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悪党のすすめ  作者: と
悪党→政党編
49/63

47 新点

フェリシーは晴馬に話しかけられないでいた。理由は簡単で帰ってきた晴馬は明らかに言っていく晴馬と雰囲気が変わっているからだ。向こうで何かがあったことは間違いないのだがどうしても聞きにくく、無理に言えばはぐらかされることは間違いない。なので今できることといえばこうやって何かを工作室で作っている晴馬の背中をただ眺めるだけであった。共にいる学者風の男の分のカップも持ち紅茶を持ってくる。


「ハルマ様、実験の結果は上々です、恐らくこの星もチキュウとやらと同じ太陽と地球の関係のようです」


「よし、なら太陽も同じサイズということになるね」


何を作っているかはわからない。しかしながら重要なものであることは間違いないようだ。晴馬と共にいる立派な白髭を蓄えた老人はどうやら学者のようだ。先ほどから晴馬の製作物に対して何等かのサポートをしている。


「では。、私はローレ所長へ完成の報告をしに参ります」


「ああ、研究所も最近は忙しそうだしよろしく言っておいてよ、天文学者もやってきていよいよにぎやかだと」


「そうします。では」


学者は去っていった。フェリシーは晴馬の元へ駆け寄った。


「あの学者みたいな人、いったい誰ですか?」


「ローレの研究所の職員みたいだよ、あそこは今赤霧の教会からの異端を恐れて逃げている科学者の避難所みたいになっているからいろいろなひとがいるから天文学者を呼んでもらったんだ」


晴馬の説明しているさなかフェリシーは机に置いてあるとあるものを見つけた。どうやら自由都市国家群から帰って来た時に持ってきたものらしい。見たところ航海で使われる機械のようだが、使い方はちんぷんかんぷんだ。


「なんですかこの装置は?」


「四分儀、航海をする際に使われる星の観測機器でこれを使って自分の位置を確認するんだ」


晴馬そう言いながら実際に手にもって空を眺めながら説明した。フェリシーには何を言っているのかちんぷんかんぷんといった顔をしており、十分も説明をすると寝ぼけてこっくりこっくりと顔を動かしていた。


「なんだよフェリシー、人が説明してるんだから最後まで聞いたっていいじゃないか」


「は!す、すいません晴馬様。あ、でもえっとその・・・」


「わかってるよ、どうせ興味ないんだろ?」


分かりっていると言わんばかりに晴馬はため息をついた。


「うう、すいません」


「いいよ別に、それよりも紅茶をもう一杯淹れてくれる?」


「ぷーん」


このぷーんはフェリシーが発した言葉ではい。先ほどから部屋の隅から聞こえるとある人物の声だ。それを聞いた途端晴馬はまたため息をつき、フェリシーは申し訳ないような顔をした。実を言うと悪党に戻ってから一番の悩みの種になっている。


「は、ハルマ様・・・」


「わかってるよ」


「ぷーん、ぷーん」


カロリーネは不機嫌そうに言いながら執務にあたっていた。明らかにすねたような表情で何か不満を持っていることが見て取れる。


「あ、あのカロリーネ様お茶を・・・」


「んぐんぐ、ぷはー」


勢いよくカロリーネは紅茶を飲み干したが機嫌はなおらなかったようだ。晴馬をジト目で見つめ不満の講義をしているように見える。


「な、なぁカロリーネ、確かに自由都市子国家群に行く前は連れていけなかったしここ数日も四分儀や新しい観測機器開発でまともに話さなかったのは謝るよ、だから機嫌なおしてよ」


「ふーーん、ベッツに私気にしてませんけど?忙しかったし同行できない『事』はしょうがないと思いますし、まぁアフターケアですよね重要なのは」


「思いっきり気にしてるじゃないか。仕事なんだからしょうがないだろ」


「仕事仕事って!いったい私をなんだと思っているんですか!」


何でここで夫婦漫才が始まったのか晴馬は理解できなかったが始まったのはしょうがないのでオチを探し始めた。


「秘書でしょ」


「まぁそうですね」


どうやら埋め合わせが必要だと晴馬は気が付き始めた。仕方なしに晴馬は手帳を開き予定を確認する。


「余り期待しないでいてくれるなら、できない事もないけど・・・」


「ほお、ちなみにいつになるんですかね?」


「1月後かな?一年後かも・・・」


晴馬は黒く塗りつぶされた予定表に苦悶しながら答えた。正直やることが多すぎて何かできる自身もないがそれでも誠意だけでも彼女に伝えることが出来ればと言っては見たものの、カロリーネは一層険しい顔をするだけだった。


