王都ラヴィニエスタ 3-8
8
塔の外で戦っている栄光の鎧に加勢するために、入り口へと走る。
最初に入ってきたドアは破壊され、僅かにドアの形を残していた。最初のソルジャーが進入した時に破壊されたのだろう。
イリアナが塔から出ると空中で、栄光の鎧とオフィサーが文字通り火花を散らし戦っていた。
お互い金属で出来ているため、盾や防具で防いでも、直撃しても火花が飛ぶのだ。
栄光の鎧は紋章エルフィーナの固有魔法であり、召喚魔法のひとつだ。ただ召喚魔法は術者の力量に大きく左右される。当然弱くもなるし強くもなる。
イリアナの使っている栄光の鎧は、最低限の力を保持する代わりに時間制限が設けられている。その時間、約10分。呼び出してから大体それくらいである。
「自爆させずに良く持ちこたえたわね」
エルフィーナがぽつりと呟くと、栄光の鎧の動きがおぼつかなくなってきた。動きが一瞬止まったり、何かに引っかかるような動きを見せた。動きに精彩を欠いている。
「イリアナちゃん、交代よ。油断せずにしっかりね」
イリアナはエルフィーナに「はい」と返事をして、身構えた。
それと入れ替わりかのように、栄光の鎧はオフィサーの一撃を食らい、バラバラに分解しながら消え去った。弾け飛んだ魔法の残滓がイリアナの心を揺さぶった。
「今まで足止めしてくれて、ありがとう」
物言わぬ金属のゴーレムに、感謝の言葉がこぼれた。
魔人たちのかすかな笑い声がした。だが、それはイリアナのやさしさに、うれしくて出たものだった。イリアナ自身も魔人たちの笑いに不快感を感じなかった。
オフィサーはこちらに気づくと、ゆっくりとこちらを向けた。兜のバイザーの隙間から、赤い光が漏れ出している。佇まいといい、上から睨め付ける容赦のない威圧感は、イリアナを萎縮させるのに十分であろう。
いつものイリアナならば。
だが、今日にイリアナは何か違う。迷いがなく、何か吹っ切れている。
イリアナは、魔人たちの指示を待たずにエネルギーボルトを発射した。
不意打ちに近いタイミング。
オフィサーは反応が遅れたが回避行動に移った。
イリアナの放ったエネルギーボルトは、弾けて蜘蛛の巣のように拡散しオフィサーを覆うように広がった。
オフィサーは急遽、後方へ飛んだ。
拡散したエネルギーボルトの射程外へ出た瞬間、足元から掬い上げるように、エネルギーボルトが直撃。炸裂音と共にオフィサーが弾き飛ばされた。
弾き飛ばされながらも、反撃の光線を出すが完全にイリアナを見失っており、あらぬ方向へと発射された。
体勢を立て直したときにはイリアナは物陰に隠れており、オフィサーの死角を取っていた。
「あなた、今日はホントにどうしたの?」
エルフィーナは驚きを隠せない。
「よし、バンバンいけ」
「はい!」
ハヤテマルの指示に、イリアナは力強く答える。
「ちょ、ハヤテさん。あまり調子に乗せないほうが……」
「大丈夫大丈夫。今のイリアナならね」
エルフィーナは不安そうに唸った。ハヤテマルはイリアナをけしかける。
イリアナには二人の顔は見えないが、その言葉には十分感情が乗っているため、二人の顔が手に取るように分かった。
先生は慎重に行って欲しい。師匠は大胆に行け。
これを組み合わせよう……
心に決める。
それと同時に腰を落とす。
塔の陰から顔を出し、オフィサーの位置を測り、相手の力量を計り、主導権をどう握るか図る。
オフィサーがベストポジションへと入ってきた。
イリアナは瞬時にエネルギーボルトの魔力を練り上げ、飛び出し光弾を放った。
放つと同時にイリアナは塔の陰へ身を隠した。
イリアナの放った光弾は弧を描きながらオフィサーの死角からを襲った。オフィサーはそれを寸でのところで体を逸らし躱
した。
塔の陰から再び光弾がオフィサーに襲い掛かった。
だが、オフィサーはこれを躱すと、光弾が発射された位置へと目から破壊光線を放った。
