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悪党のすすめ  作者: と
悪党→政党編
41/63

39 会議

急きょ戻った砦では緊急会談が設けてあった。これと言って何もない貧相な応接室はとある人物が持ち込んだ茶器や絨毯で王宮の一流品ばかりが並ぶようになりもはや原型をとどめていない。連中にとってはテント道具をただ部屋に広げただけに過ぎないがこれが悪党の者にとってはどこから輸入すればそんなものを集められるのかと不思議でならなかったほどである。


「いつまでも立っていると疲れるでしょう、どうぞお座りください」


まるで砦の主かのようにその男はアマーリアを接待する。とはいえアマーリアはこの付近の統治者、いらぬ怯えをまとわず自身が用意させた椅子に座った。今この部屋にいるのはアマーリアと司教領の特使エルロス、ほかにエルロスの従者とアマーリアのマスケットで武装した幹部候補生ですべてだ。どう考えたって歓迎されていない客であるが、何か特使には自信があるようにも見える。


「どうしてこのような辺鄙の地へ?」


アマーリアが会話を始めさせる。エルロスは鈍い反応を示し茶をすすった。


「私は今回司教領からの命を受けここに来ました。内容としてはここに大聖堂を立てることにあります、実はここをあなたが支配する前の統治者であるクラナッハ伯にはすでに建てる約束をいただいたのですがあなたが潰してしまいまして」


アマーリアは思わず顔をしかめる。窓の外の城門にはローレと学者の姿があった。皆が心配することがわからないわけではない。しかしいざその時が来ると難しいものだ。だが、ここはまずは譲歩することが得策であろう。


「それでは仕方ありませんな、建設はクラナッハ伯から引き継ぐという形で執り行いましょう」


「ああ、よかった」


重要なのはここからである。では、赤霧の教会はいったい誰に頼もうとしようとしているのか、それはこの正統グリーフラントか?それとも武装勢力【悪党】か?はたまたここをグリーフランント王国の領邦として認識して行うのか?実を言えばどの選択せあってもグリーフラント王国は黙ってはいない。王国はこの地は不法占拠されているものだと認識しているため、領邦としての統治は認めておらず、国家樹立は宣言していないし国家承認もうけていない。悪党に支援してもらって建てたことになれば悪党を赤霧の教会は容認することになるため遺憾どころでは済まされないだろう。では一体だれに頼もうとしているのであろうか?


「では頼みましたよ?正統グリーフラントさん」


「え」


アマーリアは思わず口に出してしまった。それは、つまりその選択は・・・。


「我が赤霧の教会司教領及び教会連合国家は、正統グリーフラントを【条件】を飲んでくれれば国家承認します」


この物語では国家承認は承認する国家には自国と同等の存在であることを証明し、なおかつ国家として認めることを言う。言うまでもないが主権国家を誕生させたウェストファリア条約が存在しない以上はしょうがないことである。もし大陸に絶大な権威を持つ赤霧の教会が国家承認すれば国教として定めている国や大陸中の国家が認めざるを得ないだろう。それほど赤霧の教会は強大な権力を持っておりこの大陸での役割を担っているからだ。ただ、それをグリーフラント王国が認めるかどうかは別の話ではあるが少なくともその周辺国は皆認めることになり、もしかしたら包囲網を敷ける可能性も出てくる。


「そ、それはうれしいのですが、それではグリーフラント王国が黙っていますまい、知っておられるのでしょう?あの国王はあなた方の崇拝する神と話すことが出来るガーディナルなんですよ?それでもやる必要性がどこにあるというのです?」


「国王が神とはなせようが赤霧の教会に影響はありません、神が我が宗教を否定することは絶対にありえはしないのですから、それによって長きにわたり我々は神にゆだねられて生活をしてこれたのですから」


「で、では条件というのは?」


「赤霧の教会を国教として認めることです」


やはりそう来たか、まぁ大聖堂を立てる時点で大司教区(大司教がトップに治める地域のこと。地域下の同じ宗教の信者を統率する)を作る気は満々であったのだろう。だが国教にすればこの地域下での赤霧の教会の勢力は巨大化する危険性がある。そうすればローレの考えている学術都市としてのウーダンカークは不可能だ。赤霧の教会に不都合な学問はまず処分される危険性があるからだ。