「絶対に守れないでしょ、というか守る気ないじゃないですか!」


「いや、埋め合わせは絶対にするから、でも予定がわからないというか」


「はぁ、しょうがないですね。なら、交換条件で譲歩してあげましょう」


カロリーネはため息をついて晴馬に提案した。晴馬は助け舟に乗ったような安堵を見せ、カロリーネの顔色をうかがう。


「今日の昼食は社長のおごりです、というわけで領主の館にでも行きましょう」


「なぜ飯のために館に?」


「前の領主の従者の料理番がそこに宿とレストランを開いたそうですよ?アマーリア様が寄付したそうで人気なんだとか」


カロリーネは早々と外出の用意をする。晴馬の合図を待たず、無理やり手を引いて出口へ向かった。


外は蒸し暑く、常夏を自覚させる時間に移ろうとしていた。待ちゆく人々は何が楽しいのか忙しそうに往来しており、活気に満ち溢れているように晴馬は感じていた。こんな窮地の国家になぜそこまでの希望を感じられるのか不思議に思いながら晴馬は眺めながら歩く。が、やがてカロリーネの不満を肌で感じるようになり彼女の機嫌を伺うように顔を見た。


「むう、なんで一緒に歩いている私には目もくれずいるんですか」


不機嫌そうにカロリーネは晴馬に尋ねる。晴馬はあたりを指さした。


「カロリーネは不思議に思わない?何でこの人たちはこの国であんなに平気そうにいるのか」


「え?ああ、今ある自由を堪能しようとしているんじゃないですか?息苦しい王国を少しの時間でも忘れたいんでしょう」


「そうなのか」


「そんなことより!いい加減話したどうですか?」


「は?一体何を?」


カロリーネは晴馬に指をさして伝える。晴馬は不思議そうに首を傾げた。カロリーネはため息をつき。核心を突こうとしていた。


「とぼけても無駄です!社長の態度を見れば自由都市国家群で何かがあったかなんてオミトオシなんですよ!」


「おお」


「「完全にばれていますね、ベルダのことと考えて間違いないでしょう」」


晴馬はため息をつき頭を掻きむしった。悩むように唸りながらカロリーネを見てみる。


「じー」


彼女は言い逃れが出来ないように晴馬の言動に集中している。晴馬もそれを感じ取り目をそらした・脂汗を書き、目を泳がせ。必死に黙るように考えるように晴馬は唸ったが、そうしてひねり出した言葉は品格を疑うような発言であった。


「ウンコいきてぇ・・・」


凄まじい蹴りが晴馬の頭にヒットする。晴馬は何一つ防御することが出来ず、そのまま地面に伏した。カロリーネは赤面しギャーギャーとわめき散らかした。


「な、ない言っているんですか社長ー!なんなの?馬鹿なの?言い逃れできると思ったの?」


「いや、かなりいきたい、というか漏れそう公衆便所ない?」


晴馬の周りの通行人の笑い声がカロリーネの耳にまで聞こえると彼女はさらに赤面し茹でダコのようになった。その場で目頭を押さえ、舌打ちを行う。


「あるわけないじゃないですか、そこら辺の家か店の人に頭下げて行ってきてください!」


「オッスオッス」


晴馬はそそくさとどこかの店に消えていき、トイレに行くことに成功した。個室の中で晴馬は安堵の声を漏らした。無論、排便に対する安堵ではないのは言うまでもないことである。


「ああ、助かった」


「「全然助かってないですよ主に私の心が!」」


カロリーネの奇声から解放されたと思ったが、今度はユッタの悲鳴を聞くことになった。


「「なんですか一体!私の身体で言ったということは私が言ったことになるんですからね!」」


「まぁまぁ、彼女の尋問をこうやって回避するにはそれしかなかったんだしょうがないだろ?僕はむしろ後悔すらしていない」


「なぜ伝わらないこの悲しみが、女の人にウ、ウンコと言わせるなんて罪悪感がわかないんですか!?ローレが聞いたら卒倒しますよ!」


「ないない、トイレ行くときみんな言うじゃないか」


「「言 わ な い !」」


え?そうなのか、僕はいつもトイレいくときは「うんこ行ってきます」って言っていたけどなぁ。あれ?ウンコ出すためにトイレに行くのにウンコ行ってきますっておかしくね?正しくはトイレ行ってくるじゃね?おやおや、日本人なのに日本語も満足に操れないなんてこりゃぁ参った。今度しっかり勉強しなおさなくちゃなぁ。


