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悪党のすすめ  作者: と
悪党→政党編
39/63

37 復帰

カタリナの話を要約するとこういうことである。


赤霧の教会が強い権限を持つ理由


・大陸の言語一致は赤霧の教会が最も信仰されていたから。


・赤霧の教会は医療奉仕修道会という組織を持っており、これは「医療団」という組織の大本で、多くの国家が医療に関して「治療団」に依存している。


これだけではない、赤霧の教会は自らの領地を持った独立国家である。それも多くの国から独立を保障されており国家承認も受けているすごい国である。つまりはなんだ、最強だ、この国に恨まれようものなら大陸の地図から抹消される危険性すらあるのだ。どういうことだよ!?何でそんなことになるんだよ?


「学問は赤霧の教会から時としてよく思われていないことがあります、それ故に都合のいい学説だけを赤霧の教会が採用してそれ以外は異端と論じる傾向があるほど、赤霧の教会は偉大なのです」


「そりゃあ学問に通ずる人ならば誰もがこちらに逃げてきますわな、僕だってそんなのこの国家に逃げてきますもん」


「おまけに巷ではこの国家は強国であるとの説が浮上しているうえ入ってくる科学者や学者は後を絶ちません」


僕たちは喫湯店(喫茶店のお湯バージョン、何が楽しくてやっているかは作者の考えの届く範囲ではない)に一度落ち着き国際色豊かな会話に講じた。僕としても満足ではあるが彼女はその最中も僕の手をこねくり回しているのであまり感心しない。どんだけ領主LOVEなんだよ?僕は領主じゃないって言っているだろ?僕は晴馬だぞ?


「最近ではここに大学を建てる計画もあり、学者たちはアマーリア様のところに連日通っているようです、勤勉家のカマーリア様のことですからまず言ってOKが出るでしょうけど・・・」


「それは国際的にはよろしくないと?」


「ええ、どう影響出るかわかったものではありません、こう言った話は私よりもローレ殿の方が詳しいでしょうから一度研究所に赴きますか?」


「そうだな、そうするとしよう」


僕はそう言うと席を立ち、カタリナと共に研究所へと向かおうと外へ出たものの、すでに空は夕方であった。考えてみれば今日は一日中歩いていた気がする。これでは言っても無駄だと判断した僕はそれを取りやめ、一度食事をとって帰ることにした。


「カタリナ、今日はここまでにしよう、明日また来てくれればいいから今日は解散」


「解散?どうしてです?」


「え?だってもう今日は遅いし明日からまたやるというのも・・・」


「いえ、そこは納得しているのですが、なぜ解散する必要があるのですか?」


何を言っているのかさっぱりわからない、ああ、ひょっとしてデートが終わることに不満が?確かに言われてみれば僕が彼女とやったことはここで語り合うくらいのことだしな。むしろその意見は当然といえるものであることには同意をせざるを得ないところがある。


「何か食べていく?良かったらおごるけど」


「貴方を食べたいです」


ああ、なぜ彼女はこうも斜め上を行くような回答を用意しているのか全く分からない。僕はそういうつもりで言ったわkじゃないのに。なんだか彼女は本格的な治療が必要な気がしてきたぞ。


「ちょっと待ったー!」


店の出入り口から何やら懐かしい声が聞こえる。足取りは不安定にふらふらとした悪党秘書課の制服を着た女だった。僕の記憶が正しければ彼女は僕の会社の財務管理を任していたのにもかかわらず私用に金に手をつけえて遊んだという噂のカロリーネ、カロリーネじゃないか!


「わたしいが、きたからぁには、あ、安全ですよ社長ぉ、ぉぉぉ」


「わかった、君は寝たまえ」


「そうですよ、絶対安静にした方がいいですよ」


僕もカタリナも割と本気で心配するほど彼女の風邪は重傷だった。彼女の顔は熱く、又頬は赤く染まっていた。僕としては彼女の風邪をもらいたくないこともあるがそれよりも彼女が彼リ道を歩けるかの方がよほど心配である。ここは仕方ないから会社に一度泊まらせてからもう一度家に送るという方がいいのではないだろうか?


