11 決戦
闘技場は多くの大剣を持った騎士によって囲われており、そこを通り抜けて中に入るも、その際に騎士からは疑問の声が上がっていた。もちろんこのような催しもだが、やはり一番はの句が持っている武器についてだった。このグングニールという武器、間違いなく彼女のものであるし、それをなぜ奴隷が持ち歩いているのか、なぜそれを誰も止めなかったのか。もはや疑問というより、その愚行に対してみなあきれていたのである。
「おう、きたかぁ、って、お前・・・ハハハハ!なるほどこいつは面白い!まさか数ある武器からそれを持ってくるとはな!お前はある種運があるぅ男だぁ」
ただそのなかでこの男にだけは最高の冗談にしかみえなかったようで、腹を抱えて笑っている。完全武装の彼の服装は、重装甲の物だった。ローレが装備していたものも、正直なんで羽織れるのかわからなかったが、この男の装備に関してはなんで立てているのかわからない。馬に騎乗して戦うのであればそれでもいいかもしれないが、それで走ったりするなど可能なのであろうか?チェンメイルの上からうろこ状の金属を羽織っているようで、かさばってただでさえ巨躯の彼の体をより大きく見せている。これでは勝敗はともかくとして、彼の体にこの槍を差し込むことができるのだろうか?
でもやるしかない、そうしないと僕は生き残らない。人の生死がかかわっているのに、なぜここまで人の命の価値観を希薄に考えているのか急に不思議になった。そんな自分に少し恐怖した。
「んん?お前、やけにやる気満々だな?目が座っているぞ?お前初めてか?」
「当たり前だ、人殺しなんて普通経験することじゃないし僕の世界じゃ犯罪だ、それなのにこうでもしないと生きれないなんてどうかしているよまったく」
その後も含みのある笑みを浮かべるゲラルト、この切迫した状態でもまだいつも通りに話ができるとは、やはり彼は戦いのプロだ。恐怖はまだ感じないが映画のワンシーンのようにも思える。僕にとってはこれは現実性があまりにも少ないからだ。もうすぐ決闘が始まる。どう身体を動かせばいいんだ?動けないならぼうぐを着ていた方がいいんじゃないか?などと今更考えたって遅いことを何度となく反芻し始める。彼から目が離せない。呼吸が少なくなる。血流が酸素を欲して心臓をつぶしにかかっていた。これが戦場、戦い、そして命のやり取りなんだと、僕は深く思った。現実の戦いは何やら夢見心地なFPSだ。さぁ、殺してやるかかってこい!僕と踊るぞ!
「へ、槍を構えていても決闘は始まらん、まだ審判の分隊長が来ていないからなぁ、俺もつまみ食いしてぇところだがそれをしてしまったら騎士じゃねぇただの屑だ。ここはひとつ待とうや、ここは闘技場だがコロシアムじゃあない、観客も取り囲ってるあいつらだけ、どうやら騎士団長代理もお見えになっていない、つまり、機は熟してないってことだぁ。俺の自慢の斧も、まだ土の香りの楽しみたいってさぁ」
兜をはめなおし、少しだらけた表情で待っている。彼の支えになっている斧の存在に注目できたのはそれが初めてだった。そして自分ののぼせ具合に少し気づき、深呼吸を取る。斧、とても外見からは想像できないが、確かに斧頭を携えた巨大な槍だった。見たところ彼の身長を優に超えている3メートル、いや4メートルはあるだろう、だが中でも斧頭の反対側になるピックは、返しとしての凶器性はなかなかのものだ。しかもその長さから柄は折れないよう太く、銀の装飾が物語る神聖さから神剣とでもいうような美術品だった。彼の錆防止のための黒い油のついた鎧がそれを台無しにしているが、もしきれいに磨いてあれば戦場で大いに式を挙げるものだろう。
斬る、突く、引っ掛ける、叩く、なんでもできる、僕にはわかる。だって<b>使ったことがあるから</b>、経験がものを言うようだ、僕にはよくわかる、だからだろうか彼には少し扱えるか不安だ。仮に扱えたとしても、それをもってしてグングニエールに戦うなど、彼女が笑っている。僕もつられて笑う。少し緊張が解けて、僕の中に彼女の闘志が入ってくるようだ。期待している。いや、喜んでいる。僕が彼女の言葉を信じたことに、感銘している。その勇気に。聞こえはしなくても、見ることはできなくても感じることができる。
「少しおかしいな、この状況で笑みがこもれるなんてどうかしてる、これから一人人を殺そうとしてるんだぞ?何で笑ってられるんだ?」
途端に始まった冷静、それは僕の感情だった。僕は自分のしていることに恐怖し始めていたのである。それなのに、体は楽しもうと体温を上げ、自分をさらに前に推し進める。脳の理解が追い付かない。またもや選択だ。僕はどっちを選べばいいんだ?
