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悪党のすすめ  作者: と
悪党→政党編
40/63

38 起点

「ここが、ウーダンカーク」


とある男が街の壁の前で生き意をのんだ。すでに王国でのうわさは聞いている。ここは逆賊のテリトリー、暮らす民は皆悪党におびえ、悪党の頭領である元貴族アマーリアは血の雨で湯浴みするという噂だ。そんところに来てしまった時点で僕はもう戻れはしない。ここに来たとこはあの町で噂になっていることだろう。でもそれがどうした、僕にはもうこれしか方法がないんだ。関所の列に加わり、パスを待つ。


「おいお前、いつまでそこで突っ立っている?荷物検査は終わっているぞ?」


兵士がそう言って男を関所からの通過を要求している。慌てて男は街へとはいろうと走り、わずか数歩で転んでしまう。


「痛!」


「何やってんだお前は、早くいかんか!あとがつかえているのがわからんのか?!」


「はい、すぐにでも!」


「おい、転んだ拍子で免除状が取れているぞ!わが国では【銃】の取り締まりは厳しいものなのだ。それがはがれれば治安局によって逮捕されることだってあるんだぞ?銃刀法を知らないのか?」


「はい、、すいません」


男ははがれた免状を素早く銃を包んだ布に貼り付け街へと駆り出していく。この男はとある人物を探している。マスケット製造を手掛けて多くの発明品を作り出す男だ。この男だったら。僕の銃をほかの連中や政府と違って評価してくれるかもしれない。もしかしたら彼の会社に雇ってもらえるかもしれない。不安を抱きながらも湧き上がる希望をもとに、活気がよみがえりつつあるウーダンカークの心臓部へと男は走り出していった。


「まったく世話の焼ける。次の者、ん?」


兵士は不思議がった。関所に並ぶ連中の服装が統一している気がしたからだ。それはまるで僧侶のような服装の連中の中に、一人の男が馬に乗って現れた。高貴な帽子に黄金の瓶のネックレス、赤いローブとふくよかな体の特徴的な男だった。兵士は瞬間にこの男の従者がこの僧侶たちであることを理解した。となればこの男は。


「なぜ国境警備隊はこの男をとおしたんだ?」


「黙れ雑兵が、このお方に対してその口の利き方はなんだ?」


一人の僧侶が声を上げて兵士い叱咤した、だがそれを赤いローブの男が制止して兵士に語り掛けた。


「私はエルロス・フラッペ、赤霧の教会司教領の特使です。あなたにお尋ねしたいのですが、悪党の党首、アマーリアさんはどこにいらっしゃいますか?」





「学問の自由を保障してもらいたい?」


アマーリアは新しく入ってきた研究者、学者たちに詰めかけられていた。その集団のトップと思われるローレは頷き、説明をする。


「私たちは今どの国教も採用しておらず、それによって大乱が起きたことはありません。つまり、皆が自由な信教を行うことに不満が存在しないことを意味します。そうであるならば我々の科学についての見聞を無条件に広められるチャンスだと思うのです」


「確かに、現在はどこの宗教も採用はしていないしそれによる学問の拡大は耳に入ってる、だが、具体的にその自由を保障する事によって何が起こるというのかな?」


アマーリアの質問に反応したカロリーネはすぐさま構想案を書き示した書類を提示する。それを手に取って見てみると、アマーリアにとっては桃源郷のような内容が記されていた。


「現在赤霧の教会は大陸有数の信者を誇り、それによって多くの修道士が学問によって世界中に貢献した記録があります。それは修道士には研究する時間があり内容によっては教会からの異端扱いを受けなかった証拠です、しかし我々はこれをさらに昇華します。多くの宗教的文化圏からの情報を吸収し科学力を向上差せウーダンカークの技術レベルを発展、学術都市として、文化の交易所としての地位を保障する構造を考え中です」


それを聞いたアマーリアの目は輝いたが、それと同時にそれを達成するにあたっての条件の難しさを脳裏に描いていた。それは悪党の領地全体に言える最大の問題である。


「それは確かに素晴らしい案だ。だが知っての通り我々が交易を送っているのは自由都市国家だけでほかの宗教的文化圏、例えば土着信仰を崇拝しているユーヒリア連合共和国といった国とは接触していないし接触しようにも向うはそれによるグリーフラント王国との摩擦を恐れている。これを解決しないことにはどうしようもないと思うんだよね、大体の話ここに寄ってきている学者は皆グリーフラントでの異端扱いを恐れてここに来たしいて言えば来たくてきた連中ではない時点でそれ以外の連中が興味を示しここに赴く可能性は少ない、それをどう思っているのかな?」