「ふ、ふぅぅぅ、だってぇえ、私、これで首になったらぁぁ」


「首?解雇通知のこと?既に用意してあるから安心しなよカロリーネ」


「「意外と腹黒いところがありますね晴馬」」


「え?えええぇ、嫌だよぉ、クビにしないでぇ」


どの口が言うか、というか僕が買い起されてもアマーリアは秘書課に置いておくことを明言していたし問題ないと思うんだが、そもそもの話その原因を作ったのは君だろ?


「貴方、秘書官という階級でありながら上司の会社の運営金に手を付けた時点ですでに秘書の価値はありません!同じ秘書課の人間として同情も沸きませんよ、即刻辞表を出してみては?」


カタリナはかなり辛らつな言葉をカロリーネに浴びせる。どう考えてもその通りなんだがそんなに言う必要はなくない?まぁ解雇通知の用意があることを言った僕が言うのもなんだけど。ともかくこれはカロリーネにとっては熱を出していても分かるほど簡単な言葉でありながら痛恨の一撃で逢ったことには間違いはない。彼女はそれを聞いた途端その場にへたり込み、首をうなだれてしまった。


「私だってぇ、好きでしたわけじゃ・・・ないもん」


彼女に幼児退行の相が出ている、というかそれってどういう意味だよ?


「だって、カジノ建ててみたら相当儲かったんだもん、そうしたら拡張とか考えるじゃん?だからお金が足らなくて、それでこっそりと」


「明らかな私的利用じゃないか、僕としてはそれは許せな・・・ちょっと待て、君カジノ運営してたの?」


「え?あ、ハイ、個人で運営してましたけどぉ」


通ってるってそういう意味?何君は秘書でありながら僕と同じ経営者ってこと!?どんだけ金に目がないんだよ?!


「でももうしませんよぉ、秘書として専門で頑張りますからぁ」


「貴方カジノ運営の後ろ盾があるのならそっちを専業にしなさい、このことはアマーリア様に報告させてもらいます」


「ぇえ?そ、それだけはダメ!ね?もう経営から離れるからいいでしょぉ?お子個ほどのお給料ぉはもらえないんだから」


「何をふざけたことを、貴方は悪党の職員でありながら報告せずこっそりやっていた時点で懲戒免職の範囲内です、しかもそれをさらに悪党高級幹部の資金を横領したってどう考えてもクビ以外あなたの判決は存在しません!」


「私だって理由があってやってるの!収入はカジノや秘書、社長からの給料があるけど自分で使うお金なんて雀の涙低度しかないんだから!」


カタリナの精論に対し、カロリーネは持論を展開した。


「私はお金をご飯に代えて両親の村に送っているんだから!ある日突然に身分が最高級になった貴方とは違って私はのし上がってここまで来たの!こうでしないと養えないんだから!」


「それは私情であり・・・」


「まぁまぁカタリナ、ここは一つ聞いてやろうじゃないか、それ次第では助けてやらんこともない」


「りょう「領主じゃないから」」


なぜそのような気持がわいたかはわからなかった。おそらく今までの僕であればそんなことは考えないだろうし、真っ先に解雇通知を出すに違いない。それがこんなことをするなんて、これがユッタの言う成長というものなのだろうか?カロリーネにとっては生命線を津アグ最後のチャンスだ。風邪がどうとか高熱がとかそんなことを言っている場合ではない。


「私はグリーフラントの西、ゲリラの森の近くで生まれました。そこは常にパルチザンと王国軍がしのぎをけずって戦い荒廃した土地です、戦いによって生まれた多くの亡骸を埋めることを王国に依頼され、それを行うことで私の村はどうにか生き延びていました。私は幼いころからハゲタカと周りの人間い馬鹿にされ、食うものに困ったら死体を食う女と言われてきたほどです。だから、たまたま民間から行政貴族の代理を募集したときに行政代理となって見返してやろうと思ったんです」


「つまり君はその募集に応募して受かったと」


「はい、決して簡単なことではありませんですたが私は領主の秘書として生活を過ごしました。村と比べて何もかもが優雅に過ごせる最高の時間だったとも言えます、同時に後ろめたさもありその時から少しづつ田舎にお金を回していたんです」


