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悪党のすすめ  作者: と
悪党→政党編
45/63

43 異端

晴馬は馬でとあるところに向かっていた、悪党のテリトリーからここに来るのはとても危険なことであったが難を逃れた。場所はマティネス近郊にあるとある村で彼はこの村に歓迎されるかどうか不安であったがひとまず行ってみることにした。


「ふう、やっぱりウーダンカークからだと遠いね」


「社長、本当にここに問題解決をする手がかりがあるんですか?」


カロリーネは不思議そうにハルマに問いかける。晴馬はカンビオンの棲めるウーダンカークを作るためにとある人物を尋ねに来たのだ。


「社長、正直私たちってこんなことやっている場合じゃないんですよ?今は議会が騒乱で出席の要請を押し切ってまで来たんですからね、この滞在期間はウーダンカークで何が起きているのかわかりませんし相当な問題ですよ?」


「わかっている、しかしながら議会がどうだろうとこの事案だけは早期解決したいんだ」


「何故です?」


「それが議会を助けることになるからだよ」


晴馬はとある場所にたどり着く、そこは元赤霧の教会であったが破門された教会でかつてここにはお世話になった。今度はその教えをさらに広げようと考えたのである。ドアの前で待ち、例の修道士が来るのを待つ。


「はい、どなたです・・・え?何で来たの?」


「久しぶりだねメロ、君たちの牧師に話があるんだ、すぐに謁見を要求する」


「父さんに?」


メロは不思議な顔をするがそれよりもカロリーネはよっぽど摩訶不思議な顔をしていた。彼女にはこの状況が理解できなかったのである。つまりはなぜカンビオンが修道士の格好をしてここにいるのか、もっと踏み入れればそんな暮らしがどうしてこの村では保障されているのかというところに疑問を抱かずにはいられないようだった。


「あ、貴方はカンビオンですよね?」


「誰?ええそうですけど何か?」


多少けんか腰の物言いだがこれは仕方なおないことだと晴馬は理解した。すぐにカロリーネにこの村の事情を説明し彼女が赤霧の教会の信徒でないことも相まって瞬時に理解を示してくれた。正直ここが一番骨が折れるところであろうと思った晴馬にとっては良い結果となった。


「すいません、少々驚いただけで他意はないです」


「そう、父さんを呼んでくるけど中には入らない方がいいわよ?あんた相当修道士の中で嫌われてるから」


「社長、ここで何をしたんですか?」


カロリーネが疑っている視線を晴馬に送る。


「別に、ただマティネス学院の生徒の時に滞在しただけさ」


「伺っています、メロさん、この人に何されたんですか?相当ひどいことされたんでしょう?」


「あはは、まぁ否定はできないわね、とりあえず呼んでくるわ」


そういわれしばらく外で待つこととなった。その際もカロリーネからの視線は強くなる一方で晴馬を困らせた。というか誰がその情報を漏らしたのだろうか?


「私は会社が出来るまでの社長を知りませんけど、この村からのイメージはあまりいいようには見えませんでしたよ?村人の視線とか」


「事実そうだから安心しなよ」


カロリーネは気になったがどんな新事実が出てくるか逆に怖くなりそれ以上は聞かなかった、しばらくして牧師が姿を現し苦笑いと共に接待をする。


「どうもどうも騎士様、いや、今は元騎士であると伺っていますが・・・そちらの方は」


「お初にお目にかかります、私はカロリーネ・ゲスリングというもので悪党幹部であるハルマ様の秘書を務めております」


「やはりそっち関係の方でしたか」


牧師はあまりいい顔をしなかった、勿論前回にここに訪れたときの仕打ちもそうであるが晴馬の現在の身の上を理解している牧師には絶対に関係を持ちたくない存在でいわば疫病神のような立ち位置に晴馬はいるのである。


「実は悪党の領地にいるカンビオンの件で話があって、どうしても助けていただきたいんですよ」


「どういうことです?とりあえず中へ」


カンビオンという単語を聞いた途端に牧師の表情は変わった、教会の中では修道士の視線が痛かったが牧師の庇護もあって無害に過ごすことが出来ているようだ。


「ん?そのネックレス」


「これのことですか?しっかりと大切に持ってますよ」


牧師は例のリリスを拘束するネックレスを持っていた。このネックレスはリリスの命を絶やす魔法道具だが大切に持っていたらしい、晴馬はそれを見て選択は正しかったと確信する。自分が持っていたところ誰も得しないし騎士団に持たせたら間違いなく砕こうというとすると思っていたので消去法で持たせたのが役に立ったということだ。