「だから釣り餌として学問の自由を求めているんです、それがあれば多くの国の学者にとって眉唾物になりますよ。現に宗教に縛られない現時点で私の研究所に入りたがっている人々は後を絶ちません」


それはそうだが、根本的に交易している国以外からの人の流入はあまり望ましくない。それは他国からの流入を記録するうえで支障をきたすし疫病などの流行を助長させる危険性がある。やはり外交的に解決するほかはないか。まずは各国に呼びかけるとしよう。最も、ここを国家として認めているのは自由都市国家群のみゆえに、外交を開くのは至難の業であるんだがな。


「わかった、検討するよ」


「ありがとうございます」


ローレは一礼して学者たちと共に帰って行った。それを見届けたアマーリアは大きなため息を吐く、彼らの望む世界に興味がないわけではない。だがしかしそんな先進的なことをする用意も能力もこの国にどれほどあるのかが難しい課題だ。簡単に引き受けてしまった反面後悔が残る。さて、どうしたものか。


「まずは現時点で外交をどうとかと考えるよりは、学問の自由を保障してどうなるかを観察するほかないな、それによる他国との摩擦はどうするか、ああ、考えるだけでも面倒くさい、一回仕事をリセットして晴馬のいる工場に赴こう、最近は机仕事ばっかで憂鬱気味だしいい気分転換になるだろう。ユッタにも会えるし、あの空間が最近唯一の憩いの場と化している気がする」


そういったアマーリアは立ち上がるも、そこをカタリナは見逃さなかった。


「まだ仕事は残っていますよ?それを片づけてからでも遅くはないのではないですか?」


「外の情勢は刻一刻と変化している、それを見逃してしまってはこの正統グリーフラントの明日はない、ということで私は「駄目です」」


最近それは聞きなれた言葉になっていた。カタリナはにこにことしているが目が笑っていない。アマーリアが何かに興味を示すとアッといまに仕事を呆けてどこかに行ってしまうことを知っているからだ。アマーリアの頬には汗がこぼれる、このままでは部屋から出ることすら。トイレすら規制されてしまう危険性がある。どうしたものか?決まっている。


「ではいってくるね!あとは任せた!」


「待ちなさああああい!今日という今日は絶対に仕事に従事してもらいますから!もう逃げられると思うなよ!?」


彼女はそう言うと天井にかかっているトラップの作動ひもを下に下げ、執務室の出入り口を落とし穴に変貌させる、彼女がいない間にコツコツ作った対アマーリア専用のトラップである。


「ぬおおお?!」


「掛かった!さぁ、仕事にかかり・・・」


しかし、アマーリアはカタリナの一歩先を行っていた。その落とし穴を改修し外への抜け穴にしていたのだ。カタリナの予想をはるかに上回るその抜け道は滑り台のようになっており、それを理解するころには外で待機している馬へとアマーリアは走り出していた。


「残念だったなカタリナ!私は君の行動など目を閉じても分かるのだよ!さあ仕事は重要な物は片づけておいたからそれ以外の書類にハンコを押すんだよ、良いね?」


「また、逃げられてしまった」


見事カタリナを欺いたアマーリアはウーダンカークへの街並みに溶けて行った。彼女はやがて鍛冶屋通りに足を向け、晴馬の会社という名の倉庫に阿曽を踏み入れた。初め見たときは交易用の倉庫にハルマとカロリーネが通っているぐらいのイメージしかなかったが、現在は相当の発展を遂げ、この本社には100人近い従業員が働いているらしい。


「しかもさらに大きくしたな、このままでは市場独占の危険性もあるし警戒する必要があるけど、まぁ彼のことだしそうしたら子会社を独立させるよね」


アマーリアはその惚れ惚れとする発展ぶりに心を躍らせながら中に入っていく。中にいるフェリシーに案内されて晴馬のいる社長室へと足を運んだ。


「ハルマ、今日はどんな塩梅だ?」


ハルマは今日も旋盤の回収に明け暮れていた。彼はこの機械に相当な執心を見せており、暇があろうが無かろうがいつまでもいじっている。しかも、こうやって話しかけられても反応することはない熱中ぶりだ。執務中の秘書官であるカロリーネが私に敬礼しまるでいつもの作業であるかのように晴馬の尻を蹴って合図する。


