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旅立ち 2-7

          7 


エルフィーナ達が教会に来るまで約三十分。その間ハヤテマルたちは酒場でサンドウィッチを買い、教会の前で二人して階段に腰かけて食べて待っていた。

 ハヤテマルはサンドウィッチを頬張りながら、シスターから借りた地図を見ている。

 イリアナは、先ほどハヤテマルの言った病気について尋ねた。


「病気ってのは、おそらく狂犬病だな」

「狂犬病?」聞きなれない病名にイリアナは首をかしげた。

「その名の通り、主に犬がかかる病気だ。この世界だと、ワーウルフのようなライカンスロープ(獣人)との関係があるように誤解をされがちだが無関係だ。獣人は、病気で変化したのではなく、神獣と契約して力を得た眷属だったり、呪で変化した者たちだからな」


 イリアナは食べながらメモを取っている。無作法は承知の上で注意されてもやめる気はない。今の情報を書き起こす方が大事だと思うから。ハヤテマルもそれを突っ込もうとしない。


「で、今回の病気だとわかったかという話だが、狂犬病は症状が割と特徴的で、発症するとさっき言った水を怖がったり風きり音を怖がるといった症状が出るらしい。犬だけでなく蝙蝠などいくつかの動物が、病原菌を保持している。ヴァンパイアの呪いと違って潜伏期間があり、発病まで時間がかかることってところで、そんな感じがした」


イリアナはハヤテマルをじっと見つめた。

「な、なんだよ」ハヤテマルは、まっずぐな瞳に見つめられて、少したじろいだ。


「師匠ってすごいんですね」

「なんで?」


 ハヤテマルはまったく気にせずサンドウィッチをほおばった。


「だって、こんな病気のことまで知ってるなんて」

「ああ、それは昔、本で読んだのを覚えてただけ。にわか仕込みの知識だよ。おれのはほとんど雑学の領域。大事なの専門家にしっかり見てもらうことだぞ。こればっかりは家庭の医学で何とかなる問題じゃないしな」

「はい」イリアナは素直に感心した。


 普段いい加減なことばかり言ってるのに、ちゃんとするところはしてるんだ、と。


「んで、エルが来て狂犬病だということになったら、おそらく今回街を騒がせている魔物の討伐に出発するから、しっかり食べておくように」


 そしていくつかの、イリアナにしかできない大事な役割を担ってもらうといわれた。イリアナは、すこし気持ちが引き締まり、やる気とともに食欲も湧く。ほおばるサンドウィッチも心なしか美味い。エルフィーナ達が来るまでの間、十分に食事をとることができた。


 エルフィーナ達が到着するころにはイリアナたちは食事を済ませていた。

 到着したのは迎えに行ったレオン、エルフィーナ、そしてシアンとウィローとカーチャ。マジェンタの姿はなかった。

 すぐハヤテマルが説明をした。エルフィーナは宿に来たレオンに話を聞き、大体の察しはついていたらしい。


「今、マジェンタに薬を作ってもらってます。病気が狂犬病なら、そのまますぐに新しく作ってもらおうかと思ってます」

「そっか。じゃあまずは患者を診てみてくれないか」

「はい」


 エルフィーナはシスターに案内されて病室へと足を踏み入れた。 教会のいくつかの部屋を病室としている。

 質素であり、落ち着いた雰囲気の部屋である。患者への配慮したのか、元からこうなのかはエルフィーナたちにはわからない。病室となった部屋には、患者が寝かされている。症状はばらばらだが、一様に苦しそうにしている。

 エルフィーナは魔法を起動し、一人の患者の様子を確認し始めた。イリアナは、シーズ城の時のようにいっぱい情報が表示されるのかと思っていたが、エルフィーナの体に薄く光が灯っただけで板状の情報は表示されなかった。


「ん。間違いないですね。狂犬病です」エルフィーナは一同に目を向けた。

「じゃあ、ここは任せちゃっても良い?」 

「おっけーです」

「じゃあこっちは討伐してくるよ。どう組み分けしようか」


 ハヤテマルはイリアナたちを見た。


「マジェンタとカーチャは、魔法による複合治療をしてもらおうと思っていますので、この二人は残していってくださいね」


 エルフィーナは自分の要望を言った。ハヤテマルも頷く。エルフィーナがそういうことがすでに想定内であった。そのままシアンとウィローを見た。

 シアンとウィローの疲労感は若干ある。


「お前たちはここで待っていろ」


 シアンが驚いた顔をする。


「足手まといってことですか?」シアンは不満そうに言った。

「いや、疲れが溜まってるんじゃないか? プロとしてやっていくなら体調管理はしっかりしないとダメだぞ」

「大丈夫ッス。むしろ緊張感が出て、やる気が出てきたッス」


 シアンは拳を掌に打ち付けてやる気をアピールした。確かに気力は充実しているし、疲労感は軽微と言ったところだ。

 ハヤテマルはウィローに目を送った。

 ウィローは不安そうにしている。彼もエルフィーナの下で、力をつけているようだった。レオンもいるしすこし自信を付けさせたいと考えた。


「ウィローはここで待つか?」

「ヴァンパイアかもしれないんですよね? 僕の魔法じゃとても……」


 ウィローは初級魔法しか使えないことで、足手まといなるかもしれない。ハヤテマルは、そこが引っかかっているのを察した。


「じゃあ、疲れが溜まってるんじゃないんだな?」

「……はい」

「なら、心配すんな。ヴァンパイアじゃないよ。それにお前はここしばらくずっと魔力を高める練習をしてきたじゃないか。エレだってお前が真面目にがんばってたのを見てるし、成果も出ているって言ってた。自信を持て。それに、おそらく今回の敵は、今のお前たちには丁度いい相手だ。気合入れて、ここしばらくの上達振りを肌で感じてみようぜ」


 ウィローはハヤテマルを見た。ハヤテマルが羽で拳の親指を立て、勇気付けるように笑顔を返した。それを見て、ウィローは安心した。


「わかりました」ウィローはそう答えると、気合を入れなおす。


 ハヤテマルは「うん」と、頷いた。そしてカールマンへと向き直った。


「んじゃ、カールマン隊長。報酬のこと頼むよ」

「やつらの潜んでいる場所はわかるのか?」

「多分ね」


 ハヤテマルはイリアナの頭の上に乗った。イリアナも少し緊張した面持ちになる。

 そこへ息を切らせながら、マジェンタが入ってきた。そしてエルフィーナの元へ駆け寄った。


「先生。これでいいかな?」


 エルフィーナはビンを受け取り、魔法でマジェンタの作った薬の出来具合を見た。

 一滴、魔法で取り出した。ふわふわと浮かぶクスリの雫を中心に無数の魔法の光の束が回る。それをじっと見て、調べているエルフィーナ。

 そして顔を上げた。


「うん、バッチリ。続けて作ってもらえる?」


 エルフィーナは満足そうに喜んだ。

 マジェンタはほっと一息つき、頷く。そしてシスターに適当な場所を用意してもらうことにした。

 ハヤテマルは病気の方は彼女たちに任せて問題ないなと思った。


「じゃあ、討伐組はでるぞ」

「おう」と、シアンとウィロー、イリアナとレオンが答えた。


 こうしてハヤテマルと四人のメンバーは街を襲った魔物討伐に乗り出した。

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