・体に身を任せ、望むままに動く。
・感情を優先させ、一度考え直す。
でも、感情に身を任せたら、僕は絶対に死んでしまう。せっかく生きることを望んだのに、死んでしまったらもう考えられない、それが怖い。だからと言って、もしこのまま動いたら彼女の興奮具合から考えて彼はただでは済まない。そんなことはわかっているのに、どうしたらいいんだ?また、彼女の言葉を思い出して考えようかな。いや、そんな時間はない、怖い、どうしよう。
「待たせたねアウタースレーブ、審判の到着よ,これより、決闘を開始します」
ローレの到着は僕の判断を余計に鈍らせることになった。彼女によって決闘が始まり、そのまま戦いを始めるからだ。
「いいゲラルト?か な ら ず 槍には傷一本与えるんじゃないわよ!もし傷なんかつけてみなさい、あんたの代わりの人間を分隊副隊長にするんだから!絶対によ!?」
少し怒っているのか、焦っているのか、声からはわからない、彼女は礼装の青い帽子を深くかぶっていて、その表情がよくわからないのだ。
「へへ、安心してください分隊長ぉ、一発です、それですべて終わらせますよぉ!でも、今回はさっき言ったように技量を均等に近づけるために、ちょっとしたルールを設けますがね」
含みのある笑みで意気揚々に話す、どうやら前に言っていたなぶり殺しにしないとかいうやつを披露してくれるらしい、てっきり真っ赤な嘘だと思っていたけど、彼はどうやら本当に騎士らしい、それをここで証明してくれるのだ。これほどありがたい話はない。さっそくお聞かせ願おうではないか。
「ルール?なら審判の私が認められるような内容じゃないといけないけど?」
「問題ないですぜ、十回ぃ、十回しか俺は攻撃しない、そのうち九回はかすり傷で済ませてやる、ただし最後の一回は一発で仕留める、これは一見するとぉ、嗜虐性があるように思えるがぁ、それはこいつが単純に戦うバカだった場合だぁ、要は俺からの攻撃を十回耐えるかよけるか、九回以上行わせられない状態に持ち込むか、他に発想があるならそれもよし、しっかりかんがえろよぉ?アウタースレーブ?一様言うが俺は自分の戦い方をお前に教えたというハンデを与えてやったんだからな?決して虐殺をするとか、いじめつぶすとかぁ、そういうのじゃないからな?」
なるほど、これは確かに僕にとって有利なのかもしれない、制限をかけることによって計算で勝つ方法もあるのか、要は詰将棋なのか?十手で詰みになる王を演じろと?おいおい、そう考えたら間違いなく僕が不利じゃないか!どのみちとられるというのに、ただひたすら待てと?いや、将棋ほど簡単にはいかないだろうし、何とかなるか?
