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悪党のすすめ  作者: と
奴隷編
6/63

4 実験

施設内部、と言っても養豚場ではなく、その奥にある施設だ、ここではなんでも俺たちの15分を使って何やら実験するんだとか。


「先ほども言った通り、諸君らは痛い思いをするようなことはさせん、諸君らは新しい魔法の先駆者として、どうが理解してほしい」


にこやかにルッツは会話を続ける。続けて彼は施設の説明を始めた。


「施設はいたってシンプルじゃ、図書室、研究棟、待機棟、娯楽棟がすべて、食事は娯楽棟でとることになっておる。どうか皆、親睦を深めて欲しい」


その言葉に、安心して語りだす者、紙に書く好物に集中しているもの、それらの楽しみでうかれているのだが、まだこの捕虜貴族は乗り気ではないらしい。先ほどから、苛立ちをあらわにし、まだかまだかと体を震わせている。



「なぁ、いい加減落ち着いたらどうだ?そんなに言うほど危ないことはしないだろ?」


すると怪訝な顔のまま、あたりを見回し、続いて俺に話してくれた。


「俺の時はこんなことは確かになかった、まぁ、俺の場合、戦争捕虜として始まったものだから待遇をよくするなんてことはありえないけどよ、でもな、この施設は本当に、モルモットとしか俺らを見ていないものだから、いつ死んでもおかしくはない」


「それじゃ君なんで生きているんだい?」


すると、余裕のないながらも、笑みを浮かべ得意そうな顔をする。


「それは、俺がその時までは一国家の貴族だったからだ、お前にはわからんだろうがたとえ戦争中の国家間であっても貴族を『拷問』して殺しちまったら、それがもし他国に知れ渡ったら、戦争当事国でなくとも、外交問題になりえるんだぜ?そうしたら、他の国家もだまっちゃいねぇ、だから奴らは殺しはしなかったのさ」


「はぁ、そうなのか」


「ああ、それに俺は伯爵家だぜ?昔はそれはそれは巨大な都を統治してたもんさ、ま、そいつも滅ぼされちまって、いまはそこにはがれきしかないがね、でもだ一国の伯爵を殺してみろ?それは簡単だ、それに忠義をもって伯爵が死んだとなれば家の株も上がる、しかし拷問で殺してみろ?これは騎士道精神にも、倫理的にも他国の貴族から評価されることが何一つないじゃないか?」


そういいつつも、声が震え始めた、本人はここでの生活を思い出し始めているのか、身震いを出していた。


「まぁ、俺が再びここに来たってことは【俺はもう、貴族ではない】ってことか、はは、まぁ、国はもう変わっちまってるし、悪くねぇか」


そういう彼は涙を浮かべ、それからは沈黙を続けた。


「お、おいおい」


「っふ、すまねぇ、なんだか俺の積み上げてきたものがすべて無駄だったって思えてきちまって、突然涙が」


頬になみだを流し、すぐさま拭く。


「まったく、理解しなきゃなんねぇのにな、個言う時こそ貴族の、いや、騎士道に基づき、覚悟を決めて凛々しく立ち向かうってのが立派な貴族なのによ、俺と来たらこんな情けない姿で生き恥を甘んじている、全く恥ずかしいことだ