「これはあなたが一国家として正式に認められる唯一のチャンスとなりましょう、それだけがメリットではありません、この地域ではおそらく深刻な医療不足が社会問題になっているのではないですか?国教に認めれば我が医療奉仕修道会を派遣して医療水準を高める機会にもなります、国家も潤い我々も足を延ばせるいいチャンスではないでしょうか?」


「確かにその通りではあるが、もしそれを断ったら?」


「はあ、まぁ断るような必要はないとは思いますが、本国にそれを報告するのみです」


やはり従わないものには死をといった感じだな、わかりきっていた話ではあるが大権を引っ提げてきただけのことはある。


「ううむ、聞く限りだと虫のいい話のようではあるが・・・何分考える必要性がある、どうか時間がほしい、滞在に必要な宿はウーダンーカークに用意してある」


アマーリアは悩んだ。これはメリットとデメリットを明確にする必要性がある、国教というシステム自体がこの国に導入するとどういった結果を招くのか?そして考えもしなかった医療水準、考えることは多そうだ。


「わかりました、会話はあまり多くはなかったですが言い感触だと本国に連絡します、ウーダンカークの観光は行ってよろしいでしょうか?」


「あ、ああ、いくつか書類を渡しておく」


アマーリアはそういって特使たちに滞在証、治安局による不逮捕特許権、帯刀の許可証など多くの紙を渡し、彼らを城門までで送った。


「ああ、こんな日がいつか来ると思ってはいましたがアマーリア様いったいどうするおつもりなんです?」


カタリナはない片目を抑えて悲痛を感じていた。アマーリアは表情を変えずその場で腕を組んでウーダンカークに消える特使を見つめる。


「緊急幹部会議を開くほかないだろうね、国中の高級幹部を呼ん出来て来てほしい」





「ふふふ、見れば見るほどいい街並みではないですか」


特使エルロスは復興を遂げた街並みにとても感動していた。やはり本国で聞いた情報と現状はえらい違いだ。ここが強国であるかどうかは疑問だが商業・工業の面から言えばとても発展を遂げていると言っていいだろう。聖下に頭を下げてまで来たかいがあったというものだ。街ゆく人々は皆私に跪きあたかも私の私設道路を表現しているかのようではないか。この点から言ってもまず信徒の数は問題ないだろう。


「今回は良い旅となりますかね猊下」


一人の従者がにやりと笑いながらエルロスに微笑む。エルロスはとても上機嫌であることを知ってのことである。


「間違いないでしょう、見たところクラナッハ伯の治める地域一帯には教会はあれど司教は見受けられません、一帯を司教区分として納めることが出来れば私は大司教として昇進、いいえ、正統グリーフラントの大司教として任命されることは間違いまりません」


「それもそのはずでしょう、大陸の端であるこの地域は辺境と呼ぶにふさわしい地域です。まだ赤霧の教会の影響力も届きにくい場所にありますからここを抑えることが出来ればまず言って評価が高くなることは間違いなしですからなぁ」


「司教区の計画書もすでに本国には送ってあります、後は我我が計画通りに進めばすべての問題が解決されるのです」


「がははは、やっと本国の使い走りなどという地位から抜け出せるのですな、猊下が昇進すれば私どももその一派によりあなたに昇進してもらえる。この地域を発見下のはとんだ落とし穴でしたな!」


「これ、口が過ぎますよ、誰が聞いているのかわからないのですから」


そうは言いつつもやはりエルロスも同じ穴の狢である。口元が緩み、自身の名誉と階級の上昇には気合が高ぶっていたようだ。馬上から不敵に笑い観光という名の強烈な征服欲を映し出す行軍をするのであった。


「やはりどこの地域の人も同じですね、初めは多少の抵抗があってもちょっと餌をちらつかせると簡単になびいてくる。あのアマーリアというやつも同じです、どこの王国でも帝国でも結局は我々の養分程度の価値しかないのですよ」


エルロスは再び思いっきり笑った。それを街角から見る女にとってはあまりいいものではないように見えた。背丈に合わない白衣を着たその女はまさか騎士として活動していた自分が再び研究に戻るなど考えもしなかったであろう。


