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悪党のすすめ  作者: と
政党奮闘記
58/63

57 農騎兵

「困りましたね」


ユッタは汗にまみれた顔を手でぬぐい愚痴をこぼした。彼女は今、好まない軽装な服を着て、手にスコップを握り街の要塞化にいそしんでいる。どうせすべて破壊されてしまうんだから作る理由なんてない。そうは思うのはユッタだけではなく、その部下の騎士団や駆り出された住民もが皆同じ考えだった。ただ、その中でローレとその部下の学者だけは思っていないようで炎天下の中工事現場の指揮にいそしんでいた。


「そこじゃない!違うわよ!あーもう、ちゃんと設計どうりに動かして!」


「ローレ、精が出ますね」


「だ、団長!あなたが働く理由はないのよ?すぐにスコップを置いて!」


先ほどの形相とは打って変わりユッタの持っているスコップに手をかけるローレだったが、アマーリアは納得していないようで決して離そうとはしなかった。


「今作っているこの要塞、本当に役に立つのか疑問があるですが」


「要塞ではありません!これは防空壕です!もしウーダンカークに浮揚艦が来て砲撃が始まってもこれがあれば市民は生命を守れます!」


彼女は何一つ落ち度はないと自信たっぷりな顔でユッタにいうが、ユッタ自身はそれを余りいていないようだった。


「はぁ、その話が本当ならいいのですね。何せ、民を守る騎士が苦労して穴を掘り土嚢を積んでいるのですから」


ユッタはローレの研究所が一体何をしているのか非常に気になったがぐっとこらえ再び麦袋に土を入れる。考えてみればここ最近は剣なんかよりも土木作業や姉であるアマーリアとの会話しかしておらず、自身が騎士であったことなどとうの昔のように思えてきた。それが無性にむなしく感じる一方でこれが平穏なのかと思うことまた複雑な心境になった。


「それにしても、本当に戦争は始まるんですねローレ」


「ええ・・・それも限りなく近いはずね。でもヴィンセントならきっといい策を練っているはずよ、あの男は元を正せば豪傑で有名な騎士だったもの」


その後話が本当ならば自身が防空壕を掘るような真似はしないだろう。防備の態勢も整っていないこの体たらくで戦をするなどという世迷言は、明らかにヴィンセントの予想を上回っていることが起こっている証拠だ。


「おやぁ、精が出ますな騎士様」


同じく労働に駆り立てられている奉仕団の者がユッタに語り掛けた。それに答えユッタも会釈をする。


「あんれ、なんで騎士様までこんな土臭ぇところで働いてんだ?」


「はは、はたらかざるものなんとやら。そんなところですかね?」


「無職か?」


瞬間ユッタに稲妻が通ったように硬直したが、振り払うように首を横に振った。今や騎士団は外形を残して散開しており集まりにくい、それに付与して皆多忙となればいくら騎士団長であったとしてもやれることは少ないのだ。


「い、いえ休職中・・・ですかね?」


「そうか、それなら戦はまだ先なんだな」


その重い言葉に含まれた現実に、ユッタは少し戸惑いを感じながらもユッタは静かに聞いた。


「民は、今どのような?」


「どうもこうも、皆逃げ出すか出さないか考えてるよ、せっかくの生活だったけど戦となれば家も焼かれるし何も残んねえ。ならどこかにいくほかあるめぇよ」


怒りに近い感情をにおわせながらも、どこか諦めているような声には複雑な心境が感じられた。どうしようもない。いつかはこうなるんだと、恐らくはこの者でなくとも誰だってわかっていたような事だ。所詮反乱軍が一時的に成り上がっただけですぐに強いものに潰される。そう伝えたいかのようにさえ聞こえるのだった。


「・・・他に行くところは?」


「ねぇよ、流民で流れ着いた矢先、やっと土地に根をはった時だぞ?そらぁ役人やら兵隊やらは悪党が仕切っていたから随分自由にさせてもらったけど。こんな終わりねぇべよ?せめて俺の代くれぇ静かに過ごさせてほしいわ」