「こればっかしは誰にも渡せないしもしもの時になくしたら大変ですので肌身離さずに持つことにしているんです」


「あれからリリスたちとの関係は改善しましたか」


「ええ、森はいつも通り使うことが出来ますし人をサキュバスやインキュバスが襲うなんてことはなくなりました。おかげさまで全ては盗賊が来る日常の前に戻りました」


礼拝堂の椅子に腰掛け、長机越しに牧師と対話した。


「さて、私は騎士様の現状を少なからず耳に入っております、グリーフラントの反逆者、極悪非道の限りを尽くす『悪党』に入った大罪人だとかで学院で大騒ぎしているらしいではないですか」


「騎士団の都合でね、どの道にしろ悪党に入るつもりだったのさ」


「略奪行為を繰り広げているとか支配地域の民を虐げているとかうわさは絶えませんが・・・」


「それは誤解です牧師さん、私たち悪党は新しいグリーフラント建設に向けた革命組織で多くの自由を生み出す組織です」


「自由?つまりはどういうことでしょう?」


牧師は食いついたことを確認したカロリーネは今までの悪党が支配地域で行っていたことを説明した。職業の自由を与えたり、住居移転の自由、そして平等を目的とする組織であり決して王国が言うような組織ではないことを主張する、牧師はあまり納得していないようであったのでいくつかのアマーリアが出したお触書や統計の書類を見せつける。


「ほお、国としては機能しているようですし随分とまぁ・・・階級の放棄?特権の放棄?!ここまでやっているんですか!」


「はい、又モンスターもアマーリア様がガーディナルであることを理由に比較的寛容に受け入れられています」


「この職人や商人の息子のための学校自体は昔からありましたがウーダンカークはより多くあるようですねぇ」


「それもアマーリア様の推進案により存在しています」


牧師の反応は上々だった、少なくとも王党によりねつ造されている情報から真実を読み取ることに成功した事は間違いない。それを踏まえて改めて牧師に話を続ける。


「しかしながら最近、赤霧の教会の特使が売買のために奴隷としてカンビオンを連れてきましてねぇ、私どもとしても重大な問題として取り上げているんです」


「なんですって!?」


「特使は現在監禁状態、このことはいずれ赤霧の教会に知れ渡り国家間の緊張は避けられないものとなることは間違いないのですが・・・それよりも問題は連れてこられたカンビオンをどうするかなんですよ」


カロリーネはこの事態を牧師に説明すると牧師は歯ぎしりをし手机をたたいた。当然である彼はカンビオンを助けたことで破門されたのにもかかわらず教会はそれを利用して商売など始めようとしていたのだから言語道断だ。その怒りは修道士にも伝わっておりどうしたのかと近づくものも少なくはなかった。震える牧師は震える声出した。


「なんていう奴らだ、もはや同じ宗教とは思われたくもない」


「そこでだ牧師、貴方の力がいる」


「いいでしょう騎士様!私の力で解決できるのであれば何なりとお申し付けください!」


「貴方には私の国で新しい赤霧の教会の大司教になってもらう」


「なぜです?!私に再び戻れと申すのですか!?」


「いいえ、新しい赤霧の教会を作っていただきたい、僕は宗派を作りたいんですよ」


晴馬の言いたいことが牧師にもカロリーネにもよくわからなかった、つまりは、それは赤霧の教会に帰ってきてほしいということとどう違うということとどう違うのだろうか?晴馬は話をつづけようとペンを執る。


「まず、赤霧の教会はほかの考え方を持った方がいらっしゃいません、これはつまり現在の教義について皆が同じものを受けていることを刺します、しかしながら我々がウーダンカークで興す赤霧の教会はその教義とは異なり少し違う教えを信仰するのです」


「それとカンビオンを助けること、どう関係するのですか?」


「本来であればカンビオンは赤霧の教会では禁忌。そうですよね?」


「おっしゃるとおりで・・・まさか?!」


牧師は思いっきり立ち上がった、晴馬が言いたいことが理解できたこと、それがどれほど罪深いものかを理解することとなったからだ。カロリーネも晴馬の案に彼の正気を疑った、それでは赤霧の教会の否定から始まる宗教であることがわかるからだ。


