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悪党のすすめ  作者: と
悪党→政党編
25/63

23 決闘

対峙する二人は非常に静だった。もし二人が常に動かなかったら蝶が止まり木代わりに使うのではないかと思われるほどである。それなのに、その静的行動を繰り返す二人に誰もが熱狂した。解放されたフェリシーだけその挙動一つ日乙にかたずをのんでいたが、それはお互いの潜在的能力を見抜いているからだ。


「オルヌス川の盟友、ラーゲルクヴィス家の騎士パートリック・ポール・ラーゲルクヴィスとして、お前に決闘を申し込む」


パートリックはそういうと剣を構えた。


「・・・」


なぜ動かない?もうすでにこっちは準備ができているのに、もしかしておびき寄せる狙いか?いいだろう、あえてそれに乗り、お前を一撃で沈めてやる。


「「ま、待って!ここで動いてはなりません!名を名乗ってください!」」


「は?」


「「ゲラルドの時は行いませんでしたが決闘では名乗らないといけないんです!早く名乗って!」」


「あ、や、やぁやぁ!我こそは高野晴馬!わが師ユッタの勅命により、腰抜け集団首領のトップパートリックを成敗しに参った!」


「「なんですかそのへなちょこな名乗りは・・・」」


「日本ではこうだったんだよ!」


「ふん、つまらない決闘になりそうだ」


パートリックの発言は彼の攻撃の後に行われたものである。いかに速い攻撃だったかは語るまでもない。それは剣先に特徴があった。いくつもの支点を設けて蛇のように動くように改造された剣だったのだ。それが発動するや剣は長さも変わり一直線に晴馬の元へと進んでいったのだ。途中にはだかる商品棚や果物は無残に飛び散り煙のように飛散した。だが、晴馬はそれを見切り、見事に避けて見せた、はずだった。


「ぐぅぅ!?バカな、軌道からはよけたはず」


晴馬の足にはそれが食い込んでいる。自身も信じられない出来事だ。いくら変化自在に動く剣だとしても可動域は存在する。それは剣の刃と刃の支点を分析すればよけられる。にもかかわらずそれが出来なかった、理由はともかくとして問題はこの剣、いや、刃の部分にはそれぞれ返し刃になっていることだ。つまり、抜こうと思えば余計に抜けなくなってしまうのだ。


「ふふふ、お前のその冷え切った顔、今すぐ望み通りしてやろう」


途端、すぐに剣が引っ張られる。足は宙ぶらに体は床にたたきつけられた。だめだ、全然わからない。あの細工のある剣ではどのように考えても蛇のように動くことはできても刃が変わることはない、【でかくなったり、とげのように】変わることなどありえはしない。しかし、そのように変幻自在できる槍は知っていた。無刃槍と呼ばれる槍だった。ということは、グングニール同様の剣、なのか?


「お、お前・・・烈火のパラディンか!」


「ご名答、俺は伝説に聞く烈火のパラディンだ、人は皆、この力が最も優れたパラディンと呼ぶ、なぜだと思う?それは伝説の剣、多くの変化武器を扱うことが出来るからだ、お前はどのようなパラディンか聞いていなかったな、いったいどのようなパラディンだ?」


パートリックは嗤いながら剣を持っている右手を見せる。遠くからは燃えるオレンジのような痣が見える。しかしよく見るとそれは無数のヒビだった。間違いない、本当に烈火のパラディンだ。まさか、パラディンは一人一つの能力だと思っていたが、実際はこのように一つの能力を多くが持っている可能性が高いまったくもってこの世はわからないものばかりだ。だが、それよりもこの激痛と流血をどうにかしないといけない。


「俺は、強い存在でありながら多くの者に命を狙われてきた、いつも雑魚ばっかりで自分の手を動かすのが面倒くさくなったものだ、お前もその一人だハルマ、一体いつになったら俺を喜ばしてくれるんだ?」


