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楽して勝って笑いましょう  作者: 未出舞
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楽して勝つために

時間軸的に前話でゆうきが穴に入ってくる場面から話が始まります。


 〜ゆうき視点〜

 ゆうきは思いっきり穴の中へと飛び込んだ、4〜5メートルはありそうな穴を一気に飛び込むのは流石に怖かったが四の五の言ってられない。

 しかし、穴の中には飛び込む以上に恐ろしいものが見えた、というのも飛び込んで最初に見たアリシアの雰囲気と顔から殺気がダダ漏れになっていた。


(お、鬼か?!)


 自身の顔が恐怖で歪むのがわかる程に恐怖していた、しかしここまで来たらやるしかないのだ、勇気を振り絞って作戦を伝える。


「アリシア!僕が上に運ぶ、6人いるけど1人は僕がやる……倒せる?」


「……運んでちょうだい」


 一瞬アリシアがニヤリと笑った気がした。


(カマキリと同じ顔してるよぉぉお)


 泣きそうな心を押さえ付けて、アリシアを脱出させるための準備を始める。

 まず、アリシアを抱き抱えて自分を上に移動させる。次にアリシアの防具を浮かせる。また2メートル上昇したら最後にアリシアの身体を少し角度を付けて、穴に落ちないないように上昇させる。


(よし、あの時のアリシアで実験した甲斐があったな、めちゃくちゃ怒られたけど……)


 落ちながら、そして落ちてからもアリシアの操作を続け、終わった後は自分の番だ。

 1人でも削ってアリシアを楽させてあげないと、そんな気持ちで穴を移動させる。

 出来るかどうかは不安だったが穴はスーッと進んでいった、ゆうきは穴の壁に押し付けられながら穴の中に落ちてきた人物に目を向けるとげんなりとした。


(『野犬』様かよぉ……ダルすぎる)


「はははは!どうやったか分からねぇが俺様を穴に落とすとはいい度胸してるなぁクソガキ」


「君を落とすのに度胸がいるのか、驚きだな『駄犬』様」


「糞ガキ!決めたぞ奴隷にすると言ったな、あれは嘘だ。てめぇだけは散々嬲って汚した後に苦しませて殺す」


「うわぁぁぁぁああ」

(『野犬』様コマ〇ドー見たことあんのかな?)


 棒読みで叫び声を上げてさらに挑発する。

 だが、ここで気づく、こっちの装備はジャックナイフ1本だけ、胸にパイプが刺さる未来しか考えられない、後でアリシアに銃があるか聞いてみるとしよう。

 では、と気を取り直して迫ってくる『野犬』様に対応する。

 見ると『野犬』は素手でかかってきた、本当にいやらしい事をされてしまうらしい。


「おや、ありがたいね、素手でお互いやり合うって事か」

(うわぁ、ガチロリコンだよこいつ、とにかく戦力分析って大事だよね)


「黙ってろ、何も持ってねぇ、左手もねぇような、てめぇなんざ武器を使わずとも素手で充分なんだよ!それにあの魔法は動き回ってりゃあ当たらねぇってんだよ!それに知ってるぞ!その魔法同じ奴に連続で使えねぇだろ?」


「…………」


 勿論答える義理などないので黙って相手の出方を伺う

 一方『野犬』は穴一杯をジグザグに動き回りながら距離を詰めてくる。

 確かに有効な手だろう、仮に魔法でなかったとしても当たらなければどうということはない。

 しかし一回使っただけであそこまで分析されてるとは……口はあれだが確かな戦闘センスの持ち主だった。

 だが、今回は相手が悪かった、なにせ範囲に影響のあるスキルだスピードは関係ない。


(さてと、武器は持っているが使わないだけか、なら一撃必殺だな)


 ギリギリまで引きつけて容赦なくスキルを発動させる、下向きに速度最大で移動させる、と同時に『野犬』の元へと走り出す、『野犬』の身体が地面へと物凄いスピートで吸い寄せられていく、その体の上へと馬乗りになり無理やり仰向けにすると、コートの袖から取り出したナイフを首元に突きつける。

 見ようによっては夜這いにも見える押さえ込み方だが、左手がないのでこうしないと抑えられない。


「おいおい、左手がないやつに負けちゃってるぞ」


「てめぇ!武器を持ってやがっふ!」


 なにか言おうとしていたが無い左腕で体全体を使って鳩尾を殴る、肘あたりの骨が思いっきりめり込む、普通に殴るより痛いだろう。

 それで完全にダウンしたようだった。


(痛ぁ!早く義手作ってもらわないとな、ナイフ抑えなきゃいかんからきついのなんのって……)