「ふーん、じゃああなたはもし十回攻撃を仕切ったり、九回以内にアウタースレーブに致命傷を与えたらその場で負けってことにしていいのね?それならいいことにするわ」
「ええ、むしろそれで本望です、さぁ始めましょうか」
両者別れてそれぞれ構える、お互いに一礼、その後再び考える、選択はどうするかだ。
「ふー、ふー」
少し身体が熱を帯びる、脳からアドレナリンがあふれ出ているのだ。僕は、考えるのをやめた。感情がこんな時に役に立たなすぎるからだ、ここは、おそらくこういうことに経験豊かな彼女に身を任せ、とにかく切り抜けることにした。正直先ほどから勝つことに揺らぎない自信がある、その幻想の映像を、果たしてこの体で再現できるだろうか?そこが問題だ。現に先ほども、少し動いただけで息を切らしてしまうほどの体力しかない。そのわずかな体力でどこまでできるか?とにかく、やってみなきゃ。
「はじめ!」
ローレの合図だ。ついに、僕は戦場に出てきたという事か。なぜか懐かしいくも慣れた気分なのは誰のせいか察せるが、だからと言ってはよいけ、はよいけ、とそんなに興奮してはいけない、ここは相手の状況を見ることこそが、初心者の意見なんだよユッタ君。
「・・・」
「・・・」
動かない、それどころか武器を構えてから一回もこちらに進もうともしない。これは誘いの形なのか?胴はがら空き、斧は先ほどからピックの方がこちらを向いている。戦う気がないのかもしれない。
「こいよ」
「は?」
「初心者が初めから斧頭の防御などできるわけないだろう?へたくそでいいからかかってこい、お前の本気を見てやる」
彼のその発言は僕のタガを外してしまったのか?それとも巨大なアドレナリンの波が僕を後押ししたのか、急に僕は走り出していた。困惑したが、止まるわけにはいかない、目の前の情報処理をしてうち滅ぼす。見たものは全部敵、そういう思考回路が電気みたいに瞬時に働いた。これが戦場なのか?緊張と高鳴るうなり声、この時、自分は戦闘狂を演じるように務めた。それを彼女は望んでいる。動けない私の代わりにいうことを聞けと。
突く、深さが足りない、もっと踏み込む、だがつかず、瞬時に後退、これは誘い、彼が乗らないか様子を見る。
跳ねる、跳ねる、ウサギみたいだ、でもこうでもしないとこの身体は思うようにいかない、鎧を着てこなくてよかった。こいつじゃあまともに動かない、足の筋肉痛なんてどうでもいい、いまを生き抜くそれが条件だ。
突く、つく、跳ねる、移動、後ろえを取らねば、ああもうまどろっこしい、こんな基本的な教義みたいな構えは飽きた、<b>僕は、私は</b>もっと自分勝手にやりたいんだよ、身体はもともと僕が捧げたものだろ?なら少しは元の主が使ったっていいじゃないか。意味の分からない思考回路だ。今は戦いに集中したいのにこれじゃぁできいないじゃないか 、相手に気を取られてはおしまいだ。一度感覚を共有させてくれ。それだけでかなり楽になるから。身体の主導権は君だけど、感情や感覚は共有できる。こうやって君の頭脳に変換されるから、へんな言葉だけど、これ君と僕は一緒だ。
「うう!なんだユッタ・・・君は何をしたんだ?くそ、何が何だか」
「おいおい、なかなかそれっぽいことしてるが、結局それだけかよ?生兵法ケガのもと、お前にとっては死の兆候だ、一回ついたぐらいでそんなに息が上がったら、合間に俺が攻撃しちまうぞ?」
「来るならこい!雑魚のがつけあがるな!」
反射で返す、もちろん徴発のつもりだが、これは誰が言ったのかよくわからない、だいぶ同化に近いことを、彼女は僕の心理の中でやっているらしい。ずいぶん考えがなくなってきて、獰猛な自分が前面に出る。
「上等だぁ!俺をあまりあきれさせえるなよぉ!?」
容赦ない巨大な振り、豪速のピックはかすり傷など本当に生むのか?僕は少し困惑したけど、上書きされる闘志が、冷静な判断を下す。避けず、柄で擦って斧を軌道調性、腹が開いた、隙ができた
「キャー!傷!今の傷ついたでしょ!?ゲラルドー!」
「へへ、団長の槍は特別性、こんなことでは傷なんてつきませんって!たとえ火山のなかに突っ込んだって問題ないって言ってたじゃないですか!」
「そこ!」
突く、突く、何度だって隙の穴に埋めてやる。でも防御される、こいつタイミングがなってない。遅すぎるからチャンスを取り逃がす。油断している奴なんて殺しやすいのになんでそんなに躊躇するんだ!?なめてるのか!?この僕を!?
