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悪党のすすめ  作者: と
奴隷編
11/63

9交流

ずいぶん、暖かい感情に支配されつつある。その理由は言わずもがな、感情抑制がなくなったこと、そして、目の前には〈当たり前の日常〉が映り込んでいるからだ。


「さぁさ、食べちゃって!ーーの進学祝いのためにお母さん、思いっきり張り切っちゃって豪華にしてみました!」張りのいい声で言った。


目の前の机にはおいしそうなごちそうが所狭しと並んでいて、それぞれいい匂いを出して空腹を誘っている。だけど、その中でもこの環境、ほほえましい日常は格別だ。


「おおすごいな、ーー、進学おめでとう、これからの学費は考えなくていいからどんどん学びなさい、さぁ、ご飯にしよう、ほら座って座って」父が席への着席を促す


もちろん断る気はないし、これからの未来に期待震わせる僕は、今日は自分が主人公というかの如くドカッと座って食卓に着いた。決してこの家は特別裕福でも貧乏でもないけども、この祝いのために思い思いの言葉が受けられた。今からしたらとても幸福だったのだろう。


「それで、--は何になりたいかは決まったか?」


「え?まぁ、それは学業次第かな?ほら、それによってやりたいことが変わるかもしれないしさ、まぁ、それよりも今あは食べよう食べよ」よそよそしく返答するが、これでもやりたいことはある。


「はは、まぁゆっくりと決めるがいいさ、さぁ、いただきます」


「「いただきます」」


テレビからの情報は、静かに時が動くことを伝えることしかなく、僕はその中でのほほん、と過ごしていた。もうこの季節となってしまうと、就職や進学はほとんど決まっており、学校でもやることが卒業に限定されていくのでやることがない。僕の工業高校は卒業制作と言って、卒業する前にその学科ごとで何か三年間の修学の成果として作ったりするのだが、何かと受験勉強に追われていた僕はそんな大層なものは作らず。ただ趣味の飛行機や歴史の本、エロ本、ラノベを読み漁っては時間を過ごしていた。そのため時間が余ることは明白で、そういう時はもう引退したにも関わらず部活に顔を出してみたり、そういう気分でないときは家に帰るまでの間で寄り道をして、授業はただ出るだけといったものだった。そんなの不良みたいだという人もいるかもしれないけど、僕が不良と違うのはやるべきことはしっかりとやっていて、決して自分勝手に行動はしなかったってことだ。卒業制作は授業として取り扱われる。だからその中ではまじめに取り組むけれど放課後にまで残ってやるということはない。先ほど述べたように大層なものは作っていないのでそんな必要はない。たとえクラスのほとんどが居残りをしていてもだ。


「そういえば友人のヨシケン?とかいうやつがお前を電話で呼んでいたぞ?後でかけなおしたほうがいいんじゃないか?」


そう、ヨシケンは僕の友人で、ただでさえ普通教科のない工業高校で僕とともに大学推薦まで共闘した戦友だ。僕とおなじ根暗ではあったが比較的社交的であるかれは友人が多く、クラスの中心的人物であったに違いない。そんな彼が僕と友人であることは、高校二年の受験に向けた予備校になぜか一緒に入ったことから始まる。深く話すかどうか迷うが、少なくとも僕と彼はなぁなぁで過ごした割にはとても仲が良かった。


「わかった、後で連絡しておくよ」


食事を終わらせ少しだらける、ゲームをしようが何をしようが受験から解放された僕にとっては自由だが、どうにもそれではこのふつふつと沸く感覚をとくには難しい、しかしそんなのが楽しくてしょうがない、どうせあと三か月もしないうちに元の、いやそれ以上に苦労するに違いないのに、僕は今はとても幸福とゆうよりは歓楽的に考えてしまっているんだろう。つまり浮かれてるというわけだ。


「まぁ、会いたいなら別に行くのは構わないが、でもできるだけ早く帰れよ?」


「もちろん、わかってるよ」


父はぼくの一人だけの友人である彼にとても信頼を寄せている。父は一度しか彼には会ってないのに、とてもいいやつだどかえってべた褒めしていたのはよく覚えている。だから彼に会うことが分かっていれば多少遅く帰ってきてもなんのお言葉もいただかない。それを知っているから彼と話して長居してしまっても向こうの親御さんには申し訳なく思うが。帰ってからの罪悪感がないのがいい。母さんも同意見だという。