「社長。アマーリア様がおいでになられましたよ」


「おお、アマーリア、どうしたんだい今日は?」


「どうしたかを聞きたいのはこっちの方だよ、その服装は?」


「これか?服屋に特注で作ってもらった作業服だよ、ごもっともこれはボタンだけどね」


そういって笑う晴馬からは汗臭さが出ている。おそらくしばらく入らないでそっちのけで作業していたに違いない。アマーリアは少しため息するとその旋盤を覗き見た。もはや初めに作ったねじ切り機械の原型はなくなっており、完全に別物になっている。これがどういった効果を発揮するかは不明であるが、晴馬に尋ねたらおそらく数週間は感想で埋め尽くされるに違いない。


「凄まじい執着力だな、君のそういった発明は目を疑うものがあるよ。最近は何を始めたんだい?」


「最近は通信技術を向上させる商品を開発中、きっとアマーリアもあれを見たら大喜びするよ」


「なんだいそれは?早馬の伝言みたいなものか?」


「いや、もっと伝達速度は速いはずだ。なんだか商人たちが各都市の物価を早く知りたくてそれぞれの都市に支社を立てているって聞いてね、それならば通信で代用すれば簡単にもうかるんじゃないかなって思ってさ」


「それは絶対に私に許可をもらってから行ってほしいかな、なんだか税を課すととんでもなく設けられそうな気がするから」


相変わらずすごい発明を思いつくものだ、地球というのはそんなに高度な機械が存在しているなんてぜひ留学をしたいものだよ。


「社長、それもいいですけどさっきから部屋の隅で反応を待っているあの人二も声をかけてくださいよ」


カロリーネが指さす方向にはかれこれ数時間は待機しているのだろうか衰弱しきった男が固まっていた。


「ああ、誰?」


「誰って朝一番で駆け込んで来た人ですよ、なんだか新型のマスケットをここで採用してほしいとか何とか」


「マスケット?一度話を聞いてみようか、フェリシーにお茶を出すように言ってくれ、それと席の用意を」


カロリーネの用意した椅子に座った男は緊張と恐怖に襲われていた。緊張とは遠方にも知れ渡っている天才の名にふさわしい技師を前にしていること、恐怖があるとすれば極悪非道とグリーフラント中で響き渡っているアマーリアがここにいることだ。まずは何を話すべきであろうか?アマーリアのご機嫌を取るべきか?それとも技師に説明をするべきか。頭がこんがらがる男は正しい判断が出来なくなっていた。


「ま、まずは技師ハルマ、今回はこのような謁見の機会を設けていただきありがとうございます」


「うん」


「そ、それですね、ああアマーリアさん?いえ、アマーリア様、私はマスケット銃を悪党では配備する数が膨大だと聞いたのでその銃の中にぜひ私の新型のマスケット銃をと思いまして」


「はぁ」


なんだこの二人?!心の中でどういた思考をしているのか全く読み取ることが出来ない、まったくと言っていいほど話に興味を持っているとは思えないしさっきから話をしている僕に目もくれないじゃないか。


「こら社長!勝手に人のもってきたものを開ける人がいますか!」


「いや、興味があってね・・・」


「あ・・・駄目なのか」


いや、どうやらこのお二人はそれとは関係なく極端に現物に興味があって話を聞かなかっただけなのか。それならば話が速いさっさと袋を開けて中身を吟味してもらおう。


「これが中身にになります」


晴馬は袋から上げられた銃を見て握りの部分や形状を眺めた後、実際に手に取って撃つための作動を確認した。


「おお、見た目はあまり変わらないような・・・いや?発火装置が少し変だぞ」


晴馬の指摘はもっともである。手に取ればわかるのだが発火装置が火縄ではない火打ち石にぶつけるものに変貌していたのである。


「これはグリーフラントの流行りでフリントロック式といいます、火縄は不発が多いことや安全性からも問題がありこっちの方が湿気にも比較的強いので重宝されてます、作動原理はこうです、黄鉄石をつまんだハンマーを火打石にぶつけることで黄鉄石は性質により火花を散らし、散らした火花は火縄同様穴から銃身内部の火薬に二次引火します作動原理は同じと言っていいでしょう」