「あと半年は、その平穏は得れるはずです。残りの半年は我々が全力をもって対処しますから」


立った半年。それが現実だった。民衆の怒りはごもっともだ。どれほどの正当性があったとしても戦争をすることに賛成する民衆はいない、プロパガンダもなしに民衆が了解を得る事はできないのだ。無論それを知らない正統グリーフラントではない。民衆の士気の低下を避けるためこの工事の合間ですらあちらこちらから兵士が馬を駆けて声を響かせている。


「これは民衆の独立のための戦争だ!犠牲を惜しむな、戦え!武器をとれ!」


「っけ、好き放題言いやがって。お偉いさんたちは一体何を考えているんだか」


反吐が出ると言わんばかりに唾を吐く。


「・・・」


何も言い返せないユッタは、ただ黙って土をほじるだけであった。


「ユッタ様」


そんな哀愁を感じるときに珍しい客が来た。秘書の制服を着て眼鏡をかけ、口にパイプをくわえたカロリーネで、まるで自分には関係ないとでも言いたいような態度であり。ユッタは少し不思議そうにそれを眺めていた。


「カロリーネ、久しく顔を見ていませんでしたがどうしました?」


「まぁ、私は社長のいない会社を経営しなくてはいけなかったので中々お会いできませんでしたが元気です」


少し疲れたようにカロリーネはふっと伝えるとまた煙を吹かした。晴馬がいない今、会社の経営はカロリーネが主導で行っていることはユッタの耳にも入っていたがさすが元は文官だったこともあってそつなくこなしているようだ。元をただせば晴馬がアイデアを出して彼女が具現化していたようなものなのだから経営が出来るのは当然といえば当然だ。


「社長は、どうですか?」


「・・・、どうとは、何とも言い難い話です」


ユッタの曖昧な返答にカロリーネは無表情で答えた。いつ争いが起きてもおかしくないこの状況で我々には当事者として晴馬が必要なのはユッタでも十分にわかっていた。そのような時にまるで臆してユッタを隠れ蓑にするかのように消えた晴馬にカロリーネは失念や落胆をにじませている。しかも、それが再起可能なのかどうかはわからないのだ。


「・・・腹立たしい半面、正直安心しました」


「安心、ですか?」


「今もう一度社長に合っても、今までのように接することが出来るか不安だったので」


カロリーネは昔からあった晴馬の反面には気づいていた、だがそれが明るみに出たときに晴馬に対する評価を変えた。明らかな敵対心と恐怖を感じたのだ。ユッタにはまるで自分が恐れられているように思い心を痛めたが、因果応報と感じてしまい。結局は諦めるしかなかった。


「ユッタ様、私実は社長がいい人なのかなって思ったときがありました。おかしいですよね?ユッタ様からしてみたらユーヒリアでのハルマ様がいつものハルマ様なのに、私が見ていていたのは外面だけでした」


「カロリーネ・・・」


ユッタは苦悶の顔を振り払い、冷静沈着な顔で接した。


「晴馬は・・・確かに馬鹿で愚かで外道ですが、最後の良心を私には見せてくれました」


「良心ですか?」


「はい、彼は自身の感情が私を蝕むと気づいて、自身を、その、限りなく消滅させたのです」


「そんな・・・」


カロリーネは次の発言を言わずに心に説き伏せた。「ハルマがいなくなったのは貴方のせい」などというのはあまりにも非常識だったからだ。結果的には晴馬が悪い、それは絶対的な事実でありユッタは結果として生まれたに過ぎない。そもそもなぜそのような考えが自分の中に生まれたのだろう?根底から自分の主張を否定せざるを得なかった。