でも、僕はもう二度と彼に会うことはないし、父や母にはもう何も親孝行もせずに消えてしまっているんだよなぁと、深々と考えてしまう。


別にここまで来て個人に対してどうという感情がわかないわけではないが、なんというかこう、どうでもよくなってしまう、自暴自棄、白昼夢を見た後の現在世界を知ってしまうと、白昼夢はどうでもよい、忘れてよい記憶になるように。まったく同じことが言えてしまうんだ。我ながらこんな18歳いるか?などと思ってしまう。覚悟じゃなく諦観、希望でなく安定、経過への受容というか、言葉にできない感情が時間の差し迫る環境で発達していることを感じる。でも、そんなに理性的でない頭脳と感情が、とげのように刺激して、吐き気を催すほど狂いだちそうだ。だから多分、これはご褒美なのかもしれない。ご褒美とはつまりこの夢のことだ。


僕は馬鹿じゃない、現実と非現実くらいわかっている。衝撃的なことばかり起きる現実だったけど、こんな都合のいいことがあるとは思えないし何よりこれは過去の話だ。現実も何も経験でしか経過しない世界など、なんの価値もない。


「じゃぁ、部屋に戻っているね」僕は席を立ち少し間をおいてから言った。


「ああ、わかった」父も返答する。「明日は引っ越しの準備や書類作成があるから付き合えよ?」当然するし、これからのことを考えれば当たり前だ。


自室に戻っても特別何かするというわけではい、ただベットに入って寝るか、それとも友人にでも話をするかのどちらかぐらいしか考えていない、でもそれもまた悪くない、ある意味今を満喫していることになるのではないだろうか。そもそも、大学受験を終わらせた今、何をしてもつまらないということはない。静かに過ごすのもはしゃぐのもなにも悪いとは思わないだろう。


「なかなか、狭い部屋にお住いのようですね」


自室から知らない女の声が聞こえる。今日は誰かいえによんだおぼえはないし、女の友人はおろか彼女すらいない。そんな男の部屋から女の声が聞こえてくるなどおかしいにもほどがあるとは思わないだろうか?恐る恐るドアを開け中の様子をちらっと覗いてみた。


「ちらっ」


「うわ!」


女も全く同じことをしていた。僕が部屋を覗いている眼を逆に覗き返していたのだ。それもドアひとえに。


「すいません、驚かしてしまったようですね、でも、ここはあなたの部屋なのだしもう少し堂々としていてもいいのではないですか?」


席にすわりながら女はそういった。見たところ外人というか金髪長身の異国情緒あふれた変人とでもいうのだろうか、ずいぶん古風な服装をしている。これはひょっとすると、僕はあの異世界の人間の記憶整理のためにこんな人を作り出したのかもしれない。


「いや、すいませんね。久しぶりに懐かしい記憶をみているなとも持ったらこんな人が目の前にいたものですからびっくりしちゃって、あなたは何者なんですか?僕のいた世界ではあなたのようなものはいませんでしたし友人にも見当たらない、せめて名前だけでも教えてください」


「あ、いけない、私としたことが名前を言うのを忘れてしまうなんて・・・失礼しました、私はユッタ・シビレ・ブルクスラーといいます、ブルクスラー家の次女にして騎士団団長、いえ、元騎士団団長です」


「ずいぶんとそれはそれは、そのような方がなぜ僕の夢に?」


その名前には少し印象があった。確か、ブルクスラーの侯爵かなんかが僕たちの施設にきて、そう、確か僕の体をこんなのにしたのも彼女だ。彼女と同じ姓、これは何か関係があるのだろうか?詳しくそこのところを知りたいし、なぜそのような人が、しかも初対面であるにもかかわらず夢に出てきているのか、知らずにはいられない。


「そうですね、それを言うのは悪くないのですが、まずは私をそういう事を話すのに最適な場所に案内してくれなませんか?私、あまりそういうところもこのあたりの店も知らないしそういった機会もありませんでしたから、実は早く散策したいと思っていました」


「ん?ここではだめですか?もう日が暗いしそもそも人目を気にすることはないでしょう、なんだって僕の夢ですし、それにこんなことを言っては何ですけどこの夢始まってまだ三十分ぐらいしか始まってないんでもう少し堪能したいんですけれど」