「ッチ、思ったより行動が早いわね。このままじゃ国教になるのも時間の問題かもしれないわ・・・」


ローレは覗くように街角からエルロスを眺目て舌打ちする。すぐに反転しアマーリアのいる砦へと駆け出て行った。


「向こうに異端扱いされたりしたらうちの学者は全滅よ、早く解決しなくちゃ」





「うん、うまい」


「たくさんありますからどんどん食べてください騎士様!」


晴馬は現在会社前の広場に机を広げてこの熱帯地域にみられる果実を堪能しているところであった。アルノーが農家から大量の果物を買ったらしいがあまり物持ちがよくないため売れ残ってしまったのを八ルマはもらい受けたのだ。ただ、もらい受けた果物は馬車一杯分と膨大であったため会社の連中全員に配って食べることにした、ここの料理はそれ相応に地球人好みの味付けでうまかったがこういった自然の果実も見た目が黄ばんだカサブタみたいでよろしくないが味は別段悪くない。


「社長、むぐむぐ、これ全員で食べきれますかね?もぐもぐ」


カロリーネはバナナのようなヘチマをむさぼりながら質問した。


「まぁ残すならドライフルーツにすればいいでしょ?あれは日持ちするしお菓子で食べられるからね」


「ああ、ほかにもジャムにするとかですか?それでもなかなかの量ですよ、はいあーん」


カロリーネはこちらに黄色い柑橘類のような果実の一片を向けてきた。


「お、おいおい」


「なんです社長、あ、ひょっとしてこの系統の果物嫌いとか?駄目ですよ~好き嫌いは~」


「いやっそうじゃなくてそうしなくても自分で食べられるからゲス子」


「ゲス子言うな。ああ、照れてるんですね~、も~甘やかし系年上がいいとかいう割には奥手じゃないですか~」


カロリーネは照れている晴馬を笑っていた。晴馬は心の中でなぜ自分が部下に舐められるのかがわかったような気がした。ただせっかくの人の好意をむげにするのはよろしくないので晴馬は言われた通りその果実を食べることにした。


「あむ」


「指まで食べるな」


ただでは起きないのがハルマである、ごもっとも相手がカロリーネではなくカタリナであったら間違いなくこのような愚行は行わないであろうがこれが恐らく晴馬なりの反撃であるようだ。ただ、彼はひとつ見落としていたことがあった。それは自身の身体は一人のみで生きているわけではない。そう、もう一人の住民について完全に忘れていたのだ。


「「ああ!柑橘類の味を舌鼓していたはずが誰かの指の味が口いっぱいに!」」


「ごめん忘れてたわ」


「社長はほんとーに甘えん坊ですねぇ、ほらもう一個食べますかー?あーん」


「仕事はいつになったら始められんのかね?」


「ちょっと、仕事は今は禁句ですよ、ベルイーの施条銃の件で本人結構傷ついていますし」


カロリーネはそういってベルイーの方を向く、彼は多くの果実がある中でポツンと自分の武器の改良案を紙で書いている。


「ええ?でも採用にはなったんだしいいんじゃないの?」


その言葉を聞いたカロリーネは慌ててハルマの口を果物で覆う。ベルイーに聞かれていないかを確認するとほっと安堵した。


「そんなの採用なんて呼べるわけないじゃないですか、大砲ならまだしもマスケットでそんなに少ない量じゃ職人が食っていけませんよ。うちがこんなにもうかったのも、ほかの事業が出来るのも軍にマスケットを大量に購入してもらったからできたんですよ」


ひそひそとカロリーネは話した。そうか、確かに50丁は確かに生涯食っていくとしては難しいところがある。鍛冶職人は一攫千金の面がある。そのものが時代に合ったものを作ることが出来れば採用だができなければ平凡だ。おそらくベルイーは平凡は嫌なのであろう。自身が受け継いだにしろ学んだにしろこのライフリングという構造に絶対的な発展性とそれを広めた自身の名声の向上を誰よりも願っていたに違いない。