塔の外壁はオフィサーの光線によって吹き飛ばされた。爆炎と黒煙が爆音が辺りに立ち込める。
その黒煙の中から光弾が飛び出す。
単調なテンポで打ち出された光弾は、オフィサーの破壊光線に潰されたうえに、光弾発射地点と周囲の黒煙を吹き飛ばした。
そこにはイリアナの姿はなく、ただ光の玉が3つ、空中にふわふわと漂っていた。そしてその玉は光弾をと化し、オフィサーに襲い掛かった。
二つは弧を描き、一つは直進。
オフィサーは迎え撃つ体勢をとる。
当のイリアナは、破壊された橋の橋ゲタの陰に、ワイヤー状のエネルギーボルトで張り付いていた。そこはオフィサーの直下やや後ろ。絶好の奇襲ポイント。
先ほどの三つの光弾に対してオフィサーが迎え撃つ姿勢をとった瞬間、網状のエネルギーボルトを放った。
オフィサーは前面のエネルギーボルトに気をとられ、背後からのイリアナの網状エネルギーボルトに気づいていなかった。
オフィサーが気づいたときには遅かった。
網状エネルギーボルトがオフィサーの足と首を絡め取り、海老反りに締め上げていく。そして3発の光弾がオフィサーを捕らえた。
爆発し黒煙が広がり、オフィサーが破片を撒き散らしながら落下する。
イリアナは背負った宝剣に手をかけ、橋げたの上に躍り出た。
オフィサーは絡めとられ、身動きが取れない。
「いける!」
イリアナは剣を鞘から抜き、踊りかかった。
落下するオフィサーを地面にたたきつけられる前に切り捨てる。落下するスピードを利用し、逆袈裟に斬れば破壊力が増す。
走り寄りながら剣を構える。
オフィサーは数メートル手前で、顔だけイリアナに向けた。そしてバイザーの中が不気味な光で満たされる。
「だめっ!」
エルフィーナの声が頭に響いた。だが、イリアナは尚も突進した。
「いきます!」
オフィサーのバイザーから光が射出の一瞬前に、イリアナは網状のエネルギーボルトを極限まで締め上げた。
首を捻じ曲げられ、破壊光線はイリアナのはるか上空に向かって発射された。
もうオフィサーにイリアナを倒す術は無い。
網状エネルギーボルトを引っ張り、落下する位置を調整し、斬る体勢に入った。
その瞬間、空を切り裂く音が聞こえた。
イリアナの体は後ろへと弾き飛ばされた。それと同時に、目の前から噴煙が巻き起こった。
彼女が後ろに飛ばされたのは、振ってきた何かに吹き飛ばされたのではなく、魔人たちがイリアナを退避させたからだ。
イリアナは何とか受身をとって体勢を整えた。
剣を盾にしようと左手に力をれたが、手にあるはずの感触が無い。
宝剣が無かった。
弾き飛ばされたときに手放してしまったのだ。
辺りを見回したが見当たらない。
「宝剣が……」
「今は前に集中しろ!」
ハヤテマルの言葉に、あわてて前を見た。
粉塵が晴れはじめ、オフィサーとイリアナの間に落ちてきたものがあらわになる。
それは盾であった。
ディフェンダーが扱う大きな盾。そして神聖鉄甲兵団の紋章が刻まれている。
イリアナの後ろから重厚感のある音が近づいてくる。
ラキアであった。
立派で頑丈そうなフルプレートアーマーと呼ばれる全身が鉄の塊のような鎧を着用している。それに巨大な盾。神聖鉄甲兵団の装備一式である。
「なにしやがる!」
ハヤテマルは思わず怒鳴った。イリアナは思わず自分が怒られたのかと思い、身をすくめた。だが違うようだった。
「助けてあげたのに、その言い草は無いんじゃないですかね」
ラキアはすれ違いざまに、勝ち誇ったように言った。
「馬鹿野郎! せっかくのチャンスをぶっ壊しといて何言ってやがる」
「負け惜しみを」
ラキアは鼻で笑った後、あきれた様子で橋にめり込んだ大盾を引き抜いた。
「器動衆は絶命時、大爆発を起こす。ご存じないわけではありますまい」
「こいつ、マジでぶっ飛ばしてぇ!」