「お前が死ぬのを・・・見せてやるよ」


地べたに這いつくばった晴馬は、状況を理解していないのかそういって嘲笑った、群衆はどよめき返し、パートリックは爆笑した。これを的確に言った言葉がある。負け犬の遠吠え、勝敗は時代劇のようには行かない。何度も切ってもいられない。戦いである以上先手必勝一撃離脱は基本中の基本なのだ。つまり、一撃が終わってまだ敵が存命していても、次に来る攻撃は二手三手で終わることになる。それがこの二人に、フェルシーやベルダにどのような影響を与えるのかは言うまでもない。


「立って・・・立ってハルマ様、立ってー!」


フェルシーは声の限り叫んだ。顔を熱くし、額から汗を出し、目には涙を浮かべている。期待していたからだ。彼の言う正義は本物だと思った。自分に都合のいい解釈だったのは認めよう。でも、あの騎士は普通の人と違う、わけ隔てなく平民と接し、平民を助け寄り添おうとする存在、特別な存在だった、もしかしたら、そんな人だったら力ある正義へとあるのかもしれない、そう思えば思うほど、声に熱が入る。そんな正義が屈服するとき、闇は決まって私の希望をあざ笑う、パートリックは嫌な人だった、何度断ろうともまとわりつき、はてには襲おうともした。でも、自分には抗うすべはなかった、相手は貴族、怪我でも負わせたらそれだけで重罪だ、強大な力に平民は勝てない、勝とうと思うなんて考えないことだ。そう言い聞かせてきたのに、そう考えてきたのに、一回でも夢を見せたのなら、最後まで責任を見せないさいよ、ハルマ!


「あ、ああハルマ、なにを・・・」


ベルダはフェリシーの声で覚醒した。だが、目の前に浮かぶ光景を理解するのには時間がかかった。先ほどまで同胞だった連中が争っているからだ、店は滅茶苦茶、店先には群衆、いったいいどうしてこうなったのだろう?確か、パートリックの、そう、またパートリックがおこなう蛮行を眺めていたはず、止めるわけでもなく見ていたのだが、急に泣いてしまって、だが、今はそれどころではない、すぐにでも止めなければ街に被害が及ぶ!しかしどうやって止めればいい?相手は烈火のパラディン、持っているのは蛸足の剣と名高いミームングだ。私の連撃でも防戦は必至だ。でも、止めないと被害が。ああ、そうこう考えてる場合じゃないわね、すぐに止めないと。


「やめなさい貴方たち!これでは青年騎士同盟に傷が・・・」


傷が、これ以上傷が増えるであろうか?今まで金銭要求のために非常な行為を繰り返した我々に、これ以上どうやって傷がつくのか、もしかしたら、これは罰なのか?何もしなかった自分ができる最後の行為、それは、崩壊する青年騎士団を見て、何もせずにいる。それが、罰だというのだろうか?そうに決まってる。ならば見よう、諦観したのち、行うべき最後を見届けよう。


「「傷はどうですかハルマ?」」


冷静にユッタは言う、それは事態を把握できていないからではない。圧倒的勝利を感じていたからだ。それは晴馬も同じ、向こうの武器とパラディンの能力の相性のなさに一笑したぐらいだ。勝てる。これなら勝てる。


「問題ないユッタ、でも、すげぇ痛い、次で向こうは止めを刺すだろうか?」


「「いえ、恐らく彼の性格だと」」


ひゅん、そういう音とともに、もう片方の足も刺さった。凄まじい痛みを感じたがそんなのはどうでもいい。問題はパートリックの動向だ。


「はは、かっこつけた割には何もしてこないのか?ええ?まさに負け犬の遠吠えだな!はははは!その足もぎ取ってやろう、足の次には腕、そして芋虫同然のお前を足蹴にして殺す!」