「相変わらず社長は自分勝手ですね」


「はは、おかげで私は生きているみたいですが、そういった側面がある限り貴方が見てきた晴馬も間違いなく本物ですよ」


「本物、ですか?」


ユッタは頷いた。彼女はすっと遠くを見て懐かしむように語りだした。


「晴馬はまだ正統グリーフラントが蜂起する前から一緒にいますが本当にわからない男です。彼の考えていることも、後先感がええいないのか、それともどのような結果であれ受け入れる覚悟であるのかすらわかりません」


「だから私が見た社長も本物だと?」


「はい、私はそう思います」


カロリーネは少し混乱したのか頭を押さえて悶えるも、ユッタは何一つ間違ったことを言っていないと言わんばかりに満面の笑みで答えた。それゆえか、カロリーネは一つの疑問が生まれた。


「ユッタ様はしゃちょ、ハルマ様のことをどう思ってらっしゃるのですか?」


「私ですか?そうですね・・・私の分身、血肉を分けた姉弟です。もし弟が問題を起こせば、一緒に謝るくらいはしてあげようと思います」


「ふーん、ふふ・・・っほ!」


カロリーネは自身の方を叩いて平静を呼び出していた。何か踏ん切りと付けたかのような顔で冷静になるといつも通りの目つきを取り戻す。


「分かりました、それなら話題をビジネスに変えましょう。もしよろしけれ貴方の弟の工場の方までご足労願えますか?貴方を雇いたいんです」


「わ、私をですか?」


カロリーネは頷いた。冗談の類でないことはわかったが突拍子がなさ過ぎて困惑を隠せないでいる。というか騎士一筋の陣でいであったユッタにとって他の仕事で役に立つ自信がまったくなかった。


「聞きましたよ?ユッタ様ったら昼間に剣技をするかこうやって日雇いの仕事をするだけでお暇なのでしょう?」


「うぐ!わ、私だって仕事ぐらい。騎士ですから」


「その騎士団は細切れで機能していないでしょ?今になって研究所、治安組織、その他もろもろから引っ張り出すんですか?」


ギク、また痛いところを突かれたとユッタは冷汗をかいた。我に戻りにカロリーネから背を向け土を掘るもカロリーネの突き刺さる視線からは逃れられなかった。


「アマーリア様から何か命が下りましたか?貴方への過保護な溺愛を見る限りそれもおそらくないでしょう」


「お、お姉さまは私を心配して・・・」


「それでこんな浮浪者みたいなことしていたら駄目ですよ」


「うう」


資材置き場近くの水場で軽く汗を流した後、すぐに晴馬の会社にユッタは赴いた。カロリーネが社長代理を務めた後の会社はとても大規模なものとなり、特に生産技術の管理については厳格で警備に兵士をつかせるほどの徹底ぶりを見せた。それに唖然としながらも社長室に案内されると書類を整理しているフェリシーとの再会が出来た。


「あ!ユッタ様」


「フェリシー、初めまして、ではないですね。カロリーネはどちらに?」


彼女が指さす方向には晴馬の座っていた時と何一つ変わらない薄汚い机で書き物をしているカロリーネがいた。フェリシーに呼ばれ彼女ははっと我に返りユッタに視線を向ける。


「すいません。少し熱中していました」


「多忙なようですね、それで話とは?」


「はい、貴方には傭兵団の首領を務めていただきたいのです」


いつになく真剣な顔で語るカロリーネをユッタは少し不気味に感じたがそれ以上にぶっ飛んだ話に大声を出した。


「は、はぁぁぁ!?私が?傭兵団を?なぜです!?」


「じ・つ・は、ヴィンセント様からの依頼なんですよ。銃で武装した騎兵傭兵団のための武器を作ってくれって言われてまして、武器調達は容易だったのですが人材がいないものですからユッタ様を起用しろと」