ハヤテマルの怒りがそのまま言葉に表れる。
魔人たちが知らないはずも無い。今でこそ器動衆を討伐する者にとって当たり前の知識だが、そもそもこの情報は魔人たちが世間に向けて公開した知識だった。
しかしその情報はうまく世間に浸透しなかった。一般人がその知識を得た所で生かす力が無いこと、そして金を生み出す情報として、一部の人間が知識を独占を図ったためだった。
魔人たちが広めようとした情報である。
それを、さも魔人たちを無知無能のようにこき下ろしたのだ。
先日の仕返しのばかりに、だ。
目の前の未熟で無礼なバカ者をこの戦場から速やかに排除しなければ、かき回され状況が悪くなるかもしれない。
そんなハヤテマルの真意とは裏腹に、ラキアはたいそう満足げな顔で見下すよう笑みを浮かべていた。
そしておもむろに拳を天に掲げた。
その突き上げられた拳に呼応して、無数の場所から歓声が上がった。
遠巻きにではあるが、塔とその周辺を取り囲むように配備されたラヴィニエスタ兵。無論、ラキアが引き連れてきた兵士たちである。
兵士たちの歓声は大きなうねりとなり、異様な熱気を放っている。
「イリアナ……君といったか。君はそこで見ているがいい」
イリアナは先ほどから何が起こっているのか理解できていなかった。
必殺の間合いで飛び込んだと思った。しかし後ろ向きに引っ張られた。直後、目の前で爆発。師匠の怒声。ラキアの出現。
黙っていろいろ考えていた。
「くそが」
ハヤテマルは苛立ちを隠そうともせず悪態を付いた。
イリアナはエルフィーナの反応が無いのに気づいた。いつもなら真っ先に怒りをあらわにしそうなのに。
「先生?」
「なぁに?」
返事があった。声の調子もいつもと変わらず、冷静なようだ。
「これからどうすれば」
「どうって……目の前にいるバカをぶっとばしたい気分でいっぱいだけど、ここは波風を立てないよう黙ってやらせて、あわよくば死んでくれるといいわね」
淡々とした調子で喋っていたものの、中身はかなりハードな内容である。
「ハヤテさんが先に怒っちゃったから、私が怒るタイミングなくなっちゃった」
イリアナはこのことについて深く追求しないようにしようと心に決めた。八つ当たりが待っているかもしれない。そんな漠然な不安が体をよぎった。
オフィサーはイリアナの網状エネルギーボルトを力で無理やり解き放った。バイザー越しに光が漏れる。
ラキアは異様な佇まいのオフィサーに動じることも無く、不敵に歩き出した。
オフィサーはゆっくりと身構える。しかしラキアは構えることも無く悠然と歩き、近寄る。
不敵、とはこういうものを言うのだろう。イリアナの中で期待が否応無く高まる。
「ばかが」
ハヤテマルが吐き捨てるように言った。
イリアナはハヤテマルの真意が分からなかった。
ラキアの強さは先日、身をもって知った。自分は先ほどまでオフィサーより優勢だった。ラキアがオフィサーに後れをとるとは思えない。
「いざ!」
ラキアは剣を抜き、一気に間合いを詰めた。
オフィサーは身構える。
ラキアは気合と共に剣を振り下ろした。オフィサーはそれを後ろに飛んで躱し、距離をとると同時にバイザーの隙間から破壊光線を放った。
ラキアはそれを盾で軌道を変えながら、空いた距離を詰める。そして剣の間合い入ると同時に、剣撃を無数に打ち込んだ。オフィサーの体から無数の火花と破片が飛び散る。
ダメージに直結していない。
派手に火花が出ているが、金属の表面を斬りつけているに過ぎないからだ。
だが、イリアナはラキアの戦う姿に見惚れていた。
圧倒している。
「なにうっとり見てんだ、あほ」
ハヤテマルの悪態に我に返った。
「すいません。ラキア王子が強いなって」
「え? うそだろ?」
「は、はぁ……」