「「ふむ」」


「それからは爵位を求めてお金を稼ぎ、評価を上げてもらってお金を稼ぎ、王宮に入るためにお金を稼ぎ切った、でも村はちっとも豊かにならなかった、それならばいっそ私の資金でムラを歌化にしようと考えたんです、それには莫大な金が要る。私はそれを求めて国庫に行ったところを」


「失敗してこちらに来た、つまり君が金に目がないのは故郷の村にお金を上げるためだというのかい?それを証明する証拠は?」


晴馬の要求にカロリーネは答えて一枚の手紙を渡す、晴馬はそれを見るとどうやら彼女の親族ではなく村の村長のような人からの手紙らしい、おおよそ彼女の親は文字が読めず、代わりに書ける人が代筆をしたといったところであろう。感謝の手紙と書いてあるがその内容は悲惨たるもので、とにかく物資の要求のみが書かれているまるで業者への手紙みたいだ。


「これが感謝の手紙、にわかには信じがたいものがあるな」


「それは極端に私が王宮にいたときの手紙だからです、もし私が平民であることが王宮でばれたら間違いなくクビになっていたでしょうから、書いていなくたって、ちゃんと私にはつたわっています」


「はぁ、さてどうしたもんか」


晴馬はジャッジをどうするか考えた。アマーリアがカロリーネがこんな重大な事件を起こしたのにもかかわらず勘弁してやれなんて言ったのはきっとこういった理由を知っていたからであろう。なぜ僕にそれを言わなかったのかわからないがそれでもその情報を知った僕は今、どうしてやろうものか考える必要がある。彼女の言い分はわかるがそれでも僕には彼女の罪がそれで許されるものとは感じられない。おそらく労働者の法律が存在したとしてもこの解雇には不当さを証明できるものはいないだろう。


「というわけだユッタ、君はどうするべきだと思う」


「「難しい判断ですが・・・彼女が王宮を離れても大金を稼ぎ故郷に送っていた事が事実であるのならば重々酌量の余地はあるとは思いますが、それでもそれを説明するタイミングが遅すぎることもありますし彼女の処罰が軽いと悪党の内部から疑心が生まれる危険性があります」」


「よし、カロリーネ、君は組織からの信用を失墜させたこと、理解はしているね?」


「は、はい」


カロリーネの顔には大きな焦りが見えていた。晴馬は真顔で感情が読み取りずらく、総合的に考えればクビにした方が有益である可能性があるからだ。カロリーネは風邪をひいているため鼻水をすすり判決を待つ。


「僕はもし君が本当に横領をしたのであれば君に厳罰を与える最悪懲戒免職だ。なお、アマーリアにカジノのことは話をしておく。君の出した会社の損失の差し押さえのためだ」


「っぐ?!」


「当然の判断です」


彼女の顔には公開の涙を浮かべているところがあった。晴馬はそれを見ても顔色一つ変えず店から出ようとカロリーネの後ろを通る。


「ま、待って、チャンスを・・・」


「悪党は王権打破を目的とした政治結社であり国家だ、多くの敵と緊張を持っている悪党に余剰の資金も人員もいない、常に失敗は許されない。もちろん腐敗もだ」


「それは、でも」


「そこでだ、君の行ったことが腐敗につながるのか一度考え直してみようか、つまりはこういうことだ。僕は工場員の給料を君に渡したが君はそれをてっきり自身の給料であると勘違いし、たまたま近くのカジノですべて使ってしまった、しかし後になって僕が君の給料ではないという事を君に一方的に言って来たんだよ」


「え?」


カロリーネは目を丸くする。それはカタリナも同じだ。


「ハルマ殿、いったい何を言っているんですか?」


「聞こえなかったかい?僕は彼女が誤って使ってしまった工場院の給料を確保するために彼女の所有物であるカジノの土地を差し押さえするといったんだ、それが君に対する厳罰だ。何か異論は?」


