楽あれば苦あり
やっと彼女に左手を着けてあげられます。
ゆうきとアリシアが王城に住むようになってから3週間が経とうとしていた。その間は特に何事もなく過ぎ去っていた。
この3週間は来るべき学校入学に向けて、ひたすら勉強と戦闘訓練に励んでいた。というかまぁ、励まされていた。本来はお金がなくなり働かなくてはいけなくなるのだが、流石世界を牽引するだけの国力を持つ国だ。冒険者の1人や2人養う事なんて象に蟻が、いや、ノミが噛み付く程度のダメージしか与えない。
そのお陰か3週間ほぼ毎日、勉強と訓練に励むことが出来た。しかも勉強は元々が理系で大学にも行く事が決定していたようなゆうきは、理系科目はもちろん英語の勉強をする必要もなく、歴史と国語と戦闘訓練しかしてこなかったのでかなり学力とステータスが上がっていた。
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名前:ハヤマ ユウキ
年齢:11
種族:人間
Lv1
体力 :8/8→15/15
魔力 :13/13→17/17
攻撃力 :3→5
防御力 :3→8
魔法力 :6→9
魔防御 :5→8
回避力 :10→15
ランク:F
パッシブスキル:
『不屈の精神』Lv3→4
『憤怒』Lv1
アクティブスキル:
『怠惰』Lv2→3
称号:
来訪者
『魔王』
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『不屈の精神』と防御力の上昇からアリシアの訓練がいかに恐ろしいものだったかを察してほしい。
基本的には魔力関係を重点的に上げてきたが、アリシア曰く「魔法使うのなら攻撃力は捨てて防御に振りなさい」との事らしい。
だからといって丸太を使って簡易トラップのようなものを延々と死なない程度にくらい続けたり、丸太を重り代わりにして回避練習をさせたりするのはやりすぎだと思う。
また『怠惰』のスキルもレベルが上がったので、スキルの確認をしてみる。
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『怠惰』Lv3
自身から半径15メートル以内の物体を3メートルだけ自在に動かす。
物体は物理法則に影響されない。
追加効果:効果範囲と移動距離の指定と形の無いものにも効果を発揮できる。
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形の無いものとはつまりは水や空気のことだった。そして何よりも凄かったのが範囲の指定が可能、という部分だった。
どういう事?とお思いかもしれないが、今までは1つの物体に対して影響していたのだが、今回のレベルアップで1つの物のどの程度の範囲まで影響を与えるかを設定できるようになった。
例えば生木に対して3×3×5(メートル)という範囲指定した上で移動させると、細い角材が出来る。
それも完全に木を傷つけないで指定した範囲をくり抜く事が出来る。
ぶっちゃけ似非金岡の錬金術師になれるわけだ。
「実に恐ろしい能力だな、動物には効果がないのが救いだな。あったらすぐに目を付けられそうだよ」
(国とかどうせあるであろう悪の組織的なあれに)
「それをワシに話してどうしろと言うのじゃ……」
ここで唐突だが、3週間と言う中途半端な期間にも理由がある。ゆうきの為の義手がとうとう届いたのだった。何故かシュバルツもいたが。
「しかしゆうき、久しぶりじゃの、元気にしとったか?こんな広い部屋に住みおって、お主の名前を出したらいきなり王城に案内された時は心底震えたわい……」
「あぁ、爺さん久しぶり。そんな事僕に言われたって困るぜ。てか抜け出してきていいのか?」
「そりゃあ、倭国の国王から直々に紹介状を受け取ったからの、1度こちらに顔を出す必要があったのじゃよ。お主のはそのついでじゃ、付ける時に調整ができるのはありがたい」
「そっか、お疲れ様。それじゃあ、早速頼めるかな?」
「5分で仕上げてやるわい」
シュバルツは本当に嬉しそうな笑顔でそう答えた。やっぱりギルマスってストレス貯まるんだろうな、と思ったゆうきであった。
「それじゃあ、始めるぞ。少しばかりチクッとするが我慢せい。いくぞ」
「痛っ!何これ?針刺さってるよね!?痛い痛い痛い!!アホっ!マジで勘弁してください!いやぁぁぁぁあああ!!」
なんというか神経を直接針で弄ったらこうなるんだろうな。という風な痛みだった。
「ほい、お疲れ様。無事終わったわい、ウム良かった良かった」
見てみると左手のない部分にフ〇ク船長の手の様な器具が付いていた。違うのは鉤爪になっているはずの部分が文字通り鍵の先のような形をしていた。
「これは?」
「壊れた時簡単に交換できるような機構にしてみたんじゃよ。取り替えれば一瞬で治るぞ」