イリアナはハヤテマルの言葉に少し傷ついた。魔人達からすれば、ラキアの力はたいしたことは無いかもしれない。だが、自分と比べれば力の差は歴然としたものだ。自分の力量ではこれほど華麗に戦うことも出来ない。ましてラキアは、紋章無しでオフィサーを圧倒しているのだ。弱いわけが無い。
「あの子は役者になったほうが良かったんじゃないかしら」
エルフィーナまでが突き放した物言いである。
魔人たちが悪態を付いている中でも、ラキアはオフィサーと互角に戦い続けている。力強く、そしてきれいな戦い方。あんな戦い方を自分もしてみたいとさえ思った。
「イリアナ。お前はさっきまでアレ以上に格好良く戦っていたんだぞ」
「え……?」
「今のオフィサーは、栄光の鎧とお前の攻撃で、すでに手負いの状態。あいつは、お前がトドメに入ったタイミングを見計らって邪魔をして、横取りしたんだよ」
「横取り……ですか」
「ああ」
魔人たちが自分のことを評価してくれたことは分かった。それについては、ほっとした。だがどうも腑に落ちないことがあった。
「師匠」
「ん?」
「今は器動衆の撃破か撃退が目的ですよね。なら横取りというわけではなく、加勢に来てくれたのでは……?」
このイリアナの反応に、魔人たちから大きなため息が漏れた。
「あーもう、こいつはもう」
ハヤテマルは憤懣やるかた無しといった様子で、喚きだす。
「イリアナちゃん」
騒ぐハヤテマルをよそにエルフィーナがイリアナに話しかけた。
「人を気遣えて控えめなのは結構だけど、それは時として覇気に欠けると捉えられるから気をつけなさい」
「すいません……」
エルフィーナはやんわりと諭しているようだが、言葉を選ばないあたりハヤテマル同様、怒っているのだろう。
魔人たちの言うとおりである。
相手が身分が上だからという理由で、戦いを譲ってしまった。
自分でも自覚はしている。
邪魔が無ければ自分が勝っていた、と。
消極的な態度が駄目なのだ。積極的なだけでも駄目。二つのバランスが大事なのだ。
イリアナはうんうんと頷いていた。
「どうした?」
「いえ……」
イリアナは戦闘中に自分が考え事していたことに気づいた。怒られると思った。
「一応戦いの最中なんだからぼーっとするな」
「すいません……」
やはり怒られた。正しくは注意された、だ。
イリアナは頬を軽く叩いて、目の前の戦いに集中することにした。
「イリアナ、ラキアの動きを良く見てみろ」
ハヤテマルの言葉に、ラキアを目で追う。
やはり立ち回りが綺麗だ。無駄のない動きで巧みに自分の間合いで戦っている。
「あいつはな、攻めあぐねてるんだよ」
「攻めあぐねてる?」
「あいつの腰を見ろ。さっきでかい口利いてた割には、すぐに逃げられるような立ち回りだ。腰の入ってない攻撃なんかいくらやっても無駄なのによ」
ハヤテマルは呆れた様に言った。
「でも、なんで攻めあぐねてるんですか?」
「怖いからだよ。爆発が」
爆発。追い詰められたら、己の痕跡を残さぬよう自爆をする。
ラキアはその自爆を恐れて、腰の入らない弱い攻撃を、速さで補って派手に見せているのだ。
「イリアナ。いつでも戦えるように心の準備をしておけ」
「え?」
「あの野郎、俺たちに押し付けてくるぞ」
「え? あ、ああ、えっと……」
イリアナは急いで構えを取る。先ほどまでの素晴らしい動きはどこ吹く風か、ガチガチに緊張して硬くなってしまった。
「イリアナちゃん。落ち着きなさい。周りの野次馬やあのバカはともかく、あなたのことは紋章が守ってくれるから」
エルフィーナがイリアナにフォローを入れた。
「で、でも、宝剣も無いし、爆発したらいっぱい人が……」
「私たちはあらかじめ人払いをさせていたのに、命令を無視したのはあいつら。気にしないで、……って言っても無理よね」
「はい……」
イリアナは完全に萎縮してしまっている。巻き込む可能性が彼女の良心を痛めつけるのだ。今にも泣きそうである。
