ハンター契約1
やっとギルドでハンターになります。が長い気がしたので、2話に分けました。
風呂に入りスッキリしたゆうきとアリシアは、宿で昼食を食べた後、部屋でまったりと休んでいた、ただ休んだと言っても、時刻はまだ13時、なので眠ったりはせず部屋のベッドでお互いゴロゴロしながらゆうきはアリシアにこの世界の事を教えて貰っていた。
まずは通貨について教えて貰った。
全ては硬貨で出来ていて、価値は上から
ミスリル貨、白金貨、金貨、銀貨、銅貨
の順になっていて、
白金貨1枚=金貨100枚=銀貨1000枚=銅貨10000枚
で、ミスリル貨に関しては白金貨1000枚と事実上の国家専用の硬貨である、個人持ちしている人もいるそうだが、世界にも10〜20人程しかいないそうな。
「確かに守るのなら小さくて少ないものの方が良いもんな」
「そうね、それとそのお金の話についてだけど、これから行くギルドにも関係するの」
アリシアの話を要約すると、ギルドは銀行としての機能もある、以上。そのための説明を三十分されて結論がこれだったので、アリシアに説明の要点をかいつまんで話す方法を教えようか真剣に悩んだ。
そうして、ゆうきが話を逸らすために提案した、ギルドへと向かうことになった。
さて、そんな事情で着いたギルド
「ギルド……でかいな」
そこにはレンガで出来た、大きな建物があった。
三階建て位だろうか。
「と言うかレンガなのか、民家とか宿を見る感じ、勝手に木造建築かと思ってた」
「ここ、ホロフロノス自体は昔からあるけど、この建物は新しいからね」
ホロフロノスとは村の名前だ。
そんな会話をしながら、ギルドの建物へと入っていく、入った瞬間中に居た、屈強な男や女に一瞬みられる。
その大半は何事も無かったように視線を戻すが、なかには邪な視線を向ける輩もいた。
「受付どこ?」
「……あそこよ」
当のゆうきはそんな事には気付かず、そしてアリシアはそんなゆうきに頭を悩ませながら、受付へと進む、しかしカウンターが高すぎて受付嬢さんからはゆうきの頭しか見えない。
仕方なくゆうきは上半身をカウンターに乗っけて足をブラブラさせたまま話を始める。
「あー、ゲーギスとして?登録したいんだが、どうしたらいい?」
「それは……大変な目に遭われたことでしょう、ここまでの道のりご苦労さまでした、まず、保護された方の確認をさせて貰います、アリシアさんは保護された方で宜しいですか?」
「えぇ、それとこれも……この子と関係するからギルマスには二人一緒に対応するようにお願いできる?」
そう言ってアリシアは、あの時首から下げていたドッグタグのようなものを受付嬢さんへと渡した。
「……かしこまりました、それでは、お預かりします。ただいまギルドマスターをお呼びしますので、こちらの部屋でお待ちください」
そう言ってカウンターの中に入り、その先の一室へと案内された。
長机を挟んでソファが向かい合わせに二つ置いてあり、壁には装飾品がかかっていた、ザ・客間と言った部屋だ。
しばらくすると部屋の扉が開いて、さっきの受付嬢さんと白くて長いヒゲを伸ばした、威厳のあるおじいさんが入ってきた。
(ギルマスこえぇぇぇぇ)
シュバルツが向かいのソファに座る。
「ワシはここのギルドマスターを務めるシュバルツだ、お主が新しく保護されたゲーギスか、この世界にいきなり飛ばされてご苦労なさったことじゃろう、だがお主の身は我々ギルドが保証し守る、安心せい」
「お気遣いありがとうございます。葉山ゆうきです、よろしくお願いします」
(ギルマスやっさしぃ〜……良く考えたらアリシア姐さん全然心配してくれなかったような……)
「それから、アリシアよ……よく生きて帰ってきてくれた、そなたら程のパーティーがやられるとは……ゲーギスの保護とダンジョンでの話、何か関係があるのだろう、説明してくれんかのう?」
「はい、ギガマンティスが出ました、かなりのサイズで、しかも、襲われたのは中層でした、油断していた訳では無いのですが……」
アリシアが悲痛な顔をして、何が起きたかを詳しく語り始めた、定期調査の依頼で、6人でホロフロノスのダンジョンに行った。中層に入ってすぐに何かの気配がしたので警戒をした、だが、いつまで経っても襲われない、どころか気配も消えて警戒を解いた、ギガマンティスはまるで狙ったかのように、そのタイミングで襲撃を仕掛けてきた、盾役が一瞬で倒され後は何も出来ずに終わった。
