宝石は暗闇に懸かりて
ゆうきがヨハネ聖国で色々やってる頃━━━━
「それじゃあ、これからわたs、俺の部屋で作戦会議を行う」
「リーダーの“わたし”はいりましたぁぁ!!」
「「いぇぇぇぇぇぇぇい!!」」
「「ええぇえ!?」」
「んにゃぁぁああ!!やめろぉぉおおお!!!」
フーガのメンバーは相変わらず仲良く過ごしていた。今いるのは1部のメンバーで、特に喜んでいたのがフーガの初期メンバーで、困惑した声を上げていたのは新しく入ったメンバーで、同じアスカ校高等部の生徒でたまたま入団する日が近たかった2人組だった。
今は新人の挨拶と今後の活動内容の説明について話すためにルイナの部屋へと向かっている最中で、既に家の前に到着している。
「いやぁ、でも。リーダーの家おっきいですね……和を感じますねぇ……」
「そりゃあ、あのヤマモト家の娘だからね」
「普段は別の建物で皆で集まって稽古や情報共有してるんだ。ここには資金に関する会議とか受注したクエストや仕事の整理に使ってるから、もしかしたら今後君たちが来るようになるかもしれないから、場所は覚えとくように」
「「はい!」」
現在のフーガはゆうきに復讐するという目標は1時休止して、ギルドの依頼をこなしたり慈善事業に力を入れている。
そのおかげもあってかハンター達にはそのチーム名が知れ渡り、最近は下級商人や下級貴族からの依頼も来ている。学生だけで構築されている集団として見ればかなり優秀である。
そして、それほどの知名度があるので当然入りたいという学生達が後を絶たず、それが今日ルイナの部屋に行く理由の1つでもある。
全員がルイナの部屋の前に到着するとルイナだけが先に入る。
「一応事務所ではあるけどその前に俺の部屋だから、少し掃除させてくれ」
「待ってるよー」「いってらー」「それじゃ、2人も待っててね」「「はい!」」
「さて、それじゃあ。お2人さん、この部屋に入るにあたって気をつけてほしい事が1つだけある。時間が無いから進めるよ。とにかく部屋に入っても驚かないように、いいね?驚いてもいいけど態度には出さないようにね」
「「は、はい!?」」
ルイナが部屋に入った途端、早口かつ大量の情報を含んだ忠告に返事をするのがやっとの新人2人だった。
「準備終わったよー。入っていいよ」
そして時間が無いと言った通り、すぐにルイナが部屋から顔を覗かせて全員を招き入れる。
その瞬間に新人2人は忠告の意味を理解した。
部屋は確かに普通のよくイメージされるような和室である。しかし壁中に、いや天井にすら張り巡らされた女の子のポスターがその部屋を崩壊へと導いていた。
(……あれ?これって確か1年のエラトマさん……?)
(あ、本当だ……な、なんで?って自己紹介しないと!)
「ざ、ザールです」「私はヴァルブルガです」
すると先に机の前に正座で座っていたルイナが、2人の自己紹介も気にせずに焦ったふうに理由を語り出す。
「こ、これは!私達の宿敵の写真なの!絶対に忘れないように部屋に貼っといたの!別に好きとかそういうやつじゃないから。分かった?いい?」
「はいはい、毎回説明ご苦労さま。ちなみにその事はエラトマさんに言っていい?」
「だめ!だめだめだめだめ!絶対だめ!だめだから!」
「2人はどう思う?」
「僕は……そのどちらでもいいと思います」「私は、好きでもいいんじゃないですかね?」
「だから好きじゃないの!!」
「「…………」」
その光景にザールとヴァルブルガの2人は、流石にポカンとしたままどうしていいか分からなくなってしまった。と言うか最初に言われた忠告通りその状態をひたすら静観し続けるしかなかったのだが。
すると突然、その様子を見ていた先輩2人はなるほどなるほどと顎に手を当ててウンウンと唸り始める。
「……ふむ……いいんじゃないですかね?内心は動揺してそうですけど見た目には出てませんね」
「うん、私もいいと思う。自己紹介スルーしてもほとんど心の動きがなかったように見えたのはグッドかな。リーダーは?」
するといつの間にか落ち着きを取り戻したルイナも2人に賛同する。