「「信じられない!金輪際そういった話はしないようにお願いします。次回からは「お花を摘みに行ってきます」としっかり言うんですよ?わかりましたか?」」


「はいはい、そんならそうしますよっと」


「「なんですかその適当な反応は!絶対にお願いしますよ」」


やることもやった晴馬はそのまま店から出てカロリーネの元に向かった。彼女はだいぶ機嫌が悪いもののいつも通りといった感じだ。晴馬が合流するとにらみつけてきたが、晴馬はから笑いでごまかした。


「ああ、ごめん待たせて。済ませてきたよ」


「いいですよ、ただ、さっきの話はあとでしっかり聞きますからね」


どうも食いつくらしい、又何か適当に言えばいいかと思ったかがカロリーネはとても心配そうな顔をし始めた。僕に何があったのかを聞きたいというよりは、できるだけ不安を取り除きたかったのだろうとカロリーネの心情を理解した。


「食べに行こうよ」


晴馬は笑顔でカロリーネに言って昼食へと向かった。良く晴れた昼下がりの出来事である。





ウーダンカークの隣にある砦は白熱の議論に包まれていた。晴馬が自由都市国家群へ向かっていなかった数日に赤霧の教会に対する親睦派と対立派による論争が巻き起こっていたのだ。この事態を解決するためにアマーリアはできる限りのことをしたが。それでも、解決するどころかむしろ余計悪化したように思えてくる。


「赤霧の教会による連合軍が発足すれば我らは完敗だ!それでは何のために反乱を起こしたのかわからないではないか!大人しく降伏し以前の要求を呑もう」


「だとしてどうする!?銃を奪われ、技術を捨てられては我々はおしまいだ!貿易相手を選べない以上は戦うほかないだろう!我々にはアマーリア様がいる。ガーディナルの神髄をもって勝利に導いてくださる」


「それがどれほどのものか、此の議場で知ってる者はおらん!」


会議は誰でも自由に参加できるような場ではない、ここにいる者たちはアマーリアによって選ばれた長官、大臣、顧問を兼任するような数十の重役のいわば最高幹部会だ。そのような者たちからつづられる悲観的な内容が会議室に響き渡る。ただ、その中でアマーリアという主要人物の姿はなかった。彼らはどこに行ったのだろうか?この緊迫した議会に必ずいなくてはいけない存在であることは彼ら自身が最も知っているはずであるのに姿がない。


「くそ、なぜ指導者であるアマーリア様はここにいないのだ!今こそ彼女が必要であるというのに!」


ついに一人の男がその異変に気付いた。男はアマーリアの秘書であるカタリナに視線を向ける。カタリナはいつも通りただ、無表情に議会の片隅に立っていた。


「是非お聞かせ願いたい、アマーリア様はどこにおられるのですか?」


「アマーリア様は現在りょう、ハルマ様のところに向かっております、なんでもユーヒリアとの貿易に使う交渉材料を手に入れたとか」


「交渉材料!?何も聞いておりませんぞ」


「私もです、ですがもうじきやってくることでしょうからそれを見ることにしましょう」


議会はざわついた、ユーヒリアへの交渉材料になるなどというようなものなど想像もつかなかったからだ。それがどのようなものかを円卓のあちこちで話し始めた。


「一体どのようなものなのでしょう?」


「もしかすると新種の穀物とか?香辛料の栽培事業を再生したのでしょうか?」


「いや、畑など見たことがない。ハルマ殿がともにいるとなると何か特別な機械なのではないか?あの人は例の工場の立役者でありますからなぁ」


「それなら想像もつきませんな」


皆が話している最中、一つのドアが開いた。そこからアマーリア、ヴィンセント、そして晴馬が姿を現した。皆が注目する中アマーリアは布をかぶっている物を持っている。両手で抱える程度の大きさで、とても大切に持っているようだった。