「へぇ~!」


「ほぉ~!」


おお、なんだか興味深そうな顔をしているしこれは良い掴みだなこの調子で押せば採用してくれるかも。


「なんか、僕たちって結構旧式の銃を作ってたんだ」


「まぁ、大量じゃなかったら売れてなかったってことだね」


晴馬はこの時初めてこの正統グリーフラントの閉そく感、鎖国を感じることとなった。情報が入ってこないからわからなかったけど、世界だって進歩はするんだよね?いや、数千年は停滞を繰り返していたんだ。進歩という現象はおかしい。誰かが、いや、僕が与えた影響がバタフライエフェクトと化してここまで響き渡っているのだろう。そしてそのスピードに遅れそうになっているということか。


「さらにここからが素晴らしい発明でして、このマスケットは飛距離も命中精度も段違いなんですよ」


そう言うと男は晴馬にとある記録データを提示した。それは一般のマスケットとライフリング付きのマスケットの飛距離の比較データーだ。そこから読み取るにこの溝があるかないかだけでも天地の差が出来ていることがわかる。それだけではない。集弾性(命中力のようなもの)も上がっているということは今までにできなかった個人への射撃も可能になるということだ。


「どういった構造なんだろうか」


晴馬は見た目には発火装置以外変わったところがないことを確認すると今度は銃口を覗いてみる、すると中には何やららせん状の溝のような物が設けられており、非常に長く奥まで続いている。


「それが私が作った新しい発明である【ライフリング】と申します!これが弾を遠くまで飛ばし命中精度を上げる秘術なんですよ!ライフリングの溝は発射ガスが通ることを目的としており安定した弾道を与えるのに十分な効果を発揮します!」


「ふむ、技師、君の名前は?」


晴馬は書類と銃本体を眺めつつ質問をする。男は緊張交じりに返答をした。


「はい!ペートルス・ペルニーと申します!」


威勢よく放ったベンノだが、晴馬の表情はあまり良い感触ではなかった。アマーリアはその新技術が戦争のために生まれたものだとは知っておりながらも革新的であると喜んでいた。


「ペルニー君、そうだね、カロリーネ、これをどう思う?」


「オーバーテクノロジーじゃないですか?又はロストテクロノジーといったところでしょう」


カロリーネが言ったオーバーテクロノジーとは晴馬が作る一部の革新的過ぎる機械であり、そういった機械の総称として使っている。彼女がこれを発するときは警戒して運用しなくてはならないという警告だ。晴馬自身が自身の発明品の脅威に気付かないような時に彼女が言う決まりではあったがこれをまさか晴馬以外の人間に言うことになるとは予想できなかった。カロリーネはある種困惑しており、それが影響を及ぼす未来を十分に理解していた。しかしそれでも彼女の顔にはどこか軽視しているような感触がした。いったい何を考えているのだろう。


「ペルニー君、正直これは僕だけでは判断しきれないところがある。これは一度ヴィンセントに見せてもいいかな?つまり、君の武器をここの軍に見せてもいいかという話だよ」


「ええ!?いきなり軍採用に話が行くってことですか?」


「まぁ、そうなるかな、これのほかに使用方法をまとめた紙とかないの?」


スゴイ!ここなら採用してもらえるんだ!やはり外の連中とはわけが違う、ここの評価こそが正しい評価だ!やっと僕の居場所が出来た。ここならば安定して暮らしていくことが出来る。僕は外で馬鹿にしていた連中の仕返しが出来るんだ!


「ちょっと待ってよハルマ、ヴィンセントは今多忙だからそれよりも正統グリーフラント軍武器調達局の局長に会いに行った方が彼の助けになる。まずはそこに行くべきだ」


「武器調達局?」


晴馬は聞きなれない言葉に疑問を浮かべる。初めて聞く単語だった。


「ヴィンセントは武器に対してとても敏感でね、とにかく最新式のものを取り入れるために国内外問わず導入に特化できる機関として武器調達局を設けたんだ。大砲を都市国家群から導入したものこの武器調達局が行ったものだ」


「それって国内の僕みたいな軍需産業の連中を委縮する危険性があると思うんだけど」


「自国の武器が追い付けばいい話さ、現にここのマスケットは火縄だけど外の世界はすでにフリントロック式らしいじゃないか、こういったものは軍事にとっては致命傷だから何としても避けなければならない、そして今回は我が国が初めての施条銃を導入するいい機会じゃないか」