「それはそうと社長、大砲もマスケットを大きくした物みたいなものですよね?作ったりできないんですか?」


「う~ん、大砲ともなれば絶対に鋳造だね、強度よりもあの重量の金属を旋盤で回して穴を作るなんてまず無理だ。製鉄所か炉は輸入国にはあるんだよね?」


「はい、国家都市群の一つにそういうのを得意としているところがありましてそこから輸入しています」


「ならとりあえず国産の大砲作ってみっかな~作り方知らないけど、とりあえず現物を一度軍から借りて見てみようか」


「いいですね、これでまた儲かりますよ」


「今度は横領すんじゃねぇーぞ」


「しませんよそんなこと!私を何だと思っているんですか!」


「いや、過去を見てみ?自分の過去ってやつを」


八ルマたちは談笑をつづける。だがその楽しい食事にとある一行が現れた。馬に乗った赤いローブをまとった男とその従者たち、社員たちはそれを見て誰もが崇めて頭を下げる、しかしそれを行わない社員が晴馬を含め何人かがいた。従者は不思議がり、晴馬が果実を食べる席に近づいて質問した。


「なぜ貴方はう敬わないのですか?あなた方は御前におわす方が見えないのですか?」


従者の質問の意図がわからなかった晴馬は聞きなおすことにした。


「ん?馬に乗った坊さんですか?」


「社長・・・それはあまりよろしくないですよ、あの人見たところ赤霧の教会のえらい人ですよ!」


カロリーネは思わず魚のように口をパクパクさせ晴馬の失態を謝るべきであろうはずなのだがただ放心するしかできなかった。晴馬はあまり理解が出来ない用で静にその坊主の様子を見てみる。なるほど確かにそういわれてみれば偉そうな顔をした男が馬に乗っておる、顔は二重顎だしなんかにこにこしているしいかにもいい物食っていそうな奴ではあるな。


「よい、大方私のことをよく知らないお方なのでしょう、私のことはエルロスとおよびください」


エルロスは従者のひきつった顔を見て晴馬に挨拶をした。あたかも敬うかのような言葉遣いをしているエルロスに従者や社員、カロリーネは思わず恐怖を覚えたが事情が呑み込めない晴馬は陽気にうなづいた。


「エルロス、わかりました。良ければここの新鮮な果実を食べて行かれますか?」


「ちょっと社長?!」


カロリーネは焦った、こんな時に暢気に食事の誘いなどしている場合ではない。というかお前連中がえらい人たちだって知っているなら何で来たか察せよ!


「ああ、確かに彩豊かな果実がたくさんありますね、ここで食事といきましょうか?」


「は、では食器を持ってきます」


お前ら食うのかよ!カロリーネは内心で突っ込んだ。


晴馬は部下に指示して多くの果実を切り分けて食べやすいサイズにしたものを多くの果物を皿に盛り分けた。エルロスはしばらく吟味した後いくつかの果物を手に取って食べる。最早晴馬を除いて平静でいられるものは誰もいなかった。ハルマは悪党高級幹部、エルロスは司教領の特使、お互いがお互いを知らない妙な食事会が始まった。


「エルロス様毒見をしていないのですぞ!」


「なんとなく訪れた場所の穂飛戸が毒など盛るはずがないでしょう、そうですね?ええと」


「晴馬です」


「ハルマ、貴方はクラナッハ伯が治める前からここに住んでいらっしゃるのですか?」


「え?いいえ、そのあとです」


「ほう、では悪党が着た後の住居者ということですか・・・ここで何か不平不満は感じたことはありますか?」


「ありますよ、逆に不満しかないぐらいですね、ここではなにかもが不足していますから多くを輸入したり近隣の村から購入しなければなりません」


「いえ、そういった物的欲求ではなくてもっと心の、宗教ですよ」


「ああ、僕にはそういった教養がないものですから」


「あ、そうなのですか」


エルロスは果たしてそれは教養の範囲かと驚愕していたが、まぁそれも人の教養の差というものかと感心した。何もかもが辺境であるだけあってこういった経験は新鮮だと思ったのであろうが大きな勘違いだ。


「私はグリーフラント王国での異教徒によって行われてる奴隷制度を反対しているのですが貴方はどう思われます?」


「異教徒かどうかについては僕にはわかりかねますが奴隷制度の意見はあなたに同意です、根底から道徳を崩壊させている悪しき文化だと思っています」


「やはりそうですか、私もそう思っていたんですよ、やはりそうなると大陸が統制のとれた赤霧の教会の統治を望んでいるということでしょうね」


「んん、それは僕の見解ではないのでわかりかねますが」


「ああ、教養の差というわけですね、先ほどあなたがおっしゃられた意味が分かりました」


なんだかかみ合っているのかかみ合っていないのかよくわからない会話が繰り広げられている。その中でエルロスはあるものを発見した。それは目の前にある晴馬の会社である。その看板にはウーダンカーク製作所本社と書いてあった。とすればこの食事会のようなものに参加しているのは社員と考えて間違いないはずだ。となればなんという社員数だ、この人数では100は優に越しているではないか。