「あ、ないです」


「ふうん?ところでカロリーネ、君鼻声が直っているね、熱下がった?」


「え、そういえば、え、今そんなこと言ってる場合じゃ」


「まぁ、言わなかった僕も悪かったけどさ、それでも一度は確認してくれよ?ヒューマンエラーは常に確認することによって回避できるんだから」


「へ、は、はい」


「うん、明日は大事を取って休みな、カタリナ、どっかご飯でも食べに行こうか」


「はい?ちょっとハルマ殿!」


晴馬はカタリナの制止に応じず、喫湯店を出て行った。慌てて追いかけるカタリナは不満げに晴馬を見つけた。


「ハルマ殿の言う通りあれは悪党内部の腐敗を視認したことと同じです、あんな生ぬるい求刑では内部の緊張を緩める危険性があります」


「生ぬるくなんかないさ、こっちは彼女の貯金から損害分は払ってもらったし都市の土地をただで手に入れることが出来た。これは競売にでも出せば相当いい値段が付くと思うよ?」


「ですがそれは・・・」


言い足りないカタリナに晴馬は向き直り、彼女の唇に人差し指を押し付ける。


「んぅ?!」


「私はこう思うのですよ、言って聞かせてさせてみて褒めてやらねば人は動かじ、彼女が優秀な存在であることには変わりはない、失うよりも、賠償をしてもらって復帰してもらう方が悪党の未来に有益なはずです」


「ん、ふんふ」


どうやら同意のようだ、少し目がとろけているような気がするがユッタのおかげでいい感じにくるめられた。あとはこのことを大事にしないでそっとしておくに限る。


「ぷは、領主さまったらそんなに積極的にされたら私「領主じゃないから」」


僕は結局彼女を許すことにした。会社にある一部の書類を破棄し僕の都合の良い書類に書き換えて横領は事故の横領として処理する羽目になるだろう。立派な横領であることは変わりないからである。だがそれがどうした?僕としてはそんなことはどうだっていいことだ。彼女にも理由があってやった。僕はそれから会社の損益を防いだ。少なくとも今はこれで言いではないか、そう思うことにしよう。


「でもハルマ殿、なぜそこまで彼女にご執心なのですか?確かにカロリーネは優秀でしょうが一度懐に潜り込んだら全てを奪うような奴です、しかもそれが発覚してなおも雇用する必要があるのはなぜですか?」


カタリナの疑問は全くその通りである。土地だけ奪って解雇することが最も後腐れのない理想的な終わり方といえよう、しかしながら晴馬は雇う理由がかわいそうだからという慈悲の心だけで行ったわけではない。カロリーネは必要不可欠な存在だと知っているからだ。彼女のみが牽制する事項。いいや、初めはローレが勘づいたがそれを継ぐかのように表れた彼女はぜひ近くに置いておきたい。そう晴馬は考えるのだった。


「君にはわからんよ、彼女は僕にとってブレーキだ、彼女のみが僕の脅威をいち早く察知し、そして制動してくれた存在だ。彼女には高い想像力がある。それを失うのはまずいことなんだよ」


「ん?ブレーキって?」


「ブレーキの説明かぁ、長くなるしそんなことは飯の後でいいでしょ。最近は冷蔵魔法ってのが開発されたらしく新鮮なまま食糧が輸入されるようになったんだ。これを食べない手はないでしょ?」



僕は会社にて床に就いた。カタリナは食事の後案外あっさりと帰ったのは腑に落ちないが彼女の顔には僕の判断について考える時間が必要であるように見えた。彼女にとっては僕の行った処遇があり得ないことなのだろう。ユッタは騎士であった自身に言い換えて言った。おそらくカタリナは不忠を働いたカロリーネに対して強い嫌悪感を出しているが、それを受け入れ、不届きものを許した僕に疑問を抱いている可能性があると。確かに、いくら損益を回避できたからと言って裏切り者をかくまう必要などどこにもない。それでもなお彼女に執着する理由がわからないのはとうぜんだ。