「あぁ、申し分ないな。取り敢えず訓練させるぐらいはいいだろう。柔と剛を兼ね備えた精神こそ最も強いものだ。柔はばっちり剛は我々の手腕次第だな。という訳で……2人の入団を許可しよう。我々の組織は基本2人1組だ。今後の活動の際は君たち2人で動く事を常としてくれ。では早速、鍛錬兼任務を言い渡す。内容はペット探しだ、詳細はここに」
そう言うとルイナは2人に詳しい任務内容が記された紙を渡す。
「……これは、『ヴィブル』ですか、ってこんなもんよく飼ってましたね。飼い主は誰だったんですか?」
「サーカスで飼われていたものだ。暗闇でも動けることから裏方で働かせていたらしいが、ある日調教師が目を離した隙にどこかへ逃げてしまったそうだ。知能があるらしいから気をつけるんだ」
「捕まえれば良いんですか?」
「いや、生死問わず。だそうだ」
その後すぐに解散すると早速依頼書を持って依頼者のいるサーカスを目指す。移動サーカス団だそうだが夏の間はこの街に居座り続けるそうなので期限は夏休み中という事になる。
「さてとそれじゃあ、ヴァルブルガさん。これから相棒としてよろしく」
「えぇ、私も頼りにしてるわ。相棒」
2人はお互いの自己紹介を済ますと握手を交わす。そして直ぐに気持ちを切り替えて仕事について話し合いを始める。
「ヴィブルは暗い場所が得意なんだよ。だからいるとしたら裏路地とか屋根裏とか、はたまた地下水道かもしれない。個人的には地下水道じゃないかと思うんだ。サーカス団のある場所の近くに川がある、そこから下水に入れると思うんだ」
「そうね、取り敢えず現地を見に行かない分にはなんとも言えないけど……ギルドで下水の地図を貰ってから行きましょうか。それにしても……おかしいと思わない?」
「……うん、いくら知能があって危険とはいえ生死問わずってのはなぁ……リーダーの言い方も含みがあるような気がしたし……訓練兼任務って事は何かない訳が無いから警戒してこうか」
「了解、サーカス団は祭りが行われた会場の近くにいるらしいわ、ギルドに寄りつつ行きましょう」
こうしてギルドを経由して1時間も歩けばサーカス団のいるキャンプにたどり着く、シマシマの大きなサーカステントの周りに小さい無地のテントがいくつもある。近くにいたサーカス団員に話を通すと馬車に連れていかれて中に入る、中は普通の馬車より少し大きめで応接室として使っているのか、そこそこ豪華なカーペットと机と椅子がある。
2人は椅子に座ると机を挟んで太った気の良さそうな団長のおじさんとその隣には調教師の中年のガタイのいい上半身裸の男がいた。
「いやいやいや、本当に御足労かけて申し訳ない。本当はこちらから出向くべきだがわざわざ来てもらって申し訳ない。それでだ今回はうちのヴィブルが逃げ出してしまってね、元々は他の個体より知性が高かったから上手くショーにできるかと思ったんだが……それが裏目に出てね。仕方なく裏方で働かせてたんだが……」
「あのクソアマが逃走する際に俺の部下を怪我させていきやがった。俺も調教師として長いがあれはダメだ。俺の手には負えん、だから処理を任せたい。もちろん捕らえられるなら。それはそれで競売にかけるからいいが、調教師として二度とゴメンだ」
どうも2人とも件のヴィブルについてはあまりいい印象を持っていないようだ。ある程度の情報を聞き出すと2人はその場をあとにする。
外に出てしばらく歩いてから2人は顔を見合わせて同じ事を言う。
「クロだね」「クロだな」
「知能があるとはいえ魔物の事をクソアマ呼ばわり、って事は心のどっかでその子の事を人間に近いものって思ってる程度には人間っぽかったのかな。その子にそれほどの知能があるなら衣食住がついたこの場所から逃げ出すか?」
「ですね、このサーカス団。何かありそうですね。そっちの方も詳しく調べましょう、上手く行けば幹部候補くらいにはなれちゃったり?」
「おぉ!夢広がるな!頑張るぞ!」
そう言うと2人は早速今後のことについてじっくりと話し合うのだった