アマーリアの言葉通りに僕は武器調達局の局長へと会いに行った。局長の階級は大佐だったので局長のことは以下大佐と呼ぶことにする。大佐は僕が持ってきた武器を拝見するとさっそく試射をしようという話になった。射撃場は練兵場の近くにあったのでそこを利用して試射が行われる。まずはライフリング銃(以下施条銃)を作ったベルニーが実演をする。まずマスケットの基本的な弾込めを行い、晴馬たちには初めての作動動作であろうフリントロックのマスケットの特徴である撃鉄を起こすだけで発射動作に持って聞けるシステムに度肝を抜けれた、それは晴馬やアマーリアは当然のこと、武器調達局の大佐もである、ただ軍事に関しては金もうけの要素を除いて興味がないカロリーネは欠伸をしてその様子を見守っていた。


「それでは撃ちます」


ベルニーはそう言うと、本来のマスケットの的の距離である50メートルほどのところから三倍は離れているであろう150メートルのところに移動させて照星を睨みながら撃つ。けたたましい爆音と硝煙が彼の顔を隠しそこから出て行った弾は見事に的へ命中した。それを見た一部のものを除いてはそれを見て言葉には出さない感動を感じることが出来た。これがあれば戦争は変わる、こんな飛距離の長い鉄砲はみたことがない。晴馬は秘書官であるカロリーネに震える興奮を伝えようと必死だった。


「い、今のはベルニーが銃の達人だからじゃないよね?これは彼の作った銃だからだよね?」


語り掛ける晴馬に対し、カロリーネは寝息で応答した。彼女の興味のないことに対する絶対的不忠さはもはや感動ものである。晴馬とアマーリアはその後この武器の将来性について語り合い、軍の強化に努められそうだと笑い合っていた。ただ、大佐はその武器に対し余り感科がないようで表情は硬いまま、ひたすらその一部始終を見ていた。


「ど、どうでしょう社長?これは役に立ちますかね?」


「いやスゴイよベルニー、君の痩せ眼鏡っぷりにも驚かされたけどそれ以上にすごいものだよこれは!」


「そうさ、大いに期待するべきだよベルニー技師、この発明は未来を変える素晴らしいものになるに違いないよ!」


「いや、そんな・・・うう」


ベルニーは急にその場で号泣した。晴馬やアマーリアは困惑したが彼は外の光景とは全く違う境遇に驚かされていたのである。そして感動した。まさかここまで称賛されることになろうとは思わなかったからだ。やっと自分が報われる番が来たんだと涙の吹いた眼鏡を拭き、笑顔で応対できるまで落ち着いた。


「だ、大丈夫かベルニー?」


「はい、急に取り乱してすいません社長、それで、この武器を生産してくれますか?」


「ああ!ライフリングならネジみたいに旋盤に専用切削の刃を設けることで簡単に作れそうだしすぐにできるだろう!最近旋盤を改造して歯車を変えることで変速も可能にできるようになったしいい実験になる」


挿絵(By みてみん)



確かにねじのピッチはライフリングも同じようにピッチとねじ山が存在するものである以上、ねじ切り旋盤がある晴馬に取っては同じものに見えるであろう。事実旋盤で作ることは可能である。さらに晴馬は送り台の下にある親ねじを主軸である従動軸から引っ張ることで自転する方法も発見し。これにより歯車の数や歯数を変えることで送り速度、刃物台が移動する速度が自動で一定に刻むことが可能となった、つまり、回転体に見合った送り速度を出せるということと同時に自由自在にねじの形状を作ることが可能ということになる。(わからない人への説明:1820年くらいの技術)


「ちょっとよろしいですか?」


大佐はそういって挙手して発言の許可を願う、アマーリアや晴馬がいるために個人の発言がやりにくいと思い行った。


「もしそれをわが軍が配備するのであれば50丁あれば十分です、ただの火打石の銃であればいくらでも買いますがね」


「ええ?!ど、どうしてだ?」


聞き返す晴馬に大佐は簡単に説明してくれた。


「装填時間が長すぎます。いくら命中精度がよくて飛距離があってもこれでは装填中に敵に襲われることは間違いありません、大体それが原因でここしばらく使われていなかったんですから」