「僕にとって彼女は好奇心ブレーキだ。僕が乗る技術進歩という車にはブレーキは必要不可欠であり、その性能が高ければ高いほど制止力が働きやすい、そうだろユッタ」


「ええ、その通りです晴馬、彼女が貴方の好奇心と探求心で生まれる発明品を中立に評価し、それが後世にどう影響するのかを吟味することであなたの未来を保証するでしょう」


「しかし僕にはわからないことがある。それは僕の世界にはなかった魔法という存在だよ、魔法は果たして技術を前にしてうち倒れるほど貧弱な存在なのか?僕が開発した武器を持った兵士がワイバーンやドレイク、リリスを打ち倒せることが可能なのだろうか、モンスターだけじゃない。セージの連中やパラディンも同様技術にとってどれほどの脅威を示していくのだろうか」


「面白い話です、一度考えてみましょうか」


やがて夢の空間は何かに変革していき、それは硝煙渦巻く戦場へと化していた。まるでそれは世界大戦、いや、戦う姿が見えない分世界の終わりにも見える。


「これはあくまで私の知っている魔法と、貴方が知っている技術が織り交ざった世界でどんな衝突が起きるかを戦闘の観点から推測した世界だと認識してください」


僕は戦場を空中から見るようにしてあたりを見回す。それは僕の想像をはるかに絶する世界は広がっていた。銃を撃つ人間の手には異形の銃が、魔法を持つものは倫理を無視して生物兵器のような魔人を操り、かつてパラディンと呼ばれていた騎士たちは脅威の戦闘力とそれを可能にする航空兵器に乗って戦場を駆け巡っている。


「なんだこれは?!まるで違う世界じゃないか!」


「私の予想が正しければ数十年以内に実現可能な世界です」


「馬鹿な、パラディンが操っているのは飛行機だぞ?!航空力学も材料力学も流体力学も構造も・・・そもそも物理の概論がまだ定着してないこの世界では実現不可能だ」


「いいえ、航空力学はおそらくこの時点で相当な範囲を習得済みでしょう、かのライト兄弟が苦しんでいた補助翼アドバース・ヨーという現象も、すでに解決済みです」


「それじゃあこの世界は僕の澄んでいる世界と大差ないじゃないか!」


「いいえ、遥かに超えています、あれをご覧ください」


そういって僕はユッタが指をさす方向へと目を向けた。そこには何やら一人のセージが魔法を唱えると、先ほどまで何もなかった空から突如巨大な鋼鉄製の船が現れ、一個の石のようなものを落とすと、巨大な光と共に強大なエネルギーを発した。あたりの地形は原っぱと化し、敵味方関係なく誰も動かなくなった。僕は気づけば呼吸が荒くなり、あまりにも凄惨である惨状に吐き気すら覚えた。


「これは貴方が思う核爆弾などではありません、セージが長年研究している究極魔法の【根絶】という魔法を工学がカバーして安定して供給できるようになったのです。不利な戦況の戦場には敵味方を巻き込んで焼け野原にする。そんな世界も難しくはありません」


「ああ、ここまでか?ここまで世界は破滅を迎えるというのか?」


「それが世界の心理であるならばです、少なくともあなたが安定して技術革新を続ければ避けがたいことになるでしょう、でも、仮にそ」をやめてもすでに避けがたいこととなっている可能性があります」


「何でだ?」


「それは一世のアウタースレーブが王国中にいるからです、もし今まで同様100年間誰も彼らの可能性に気づかずに彼らの生涯を終わらせることが出来るならば問題はないでしょう、しかしそれが奇跡であることはすでにお分かりのはず、お姉さまのようにその可能性を見つけることが出来た人がさらに増えたのならば世界中で数千年停滞していた技術が数百年単位で急速に発展し、運用方法が未熟なまま使用することになる可能性があります、それが今見ている世界なのです」


「それはまずいぞ!どうすればいい?どうすれば止められる?」


晴馬は焦りながらユッタに問い詰めると、ユッタは少し困った顔をして晴馬を見つめ返した。


「無理です、仮に世界中のアウタースレーブをこの悪党の国家に納めたとしても、次の百年で空賊がまた空に羽ばたいてしまえば止めようがありません、そもそも、技術伝来のために空賊を派遣する可能性だって出てきます。仮に我々が王党を廃絶し王位継承式典の法的に禁止してもそれは同じ、その利益のためなら法によって禁止することすら不可能になるでしょう」