高笑いするパートリックに対し、晴馬は冷静だったすかさずミームングを掴み、離そうとしない。その握力で自身の手から血が出ているほどである。


「何をするつもりだ?」


パートリックが不思議そうに見ている。


「逆転勝利さ、今素直に謝るなら軽症で済ませてやろう、しかしこれ以上僕とやりあうつもりなら、容赦はしない」


晴馬はそういいながら不敵に笑う、群衆は驚き、パートリックは口を開けて呆れた顔になる。


「それは遺言のつもりか?それにしては意外性に富んだものだな?他に言いたいことはあるか?」


「ある、でも、お前に言いたいことは最後に言わせてくれ、きっと愉快になるぞ?」


それを聞いたパートリックは首を傾げた後、頷いて感心するような顔になる、理解はできないが何か策があると感心したようだ。


「いいだろう、言ってみろ」


「フェルシー、君はまだ僕が渡した手紙を持っているか?」


「は、ハルマ様、今それどころでは」


「いいから、持っているのか?」


フェルシーはそれを聞いて諦観を意識し始めた。完全に気が触れていると思ったからである。しかし、最後の望みとあれば仕方ない、買い物かごの中を物色し、中から一つの封筒を取り出した。


「これですか?返答用の手紙なら確かに持っております、しかし、そこにパートリック様への勝利を書いても達成できない気が・・・」


「んなもんする分けねぇだろ、後でペンとインクを用意しておいてくれ、ベルダ」


ベルダは何とも不思議な顔をした。なぜ自分が呼ばれたか理解できないからだ。


「な、何かしら?」


「青年騎士同盟の総帥は近いうちに自身の都合で退陣なさる、後継者の選定を始めろ、僕のおすすめはホルガーだ、彼なら、今の組織をやり直せる、後始末と名誉の挽回は任せろ、お前が守ってきた意味を、僕が見出してやるよ」


「何を勝手なことを・・・」


「信じろ、僕は嘘をついていない、期待していい、君は再び青年騎士同盟の栄華を見ることになるだろう」


晴馬はそういいながら人差し指をベルダに指す、そしてまた笑った。そして真剣な顔に戻り、パートリックと顔を向ける。


「やっと俺の番か、それで?遺言はなんだ?」


「それを言うのは良いが、ちゃんと聞いてくれよ?一回しか言わないからな?」


「遺言とはそもそも多くを語らないものだが・・・」


晴馬はミームングの刃を持っている手に集中する。それはすぐさま刃に影響した。幾千もの細い糸のような針がパートリックの全身を貫いたのだ。


「え?え?」


パートリックらしからない声である。高い声で汗と緊張がこみ上げているのがわかる。だが、それよりもその幾千の針が刺したところが神経の刺激を誘発させ、多くの不可解な動きが自身を支配していたのだ。ミームングを離した手は気づけば骨を折って手の甲へとぺったりと張り付いている。足も、可動域を大きく外れ折れ曲がり、首が、首がゆっくりと動いている。


「僕、烈火のパラディンなんだ」


「え?は?」


「だからこうやって君の剣を自在に操れる。いやぁ、同族で助かったよ、ごもったも、君がまだ剣を持っていたら、僕も危なかったけどね、どうだい?逆転敗北の感想は?」


そういう晴馬の手には赤いひび割れが見えた。


「が、お前、最初からこれを狙っていたのか・・・」


怒りを帯びてがなっているパートリック、だが、それよりもの首が可動域から離れようとしている。足や腕ならばなんとかなるだろうが、こればっかりはどうにもならない。命に直接かかわる危機だ。


「君の負けだパートリック、これは決闘だったよね?なら、負けは死を意味するんだが・・・」


「ひっ」


「なんだその声は、しかたないだろ?負けは負けだ。おとなしく死を選びな」


その薄情すぎるハルマの声が、パートリックをより恐怖へと誘った。このまっまでは死、こんなあっけない戦いで死んでしまうなんて、そんな、俺はただ遊ぼうとしただけじゃないか、それなのにこんなところで死ぬのか?嫌だ!絶対に嫌だ!