「カンビオンを迫害することを根底から否定する新しい宗教、そして、腐敗し本来の目的を忘れた赤霧の教会に疑問を持つ集団として、名前は【プロテスタント】つまり抵抗という名前にすることにしましょう」


「私の教会をそのまま宗派にするというのですか!?」


「社長、あまりにも身の程知らずですよ!それでは教会からの異端扱いから始まり国教としている国々からの反発の警戒もあります!」


「勿論わかっているさ、しかし、それでもなおやることに意味がある利点がある」


こぼれ日の指す教会は晴馬のその発言で時計に静かになった。何の話かと気になる修道士たちも続々と集まり始める。皆口々に言う、何を話しているの?難しいお話?私たちの仲間が何だって?彼女たちは炊事や洗濯などこなさなくてはいけない仕事がやまずみなのにもかかわらず気づけば晴馬たちを囲っている、ただ晴馬の発言を待っている。


「この大陸は赤霧の教会の勢力圏が大多数だ、その中で初めて宗派が生まれて多くの人の信仰を受ける。それが何を意味するか?悪党が信仰を認め、本来の宗教も認めることが出来れば信仰の自由を保障することになる!」


「そんなことをすれば赤霧の教会の権威が駄々下がりになるんだから認めないでしょう騎士様!?」


「こっちにはそうする大義名分がある、奴隷という存在刃赤霧の教会ではどういうものなんだい牧師」


「他教徒の行うことと言って回避していますが、そうか!それでは赤霧の教会は自身を他教徒であると明言することとなる!」


「そうすればこっちが本来の宗教という大義名分になる」


晴馬はニヤッとしてこの出来過ぎた事態に満足げであったがカロリーネは少し不安を隠せないでいた。晴馬のいうとこは一言一句間違いはないのだが、宗教を作るのは人間、そうやって否定ばかりすればどのような目に合うか。


「社長、それでは戦争を誘発させる危険性が非常に高いです、私たちは対した味方もなしに赤霧の教会の連合国と戦うというのですか?無謀すぎます」


「一国だけ、それでも振り向いてくれる国家がある、ユーヒリア連合共和国だ」


「あの国は今は好戦ムードではないとヴィンセント様が・・・」


晴馬はすべてを悟ったように反論した。


「しかし向うとこっちが国家が同じ信仰の自由を保障する陣営として組織できると考えたら?ユーヒリアにおける現在の宗教勢力の孤立状態を奪回できるチャンスになるだろう、土着信仰はそのままの意味で地域に寄って神は異なる、それを保証しているところは可能性があるのは悪党を除いて存在しない、同じ信仰の自由になれば同盟の距離ぐんと縮まると思わない?」


その時にカロリーネはとあることを思い出す。


「そこまで考えて、だからアマーリア様は四分儀を作るように命じたのか!」


「なんだいそれ?」


晴馬は不思議そうにカロリーネに問うた。


「貴方がエルロスにかまっているときに作るように要請されたものですよ、グリーフラントにより文化も交易も孤立したユーヒリアは陸路ではなく航空沿岸航法による大陸中央部の国家との交易を望んでいるんです、遠方との交易を可能にする遠洋航法に必要なのが四分儀なんですがつまりアマーリア様は社長と同じでユーヒリアにつくつもりなんですよ」


「じゃあ僕と同じように宗派を?いや、それは考え過ぎか」


「それどころかエルロスの監禁なんてアマーリア様は予想もしていないでしょうが、ユーヒリアにつく理由としては眉唾物でしょうね。おかげで議会がユーヒリアとの現実的な同盟の締結に傾いて司教領との国交断絶に乗り切るでしょう」


「つまりアマーリアは初めから戦争も視野に入れていたということか?」


「というよりは戦争になる事は避けられないと考えていたのでしょうね、グリーフラント王国との二年を待たずとも戦争は起きると」


なんだか話がきな臭くなってきた。話をまとめるとこの調子では赤霧の教会に対しての信頼の低下を狙ってアマーリアはユーヒリアとの同盟を結ぶことになるということか?