「遅かったではないですかアマーリア様、てっきり来ないかと思いましたぞ」


一人の男がアマーリアに話しかける。


「すまない、急ごしらえで作ってもらってでも皆に見せようと思っていたんだ、このユーヒリアとの交渉材料を」


アマーリアは不敵に笑い皆に誇るように両手に抱えたものを見せつける。儀壇上に立ち、例のブツを置くと多くの議会の人々が注目するようになった。カタリナも隻目で凝視するように見つめ、懐疑的な表情をし始めた。


「あれが例の交渉材料?何とも小さくて何ら役に立たなそう・・・」


議会が静まるのを見計らってアマーリアは語り始めた。


「諸君には説明もせずに勧めてしまったことは申し訳ない。私は、個人的にユーギリアとの協力を行うことが出来ないか模索しておりその結果この【交渉材料】を手に入れることが出来た」


アマーリアの発言に議会にはため息をする者もあらわれた、臣下の人間にも伝えずに行ったことに憤りを感じている者も少なくなかったからだ。


「アマーリア様、我々を信用してなかったからその交渉材料とやらを我々に教えなかったのですか?」


一人の議会の人間が言う、余りにも民主的でない、つまりアマーリアが独断に行動しているように思ったがゆえに言った当然のことであるというようにアマーリアに問う。アマーリアは首を横に振りまるでその者の考えている思惑を悟ったかのような表情を見せた。


「そう思うのも当然だ、しかし私は古来の王族のようなふるまいをするためにこのようなことをしたのではなく、極端に議会に審議をかけてから行動すべきであると判断したんだ。つまり私が独断で行動するつもりはない皆が値する価値がないと思うならば迷わずに却下してくれ」


「これから、この装置についての説明を晴馬にしてもらう。判断はそのあとで聞くということでよろしいかな?」


どよめきがあたりを支配する。ただ、混沌とした議会でもまずは見てみないことにはという結論に至り沈黙の肯定となった。


「ありがとう、では、製作者の一人である。天文学者を呼ぶことにしよう」


学者はアマーリアに呼ばれて現れた、議会の中央にて交渉材料を披露した。ベールを剥いだ交渉材料はとても奇妙だ。ヘンテコな形で機器であるということしかわからない。目盛りの刻んである円弧状の物差しや鏡のようなものが取り付けられていた。


「学者殿、それは一体何ですかな?」


「はは、研究所と工房での共同開発した六分儀にございます」


「研究所?ああ、ローレ殿のところの」


その言葉に多くの者は笑った。というのも、設立されて以来これといった成果がなく、いたずらに学者を囲っていたために国のごく潰し程度にしか思っていなかったのだ。彼らは成果をやっと出せたのかとなめてかかっている。


「ふん!」


敏感に読み取ったローレは鼻を鳴らした。明らかな不機嫌と存在感は周りの議員や幹部に伝わり、すぐに場を鎮まらせた。


「ひとつよろしいか?六分儀とは何を行う機器なのですかな?」


「これは、船が航行を粉う際に必要なものです。星の位置を観測し自身の場所を海図を使って特定する際に必要不可欠な物であります」


「私は専門家でないが、それはすでに四分儀とい機器が補っているのではないかね?」


「はい、しかしこちらは精度が違います。本来は誤差一キロ以上のところを百メートルにまでとどめております」


「百メートル!?」


勿論、この世界でメートル法が使われる事はない、読者にわかるように説明しただけである。100メートルという誤差の少なさはどれほどの偉業なのかを説明することは難しいが、あえていうなればコロンブスやマゼラン達が偉業を達成したのはひとえにこの天体観測機器のおかげだといっても過言ではない。つまりそれほどの能力がこの装置にはあったのだ。


「それはつまり、どれほどの効果を期待できるのかね?我々にわかるように説明してほしい」


「恐らく、今までよりも遠空に、そして命がけの航海を多少なれど軽減できるでしょう。新しい航路の就航も可能になるでしょうし船内の物資消費の削減も可能性が見えてきました」


「ははは、浮揚艦もない国がそのようなものを作るとはなんとも皮肉なものだな」


晴馬の飛行機への執着がまたここで輝いた。学者は其れについて原理から説明した。余りにも長ったらしいので省くが、これは四分儀では星座を観測するのに対し六分儀は太陽を観測することででより正確な緯度を知ることが出来ることができる。元をただすとこれらはイスラム世界で作られ、宗教的理由でどうしても方角を知る必要がったために作られた。これがヨーロッパへ伝来し航海に使われるようになったのである。