「おお!今のは危なかったぜぇ!だがのろいなぁ、オラ!」
吹き飛ばされた、着地、姿勢なんて関係ない、一度後転、これでどんな時も、構えを維持できる。だけどこれもなかなか堪える、鍛えなおさないと。
「ふう、これで二回、今度は僕が受けるよ、君は後八回しか猶予がないからね、急がないと僕が殺しちゃうよ?」
騎士はその言葉を聞き、思わずその場で呆然とする、この男が徴発かそれともお得意の自殺願望から言っているか理解できていないからだ。しかしながら自分が馬鹿にされる。それよりも彼は自分の本領を出したいという意思を見せたことに少し関心を見せていた。思わずこぶしに力が入る。これは燃える展開だ。少し試してみるか、なぁに殺しはしない。素人の技術がどこまで通用できるか、それが見たいだけだ。
「ほお、まさか俺に譲ってくれるのかぁ、お前の体では俺の体重さえ支えらせそうにないが、でも俺はお誘いを断るほど無水な男ではない、なら今回は、俺からいかせてもらうぜ?八連撃でなぁ」
「むしろそれが当然の権利だろ?」
八連撃、これで彼は僕を殺す、その一撃を食らわせるだろう。ならば残り七連撃はすべて防御を崩す攻撃だ。それをこの槍でどう防御するかだが、ここはもう、防御なんてせず一発っで決める方がいいだろう。攻めは一発、そうでないと、こちらの行動がばれてしまう。奴はプロだ。決してなめてかかれば当然殺される。これは遊びじゃない。決闘なんだから。
「おおお!」
来た!やはり、斧を突き出して突進はしない、僕に軌道を読ませないためだ。距離が近づく、もう槍を突き刺すには時間がない、ここは典型的な受けの距離、だがそんな生やしい力でこいつは防げない、ならばこうするまで!
武器には見合わない細かで繊細な応酬、非常に細かい、少しでも隙間を見余ると体が真っ二つだ。右、下、上、旋回、バク転、いいぞ、身体があったまる。引き、一歩先へ、もっとだ。もっと高めろ!
「ふーん、まぁ決闘っていう名の処刑かと思ったけど、それっぽいことはやっているのね」
もう目先の距離、これでは槍は使えない、こんな時、奴はどうする?決まってる!
「ウオラ!」
「ッグ!」
飛び蹴りだ、身長差、体力、そして武器の特性、これらを騎士である奴が吟味しないわけがない。だから使えない状態にしたのち、距離を開け、向こうが起き上がろうとしたところを殺す。しかも、よけやすいようきつい速度の甘い攻撃、この誘導こそ、彼の崩しの攻撃なんンだ!
「取った!」
倒れた瞬間、目の前に映ったのは豪速の斧頭、こいつはまだ3撃目、つまり外すことはまりがいない、しかしこれが情けで行うとは思えない、つまり、彼は斧の着地で起こる衝撃を頭に食らわせ、僕の判断を鈍らせるつもりだ。このままでは僕は詰み、そんなことはわかっている。いや、わかっていたさ、なぜならそうなるように僕が誘ったのだから。お前には理解できないだろう。この攻撃をかわす方法を、これは僕の判断と彼女の体の初めての共同作業だ!
「グ!」
この発言はゲラルトのものである。ぐ、とは単純に彼が間違えて、決闘相手の頭部を破壊してしまったから言ってしまったわけでも。予想通りの展開であったわけでもない。それは決闘者が斧の軌道上にわざと身体を向けたからである。それもコンマの判断。いうなればゴキブリの俊足を得たように身体を地面から撥ねて移動してきたのである。その時、彼は落胆した。ああ、やはり死にたかっただけだったかと、実力などはなからない、ただ自分が楽になる方法を模索していただけだったか。だがあまかったな、俺はたとえ片手でも自由に操作できる。お前の判断を瞬時い理解して、すぐに制動してしまったよ。もう、お前には期待しない。
「へ、なんだよ、結局お前はそれだけか、ああつまらんねぇ、少しは期待したんだがなぁ、ま、所詮平民ですらないやつの度胸なんて、ちょっと立てば御の字ってことか?」
返事がない、殺してはいないから本人が望んでやっているということだ。興覚めだよ、お前には。
「受けに回るとか言っていた時、少し期待してたんだぜ?ひょっとして何か秘策があるんじゃないかって、でも結果的には、お前はただ死にたかっただけだったようだなぁ、おまけに俺がわざわざ筋が見えるように戦ってやったのによけもしねぇでただ流されてやっちまう、おまけに最後はよけきれず倒れる。そしたらぁ普通、そこで死じゃねぇか、ま、素人に期待する俺も悪かったけどよぉ、立て、お前とのお遊びはさっさと終わらせてやる」
しかし、奴は立たない。これは何を意味するか、決まっている、この状態に理解できないか、はたまた絶望の淵にたたきこまれて身動き一つとれない、そういったところだろう。まったく、それならいっそひと思いにやってしまおうか?