「私は政治利用されるということですか?」


牧師は不安げにそうつぶやいた、そう考えて当然だ。


「考え方を改めるべきだ、貴方がいるおかげで我々は信仰の自由を保障する下地を作ることが出来る、教会の影響力が下がれば学問の自由も保障されるだろうし場合によっては表現の自由も与えられるかもしれない、貴方のおかげで自由の増え方は無限大ですよ牧師」


「そのためなら政治利用も認めるべき、ということか」


多くはわ語らなくも牧師の考えていることの深さは理解していた、問題はやまずみ、仮に彼が大司祭になったとしてもカンビオンの安息地を作るのは相当な時間が必要だろう、現地に赤霧の教会が信仰を広げていないことは良かったが代わりにリリスがいないあの地方にはカンビオンは未知との遭遇と考えて間違いない、どこまで理解が持たれるかなどわかりもしない。


「父さん行くべきよ!」


メロが修道士のたむろの中で一番大きな声を出した。


「カンビオンを救える人間は父さんしかいない、この村だったら私たちでも十分に動かすことが出来るわ」


「しかし、私がウーダンカークに行けば戦争は免れないのだぞ?」


「捨てる命あれば拾う命ありよ、このままむざむざに死んでしまうカンビオンを増やすより、減らすために動くのは父さんの人生だったじゃない!今更怖気づいたの?」


メロの鼓舞に励まされた牧師は再び考える、しばらく唸ったのちに膝を叩いた。


「腹を決めました、私が動いて助ける命があるのなら動きましょう」


「よくぞ言ってくれた!カロリーネ馬の用意を!間もなく出発だ!」


「はい、すぐに・・・」


「どうした出口で固まって?」


晴馬はカロリーネが動かないで止まっているのを不審がり出口に見に行ってみた。するととても巨大な羽ばたきの音が聞こえてきた。空にはとても特徴的なワイバーンの姿、あの超ド級のワイバーンがなぜかここにきているのである。


「おお、ワイバーンの鼻を頼りに来たんだが案外当たるものだね」


そういって背中から誰かがはしごを下ろしてきた、よく見ればアマーリアだ。


「こんなんで来たらばれるだろ!」


「よいしょっと、問題ない、連中はこの竜のステルスで確認はできていないだろう」


彼女はそう言うとドラグーンの装備を外し、飛行帽に納めた長い髪をシュルシュルと解放した。


「アマーリア!議会はどうした?」


「君の旅行中に終わったよ、結局はユーヒリアに国家承認をしてもらうための同盟を引くことが決定し例の特使の悪行は声高々に世界に発信しておいた。それで君は何をしているんだい?早く四分儀を作ってもらいたいんだ、それも自身の場所を限りなく誤差の少ない高精度な奴がほしい」


「アマーリア、聞いてくれ、とあることをして信仰の自由と学問の自由を広げることが出来るようにしたいんだ」


「なんだ藪から棒に、まぁ聞かせて見せてよ」


アマーリアに牧師に説明したことを一から説明して見せた、それを聞いたアマーリアは難色を見せる。


「わざわざ各国の緊張を増やすようなまねはしたくないんだ、君の言う通り私はユーヒリアにつくつもりだったがそんなところから同盟に切り込んでいくつもりはないよ。カンビオンは法整備で保護するということでどうだい?」


「それだけじゃだめだ、信仰の自由を保障すれば教会の権威を支配地域で低迷させるいいチャンスなんだぞ?学問の自由の導入も簡単にできる」


「それはわかる、しかしながらそれが他国に与える影響は計り知れないし・・・」


「アマーリア、僕は民主化を君に手伝ってほしいと言われてついてきたんだ、なんでいまになってしりごみするんだ」


その言葉に少し傷ついたアマーリアはむすっとするが、それと同時にため息をした。


「私が思っていたよりも政治とは難しいものでね、いつも自分がやりたいようにやっていると国家は散り散りになってしまう、それだけはさけたいんだ」


「それでは今までの王と変わらないじゃないか、変わりたいんだろ?このグリーフラントを」


アマーリアにああだこうだ言っていると牧師もやってきた。


「アマーリア様と申される方、恐らくあの悪党の首領で間違いないでしょう、どうか私からもお願いです、貴方がしり込みしていればするだけカンビオン達の将来はどんどん暗くなる。その前にどうか解決したいのです」


