわかるはず。
「武器は……一応持ってこ。襲われたらどうしようもないし」
スキルが今のところ、戦闘に使えそうにないし、この辺りの情報も無い。
そんな中、無防備に出歩くのは絶対に危険だ。
防具は無かったから、しょうがなく剣と盾を持って軽く動かしてみる。
「重……けど、無いよりはマシ、かな?」
武器の鑑定系スキルを持ってないから、これがどれ程の物か知らないけど、持ってるのと持ってないのじゃ安心感が違う。
まぁ使わないに越したことはないけど。
「ん、あんまり動くと満腹度下がるし、早く取りに行かないと」
剣帯を腰に付け、盾を手に持ったまま、私は魔女の家を後にした。
お読みいただき、ありがとうございます!
誤字脱字、日本語がおかしいところなどあれば是非、感想欄で教えてください。
至らないこと多々あるかと思いますが、頑張っていくつもりですので、どうぞよろしくお願いいたします。