「止められないということか、どう頑張っったって、この世界はこうなるしかないと?」


「こうなれば悪党がいち早く技術開発を行い保有することによって世界から優位性を獲得し世界秩序の形成、100年後の王位継承式典の前にグリーフラント王国初代王の亡骸を発見して破壊する必要がありますこうすればもう、アウタースレーブはこちらには来ることがありませんからね、ですがそれは同時に」


「僕や鈴谷さんが元の世界に帰れないことを意味する」


「せめて破壊する前に帰れる方法が分かればいいのですが、それを検証する時間はないと思われます、そのときにはすでに王の亡骸は世界的に価値があるものとなり、場所がわかれば世界中が奪いに来るでしょうから」


「ああ、なんてことに気づいてしまったんンダ!」


晴馬はその場で地団駄を踏んで事の重大さを気づいた。とにかくこれはもう僕一人でどうにかなることではない。すぐにでもアマーリアたちにこの事実を伝えてみんなで解決してもらわなければいけない事項だ。しかしそれで鈴谷さんとの約束が解決できるのか?王の亡骸が今のところもっとお地球に帰れる可能性が高い唯一の物品であるのだ。それを皆に伝えるなんてことをしたら間違いなく約束は守れない。どっちを優先することが優先だ?なんだってこんなことになったんだ!


「できるかはわかりませんが、これを止める方法はなくとも回避することはできます」


「なんだって?!」


ユッタはまっすぐ僕に指をさす。まさか、そんなまさか!


「貴方です、アウタースレーブとして唯一人並みの生活を送ることが出来ている上に世界を変えることが出来る存在はあなたしかいません」


ユッタは晴馬の両手を握りしめ、目を閉じて何かを感じ取るように鎮まった。


「貴方にしてもらうことはただ一つ、この世界を滅ぼさずに次の時代に送ること。中世の次は近世、近代現代と送ることで、世界は技術と共存を図れます、それだけではない。あなたあそれの運用方法も知っている、それを周りに伝えていけば、間違いなく世界は数十年で滅ばなくて済む!」


「できると思うのか?!」


「思いません!がしかしほかの方法があるように思えますか!?」


「ぐうう、僕の力だけでは難しい、今世界中にいるアウタースレーブのうち、どれだけのアウタースレーブが恐ろしく有能な存在なのか、それが理解できないことには、そしてそれを手中に収めないことにはそれは難しい話だ、だがどうやってアウタースレーブを手中に収める?それをしようものならまずは解放させなければならない、所有者を殺して契約を解除させるか、はたまた僕みたいに誰かを受け皿にして転生させるか、やるならば前者だな」


「そうですね、どうせ我々の道には血が滴ることは避けられないことです、それをどうやって行えば最悪の事態を回避できるか、そこを考えていきましょう」





最悪な目覚めだった、こんなことに気づいたユッタにはあっぱれと言ってやりたいが、この世界の終末を感じさせる時代に突入したことに酷い恐怖を感じていた。体中は汗まみれだし、心なしかベット狭く窮屈に感じる。ん?それはおかしくないか?窮屈に感じる必要はないだろう。


「すーすー」


おう?僕以外の人の寝息を聞く事になるとはな、というか布団の中に入っているこいつは誰だ?恐る恐る布団をはいで晴馬は中身を確かめる。


「おお意外、カタリナじゃなかった」


そこにはカロリーネが寝息を立てて眠っていた。まぁ仮にカタリナではなくてもこの状況はおかしいことには変わりないのではあるが、なぜだ?なぜ彼女は僕のベットで寝ているのだ?ともかく起こして事情徴収をするほかあるまいな。


「ん、あれ?起きてらしたんですか?ああ、すいません、起こそうと思って待っていたら気づいたら寝てしまって・・・」


「いやそれよりも今日は休んでいいって言ったよね?風邪は?直ったの?」


「はい、おかげさまで治りました・・・あの」


カロリーネは何やらもじもじと何かいいたそうな顔をしていた。


「ありがとうございます、その、助けていただいて」


「ああ、それのことか。うん、感謝してほしいね、君のおかげでいくつかの会社の書類を改竄する羽目になったんだからね」


「あう、金輪際こういうことはしないように尽力いたしますので、これからも長い付き合いを・・・」


「当たり前だろ?そんなこと言わなくてもやってくれよ。僕は君のしたことに関しては心底腹が立っているんだからな、普通に君を解雇することが妥当だって知っているんだからね?秘書課だけの給料で仕送りを何とかしてみる?」