「うわああああ!た、助けて、助けてくれハルマー!」


豹変したパートリックは哀願するようにハルマを見つめる。情けなく顔は泣き崩れ、髪は乱れる。だが、そんな中でも首はいたくなる一方で余計に死を連想して混乱した。


「俺が悪かった!俺がしたことは謝る!今まで巻き上げた金は俺が何とかするから!ここは見逃してくれー!」


だが、晴馬はそれを聞いても顔色一つ変えなかった。無言で最後を見届けるハルマはかえって真剣に考えているようにも見える。群衆にはそれが凍てつくような恐怖に見えた。彼は冷徹で、鬼畜なのかもしれないと思うものもいた。フェリシーもそれは同じ、あの男は自分の思い描くような人からは少し脱線しているのか?顔を白くする。


「それだけ、か?」


「あ、な、なんだ?何でも言ってくれ!いう通りにするから!」


「よし、ならば青年騎士同盟の総帥は辞退していただこう、異論はないな?」


「いいさ、あんな飾りだけの物、誰にでもくれてやる、だから早く!」


それを聞いた晴馬は手を引いた、針はすべてパートリックの体から抜け、多くの穴から血が噴水のように出たが、それでも少量だ。途端その場にパートリックは倒れたが、首は自由に動いている、それを見たあたりのギャラリーは安堵の息を吐く。


「お前なぞ、殺すにも値しないわ、せいぜいそこで反省していろ」


「ひぃぃ」


「ベルダ、彼を介抱してやれ、どのみちこのままでは動けん」


「え、ええ」


ベルダは頷くと蒼白となったパートリックを担ぎ出し、店から外へ出て行った、店の中には、気を失った店主と僕のみが存在する。やがて決闘が終わったことで群衆がばらけてきた。その中からフェルシーは晴馬の元へと足を運び、そっと隣に座り傷の手当てをする。


「最初から殺すつもりはなかったんですか?」


手当てをしながらフェルシーは聞いた。その手の震えを感じ取った晴馬は少し曇り顔になり、仕方なく話した。


「いいや、さっきも言った通り殺すつもりはなかったよ、ただ、もし僕が窮地に立っていたら話は別だけどね、やり過ぎた、そういいたいのかい?」


「い、いえ、私は純粋に、怖くなっただけです。騎士の戦いというか、やっぱり平時とは違うなぁと、ん?」


フェルシーは少し疑問を持った。晴馬の両足の手当てをしているのだが、傷の手当自体は自身でやっていて、フェルシー自体にはやらせていないのだ、本来であれば休むべきであるのにもかかわらず。


「ハルマ様、私が代行した方が休まるのでは?」


「い、いや、僕一人でやるからいいよ」


「そんなこと言わずに、寝ていてください、ね?」


「だめだ、君は其れよりやるべきことがあるだろう?例の手紙、君が代筆してくれ、要望リストの中に新しく「マルティネス市場の全商品」と書き入れくれ」


それを聞いた途端、フェルシーはピタッと包帯を持った手を止める。そのおかしな挙動で手から落ちてしまったほどだ。


「い、今なんと?」


「だから、市場の全商品と書いてくれ、これを多くの市民に迷惑料代わりに無料配布する、さぁさ、そうときたら忙しくなるぞ、急がなきゃな。いてて」


よろよろと立ち上がった春馬は黒騎士の鎧を拾い、まじまじと見つめる。渾身の蹴りを食らって傷が出来ているが、これも青年騎士同盟の私物であることには変わりはない。剣と共に持ち帰り、教会へと急いでいった。フェリシーは足取りのおぼつかないハルマを心配そうに眺め、転ばないようにとついて行った。残ったのはいまだ失神している老人のみである。





あくる日、とある村はお祭り騒ぎとなった。あたり一面人人人、まるで町でも作るかという程の人であふれ、それにともない話し声も複雑化してくる。群衆は道を支配し、多くの騎士や衛兵たちが誘導した、一体何があったのであろう、休日であったフェルシーは村へと歩く人々の列についてゆき、その真相を探ろうと歩いて行った。そこらには山積みの馬車がたくさん並んでおり、何やら荷物を降ろしている商人の姿がある。