「この会社の社員は相当な数ですね、社長は、貴方でよろしいかな?先ほどそう呼ばれていましたし」


「ええ、僕が社長です」


「ここでは何を作ってらっしゃるんですか」


「そうですね何でも作っていますが本業はマスケットです」


その言葉を聞いた司教は表情が強張る。晴馬は何かいけないことを言ったのかと不安になった。


「銃?銃とはあの銃でしょうか?悪魔の作った黒色火薬を使って人を殺すために作られた道具の?」


「ええ、悪魔ではなく私が鉱山から硝石とか、各地から集めてはいますが」


「そうですか、なぜそのようなものを作っているのでしょう?」


「ああ、確かにそれは僕が一番疑問に思っていたことです。なぜアマーリアは僕に銃を作れなどといったのか、いや、理由はわかりますよ。ただ、なぜ僕は銃を作っているんだろうと考えさせられることがあるんです」


「ほう」


その言葉にエルロスは考えさせられた、この男は異端である銃を金もうけをするため作っている、それはまず間違いないだろう。だが、それを作る意味を考えたときに何もわからないようであったからだ。


「赤霧の教会では、火薬は悪魔が作り上げた物であるとされています。それを使った銃の命中精度は悪魔が証明しているのです、いいですか?銃を作ることは背信行為にあたります。もしほかにも儲かるビジネスを考えているのであればすぐに取りやめるべきです」


「それは反論の余地がありませんね、無いに越したことはない。ただ、ある以上は作るほかないでしょうな」


「それが背信行為だと今説明したばかりでしょう・・・」


「それならばお聞きしましょうエルロス、それなのにもかかわらずなぜ世界は、赤霧の教会を国教としている国までもがマスケットを装備しているのですか?誰もが背信行為であると知っているのに」


「それは・・・」


エルロスが考える中、晴馬はニヤッと笑い話をつづけた。従者はそれを歯ぎしりして眺めていたがお構いなしだ。


「実際僕が他国で、いや、このウーダンカーク以外でマスケットを見たためしはありません。しかし確実に僕のマスケットは都市国家群を媒介して多くの国家に売れていることを知っています、安くて、部品の互換性があって、長持ちするマスケット。マスケットは現時点でも進化を辞めずそれを止める者もいません。つまり手放す人はいないんですよ、試しに使用禁止令でも出されてはいかがですか?」


「なるほど・・・つまり貴方は作るのをやめないということですね?」


「世界が銃を捨てない限りは作り続けます」


晴馬の発言を受けカロリーネは失神した。もはやカバーする余裕はない。これは、まずいことになった。


「そうであるならば、国家承認の条件を新たに書き入れる必要性がありますね」


「ん?それってどういう・・・」


エルロスはそう言うと従者に新たな書面を用意させ、食事を終えるかのように起立した。馬を引き寄せて乗馬し晴馬を見下ろす。


「私は赤霧の教会司教領より派遣された特使であるエルロス・フラッペ、この地域の国家承認を任されたものだ。貴殿は何者か?」


「僕は・・・!、あ~、話すと長いが悪党高級幹部で生産顧問をしている高野晴馬だ、お宅の馬車は車軸の上に荷台があるとても乗り心地の悪い奴だろう?僕のサスペンション四輪馬車をプレゼントしよう、きっと乗り心地は良いはずだ」


「いらぬ世話と言っておこう、では宿へ向かう、何かあれば来てくれ」


晴馬はやっとエルロスの言っていることが理解できた。やばい、やばいぞこれは!