「うう」


カロリーネは晴馬に顔が上がらなくなっていた。自身のやったことを反省するとともに悪党から離れればもう自分には当てがないことを再確認するいい機会となった。


「さて、説教もこれくらいにして今日の仕事に入ろうかね、カロリーネ、今日の予定は把握している?」


晴馬の質問に素早く反応し、カロリーネは素早くメモを取り出した。


「あ、はい!昨日のカトリナから引き継いでいます、まずは今日中に空軍からに以来の品の仕様書の製作、それからは・・・フェリシーとのデート?」


「うん、しばらく彼女とはあまり話していなくてね、本人が要望してきたことなんだ、彼女は僕とは話がしたいだけでここに来たようなものだからご立腹なんだよ」


「は、はぁ、ええっとそのあとは・・・私の辺への物資輸送の検討?!ちょ、これどういう」


「ああ、君に上げている給料じゃ結構負担じゃないかと思ってね、僕のポケットマネーから出しておこうかなあって」


「いや、でもそんなことをするのは・・・」


「いや僕スゴイお金持ってるよ?銃器に始まって多くの事業を手掛けているし最近君には内緒で鎖で作った簡易サスペンション馬車の製造も初めてさ、いつも僕の銃器をアルノーが輸送中壊しているからどうしてかなって思ったらこの世界の馬車の足回りがお粗末さが原因だってわかったんだよ」


「え?それ聞いてな」


「そんでサスペンションのついた馬車作ったらバカ儲けでさ、国家都市群から数百、この街も軍も大量受注だよ、工場設立の証には会社設立も考えてる」


そういって晴馬はいくかの書類をカロリーネに見せた、そこにはどれほど莫大な収益かを想像させるような受注伝票と馬車の発展性を見せつけられ、思わず開いた口が塞がらない。それを見た晴馬はにやりと笑い、窓から下にいるアルノーの姿を見た。


「それだけじゃない、ウーダンカーク奉仕団の莫大な人員によってこの町周辺、国境から自由都市国家群の道が整備されている、それが輸送速度を速め商業の発展を早くしている。最近では自由都市国群の内部の自由都市国家間の食料の相場を早く知りたい動きが高まって市場が活発になっているが、道路整備が出来ていない事が問題になっている事で公共事業が乗り出した、どうやら世界は大きく発展しているようだ、ということは、僕たちが入り込めばもっと稼げるチャンスだ」


晴馬は夢の構想案い目を輝かせ、自室に入ってきたアルノーに有無を言わさず持ってきた書類にサインし半ば強制的に部屋から排除した。


「アルノーへ馬車を売り、その馬車で僕の商品が送られれば巨額の利益を相互に受けることが出来る。だが残念ながらこれの担当を任せられるような人材は不足している。君がやるんだ」


「わ私が!?」


「おおっと勘違いしないでくれよ?あくまで適任が君しかいなかっただけだ、これはひいきに開いているのではなく、君の能力を買ってやっているんだからな!?今度は裏切るなよマジで、共倒れはごめんだからな!?」


晴馬は冗談で言っているのではないと必死でアピールする。だが、カロリーネにはそんなことはどうでもよかった、なぜ失態した自分に対する評価が落ちていないのか全く分からなかったからだ。


「な、何でそこまでしてくれるのですか?私あなたのお金を使ってあなたを裏切ったのに」


「ん?まぁ理由はあるよ、まず言って僕が美人には弱いこと、君が優秀なこと、そしてもう一つ」


「ごくり」


「君とは短い付き合いだけど結構気に入っているんだよ。だから、あまり僕をがっかりさせないでくれよ?」


「あ、ああ」


「泣く前に仕事にかかってほら、後鼻水を拭いて、手の掛かる子供じゃあるまいし、もっとしゃきっとする!」





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