「あの、この騒動は一体何でしょうか?」


フェリシーは荷下ろしする商人に聞いていみた。彼は額に汗を流し、笑顔で答える。


「それがすごいのなんのって!ミューシュタットの大商人がやってきて、商品をすべて買い上げたんですわ!買占め騒動でも狙っているのかと思ったら御覧の通り、みんなに渡しているんですわ!いやぁ、太っ腹な人でねぇ、それを聞きつけた人がここへ殺到しているんですわ!何でこの片田舎でやっているかまでは知らないが、噂によると、大商人の友人の騎士がやったって話で、ああ、忙しい忙しい」


それを聞いたフェリシーは引きつった笑いを見せる。まさかあの手紙の内容、本当になんでもくれるんだ。メイド仲間の子、黄金のカップって書いたはずだけど、まさかね?でも、私にだって届いたし、もらっているよね?ああ、なんだかそれならもっとすごいもの書いておくんだった。でも、がめついのも考え物だよね?これぐらいでちょうどいいよ私は。


「はは、すごいですね~、誰でしょうね~そんなことする騎士様は」


どう考えてもハルマ様だけど。


村の中央の活気は市場の次元を遥かに超えていた、もはやほしい物のために皆が皆必死だ。そういえばこの市場をやっているってことは、ハルマ様は必ずいるはずだよね?どこにいるんだろう。ちょっと探して、このプレゼントのお礼をしなくちゃ。


「ハイハイ!皆さん押さないで!まだまだたくさんありますよ!どんどん持って行ってください!」


随分聞き覚えのある声がした。木箱の集積所の上に仁王立ちし、皆に説明をしている少年だ。あれはどう見てもホルガー様で間違いない、。小生意気な子供って感じだったけど。こうやって必死なときは天真爛漫なんだよなぁ。


「こんにちはホルガー様、すごい人だかりですね」


「む、お前は学校のメイドか、なんだお前もほしいものがあるのか?」


「いえ、ハルマ様に挨拶でもしようかと思いまして」


「メイドの癖に殊勝なことじゃないか、ハルマさんは今荷物の在庫管理を担当している、奥の教会の外に机と椅子がある、そこに座っているから行ってこい」


相変わらずかわいくないなぁ、何でこういう人に限って顔の作りがよくできているんだろう。顔に出る前にさっさと行こう。


「おい、ちょっと待て!」


そそくさと去ろうとするフェリシーに、ベルガーは制止させる。フェルシーは少々嫌そうな顔で振り返り、渋々足取りを止めた。


「はぁい、なんでしょおう?」


「僕を見てどう思う?」


そう誇らしげに胸を張るベルガーにフェリシーは疑問を感じた。何も感じないからだ。しいて言えば相変わらずつり目な人だということだ。しかし本人が誇らしげにしているのだから、何かあることは間違いない。よく見てみると、彼は狩人の帽子を着けていた。


「あれは、パートリック様の・・・」


フェルシーは寒気を覚え、思わず身震いした。


「ふふん、聞いて驚くな!僕は此度のパートリックの不祥事発覚により、急きょ青年騎士同盟の総帥に就任したんだ!まぁ、本来僕は優秀だったから?候補に入ることは当たり前だけどね?今はベルガーが補佐を務め、この青年騎士同盟改め、【マルティネス警ら隊】の指揮を執っているんだ」


「はぁ、おめでとうございます」


「どうも!では僕は部下の確認に行ってくる、ハルマさんにはくれぐれも無礼を働くなよ?ベルダ曰くこの組織の立て直しに貢献したらしく多忙だからな、じゃあな!」


そういってボルガーは集積所から人込みへと溶けていった。それを見届けたフェルシーは舌を出して馬鹿にする仕草を取った後、ハルマのいる教会へと足を向けていった。行ってみるとそこにはハルマだけではなくベルダも一緒に事務作業に当たっていた。晴馬はまだ体の状態が良いわけではないのか、杖を机にかけていた。ベルダは何やら晴馬と話をしている。意識的なのかそうじゃないのかわからないが胸を押し付けているようにも見えるが、何やら近づけない雰囲気である。