「そ、それならば私の騎士団を再結集させれば事は足ります・・・」


カロリーネは指を振り否定した。チッチッチ、そう言うと注文票を机に置きユッタに見せた。


「こ、こんなにですか」


「はい、明らかにこんな数を用意するとなれば既存の騎士団では両手両足じゃ足りません、もっともっと大き人数が必要になるんです」


「それ以前に、こんな数の騎士をどうやって養成すれば・・・それだけじゃない。そもそもこんな数どうやって集めれば・・・」


するとまたカロリーネは指を振った。チッチッチ、今度はウーダンカーク傭兵団の書類から一枚を抜き出して机に置いた。


「ユッタ様、こんな働き方を知っていますか?農騎兵です」


「農騎兵?まさか民間義勇軍でも組織するのですか」


「ええ、貴方にはそこで団長として働いていただきます」


ユッタは何か姉を裏切ったような気がして顔が引きつったが、確かに騎士団、もっと言えば騎兵の増員については賛成だった。大国の連合軍が攻めてくると考えれば一騎士団では到底太刀打ちはできない。もっと数が必要だということはわかっていたのだ。


「アマーリア様にはご内密にではありますが、ヴィンセント様は正規軍として組織することを考えておられます。人員はトップを除いて既にそろってます。この依頼、お受けになられますか?」


「で、でもお姉さまが・・・」


「そうだ!これを忘れていました」


カロリーネはそう言うとどこからともなく兜を持ってきた。それは騎兵用の特別な兜で、以前晴馬が騎乗槍試合で使ったものに口だけ露営したつくりだった。


「ユッタ様は、もう一度騎士として戦いたくはありませんか?」


その言葉にユッタは魅かれるように兜を指で触っていた。騎士として戦う。それは晴馬の体になって以降も心掛けていたことで何ら変哲はない。ただ、馬を操り、戦場をかける誇り高き騎士団のものとして戦う騎士というならば、喉から手が出るほどに渇望していた夢だ。


「わ・・・」


「わ?」


「私で・・・お役に立てるなら」


そう言ったのもつかの間、カロリーネに思いっきり背中に叩かれ変な息が出た。鎧一式を渡され追い出されるかのように社長室を出たかと思うと今度は作業場に案内され、目を回すユッタを迎えたのはベルイーだった。


「あ、貴方がユッタ様ですか?」


「え、ええそうですけど」


「お話は伺っています、どうぞ、まだ試験段階ではありますがいい出来ですよ」


ベルイーはそう言って彼女に騎兵用の武器を紹介し、彼女の頭の理解が追い付く二倍の速さで説明してユッタを余計パニックにした。


「ベルイー、いつも言っているでしょう。そういうオタクっぽいところはやめなさい」


「あ、すいませんカロリーネさん。仕事のことになるとつい」


「まったく、あ、そうだ。これから客人が来るけどその人の説明は単純明快に、いいわね!」


客人とは?ユッタは首をかしげて疑問に思うも誰か全くわからなかった。しかしすぐに『客人』が現れたことで疑問は解決した。


「ああ、ナゴ、やっと来た」


「カロリーネ、どうも、ユッタ様の返事はどうでした?」


「OKだってさ、ユッタ様、彼が騎兵部隊の副隊長を務める・・・」


「ナゴ、貴方は確かヴィンセントの秘書では?」


既に面識あるナゴが、以外にも騎兵の副隊長を務めると聞いたユッタは少し不思議そうにしていたが、同時に本当に務まるのかという不安もあった。それを悟ってかナゴは笑い腕を力んで見せびらかす。彼の坊ちゃん狩りの髪形と相反して傷まみれの腕からは幾千の戦人であることがうかがえた。


「ご安心をユッタ様、私ももとをただせば戦士。足を引っ張るようなことは致しません」


「戦士?どこの戦士ですか?」


「ここより遥か遠方、ヤマトの国の悪党でした。おおっと、誤解されぬよう言っておきますが本来の意味の方の悪党です」


つまりは盗賊だ。やっぱり、ここには碌な連中がいない。


騎士の変革は著しい、そのように考えるようになったのは今この瞬間からだった。今迄所領を得て、時に王のために、また時には民のために働いた騎士という集団が、こうも安っぽく見繕うことが出来るなんて夢にも思わなかった。目の前にはどこから湧いたのかわからないごく普通の人々が騎乗して武器を持っているのだ。こうも簡単に変化されてはたまったものではない。