そういうと、彼女は少し悩んだ後、再び笑顔になりながら「あなたの言いたい事はわかりますし、できれば叶えてあげたいんですが、あなたに取る時間はそんなに残ってないんです、だから少し時間を共有しましょ?」と言って僕と一緒に家の玄関から出て、あたりのそういう店を散策することになった。彼女は初めて見るその街並みに少し興奮気味だったけど気を落ち着かせ、歩きながら話をつづける。やがて僕らは繁華街へと歩いて行った。彼女は見慣れない人多さから少し不安げになりながら歩いていたので静かに手を取ると、大層驚き、「ちょ、ちょっと!急にそんなのびっくりするじゃないですか!私はあなたのこと少しは知っていますがそんなことする人じゃないでしょう?」と言いながらよくできた夢のなかを歩いて行った。


しばらくして彼女は言う。


「私の姓に少し興味がおありではないですか?」彼女がうつむきながら問いかけてくる。


「ええ、まぁ、そうですね、ブルクスラーは確か相当な貴族で、僕のいた世界には存在しない、つまりはあの世界の住人だ、あなたはその世界の人なんですか?それとも夢の中の人なんですか?」敬語なんてなぜ使うのか戸惑いながら、ユッタに問いかける。


「そうですね、まぁそういったら両方正解って言ってしまいますね、あ、ごめんなさい、戸惑いますよね?でもこれからいうことはすべて事実なのでしっかりと聞いてくださいね?たとえそれがどんなにおかしなことで理解に苦しむとしても、それが本当におこっているんです、夢じゃないんですよこの夢は、あなたの記憶から私が創った夢なんです、今までいろいろ言いましたが、それをすべて鵜呑みしていただけるのであれば、素直に私が何者なのか、お教えします」


少し戸惑ったけど「うん」と答えた。


「まず言ってあなたは転生したことは覚えていますか?転生とはあなたがこの体になったことです、きっと、セージに言われて初めてのことなのでびっくりしていたと思います。だって、そうじゃなかったらあなたは彼を殴って消えるようなことも、私の騎士団の基地への放火もきっとしなかったでしょうから」


「は?あの騎士団ってあなたのものなんですか?」思わずとっていた手に力が入った。


「え、ええ、あれはわたしの騎士団です、私は姉がいるため爵位を受けられず、その代わり騎士団の長を務めることにより、家に貢献していましたから」


「家?姉?・・・あ!あなたはもしかしてあの、えーと・・・そう!ナターリアの妹かなんかなの?って痛い!」」


「アマーリアです、お姉さまはアマーリア、その通りであの方は私の姉でブルクスラー家当主のクーニクンデ・アマーリアという名前ですクーニンクンデは姓ではありませんし仮にそれをそう勘違いしてアマーリアと呼んでも彼女がそんなことで些細なことで怒るとは思えません、が、そこは間違えてはいけません、いいね?」今度はむこうの手が強く力が入った、それもとんでもない握力、これは間違いなく騎士の風格というものを感じることのできる腕力だ。



「そ、それで?あなたはなぜ転生の話を?」手を振りほどこうと抵抗するも、なかなかほどけない。


「あ、失礼しました、話の続きをしようと思ってはずれてしまいました、転生は我々の世界では決して難しいものではありません、しかしながらそれには犠牲が必要なのです、それもただの犠牲ではなく、人間が必要で、それが原因で禁忌の技とも呼ばれています、それは母体となる身体、つまり、魂の受け皿となる者が必要で、簡単に言えば、あなたという魂は私の体という受け皿によって転生したのです、ここまでで、何か質問はありますか?」


「おおありだよ!」


なんだお前!?何を言っているのかわかっているのか!?おま、つまりはどういうことだ?僕の体はほかの人、いや、あんたを元に作られているとでもいうのか?それはおかしい、だって僕にはアレがついて・・・そうついいるのだ。ということはこのお体が僕のものという事は間違っていないのか?だけどこの人はそれはわあたしの体が土台とか何とか言っていて、ああもうまったくわからない。じゃあ何で僕はこの体を支配しているの?そうだよ、どうにも設定が甘いというか焼き付け刃というかおかしいよ!そこんとこどう思っているんですかねぇ?