「貴方はどちらさんでしょう?見ず知らずの方にそのようなことを言われる筋合いはないですね」


「その通り、しかし、しかしだからこそあなたの国を第三者の視点で見ることが出来るのです。貴方の国はまだ未熟で王国との差別化を図れていないように思います」


「なんだと?」


「貴方の国がグリーフラントをを民主化する国と歌っているのであればぜひその証拠を提示すべきです、そのためには国のかじを切る貴方があえていばらの道を踏むこともまた、必要ではないでしょうか?」


二人に囲まれ反論もできずただ聞いているアマーリアはカロリーネを見つけてほっとした。いい休憩になりそうだと思ったのである。


「君の意見は?」


「え!?私ですか??」


「そうだ、正統グリーフラントの人間としてぜひ君にも意見を聞きたい」


「ええと、その、私は社長の意見に賛成です」


「な?!」


想定外の裏切りである、彼女なら穏健派だと思ったらハルマ並みの過激派であったのだ。


「これは持論なんですけど、多分、この世界で民主化をするのであればそういうこと、つまりは戦争や抗争は通過点として必須なんじゃないかと思います。おそらく多くの人が死ぬでしょう、仲間が路頭に迷うことあるかもしれません、それでもする価値があるとアマーリア様が思うのであればあえていばらに行くべきです」


「なんだか私がおかしいみたいな話になってきた気がするんだが」


「事実おかしいと思います」


「そこまで言うか!」


完全に否定されたアマーリアだったがそれでも煮詰めなおそうと幾たびも考えるようになった、しばらく唸っているとついに決心したかのように前を向いた。


「どうやら私は自身のやり方がぬるかったらしい、あまり賛同しきれない部分があるが仕方ない」


「どうするんだ?」


晴馬が尋ねる。


「一度君たちの言うことを取り入れてみるよ、信仰の自由、学問の自由は間違いなく保障されるだろう、法が行き届くように中央集権化も行きとどろかせないとな」


「やった!よかったですね社長!」


「ああ、おかげでマスケット製造に大義がついて議会での規制路線は解消されることになるだろうね」


「ただ忘れてほしくないことが一つある」


アマーリアは警告するように晴馬に伝えた。


「間違いなくこれは国土を焦土化す危険性を上げたことを自覚するんだ、我々は今、民主化とは別に限りない滅亡の道に進もうとしている、すぐに軍備を整えるようにヴィンセントに伝えるよ」


この時の晴馬たちはあまりにも事態を楽観視していた、自身がとった選択は破滅か生存かの二択を常に選択しな蹴ればいけないまさに修羅の道だったのだ。アマーリアは其れの鱗片を感じ取ることはできたが、それよりも自身の掲げる理想国家の成熟に興味を持っていかれ考えが希薄だった。彼らが知らない数十年にわたる戦争の火ぶたがここに切られたのである。





日時場所は変わってここは司教領の一室だ。大聖堂は司教領にとっては行政機関を納めるのにちょうどよく、聖職者を集めるのに短時間で済むため非常に重宝していた。石造りの神秘的な建造物は多くの大理石による列柱によって支えられ、内部はアーチ構造により開放的な印象を受ける構造物となってさながらロマネスク様式とでもいえるような場所である。その中でとある一室は議論に燃えていた。ステンドグラスの光がさしている机には数人の男が話に熱中しているのだ。


「非常にけしからん!」


この男はメフィスという白髪の爺だ、赤霧の教会では最高顧問の一人に数えられローブは金糸の入った裕福なものを着ている。彼はとあることが書かれている洋紙を見るや激昂していた。


「悪党領地に送った特使が奴隷市場を作り、赤霧の教会にとって禁忌と呼ばれるカンビオンを娼婦にしていたなどと意味不明なことを主張して新しい宗派などというものを作ったのは我々への冒涜的行為だ!」


「しかも特使は刑事事件で裁判を待っていて国内に拘束、これは事実上の人質としてのキープですな」


この男は屈強な体を持ったデロリクス、司教領ではなく教会連合国の代表であり軍事顧問を兼任している。


「左様、現状では何も言えないが悪党とユーヒリアとの接触もうわさされておる、大陸宗教勢力圏の二分陣営は戦争を巻き起こす危険があるぞよ」


この男は碧眼のマミリナクス、言わずと知れた赤霧の教会最高指導者だ。


「マミリナクス様、このような暴挙は許すに値ません、連中は信仰の自由の保障、つまり赤霧の教会に敵対したのは事実です」


デロニクスの意見にマミリナクスは頷いた。


「少なくとも異端として扱う事は決定事項じゃ、問題は、来るべき報復はいつお行うかということじゃ」


「軍事顧問の観点から言えば早急に行うべきです、現在我が軍の状況下から言えば異端を討つという大義名分は兵の士気を上げることにつながり逆に長期化すれば容認したのかと思われ下がる危険性があるでしょう」