「立て」
立たない
「立てって」
しかし動かない
「いい加減に!」
「なぜ立たないと思う?」
久しぶりの返答、久しぶりの素っ頓狂な発言、またもや拍子抜け。なんだこいつは、この基地に入ったときといい、今といい、何を考えているのか全く分からん。返す言葉もない。
「お前ならきっとこう考えるだろうゲラルド、こいつはもう戦う意思はない、後は天命の思うがままに流れよう、そういうところだろ?だが、ちがうんだなぁ」
斧の下から聞こえるその笑みを含む声に、ゲラルドは不気味がった。
「なに?」
「ゲラルド、いい加減斧を上げてくれないか?このままでは身動きが取れないじゃないか?君はさっきから僕に立てと言っておきながら、立とうにもその大斧が邪魔で身動きが取れないんだよ」
「え?」
この発言もゲラルドである。彼は大斧を動かすことができなかった。踏ん張ろうが何をしようが、まったく動かなかった。
「ん?ん!」
なおも踏ん張るがまったく動かない。ゲラルドはこの現象になじみがないが、この感覚は巨木の根っこを抜く作業に近いような気がした。それはつまり自分の武器をか使い切れていない可能性がある。まったくどういうことだ?騎士になっても修業時代も苦楽を共にしたこの斧が、今では全く理解できなくなっている。途端に汗が出る。まさかこの男相手にこんなことが起こるなんて、たとえ初心者が相手だろうと決してなめてかかるようなことはない。しかし、そんな俺がこんなことは初めてだった。何が起こっているのか全く理解できない。
「?」
審判を務めるローレも全く同意見らしい。ひどく不思議そうに二人を見ていた。
「はん?」
やがて発見する、斧に何かがついていることを。それは手、両手が刃を挟んで止めている。しかもそれが原因で抜くこともできない?なんだこれは!?こんな戦い方聞いたことがないぞ!?
「真剣白羽どり、これは本来、刀の刃を手で覆い、動けなくするものだが、さすがに僕の手ではこの斧頭を覆うことはできない、だから、手の中に真空を作ったのさ、これで君は僕を振りほどけない、後は、彼女の体で君の動きを封じる、そういう作戦だったんだ、君は僕がまんまと乗せられたとか何とか言ってたね、違うよ?君は<b>乗せられたんだ</b>」
途端に斧から轟音が走った。それは爆発、真空を解除する代償は手の皮膚を破壊するしかない。途端に四方に音とけたたましい血が飛び回り、兜をかぶったゲラルトの目を直撃、視界不良にさせ、瞬間的に距離を作り、滑り止めのかかった真っ赤な槍を手に取った。
「ふ、ふっふっふっふっふ、ははははは!」
気持ちのいい笑いがこみ上げってくる。見事に一本取られたが、こんなことをできるものなど、まさかkのような形で巡り合おうとは思わなかった。
「ぐう!拍子抜けからの奇襲とは、恐れ入ったぜ!どうやら俺は、お前を過小評価していたみてぇだな!お前の血で何も見えねぇが、その闘志、はっきりと伝わってくるぜぇ」
ゲラルトは兜を脱ぎ捨てた。視界をよくするため顔を拭く、これは良い。見事にはまってしまった。まさか俺をこんな方法で騙し、あたかも闘志をかき消すそのやり方に、理解ができなかった。知らなかったよ、世の中にこんな戦いをするやつがいるなんて。
「「それはよかった、なら、これからの戦いはもっと刺激的になるはずですよ」」
「は!?」
騎士はまたもや驚愕した。それは騎士の生涯でも5本指に収まる衝撃であっただろう。血でよく見えないその眼には、何か懐かしい姿が見えたからだ。それは、かつて尊敬と畏怖を感じた栄光なる人物であったからだ。
「「久しぶりですね、では、第二ラウンドと行きましょう」」