「これって既存の技術なのか?」


「はい、改良してあるとすれば発火装置だけですね、この銃は致命的な装填時間を有するため余り使い勝手がよくないんです」


大佐の言いたいことはこうである。まずマスケットとは銃口から円型弾を入れる銃だ、手順にすれば火薬を入れ弾を入れた後、押し込みようの棒をもって押し込む、これが普通のマスケットであるのに対し施常銃はライフリングに弾を食い込ませるためにあえて銃口より大きめの弾を押し込むため、杭とハンマーを使ってから押し棒で弾を奥まで押し込む、両者を比較すれば明らかであるが施条銃の方が装填速度が遅く、とても使い物にならなないという。


「銃の性能がよくたって相手が二発撃つときに一発しか打てなきゃ意味がないでしょう?マスケットとライフリングの入った銃の飛距離の差など、騎兵の突撃でも食らえば簡単に埋められてしまう距離です」


「そ、そんなことはありません!これは改良を重ねれば飛躍的に飛距離が上がる可能性があります!命中力だって銃身を長身にしてライフリングの巻き(ピッチ)を増やせば!」


「だから配備はすると言っているだろう、確かに命中精度のいい銃であることに変わりはないから【狙撃銃】として採用する。ちょうどその枠に値する銃がなくて困っていたんだ」


ベルニーの反論は大佐によって憚れた、そもそも彼は何も過小評価しているわけではない、その銃の特性をよく知りデメリットも理解できているように見える。


「今までのマスケットには弩のような精密射撃、つまり個人に対する狙撃が出来なかった。集弾性からしても性能が悪くそういった問題は前から上がっていた。その面から言えばこの銃は採用だと言っているし、狙撃銃の正式配備があるから作ってくれと言っている、不満があるか?」


「で、ですから、そこまで評価するならばなぜもっと数を生産しないのですか?」


「必要ないんだよ、何も歩兵全員にもって歩かせるわけじゃない、運用方法としては鉄砲隊のマスケットに混じらせて敵の指揮官を狙うとか、兵士が隠れて物陰から開いた道などの要所を行きかう兵士や輸送物資の狙撃をするといったものだ」


その言葉はベルニーが最も多く自分の銃につけられた評価と一致していた。彼が持ち運ぶたびに多くの貴族からは猟のお供ぐらいでしか考えられず、決して軍用には向かないと豪語されたこともあった。それに比べれば軍で正式採用してもらえるだけましというものではあるが、結局大佐にとってもこの銃はほかの貴族たちとあまり変わらない分析しかならないのだとベルニーは悟った。


「ぐう、くそ、ここでも同じ扱いを受けるのか・・・」


その場に跪き、涙を浮かべながらベルイーは悔しがった。


「ま、まぁまぁ、君の言う通りこの銃の将来性は高いし採用するよ、僕は君の銃と同時に君も評価しているんだ。どう?僕の会社で技術者として働いてみない?」


晴馬はそういってベルイーに手を差し出す。


「感謝します、今回はちょっと自分の思っていたよりも下方修正でしたけど、それでも採用してくれましたもんね。これくらいどうってことない大成功ですよ」


そういって力のない笑顔をベルニーは見せた。こうして、国を捨ててまで賭けたベルニーの挑戦は終わったのである。彼はこの成績に不満がないといえばうそになる、勿論不満はあるが。だから他の地に赴くか?それは不可能である、もうこれ以上のチャンスも何もない、最早これが最良の結果であると考えるほかないだろう。


「ではハルマ閣下、今後の供給するマスケットは最新式の発火装置に、あと、出来るなら今までの発火装置も換装できるとありがたいのですが」


「まぁ、恐らくできるとは思いますが・・・しばらく施条銃の採用枠を開ける検討してくれませんか?」


「はて?なぜでしょう?」


「僕が、改良した装填時間の短いものを作ろうと思うので、それまで待ってほしいのです」


「ふむ、まぁやってみてください、恐らく難しいと思いますがね」


ハルマ一行は再び会社に帰る帰路へと歩く中、ベルニーはとても落ち込んでいた。


「はぁ、これが僕の旅の末路か・・・」


だが、この狙撃銃の採用すら消え失せる非常事態が後ろから襲い掛かっていることを彼は知らない。後ろから生きている一匹の馬、その上に乗っている女カタリナは血相を変えてまっすぐにやってきた。


「ああやっと見つけた、緊急ですアマーリア様!すぐに砦に戻って下さい!」





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