「つまりは外交問題となったわけだ!」


「今更気づいたんですか!」


程なくして悪党の高級幹部による緊急会議の伝令を聞き、急いで砦の会議室に向かった。そこではすでに各種大臣や軍元帥で現在は武装市民省を設立した軍元帥ヴィンセント、魔法工学研究所のローレ、現在は名称を騎士団から親衛隊に改称したマンフリート、そして僕や我々の秘書官が出席し今後の問題で赤霧の教会の特使がもたらした国家承認についての議題を話し合った。


「今回は挨拶は抜きにさせてもらう、論点から言おう。赤霧の教会は我々に対し国家承認をする意向がある。これは司教領が承認すれば同じ宗教の国家も習って国家承認する可能性が高い。足並みを乱せば司教領に対する反論とみなされるからね」


「ほう、それでアマーリア、俺たちは一体何を代わりに負えばいいんだ?」


ヴィンセントが顎に手を付けて質問する。アマーリアは会議の円卓中央にボードを置いてそこに書きだした。それによれば以下の通り。


・赤霧の教会を国教にすること。


・マスケット銃の生産を禁止すること。


「この二つだ、ただ私が不思議でならないのはなぜ赤霧の教会はグリーフラント王国を恐れていないのか、あの軍事力を前にして司教領や教会の連合国家は何か考えがあるのかということだね」


「アマーリア様、わしはその理由がよくわかります」


マンフリートはそういって挙手をした。


「赤霧の教会は騎士階級には儀式の際にとても親密な関係じゃ、それだけではないぞ、市民にも相当根強い信仰を受けておるし王権を維持するのに一役買っておる、それは王族が神のガーディナルであること、その神は赤霧の教会の信仰対象じゃ、つまりこれは王党の掲げる【王権神授説】を地で言っているようなものじゃ」


「だけどねマンフリート、それだからと言って不仲になるような真似をする必要はないとおもうんだ」


「どうでしょうなぁ、強大な力はいずれは自我を持つことになる。さずれば欲も出るというもの、時に司教領という国家にまで発展すればまずそれは避けられないでしょうなぁ、それよりも腑に落ちないのがなぜ我が国をそこまで過大評価するのかのお?強国ににらまれた生存期限付きの国家に新たな司教区を作るためにしては大がかりなきもします」


「いざという時は教会にでも閉じこもるのか?それとも何かほかの目的があると?」


「その話は其れで解決?なら私から言わせてもらうわ!この条件を受け入れることはできない!」


ローレは椅子に乗って堂々とした態度で主張した。


「ローレ、それで話は終わりではないよ、今度は我が国の医療水準についてだ、これは調査するまでのなく危機的なものだがあえて調査させてもらった、そうだねヴィンセント?」


ヴィンセントは秘書官にいくつかの書類を私、各幹部に渡した。それにはグラフと共に散々たる内容が書かれている。


「悪党がウーダンカークやその周辺を支配してから日はそんなには立ってない、だが、ここいらは昔から医療団の派遣はされてなかった、というのもその拠点となる大聖堂がたられておらず派遣のしようがなかったということだ、現在医療に心得のある俺みたいな回復を司るパラディンやセージを中心に医療支援として行ってはいるが知識が困窮しているうえ数が足りん、高度な回復魔法は医療団には到底かなわないということだ」


「この状況下で疫病が流行れば我々は過去に見ない大損害を受ける可能性がある、そういった意味でも赤霧の教会の提案は非常に悩ましいところをついている」


それを聞いた途端誰もが悩み始めた。医療支援、医療奉仕修道会の力と数をもってすればそれは簡単なことだろう。彼らの難病に対する治療知識は実績を入れてて折り紙付きだ。軍に従軍させて兵の生存率を上げるために派遣されることもあるし機能性に関しては相当な能力であるのは実証済みであろう。しかし、そこを考えてもなお反対するものがいた。


「それは一見すればいい判断材料かもしれませんがよーく考えれば医療独占による国家の依存を狙った罠で根本的解決になりません!水準を上げるのであれば自国で新たに医療研究所を立て研究員を募集しましょう!赤霧の教会が国教でない限り学者は国に集まる、それならば可能なはず!」


ローレは赤霧の教会による学問弾圧を恐れた、それによる学者の国外逃亡、さらにはこれからここへ足を運ぼうとしている学者達に支障をきたす恐れがあったからだ。


「その餌に学問の自由が必要、うーん、とはいえ国教にしたら学問の自由は難しいだろうしね」


「それが恐ろしいんです!間違いなく赤霧の教会にとって都合のよくない論文や学者は異端扱いされます!それを逃れるためにここまで来た学者も少なくはありません」」


「まぁね、それを考えれば国教にはできないが・・・」


話は平行するばかりであった。結局話の論点が見えなくなったころ、アマーリアはほかに意見がある者を聞いたところ、結局会議全体が二分化してしまった。反対派にはローレ、賛成にはヴィンセント、マンフリートは中立を取った。それに集まるかのようにほかの大臣や幹部がくっつき始めもはや派閥を思わせるような偏りを見せている。その中で意見を言っていなかった晴馬に皆の注目が集まった。