 そんな普通は考えないような考えをもつゆうきは、当然次の行動も日本人としては普通ではなかった。


「さぁ、尋問タ〜イム!」


「な?!」


「まずはあの仲間は誰だ?どこから雇った?」


「答えるわけねぇだっっ!!」


 容赦なく鳩尾を殴る。


「おいおい、ナイフを突きつけてるのにわざわざ無い左腕を使った意味を考えてくれよ、僕には君が必要なんだ。さぁ、教えてくれ」


 満面の笑みでそう答える。

 アメとムチを使い分けるのが基本だったな、と拷問と取り違えた知識で尋問する。

 状況が状況なら天使の微笑みだったのだろう、『野犬』自身も少しドキッとしてしまっていたぐらいだ。

 そうして尋問は続く。


「さぁ、あれは誰なんだい?君の名前も教えて欲しいな」


「うるせぇ、今にでもあいつらが戻ってきてお前を八つ裂きにしてやるからな!おい!誰かこい!」


 しかし返事はいつまでたっても来ない、どころか剣の打ち合うような音さえもせず静かだった。決着は着いたのだろう、声が届かない距離ではないが『野犬』の声に誰も反応しない、つまりアリシアの勝利を意味する。


「僕らの勝ちみたいだね、もしまだ生きてたいなら話すんだな」


 こうして完全に心を折られた『野犬』は全てを語った。

 名前はアイファルドで、一応Bランクハンター、雇ったのはこの近辺に住む強盗や盗賊で、報酬はアリシアと残りの持ち物だったそうだ。

『野犬』自身はゆうきが手に入ればどうでもよかったらしい。


(まじで何するつもりだったんだよ……いや、分かるけど)


 あまりのロリコンっぷりにドン引きするゆうきであった。

 これ以上聞くこともないし、スキルのリキャストタイムも終わっているので『野犬』を思いっきり殴って気絶させ、そのまま抱き上げるような形で抱え込む。

 そして自身の身体と『野犬』の身体を交互に浮かせて、穴の外へと出る。




 穴から出るとアリシアが盗賊の1人を縛り上げていた、残りは凄い事になっていた。R-18指定が確実に入る光景だった。

 さっきの鬼のような形相を思い出すと身震いして、これには触れない方がいいなと直感する。


「アリシア!大丈夫?」


「えぇ、そちらこそ大丈夫だった?ごめんなさいね、あなたに1人やらせてしまうなんて、あの時もっと冷静になるべきだったわ」


「いや、僕は実戦が出来て丁度良かったよ」


 アリシアは相変わらず気を使われてしまったなと思っていたが、その実ゆうきは事実を述べたまでだった。

 そうして、アリシアに『野犬』も縛ってもらいながら、尋問で得た情報を伝える。


「この下衆が……人を守る立場の人間が何故こんなことを……」


 そんなアリシアの姿と先程の鬼のような顔を思い出して、自分にも原因があることをゆうきは一生黙っていようと心に誓った。

 しかし、この2人はどうなるのだろうか?


「アリシア、こいつらどうなるの?」


「それはあなた次第ね、次の街の警備の人に引き渡すのもよし、ギルドに引き渡してお金を貰いあいつらは奴隷決定でもよし」


「警備の人に引き渡すとどうなるの?」


「そうね、あなたはゲーギスだから、そんな人を襲ったとあらば国からかなり重い罰が課せられるでしょうね、良くて鉱山奴隷、普通に行けば処刑でしょうね」


「コイツなら逃げ出しそうだけどな……」


「そんなの無理よ、奴隷印刻まれると主人に害や悪意ある事ができなくなるし、命令には絶対服従よ、絶対につけられたく無いわね」


(奴隷印か……エ〇同人みたいな事したいなぁ……かわいい女の子の奴隷が欲しいなぁ、絶対買うしかないよねぇ)


 相変わらず下心満載の思考で救いようがなかったが、そんな事は誰も知るよしもなかった。

 そうして二人は出発の為二人の男を叩き起すために、水を顔面にかける。


「「“我が手に集え水撃よ“」」


「うわっぷ!」

「ぐぁ!」


「ほら、行くぞー」


「さぁ、行きましょうか」


 アリシアが『鬼』と呼ばれる所以はこういう所にもある、しかしそんな事は知らないゆうきは着々とその『鬼』の名に続く不名誉な通り名獲得へと、そのコマを進めているのに気づくことは無かった。


はい、楽してません、タイトル詐欺です。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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