そういうと、少し深呼吸し、余計落ち込んだ様子だ、

「これ使いなよ、ハンカチ」


彼は僕のハンカチを取るとクスッと笑い、続けて言った。


「なんだ、貴族でもないのにハンカチなんか持ってんのかよ、しかもこんなにフワフワした繊維見たことねぇぞ?なんだこの柄?」


「柄?ああ、無地のことか?」


何ともヘンテコな光景である、さっきまでというか今でも泣いているのに、今度はハンカチにも気にかけ始めている。


「染色したにもかかわらず、なんでこんなフワフワしてんだ?刺繍じゃこんなのはできねぇぞ、

お前、相当な豪商の息子だったんだな」


「はぁ?そんなわけないだろう、こんなものそこらへんで売ってるぞ?」


「はは、みんなが買えるわけではないけどってか?まぁありがたく使わせてもらうぜ」


そういうと今度は豪快に鼻水をかみ、返してきた。


「おいおい!拭くのは涙だ!なに鼻すすってんだよ!」


「え?ハンカチは鼻をすするもんだろ?なにいってんだ?」


「馬鹿!涙と手を拭くために決まっているだろ!もいいよやるよキタないなぁ・・・」

馬鹿っておま、貴族にに平民が馬鹿っておま、打ち首もんだぞ?不敬罪だぞ?」


「その割には、ずいぶんと汚い貴族だな?それにさっき貴族じゃないって自分で言ったばっかじゃないか」


「は?それは待遇の話であって俺の御家がある限り、貴族は貴族だろ何言ってんだ?馬鹿なのか?」


「ああ、冗談の通じない奴だな」


そう言いながらも、お互いこの会話に不快感は感じない。何やら晴れやかな気分である。友人と語らいあっている時に近い感情がたしかに感じることができる。ああ、楽しい。


「はは、なんか、少し落ち着いたぜ」


「それはよかったの、ところで、話を聞いてもらっていいかの?」


急に隣にいたルッツに僕たちは驚き身をはねた。


「うわ!魔導士、お前どこから急に来たんだ!?」



「さっきから話していたじゃろ、仕事の時間じゃから、呼ばれたら来いと、もうここにはお前とアウタースレーブしかおらんぞ?さ、早くお前たちもついてきなさい」


なんと、どうやら仕事の時間が来たようだ。まだこの施設に来て一時間程度ではあるが、呼ばれたなあ仕方がない、まぁ、とりあえず従ったほうがよさそうだ。




施設の廊下にて並ばされ、ひたすら自らが呼ばれるのを待つ、ただそれだけの時間が続き始める。ぼくはこの状況がまるで注射前の小学生のようだと、少しおかしくなった。15分に一人、また一人とれるは少なくなってくる。その間、施設に悲鳴が上がることも、叫び声が聞こえることもなかった。ただ、誰も帰ってこないという、一抹の不安があった、セージに聞けばあるいはわかるのだろうが、私語厳禁というばかりに皆緊張した状態で、とてもではないがそんなことが聞けるような状態ではなかった。


しかしながら、隣は拷問で訪れたという伯爵がいたので、ここはひとつ聞いてみようと思い、訪ねてみる。


「なぁ、お前拷問で来たんだよな?その時はどんな感じだっだ?」


そういうと怪訝な顔で男は答えた。


「なんでそんなこと聞くんだよ?よりにもよってそんな記憶思い出したいと思うか?悪いがそれは答えらんえぇ、それより歓迎会のことかんがえたほうがいいんじゃないのか?もっと楽しい話をしようぜ?」


楽しい話って、やっぱり拷問は楽じゃなかったのか。まぁ、当然だ、ならば彼が恐れるほどのことをはたして僕が耐えうることができようか、なんだか怖くなった。いや、怖くなるのが遅すぎるほどであると、その時確かに確信した。少なくなる列。帰ってこない人々、沈黙の施設、呼び出しにしか来ないセージ、まったくもって恐怖以外の何物でもない。それでいて実験で行われる内容がまったくわからないときた。考えてはいけないとは思うのだが。そこは人間で、やめようとは思ってもすぐに考え始めてしまう。


「おい、あまり考えるな、考えるだけ無駄だ」


男が言う。どうやらぼくの表情から察したらしく、忠告するように言った。


「あ、ああ」


「そんなに知りたいなら、いっそ呼び出しのセージから聞けばいいじゃないか?」


それもそうであるが、そんなことが言える空気でないことを、この男にも察してほしいものである。


「だけど、この雰囲気じゃあ」


「はぁ、なんだそれ、ビビっているくせに、なんでそういうところだけやけに慎重なんだ?」


その言葉にムッとしたが、セージが来たので

腹いせはそのあとにすることにした。


「あ、あの!」


急に大きな声が施設に響く、一様言うがぼくではない、先ほど、受付の女の若いセージに呼ばれた者が、条件反射のように、直立不動になり言い始めたのである。


これには若いセージも驚いたようで。ビクッと動いてボードを落とす。


「は、はひ!なんでしょうか?」


「あ、あの、わたしはこの後何をされるんでしょうか?」


「へ?え、えーとですねぇ今日はー」


そう言いながらボードを見る。そして見つかったようで笑顔で答えた。


「皆さんは今日は雷の魔法の実験だそうですよー」


「「へ?そんな!」」


一斉に声を上げる、男も上げるのかと思ったが、その言葉をむしろ一番早く受け止め、覚悟したようにも見えた。


「雷って言ったら、あの雷ではないですか!?そんなもの食らったら死にますよ!?だいたい雷魔法を使えるのはパラディンとかの魔導士ではないですか!?」


「いえ、決してそんなことはありませんよ?まず言って死んでしまってはデーターを取ることはできませんし、それに痛い目には合わせないって始めにルッツ所長が説明してませんでしたか?」


「い、いやしましたけど、でも自然現象の魔法はセージには使えるのですか?」


「ええ、パラディンほど強力なものはできませんがそれでもパラディンに比べて多種にわたる魔法を使えます、今回は新たな魔法提唱実験のために行うだけですから、そんな死ぬなんて思わないで、気合い入れていきましょう!」


何とも歯切れのよくないような内容の気がしてならない。どう考えても聞く限りでは優しいようで、とんでもない隠語を隠しているのではないだろうかと、そう感じるのは気のせいだろうか?