歩くのにもはたはた疲れを感じた僕は、ひとまず喫茶店に足を運ぶことにした。特に通っているというわけではないのだが。店を知っていたのは不幸中の幸いだ。とにかく記憶を整理して。彼女に質問をしよう。そうじゃないと何が何だかわからないままで終わりそうだ。だってこれは夢、いつまでも続くものではない有限の世界なのだから。僕が間挙げているこの瞬間も、砂時計は少しづつ終わりを示しているのだから。質問する数だって有限のはずだ。



「ふんふん、こんなところがあなたの世界には・・・なかなかいい雰囲気をしたお店ですね、これがお品書きでこれは、なんて読むんだろう?あ、すいませーん!これ、お願いします!へ?彼が飲んだことがないから再現できない?じゃ、じゃあ彼が飲んだものをお願いします・・・しゅん」


これだよ、なんだってこっちの意図を組んでくれないんですかね、あなたは何もかも知っているのかもしれないんですけど、僕は当事者でありながら何も知らないんだからそこんとこしっかりとした配慮というか配慮がほしいんですよね。


「随分と暢気な人ですね、それより質問なんだけどなんで僕は転生したのかな?ああ、もちろん知っているよ。君の姉がそう望んだことぐらいは記憶にある、でもなぜ?僕にはそんな価値はないと思うんだけど?」


「そうですねー、私にも考えられることはあるんですけれど、結論から言うとー」


彼女はそういうと、品書きを元の場所に戻し、凛とした顔で回答した。


「それは、私にはわかりません」真正面から素っ頓狂な返答が返ってくる。


「は?」思わず声を張り上げて知った。


「それはお姉さまが決めたことですので、私にはわかりません、私はお姉さまがそう望まれたのでこの体をあなたに捧げたのです、その際に理由はいりません、望まれればどんなことだって、いや、あの時は何もできない私が最後に使っていただける機会だと思ったので、なんの疑問もなく従ったのです。」


「え、いや、でも君はこれで体を失ったわけだよね?だって僕の体はこの夢を見るまで一人だったし、体には胸はないしナニはついているけどついてないし、つまり僕の体になってしまったわけだよ?それについてどうも思わないの?彼女を恨んだりするでしょう、自分の人生は彼女に奪われたんだよ?それも気のおねぇさんに、そんな血も涙もない奴何とも思わないの?」


「いいえ、まったく恨むといったことはないですねぇ、むしろお役に立てて光栄ですし、もうそれくらいしか私はお役に立てそうにありませんでしたから」


さも当たり前のように言う彼女に、僕は何も言えなかった、だけど彼女は僕とは全く違う世界で違う教育を受けた人ということは、強く理解できた。そんな彼女に狂ってるなんて、すぐには言えなかった。でも、何か言える言葉があるんじゃないかと思い。必死で考えた。


「いやでも、もっと自分の体は大切にするべきではないかな?こんな体をもらった僕が言うのもなんだけど、今の君は転生した僕の体に似ているよ、細い目も、その金髪も、力のありそうな肩も、それはつまり君の人生を乗っ取られたことを示しているんだよ?なぜ君はそんなに自分の人生を失うのが怖くないのか、僕には理解できないよ、普通人のために尽くすのは道徳上良いっていうのはわかるよ?でもそれで自身を犠牲になんてしてしまったら。元も子もないじゃないか、まだ君はやりたいことがあったんじゃないか?騎士団をつづけるとか、そういうことがあったんじゃ?それをなくしてまで人に尽くすのは本当に君の本位なの?」


彼女は少し悩んだ後、背もたれに体を預け、少し失笑したように語った。


「まぁ、あなたの言いたいことがわからないこともありませんが、それでも私は自分のしたことに後悔はしていませんよ?私はこうなる前も、今と大して変わりませんでしたから、私、寝たきりだったんですよ、戦場での負傷でね、それが騎士団団長の代理を立てる原因にもなりましたし、それから始まる生活は当時の私にとっては考えられないものでした、私はどう考えたってお荷物で、人のひきつった笑いしか見れなかった私は何度となく自分が恥ずかしいと思いました。でも、お姉さまは、あの人だけはそんな私をいつも気遣って、励ましてくれましたから、なんとか笑っていられたんです。私が炎症で歪んだ顔になっても、腐れ病で体の一部を失っても、彼女はいつもと変わらない笑顔で、大丈夫、必ずあなたを役に立足せると励ましてくれたんです。そんな彼女が今回は求めている、ついに私も、自分の役目を果たせる、そう思ったので、私はこの件を引き受けたのです」


それは、下手をすると洗脳されているんではないでしょうか?などど口には出さない、彼女の言うその語り口から察するに、彼女、アマーリアに対する忠誠は絶対だ。そんなことを言ったら何をされるかわかったもんじゃない。でも、彼女の話を聞く限り、アマーリアは本当に悪い奴なのか、少しわかんなくなった。いいやつではないことは間違いないし、どのつく鬼畜であることは間違いない。でも、だからと言って本当に彼女は彼女でわざわざ自分の妹を差し出してまでやることではないはずだ。