「本当にはいらないの?貴方が改称したんだし、組織に戻ってきた指揮官もみんなきっと歓迎すると思うわ」


「僕はこういうところは向いていないらしいんだ、これが終わったら、お試し期間は終わりってことで僕は去るよ、あの後パートリックはどうした?」


「退学したわ、どうやら市民が学校に報告したらしいの、騎士道不覚悟ね、でも、それを止められなかった私も、騎士道不覚悟だわ」


晴馬の体に体重をかけながらベルガーは言った。晴馬はずうっと書面を見ているが、その存在感ある胸と柔肌に思わず顔が赤くなる。


「仕方ないさ、君も罰は受けた。学徒防衛隊の小隊長から解任されたんだろ?」


「どうでもいいわ、今は見守るべきこのクラブを見て、学んでいけばそれでいいと思っているの、それに小隊副隊長にはなったから、あとは好きな部隊に嘆願書を出して、教官と小隊長がハンコを押せば着任よ」


「見覚えのある名前があると思ったがやはりベルダか、他にも部隊はあるんだからそっちに行きなよ」


「あらやだ、年下に振られちゃった」


およよとベルダは晴馬に身を任せ、もはや事務業務を放棄し始めた。それをかたずをのんでフェルシーは見守る。何て物を見てしまったんだろうと思いながらも目が離せず、とっさに隠れた教会の隅から、一部始終をなおも見ようとした。


「ベルダ、君はなんか変わってしまったね、前の方がなんかよかったよ」


事務仕事をなおも続けようという確固たる意志が感じられるほど、晴馬は傾いていた。


「そう、私はハルマが変わらずかわいくてよかったって思うわ、パートリックを倒した後、貴方が率先して立て直しとこの催し物を企画したのよね、私は指揮官の呼び戻しやホルガーへの説明に時間をかけてたけど、何でそんなに優しいの?」


「まぁ、騎士ですから、後君が美人なのも影響するね、僕は面食いだから」


「っつ、あ、ああ美人に弱いのね、そうなのね」


少し赤面したベルダをよそについに晴馬は作業を終わらせた、長らくの作業だったのか体をゆすり、肩を回したりして筋肉の緊張をほぐそうとしていた。ベルダをちゃんと座らせ、杖を持ち、学校へと歩く。


「それじゃあねベルダ、一様小隊については考えておくよ」


「もう少しぐらいいましょうよ、いいでしょう?」


「もう部外者なんで、あ、マキの甲冑が馬車にあるそうだからベルガー先輩に渡しといて」



学校までの一本道を杖を使った晴馬が歩く、足取りは一定で、終始無言だ。


「ハルマ様」


後を追ったフェリシーが追い付く、その声に反応した晴馬は振り返る。


「フェリシーか、どうしたんだい?」


「はい、例の商人のプレゼントの例を言いに来ました。どうでしょう?似合っていますかね?」


そういいながら彼女はもらったプレゼントを見せてみる。それはイヤリングでった。ただ一つ特異なことがあるとすれば晴馬の「以心伝心のイヤリング」とそっくりなことである。独特の円筒状に伸びたイヤリングは風にも影響を受けないのだが、マジックアイテムである。


「フェルシー、どうして僕と同じものを?」


「初めて見たときにいいなぁと思ったので、迷惑だったでしょうか?」


「ああ、似合ってる似合ってる、フェルシーはそんなものでよかったのか?」


フェルシーは笑う、無言でうなずいて、それを見た晴馬も笑った。


「はい、私はこれで満足です」


不思議に思った。この人は変な人だと思ったけど。今は少し怖いけど、優しい人だと思うようになった。きっとこの人は、特別な変な人なのだろう。















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