「これで全員ですか?」


農村よりいくらか離れた街道には乗馬した者たちが集められた。誰もが騎士として生きていたわけではなく、雇われたから来たわけでもない。すべては今ある安らかな平穏を享受するため一つの旗のもと集められた意志ある者たちだ。


「まさか、集めようと思えばさらに集まります」


ナゴは満足げに言うが、ユッタは決してその言葉に不満しか感じていなかった。気品がどうとか、格式がなどというつもりはさらさらないがそれにしたって模範とすべき騎士道があるはずだ。にもかかわらず目の前の騎兵からはそんなものは感じられない。それどころかさっきから鼻くそをほじっている大男は何のために呼ばれたかわかっていないようにすら思えるほどだ。


「あのぉ、おらたちはもうかえって良いべか?」


「ちょっと待ってくださいよ呼ばれてすぐ帰るとかバイトですか?」


当然のように突っ込みするユッタに様相村人の男ははぁ、と息を漏らした。


「ご安心くださいユッタ様、この者たちは皆豪傑の末裔や祖父の代は騎士であった者たちです。血統から言っても何一つ問題ありません」


「現世代は遺憾なく平民ですナゴ、貴方はひょっとしてポンコツですか?なぜ軍最高指揮官の秘書になれたのか疑問が絶えません」


眉間を抑えて悶えるユッタは自分が鎧をまとってわざわざ出迎えたのがバカバカしくなった。こんなことなら私服どころか寝巻で訪れても彼は疑問にすら思うまい。それほどに彼らからやる気は微塵も感じなかったのだ。特にさっきから鼻をほじっているあの大男、いつまでほじっているんだいい加減あきらめろと言いたくなる。


「んがあ、おらも畑仕事があるし村の馬の世話もせにゃならなん。帰ってええだべか?」


「大男さん、どうして直ぐ帰ろうとするんですか?あといつまで鼻をほじるおつもりなのですか?」


「ああ、ああああああ」


「言語野でもほじりましたか?」


ユッタはとっさにナゴをにらんだ。話がまるで違うじゃないかと訴える瞳にナゴも思わず苦笑した。


「ユッタ様、言いたいことは身に染みてわかりますが言い分を聞いてください。悪党に流れ着く流民でなおかつ馬の扱いに長けているとなるとこれが限界です」


「流民?農騎兵であるという話をカロリーネから聞きましたが?」


「農民として平時は暮らしておりますが昔から住んでいる者たちではありません。馬は厩を経営している農村から買い取ったものです」


何という誤解、ユッタは腹痛でもないのに腹を抑えた。こんな調子ではいざという時に使い物にならない。どこから始めればいいんだとストレスがマッハになりそうだったのである。問題はそれだけではない。馬だ、農村の馬は輸送に秀でだ品種であることが多く、又重い鎧を着た騎士が乗っても走れる機動性を確保するために必要な訓練を行っていない。つまりはすべてが最初からだということになるのだ。


「・・・ちょ、調教師は?馬の調教師や世話役はいるんでよね?」


「ご安心を、軍としての必須項目は揃えてあります。後は訓練するだけです」


最低限のラインは確保してあると知って安心したユッタは熱い握りこぶしをした。だがそれがどれほど無意味なことかは数日もしないうちに分かった。間もなく戦争が始めるというのに素人も素人。まさに寄せ集めであった烏合の衆がワーワーとわめくだけで全く役に立たない。