「おそらく、ユーギリアが求めている能力に値するものが作ることが出来たと思います。彼らは陸路の貿易が絶望的であるため必ず外洋航行ならぬ外空航行での貿易をするでしょう。その際にこれがあればより安全でなおかつ広域での活動を現実的にすることが出来るのです!」


自信満々に学者は言った。議会はざわめきはじやがて審議に移ろうとしている。アマーリアは自分の議席に座り審議を待つ。可決されれば、されなければ。頭の中をそういった事をぐるぐると回っている。と同時にこの装置が自分の周りをどう変えていくのかを考えていた。この装置は確かに素晴らしいものなのだろう。ただ、それを利用する方法はどこまで可能性を秘めているのだろうか?


「それで国が動く?信じがたい話ですな」


一人の幹部がそう提言した。幹部はあごひげを触りながらなおも続ける。


「たったそんな小道具一つでユーギリアが動くならば苦労はないわ、外洋航行?あたらしい航路を作るのにどれほどの時間と金がかかると思っている。むしろ私がユーギリアならばいっそグリーフラントに軍事侵攻し陸路を確保するというほうが現実的に思えるがね。そもそもどうやって届けるつもりだ?」


幹部の言葉は重くのしかかる。が、それについてのアマーリアの返答の言葉は酷く単純なものだった。


「ああ、モンスターを使えばいいだろう?飛竜でも何でも使って飛ばせばいい、その背中に乗っていけばつくじゃないか」


「はぁ?ここからユーギリアまでに続く天空の海洋を、一人乗れるかどうかのドラゴンの背中で過ごせと!?いくら何でも現実的的ではないではないですか」


「もちろんそういった竜を持ち出せばそうなるだろう、が、島龍を出せば長旅にも適するんじゃないかな?新しい航路も、その龍の後ろについていけば作ることが出来る」


「島・・・龍?」


幹部の言葉は突如途切れた、島龍はかつていたという伝説の古龍で化石しか見つかっていない生物だ。そんなものをなぜ今この場で言ったのか、幹部含めその場にいるものは誰も分かりはしなかった。だから誰もが開いた口をふさぐことが出来ないでいた。


「論より証拠というわけだね、衛兵に砦付近の人を避難させるように言ってほしい。面白いものが見れるよ」


途端、大きな地響きが砦を襲った。自身にしては周期的で、火山は近くにはない。ともなればいったい何がこのような音を出しているのだろうか。


「何かしら?急に暗くなったわ」


ローレは窓から見える空が急に暗くなり、曇天にでもなったのかと勘違いした。


「んん?」


カタリナは脈動のある景色だと不思議に感じた。脈動とはつまり景色が呼吸しているように見えたからだ。隻眼がゆえに疲れてしまったのかとも思ったが。やがて地響きのような呼吸を聞くようになり余計に混乱した。やがて外から悲鳴やら大声が聞こえるよになっていた。誰もがまさかと思い、小さな小窓に視線を集中させる。


「紹介しよう、島龍だ」

紹介で現れた島龍は咆哮で自己紹介?を行う。誰もが絶句し、初めてガーディナルの存在感を感じる事となった。先ほどまで反論を行っていた幹部ですら。もう自分が何を言っていたかなど覚えてすらないだろう。それほどこの光景は強烈で、新鮮なものだったのだ。


「輸送に関して誰か不満を感じるものはいるかな?」


誰も反応がない。ただの屍のようだ。


「では、今回のユーヒリア殿交渉については、この物品を持って交渉することについて賛成の者は手を挙げてくれ」


全員一致での採決となった。晴馬がせっかく作った物品の特徴や性能はもはや彼らの耳に入ってくることはない。誰もがこの龍の存在について集中しすぎて考えることが胆略となっているのだ。


これならばグリーフラント王権に同等の戦いができるかもしれない。ということだ。


「では、正統グリーフラントはユーヒリアと友好関係を模索し赤霧の教会とは敵対関係となる事とする。会議は以上だ」


会議は開始とは裏腹に静寂に閉幕した。





「面白かったわ!議会の連中も研究所の評価を改めたに違いないもの!」


ローレの笑い声が執務室に充満した。さぞ楽しかったのだろう、彼女は上機嫌に晴馬の机に座りながら説明をする。


「それで、なんでそれを僕に言いに?」


「貴方の装置について感想を聞こうと思ってね、私のところの研究所と共同開発したんだから聞きたいにきまっているじゃない!」


「ああ、精度は問題ないよ。問題はユーヒリアがこの装置によって貿易や軍事同盟を締結してくれるかどうかなんだけどね」


「成功すれば研究所の評価も上がるわ、私としてはぜひとも採用してほしいところね」


ローレはにやにやとしながら話してくれた。彼女は研究所の所長として多目的に僕をサポートしてくれたし非常に助かっている。しかしながら一つ気がかりなところがあった。確かアマーリアの話ではローレの研究所は魔法研究をすることではないのか?というかなんで元騎士が研究職なんかやっているんだ?