「なるほど、んで本題の義手は?」
「まぁそう急かすでない、ほれこいつがそうじゃ」
そう言うとバッグの中から黒い義手を取り出した。
これもやはりジャックナイフと同じ光を反射しない黒で出来ていた。無骨なデザインだが鎧の小手のようにも見えた。
それを腕にはめて回すとカチッと音がして綺麗にはまる。
「使い方は魔力操作が出来るお主なら余裕じゃと思うが普段から使うようにした方がいいと思うぞ、それから水に濡れても問題は無い」
「おお、カッコイイ。流石じい様だ!ナイフと言いコートと言い廚二心くすぐるデザインだな」
「そうか、ゲーギスであるお主に褒められるのはとても嬉しいのぉ。我が師匠はゲーギスでな、お主に褒められるという事はゲーギスである師匠の心にもきっと響くと考えてしまっての……」
「1ヶ月でだいぶ老けたか?シュバルツさん。それより何で国王様(笑)から呼ばれたんた?」
「王様に対して(笑)なんて付けるのはお主ぐらいじゃろうな……それで呼ばれた理由じゃったな、なんでもこの近辺に強大な魔物が現れてそれが原因で経済的に困ったことになっておるらしくての、対策チームとしてワシが呼ばれたのじゃ」
「……ふーん、意外と微妙な理由だね。まぁ、僕には関係ないから大丈夫か」
(あの、アホゴンか)
「なんというかお主は自分に害がないととことん淡白じゃな……」
こうして左手をようやく手に入れたゆうきは義手をグーパーさせると、意気揚々と左手のチェックも兼ねて街へ繰り出し、その新しい左手を仲のいいお店の人達に自慢して回るのだが、ゆうきは『楽あれば苦あり』という言葉の意味を深く噛み締めることとなる。
「やっほー王様ー!来たよー」
「おお!ゆうきちゃーん、よう来なすったー」
2人は幾度と無く会っているうちにとても仲良くなっていた。と言うのも定期的にレベッカの部屋へ行くのはいいが、変化があったら報告する事になっているので、いつもなんて事は無い会話をして終わってしまっていた。その際にお互いウマが合いいつの間にか仲良くなっていた。
「レベッカはどう思う?異世界に銃があるのって。僕は大変素晴らしいと思う、ていうか今度バイクか車寄越せ、あるんでしょー?」
「あるけど、めちゃくちゃ高いんだからねー。車開発するのに先々代の王からかなりのお金掛けたんだよ。今も技術不足でかなりお金かかるんだから。一般販売してるって言ってもお金持ちの中のお金持ちしか買えないような額よ」
「だから頼んでんじゃん、確かミスリル貨20枚だっけ?そう聞くと意外といけそうじゃない!?」
「国家予算の3分の1が消えるわ!しかもそれオーダーメイド価格じゃないの!?貴方って本当にアホよね」
「じゃあ、安いバイクでもいいから買ってよ。金貨たったの500枚だよ」
「だったら貴方、あの例の竜倒してきなさいよ。あれのせいでこっちは経済が大変なんだから」
なんでもあの竜、商隊を襲っては貴金属や宝石を持ち去っていったらしい。その中にはもちろん貨幣が含まれていて、それが原因でギルドからお金が引き出せなくなってしまうそうな。仕方なく新しく貨幣を作っているのだが貨幣自体も貴金属なので採掘量には限りがある。このままでは粗悪品を使うしかなくなり、そうなれば当然貨幣の価値も落ちる。国家としての破滅さえありえる。
「まさに秦の国の二の舞さ。しかもあのドラゴン、たちが悪いのが商隊を襲うだけで誰も殺さないんだよね。だから下手に部隊を動かせないんだよね、今度『勇者』に頼んでみるかな」
「へー……」
(やっぱりこいつも面識あるのか、うわぁーだるいぞこれは)
「まぁ、アイツあんまり好きじゃ無いんだけどね」
「へー!そうなのかそうなのか」
「なんでちょっと嬉しそうなの?あとそうだ、襲われた商隊の商人全員からの情報なんだけどドラゴンが「『魔王』を出せ!」って言いふらしてるらしくてなんか知ってる?」
「…………知らない」
「約1ヶ月と少し前、スィノロの街で『勇者』と対立して殴り飛ばした片腕の美少女がいたらしいよ。君がここに来てから3週間、スィノロからここまで約1週間。ああ、そう言えば君はドラゴンに襲われたせいでここまで来るのに10日間かかったらしいね?それから……」
「分かった!分かった!なんで知ってるんだよ!?」
「そりゃあ、私は王様だもの知らないことは何も無いわよ。って言いたいけど君の知らない、の前の間で違和感あるなって思ってカマかけたら自分で納得しちゃったわ」
「このアマ自己完結しやがった!クソ、行けばいいんだろ!?行けば!」
こうしてゆうきのドキドキドラゴン退治が始まるのであった。
この前家の近くでRX-7をみて城島さんだなと思いました。
湾岸で使わせてもらってますが、下手くそながらに早い走りを実現させてくれる車に感謝。
皆さんはどんな車が好きですか?
最後までお読みいただきありがとうございます。