これがジレンマとなり、はたまた僕の思考は恐怖にかられた内容になっていった。セージはどんな内容で俺を殺しに来るのか。苦しめるのかそれともそれは杞憂で、簡単なことしかしないのか、まったくわからない。


「では、早速ですがお願いします」


「い、いや、じゃぁ、最後にもう一つ、もう一つでいいので教えてください」


「はい?なんでしょう?」


緊張した面持ちで言ったその一言は、ここにいるみんなの総意でもあり、最も聞きたくないことでもあった。


「なんで、実験にいった者たちは帰ってこないのですか?」


「・・・?」


セージは首を傾げ、少し困惑した顔で言った。


「それは娯楽棟で遊ばれているからではないですか?娯楽棟での歓迎会がありますので、終わった人から集待ってもらっているのです」


過去ここまで疑う言葉を聞いたためしはないが、ほかの者たちが続けていった。


「じゃ、じゃあ順番来る前に、その、娯楽棟に言ってもいいですか?」


「ええ、どうぞ?でも呼ばれたら戻ってくださいね?」


「は、はい!じゃあ行ってきます!」


彼がそういうと一目散に娯楽棟に走った。それを見送る我々は、少なからず希望を持っていた、まず初めにセージが娯楽室に行くとを許可したことにある、これが娯楽室に誰かいることを証明することになり、また我々にも見せていいものだと、そう言っているのだと思うことができる。





「まぁ、帰ってくるとは思えんけどね」


自信ありげにそう男は言った


まったく、恐れていることを言うんじゃないと、心の底からの底から思いながらもおびえて僕は言った。


「なんでさ、それは殺されるってこと?」


「いや、もし俺があいつだったら、まず娯楽室にはいかないな、怪しすぎるもんな」


「となると、彼はどこに行くことになるの?」


すると少し笑みを含みながら、なんともセオリー通りというか、決まってているだろうといわんばかりの顔である。


僕も、うすうすは気づいていたが、まさかこんなところでそんなことはしないだろうと同時に思う。


「本当に?だって、許可したってことは当然備えているでしょう?」


「わかっちゃいないなぁ、こういう時、覚悟の座った人間ならいざ知れず普通の奴なら、そう行動をとる、勝算があるからやるんじゃねぇ、少しでも可能性があるなら全力でやる、そうだろう?」


彼はそういいながら、【その時】が来たら、耳をふさいだほうが、いいという、心得た僕はまさかね、と思いつつも耳をふさいだ。


「「脱走だ!繰り返す脱走だ!」」

あたりに大きな音が鳴り響き、騒々しい廊下に一変した。

どうやら彼の予想が的中したらしい、すぐに武装した人たちがそこらかしこから沸き、あたりを捜索し始めた。


「どこだ!探せ!見つけ次第セージに報告しろ!」


「奴隷は見つけ次第殺せ!いいな!?」


何とも物騒な話が兵士の間で飛び交っている、


「ほら、やっぱりな」


ふーっとため息をついた後、男はその場に座り込んだ、事態が収拾するのを待つつもりらしい。


「本当にやろうとするなんて、バカなのか?」


「そりゃ実験内容が恐ろしすぎるものな、雷なんて食らったら普通焼き焦げて死ぬ実験だし、セージが本当のことを言っていないと思うほうが無難だろ?」


「案外、それを見越してセージはあんなこと言ったのかもしれないね、あんな含みの強いいしゃべり方するのは後にも先にも彼女くらいなものかもしれないな」


「ああ、だがこれで生きて帰れるかどうかなんてのは、結局わからずじまいになっちまったがな」


互いに笑みのない真剣な話だった。自らの一寸先がどうなってるかわからない中、もはや彼の行動がいかに心理的負担を増しているか、そう思案しているうち、兵士が甲高い声とともに、一極集中し始めた、どうやら、脱走者が見つかりとどめを刺したらしい、ひどく客観的にとらえているように思うかもしれないが、それは事実だ。死の手前にいるかもしれない自分がいるのにどうやって人の配慮や同情などできようか自らを自制するので精一杯なのだ。