「思ったんだけど魔法研究をする研究所が天文学者なんて雇っているの?魔法研究とかやってる?」


「当たり前よ。今研究所は迫害された科学者の避難場所になっているから多くの人々があつまっているの、人種や専門がバラバラでたまたま晴馬が作りたがっていた天文学者がいたから協力してもらったのよ」


「避難所ねぇ、騎士様は慈悲深いお心をお持ちのようで」


「何よその言い方、言っておくけど私はもともとそっちの人間だったの、ユッタ団長に合ってから騎士になったの!むしろこっちの方が本職のところがあるのよ」


なるほど本職ねぇ、騎士ってのは家柄でえらばれるものだと思っていたけど意外と外部から入ることもできるのか。


「それで、ユーヒリアには誰が行くことになったんだ?」


「特使が一人と従者が三人行くことになったわ、言うまでもなく危険な旅になるからアマーリア様を直接向かわせるには危険すぎるからどうにかほかの人で間に合わせる必要がありそうではあるけどね」


「だろうね、しかも悪党の技術や六分儀の説明ができる度胸のある奴が必要だ」


「まぁハルマが有望株でしょうね、私はアマーリア様からの研究依頼で手が回らないし、ヴィンセント殿も重要幹部として動けない。」


まぁそうなるとは思っていたけどやはり僕か、となれば従者を探す必要があるなぁ・・・。


「はいはい!私!私従者を希望します!」


カロリーネがいち早く手を上げ、これでもかという声を上げながら立った。


「いいですか社長!?いいですよね?!」


「あ、うんいいよ」


「よし安全圏確保!いい滑り出しですよ!」


なんの安全圏だよ・・・、ともかく後二人必要か、できることなら戦闘経験のある人間で固めたいところだけど何とかなるかなぁ・・・。


「ハルマ様、どうぞ」


フェリシーはビスケットと紅茶を用意し会釈をした。しかしビスケットとは珍しい、今まで彼女が提供してくれるもので出たのは初めてだ。


「ありがとうフェリシー」


「いえ、ところでハルマ様、私仕出し女の経験があるんです」


「ああ、そうなんだ、ところでこのビスケット固い」


「仕出し女の経験がるんです」


「はは、ついてくるの?でもさすがに女二人を守りながらの旅は億劫」


「しだ」


「わかった」


よく考えてみればビスケットという携帯食を渡した時点である程度言いたいことを察せることに気づいた。しょうがない、彼女もついて行ってもらうことにして残りはあと一人といったところか・・・。


「出来ることなら戦闘経験のあるやつを連れていきたい。どうにか確保できないものか」


「そうね、ならゲラルドはどうかしら?彼の腕ならば間違いなく信用するに値するわ」


「よし、なら連れて・・・!」


一瞬だが、背筋を凍らせるような感覚を覚えた。そう、脳裏に一人、戦闘経験がある優秀な人材で重役でないものをひょんなことながら思い出したのだ。しかし、嫌恐らく当の本人の耳には入っていないのだからここに来るはずがない。僕が呼ばなければそのままウーダンカークに置いていけるだろう。問題はない。問題はないはずなんだ。


「第一あの人の耳に入れば僕がこんな危険な旅に出ることなんて絶対に反対する。アマーリアもそれを察して教えないはず」


「どうでしょうねぇ領主様?危険なほど愛は燃え上がるし、避けがたい運命を抗うのは酷なことですよ?リスクは少なくかつ大胆に行きましょう」


「ははは、ゲラルドを」


「いいんですか、せっかく一つの身体を二つにしても?」


どうやら、最後の従者は戦闘経験の豊富そうな花冠の騎士が行うようだ。

最近再開したばっかであまり良しあしが分かりません。良ければ評価をお願いします。(唐突なコメント稼ぎ)

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