デロニクスはそういって開戦を要求する、財政面から見ても余裕があるための意見出るとその場にいるものは皆が考えた。しかしながら一つだけ問題がある、それはこの席にいながらもただ一人沈黙をしている男がいることだ、何をしようにもこの男の意見なしには事は進まないのだ。誰もが円滑な会議を熱望しているため、メフィスはついにしびれを切らして男に話しかけた。


「それで、第三皇子はこの派兵における国内の陸路の提供をしていただけるんですか?」


きりっとした目つきの帝冠をかけている第三王子と呼ばれた男は終始無言を貫いていた、しかしながら聞かれては答えるのが筋というもので男は沈黙を破り組んだ足と頬杖を解いて皆に対峙した。


「グリーフラントは陸路をかさん」


「はぁ」


あたりに落胆の声が聞こえる、マミリナクスは唇を噛みしめて男の発言に怒りを覚えた。


「なぜじゃ?教義の敵を討つことにそこまで抵抗があるのか?」


「いいや、私とて赤霧の教会の信徒、このような行いは怒りを通り越して滑稽にすら覚える、だが我が領地を領主や教会連合が通るならまだしもそれ以外の他国の連中が踏み荒らすことは理解できん、マーズやサマハラといった遠征軍が我が国の地形を記録しない保障がどこにある?」


「だから連合軍として戦うことで貴君の国家の領土を取り返すために」


「それならば必要ない、我が国はすでに戦う準備を整えおり、これ以上の悪党による領土拡大を阻止できるだけのシステムを構築済みだ、そんなに陸路を使いたいならば主君らだけで戦いをするがいい」


第三王子の確固たる意見には揺るぎそうもない、教会の人間たちはお互いに顔を向けながらへの字に口を曲げている。


「それで我々がグリーフラント王家を異端として指定したら?」


衝撃的な発言で逢った、緊張した会議所では王子を除いては発言どころか息すら危うくできないほどである。額に汗をかき聖職者はただじっと黙って王子の返答を待つ、すると王子はただ何事もなかったかのように欠伸をかいて頬をさすった。この状況で何をしているんだと気を疑った彼らだが王子の言葉はそれを払しょくするに十二分であっただろう。


「別に、地図から一国の版図が消えるだけだ」


「貴様!聖下の前で無礼であるぞ!」


デクロニクスは青筋を立てて吠えた。


「何をふざけたことを、そもそも、私も悪党の首謀者アマーリアも聖下に意見できる立場であることを忘れてはならない、ガーディナルとは本来そう言うものだ」


「ふぐう・・・」


「ガーディナルは魔法使いであると同時に赤霧の教会では枢機卿の意味がある、つまりは階級で言えば事実上の№2ということだ、ガーディナルでない君はそれ以下の存在、というか総大司教の分際で私に物申しているのだぞ?」


「舐め腐ったことを・・・」


「事実だ、それに比べればプロテスタントとかいう悪党の教会は律儀だ、彼らの最高指導者は悪党より赤霧の教会の最高階級である星光王ではなく都市大司教の称号を授与されている、つまりは悪党は本家の教えを尊重する考えがある証拠だ。君のようにお門違いの態度の奴とは違ってある種品のあるやつらだな」


第三皇子は起立し出口へと向かう。


「おい!まだ話は終わっておらんぞ!」


「これ以上話すことはない、グリーフラントは司教領とそれに並ぶ教会連合国のみの入国を許可する、守らないのであれば神のガーディナルたる我々が諸君らを成敗することになる」


王子はそういって待たせてある馬車に乗り込み本国への帰路についていった。


「今に見ておれ・・・必ず報いを受けさせてみせる、まずは悪党の成敗じゃ!修道会中の騎士や傭兵を集めよ!」


マミリナクスは静かに決意し、王子の馬車の後姿を眺めていた。



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