しかし、アリシアはリーダーの指示で隠れて、リーダーからの合図と共に後ろから攻撃を仕掛けるように指示された、今思えばおかしな指示だったが、その時は気付かず指示通りに動いた、しかし合図が来ない、それどころかやけに静かだった、おそるおそる顔を出してみれば血と肉片だけがそこに残っていた。
その時にすべてを理解した、私は助けられたのだと。
タグを4つだけ回収してあとは見つからなかった、そうして絶望故にフラフラしていると、たまたまゆうきを見つけた。
(重いし説明長いし、何で僕がいるところで説明するんだよ)
「してなぜその説明を今したのじゃ?」
「実は……彼には左腕がありません、彼を保護したあと私達が襲われたギガマンティスと全く同じ個体に襲われた際に私をかばって、負傷しました」
「なに?!」
シュバルツはゆうきが見せつけるようにヒラヒラさせた左腕を見ると同時に驚愕の声を上げた。
「あの〜すいません、そんなに驚くことなの?」
普通は驚くことだがゆうきは異世界だからこんなもんでしょ?位に思っていた。
「それはそうじゃ、ある意味お主らゲーギスは賓客みたいなものじゃ、汚い話じゃが、新しい知識や情報、技術を提供してくれるからのぉ、そうでなくともこんな子供を負傷させてしまうとは……ギルドを代表して謝らせてくれ」
「う〜ん、まぁ気にしてないっていったら嘘になるし、流石に許せないよねぇ〜」
ここぞとばかりにゆうきが悪そうな顔でにやりと笑う。
「なんでも言うてくれ、ワシらに出来ることならなんでも構わん」
「えぇ、私にもなにか出来ることがあれば何でも聞くわ」
アリシアの発言に心揺さぶられつつ、ちょっと可哀想な気もしたけど、ここでしっかり言っとかないとね、労働にも支障が出そうだし。
「義手を作って欲しいんだ」
「……へ?それだけなのか?」
予想外だったのか間抜けな声を上げる。
しかし、ゆうきはそんな事は気にせず説明する。
「いやいやいや、逆にそれ以外何があんの?別に腕がなくなった直接の原因はそっちに無いし、まぁ、敢えて要望を出すなら、戦闘特化にして欲しいかな、あのカマキリ超許さん」
「普通はもっと、労働義務の撤回とかそういうのを望むんじゃないのかのぉ……」
「そんなのもってのほかでしよ」
そんな事をすれば、それこそ労働義務の意味を、そして本質を理解してない。
人は自分と違うものを拒み、恐れる、だからこそ義務という形で無理やり接点を持たせた。
助け助けられれる関係は、自ずとお互いが、同じ人間であり、そして助け合う仲間、という意識が生まれるだろう。
今でこそゲーギス達は普通に受け入れられているが、ゲーギスが現れ始めた当時はきっと迫害なんかもあったかもしれない。
今、僕が楽をできるのは、数百年にわたるゲーギス達の努力のお陰なのである。
「という訳よ、ってな事で義手、頼めるかな?」
「あぁ、勿論じゃ、しかし長生きしてみるもんじゃな。お主みたいなゲーギスは初めてじゃ」
「ギルマスの初めてもらっちゃったよ」
そんな発言に部屋の中は笑いで包まれた。
ようやく落ち着いた頃に、シュバルツが、話を始めた。
「さて、この世界で生きゆく事になった訳じゃが、どうする?お主はあのカマキリ、ギガマンティスを討伐したいとか言うておったが、どうじゃ?ハンターにはならんかの?」
これに、受付嬢が反応する。
「マスター!何を言っているんですか?この子はまだ子供ですよ、あなたの目は確かに正しいですけど、まだ、早すぎます!」
しかし、ゆうきは断然乗り気だった。
「おもしろそーじゃん、なるなる!」
これには、アリシアも驚いた。
「ちょっ!あなた腕を飛ばされたばかりでしょ!もう少し考えなさい」
さっきと違い部屋の中が慌ただしくなる。
「別に今すぐなにかしようって訳じゃないんだ、登録するだけだよ。登録するだけなら出来るでしょ?」
「おお!もちろんじゃともゲーギス登録のついでにハンターになるやつは多いぞ!」
二人の必死の説得にも応じず、翁と幼女は淡々と登録を進めてしまった。
この日、ゆうきは冒険者になった。
ギガマンはあとで処理しとこうかと思ってます。