「イリアナちゃん、止めはハイパーエネルギーボルトで行きましょう」
「え? でもあれはかなり危ないんですよね?」
ハイパーエネルギーボルトは、イリアナが魔人に初めて紋章をもらった日に使った魔法だ。に自爆の余裕を与えることなく一瞬で消し飛ばすほどの威力を持つ。だが、照射上にあるものすべてをなぎ払い、周囲への被害も相当なものだった。
「危ないわよ。だから地上に向けて撃っちゃだめよ」
「じゃあどうすれば……」
「上に向かって撃てばいいじゃない」
イリアナは上を見た。夜空が広がっている。上とは空のことなのだ。
「空ならいくらでも撃ち放題だから、押し付けられたら思いっきり蹴り上げてやりなさい」
「蹴り上げる……ですか」
「殴り飛ばしてもいいわよ。とにかくやることはオフィサーをできるだけ上空に打ち上げること。わかった?」
「はい」
イリアナはやることが決まったので少し落ち着いたが、どうやって空中へかち上げるかまるで決まっていなかった。
ハヤテマルは不安だった。
ラキアも、もうそろそろ潮時だと思っているだろう。目だけであるがちらちらとこちらを気にしている。大方、不覚を取ったと見せかけイリアナに押し付けるつもりなのだ。
上手いこと距離を取り、相手が間合いを詰めるよう誘導する。
そして相手が間合いを詰めた瞬間、自分も間合いを詰め、体を相手の懐にもぐりこませ、盾で弾き飛ばすように後ろへ投げ飛ばした。
「ほら、止めをあげるよ」
案の定、ラキアはオフィサーをイリアナに押し付けた。
オフィサーはイリアナめがけて弧を描くように迫る。
イリアナは飛んできたオフィサーの腕を取ると、遠心力を利用して軌道を修正しつつ地面に向かって叩きつけるように投げ飛ばし。その反動で、体がイリアナの目の前まで跳ね上がった。そして、後ろ回し蹴りでオフィサーを空に向かって蹴り上げた。
「うまい!」
エルフィーナが興奮気味に喜んだ。
イリアナはすぐさま網状エネルギーボルトを放ち、オフィサーの動きを封じた。そしてハイパーエネルギーボルトの体勢に入った。
「まてっ!」
ハヤテマルの声が、イリアナの脳内に響いた。それと同時に、光がオフィサーの体を貫いた。
体はゆっくりと崩壊し、そのまま破片を撒き散らしながらに砂煙となって夜空を舞った。
オフィサーの消滅と共に、兵士たちから歓声が上がる。
「コアを貫いたか」
ハヤテマルは一つ息を吐いた。
歓声が響き渡る夜空に、輝く星のように浮かぶ人影。
栄光の鎧だった。
「あれは……」
イリアナは月明かりに照らされ輝く鎧に目を奪われた。
「あれはユアちゃんね」
「ユア……お嬢様……」
栄光の鎧を着たユアは、ちらとこちらを一瞥すると、王城へと飛んでいった。
魔人たちはイヤーカフスから元のぬいぐるみへと戻った。
「まぁいろいろ邪魔は入ったが、良くがんばった。えらいぞ」
ハヤテマルがイリアナの頭をなでた。
「ありがとうございます」
「最後の投げて叩きつけてからのかち上げ、よかったわよ」
「ありがとうございます」
エルフィーナも満足そうである。イリアナは二人にほめられて安心した。
「さて、あの見栄っ張りに利用される前にとっととずらかろうぜ」
ハヤテマルはイリアナの頭に乗ると、軽く頭を叩いて催促した。エルフィーナも肩に乗ると、力強くうんうんとうなずいた。
カチンと腰に何かが当たった。宝剣だった。
「これでここにいる理由は無いわね」
エルフィーナが魔法で拾ってくれたのだ。
「はい」
イリアナは王城へと向けてそそくさと走り去った。
まるで三人で連携攻撃みたいで、心が躍った。そんなことをイリアナは考えていた。
他人と初めて組んだ連携攻撃。
ラキアが抑えて反撃のきっかけを作り、自分が舞台を整え、ユアが止めを刺す。
自分が必殺の連携に関わるのは初めてだった。
胸の鼓動は収まらない。
胸元で握った拳は少し震えていた。