「そうではありません!しっかりと指揮どおりに動きなさい!あーもう作戦通りに動きなさい!」


ある時のユッタは気付けば建設時のローレと同じことを言っていた。皆の先頭にたち馬を駆けるユッタは独力での指導は困難だと部下を何名か連れての戦闘訓練で誰よりも動き、馬を操り、そして叫んでも。農騎兵を強い兵士にするのは困難だった。朝方に広っぱで理論を学び、昼に食料を作り。夜には自らの村の村長の家に集まって座学を受けるのは農民には披露的にも生活的にもかなり苦しいものだった。


「はぁはぁ、騎士様ぁ!おら無理だ」


一人の農騎兵が根を上げて馬と共に休んでしまった。それを見た他の農騎兵もつられて動きを鈍らせて馬の脚を遅らせてユッタが突飛して戦隊から突飛してしまった。気付いた彼女はすぐに戦隊の馬の脚を止め、休む農騎兵の元へと向かった。


「何をしているのですか?あなたたちは間もなく加わる多くの仲間を導く勇士では無いのですか!?」


「お、おらたちはただ雇われてるだけだ!この土地に縁もゆかりもねぇし何のために戦うかもわかんねぇのに、こんなつれぇ訓練何のためになるだ!」


さじを投げるかのように手持ちのスピアを捨てた農騎兵にユッタは大きなため息を吐くが、馬から降りて彼の休む馬の元へと足を運んだ。


「騎士様は畑耕したことあんだべか?」


「ええ、最近は其ればかりです」


「なら聞かしてくんろ、何で農民を兵士にしようなんて考えてんだ?いつも戦ってる傭兵を雇えば兵士は簡単に補充できるべ」


農騎兵の言いたいことはユッタにはよくわかった。ユッタが騎士団長を務めてから数日、日々の猛烈な訓練が農民の畑仕事や酪農に負担をかけているのだ。だからこそユッタは思った。果たしてこの軍の編成は本当にあっているのだろうかと?守る場所が自らが棲んでいる土地、村にいるわけでもない国が決めた最前線にわざわざ出張ってきているこの者たちが戦う理由。それは忠誠を絶対とする騎士との大きな違いであり、農騎兵が最も悩むであろう問題だった。それをどう見言い出すべきなのかは謎のままであったからだ。


「兵員不足なら傭兵を雇え、それでも足りなかったら国外から雇うべきだべ」


「あくまで自分たちは加担しないと?」


「んだ、見ての通り役にはたたんないべ」


傭兵の軍隊と市民ないしは国民からできる軍隊の違いは数にある。大量の物資を有し、なおかつ兵站が安定しているというのであれば国民軍が有利なのは間違いない。しかしながら兵士が専門職である傭兵はそれぞれの武器を長い時間をかけて訓練し熟練した兵士が数々の戦場を戦った経験を積んでいる彼らは金さえ渡せばすぐに表れるという国民軍には無いメリットがあるのだ。


「・・・」


先ほどから止まっている農騎兵たちも口では言わないが同伴する騎士たちに否定的な視線を向けており、皆同じような感情を持ち合わせているようであった。それは、ユッタを敵対視しているように見ているのだ。ユッタは孤立したようにその者たちを見つめ返していると騎士たちはすぐさまユッタの元に現れた。


「団長、所詮は平民の身であった者たち、騎士に・・・騎兵にはなりえません。奴ら、すぐに根を上げ始めます」


「だからと言って諦める分けたにはいきません」


「とは言いましても、やはりこのままでは・・・」


「ひとまず、今日の訓練はここまでです。改めて訓練を受けるように、今日は・・・解散です」


農騎兵の訓練は最悪のスタートを迎えた。何もかもが上手くいかず空回り、敵対視する目。部下の不信感のみが今日の成果だった。ユッタは思い通りにいかない悔しさに少し歯ぎしりをしての帰宅となった。自分が騎士になった時とは大きく違い。兵士になるこを望まない兵士にはどのような訓練が必要なのかがわからなかったのだ。

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