「晴馬はどうする?」


アマーリアの声が晴馬に声をかける、自身の机でうなだれている彼はただ寝ているだけのようにも見えたが、反応して顔を上げる。


「ん?どうするって?」


「ちゃんと話を聞いてよ・・・赤霧の教会だよ、国教にするのかしないのか」


「ああ、した方がいいんじゃない?」


「社長?!それではマスケットは・・・」


「多分生産できるよ」


カロリーネは震撼する、晴馬がマスケットを放棄した。


「あと学問の自由も採用するべきだと思うね」


「は?」


ローレも拍子抜けする。


「それが出来ないからこうやって話を・・・」


「そうだろアマーリア、でもここは自由度が高いから皆が寄ってできた国なんだ。国教なんてしなくてもいいんじゃない?信仰の自由だよ、これを保障すればいいと僕は思うけどね」


「それこそ異端だろ!」


一人の幹部が反論した。その意見は増長し多くの野次が晴馬に集中した。晴馬は指揮者のように手を上げる。そして静かになったところを見計らって指を振った。


「ちっちっち、甘いんだよ考え方が甘い甘い、今はなすべきは誰を味方に入れようかなんて話はしていないよ、問題は誰を敵に回すかの話をしているのさ、今回は敵は赤霧の教会、彼らが国家承認する条件はまず言って飲めない、それではこの国の存在意義にかかわる、とはいえ、それを拒否して異端扱いを受けるのは必須、赤霧の教会を国教にしているところからも攻撃される危険性がある、輸出輸入に関しては同盟をしていない以上問題はないだろう」


「そうであるならば君はどうする?」


アマーリアがそう不思議そうに聞くと晴馬は答えた。


「奴らと縁を切って同盟をしたくなさそうな異宗教のユーヒリア連合共和国と安全保障同盟をする、あの国もそれ相応の強国だ、これで連中と張り合うこともできるだろう」


この発言が会議をより混乱させた事は言うまでもない。そもそも議題の趣旨とまったく無関係な話をしているのであるから当然である。これには特にが猛抗議をした。


「あの国の一部は俺の祖国だ!前の戦争で領土縮小したおかげで今は反戦ムードが巻き起こっているんだぞ!?絶対にグリーフラントとの摩擦は避けるはずだ!」


「もちろんその通りだ、だから一つ聞きたいことがある。あの国はどこと外交をしているんだい?」


「外交はもっと内陸よりの国だ、赤霧の教会の宗教勢力がこの地域ではとても大きいからそことも交易はするが最近はグリーフラントによって陸路が閉鎖されているうえ沿岸航行をしようにも正統グリーフラントが・・・」


「そう!それだよ!」


晴馬はやっぱりなといったような口調でヴィンセントを指さした。


「もともとはグリーフラント王国の領土であった一部沿岸部は今は僕達の物だ、沿岸航行の港はないが首都ウーダンカークにはある、同盟を取れればむこうにとって遠方の内陸国との交易を再開できるメリットが生まれるはずだ」


「しかし、それだけでは動かないような気もするんだが・・・」


晴馬のおかげで混沌となったこの泥沼の会議は平行に終わった。出た選択は2つ赤霧の教会の条件を受けるか、受けないか、受けない場合はどうするか、選択するのはアマーリアである。会議の終わった部屋で一人考える。カタリナは彼女に温かい紅茶を持って、優しく微笑んだ。


「たとえどのような選択を取られたとしても、私は前面に応援するつもりです」


「ありがとうカタリナ、でも、私は決めたよ、それには晴馬にとある道具を作ってもらう必要があるな」


「なんですかそれは?」


「航海用の道具である四分儀だよ、沿岸航行ではなく遠洋航海をするための道具さ、これがあれば羅針盤が狂ったって星を見れば自分の位置がわかる」


「ということは!」


「いや、あえてまだ特使は帰らせるな、できるだけ時間を稼いでその間にほか方法や赤霧の教会を敵に回したときの影響を考えなくては」



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