再び沈黙が廊下を支配する。


「はぁはぁ」


自らは再び恐怖との闘い、会話のあるほうが、よっぽど紛らわせた。


「アウタースレーブ」


受付の女のセージが呼び出した。


「は、はい!」


「次はあなたの番です、私の後についてきて実験棟に入りなさい」


彼女はそう言って歩いて行った。極度の緊張の中、男の声が聞こえた。


「絶対死ぬな、また話し合おう」


そこ言葉たるや、本来ならば感嘆の極みで号泣したに違いないが、俺はそんな溶融はない呼吸を整え、自らに意識を集中する。


実験棟は何やら奴隷市場で見たことがある大きな魔法陣が床に書いておりその真ん中に椅子のある白い部屋であった。部屋の大きさはそこそこ大きく開放的だ、中には何人かのセージが杖をもって待機していた。


「それではこれより実験に移ります、何か質問は?」


セージが確認するように言った。無論言いたいことはいくらでもあるが、今話して正直どれほどの意味があるか考えるだけでも恐ろしい。


「いえ、ありません」


「そうですか、ではじっけんを始めます、ルッツ主任、お願いします」


「うむ、、アウタースレーブ君、まず君はその椅子に座りなさい、その後こちらが立ってもいいといわれるまでは決して立ってはいけない、いいね?」


指示されたように椅子に座る、緊張して、ああ出が止まらないし、息も上がる一方である。


「よし、ここで希望を取っているのじゃが、きみは目隠しをするかね?それとも目隠しはせずにそのままするかね」


「あ、あのその前に一つ質問いいですか?」


その答えが来るとは思っていなかったようで、面倒くさがりながらもルッツは答えた。


「ああ、だけどそういうのは先ほどの質問の時にしてくれればよかったのにのう」


「すいません、あ、あの、ここに昔戦争捕虜が拷問できませんでしたか?」


またまた、ルッツは驚いた様子だ


「ああ、来たことある、しかしなぜそのことを知っている?」


「い、いえ、うわさで聞いたんです」


「ふ、まぁいい、で?その捕虜がどうしたのじゃ?」


「どんな拷問をうけたのですか?」


そういうとルッツは渋い顔になり、口を堅く閉じて沈黙した。


「あ、あのね?アウタースレーブ、あまりそういうことは言いずらいのよ」


受付のセージがかわりに代弁する。


「だってそうでしょ?私たちも人間、同族同士でやっていいことの度量ぐらいわかっているわ、でもそれ以上のことを強いなければならないことが時としてあるのよ、ね、分かって」


少し困った笑顔で彼女は言った。しかし話を遮るようにルッツが語りだした。


「いや、ありのままに話そう、おそらくこと者も、自らがどんな目にあうか怖くて、それで聞いたのじゃろう、ふむいいかアウタースレーブこれを見るのじゃ」


そう言ってルッツは大きな推奨玉を持ってきた。それを僕の目の前に置きじっと唱えている。


「奴に何をしたのか、教えよう、それは・・・」


唾をのみ、その答えを聞く。




「これからお前にすることじゃああ!!!」


その魔法陣が強烈な光を放ち始め、一面が熱くなる。


「うわ!?ウワアアアアアアアア!」


上も下も存在しない、確認認識できないほどの強烈な光は、オーブンのように僕を焼き始める。

痛覚がない、いや、感覚そのものがないのだ、完全に騙された、くそ!なんで今になって気づいてしまったんだ!


焼ける素肌、奪われる視界、失っていく感情、いや、それは厳選されていいるのだろう、ルッツやこの施設に愛する憎悪がそうしている!

ルッツに聞こえるかわからないが、焼ける声帯で命いっぱい叫んだ。


「嘘つき!殺さないって言ったじゃないか!?」


聞こえたようで、笑いながら奴が顔をだす。この焼ける強烈な光はるっつを焼き殺すことはなく、むしろ顔を避けて通るように動いていた。


「痛くないじゃろ!そういう魔法がかかっておるからのう!殺さないぞ!シサシブリニハイッタモルモット!簡単には殺すものか!歓迎会であおう!ごもっとも、君が歩けたらだけどね!はぁっはっはっは!!!」


刹那強烈な耳鳴りで混乱する。ギーンと少しずつ大きくなって、目が焼けて口が焼けてしたが体が、もう、何がのこているかわからないとき、この男の意識は完全に焼失した


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