「ち、ちなみに、君は何でそれを受ける気になったの?いや、何で君じゃないとダメなんだってことさ、君の考えられる範囲でいいから答えられるかな?」


「お待たせしました、こちらご注文のコーヒーです、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」


とっさのウェイトレスに僕らは阻まれ、頼んでもいないコーヒーがテーブルに置かれる。それはとても邪魔臭いので断ろうとすると、どうやら彼女が頼んだものだそうだ。そこでしかなく返答を待っていると、彼女は一口すするや否やひどく渋い顔をして、苦渋の顔を浮かばせていた。


「うーん、苦い!これがコーヒーたるものですか、何たるも、不思議なものを飲んでらっしゃるんですねあなたは、でも、この苦さと同じくらい、あなたの質問は答えずらい!おまけにこの飲み物はとても眠気を覚ましてくれるようですね!はら、まどを見てください」


言われるがまま見る窓は夜明け前の雰囲気を醸し出し、ら明るくなり始めたようだった。このままでは、夜明けは近い。直感でわかる、もうすぐ夢から覚めることを。


「まずい、早く君にもっと聞きたいことがあるのにこのままでは何も聞けなくなってしまう」


「落ち着いてください、現実であなたに会えないだけで、私は普通にあなたと今後会話できますよ、もちろん夢の中でね」


「へ?でも今まで話しかけてこなかったじゃないか」


「それはあなたが安定するまで待っていただけです、その時には私の自我はひっそりと隠れていました。初めから二人で一つの身体だったんですよ、もちろん今後もね」


「しりたくなかった!」


「まぁいいではないですか、聞いたところによるとあなたもこの体を手に入れるまでは芋虫だったのでしょう?これからは不自由なく暮らせるのですから、それくらいのデメリットは喜んで受けるべきですよ、むしろ私なんて知らない間に胸はなくなっているし知らない愛仇に何かついているという葛藤を受けているんですよ?主導権をあなたに譲っただけでもむしろほめてほしいぐらいなものですよ」


「ごめんなさい!」


僕ははじめ、自分は何か都合の良いモルモットのようにされるがために生まれ変わったのかと思った。それが違うかどうかはわからないけど、同じ境遇の人を見つけられたこの瞬間、すごい安心感が心を満たした。彼女のおかげで僕は一人じゃないと証明できる、彼女も僕と同じ苦しみを受け、きっと僕と同じ悲しみを受け持つのだろう、それでも、彼女は自分の信念のもと、しっかりと前を向いてついてきてくれる。そんな彼女だから、僕に言ってくれた。


「だから、二人で一緒の体だから、一人で死のうなんて考えないでください」


知っているとはそういうことである、普通に考えて彼女も、僕の目で見ているものを、いや、〈僕らの目で〉見えるものはすべて知っているのだ。耳から聞こえることはわかっているのだ、彼女は僕に死ぬなという。


僕はこの夢は死ぬ前のご褒美だと思っていた、だってあまりにも懐かしい記憶だったから、一番充実した記憶だったから。僕の人生の最後に、せめてもの神様からの贈り物だと確信していた。正直まだ2時間ぐらいしか堪能していないうえにまったく自分の時間がなかったけど、それでも彼女の存在で、この夢の価値は大きく変わった。だけど、だからと言って僕の心情にい変化があるわけではない。どの道にせよ、僕には生きる方法も、そもそも生き抜く理由も、すべてなくなっているのだから。彼女の体から僕はできたのかもしれないけど、僕はもうこの世にいる気はない。彼女には悪いけど、この体の主が僕である限り、死ぬことは避けられないだろう。


「・・・ごめん、君にはなんて言ったらいいかわからないけど、僕は自分の夢を奪われてしまった。それどころか体も何もかも、もう、ここで終わらせたいんだ、ここでは僕はアウタースレーブとかいうやつらしくて、たとえ生きていたとしてもまた僕は奴隷としての日々を送るしかない、それに希望を持てって君は言うのかもしれないけど、ぼくはそれは無理としか言いようがないよ、だから君には悪いけど、僕は死ぬことを選んだ、そうさ、君の騎士団の放火も、実は失敗することが目的だったんだ、そうすれば僕がどんなに意気地なしでも、簡単に死ねるから、だから、もう僕に・・・僕たちに明日はないんだよ」


「死んでどうするんですか」


「え?」


「希望がない?笑わせないでください、希望なんて常に目の前を照らすランタンなんかじゃないんです、それを妄信して生きるくらいなら初めから死んでいた方がましです」


「な、なんだと」


「希望は常に暗闇の中にあるから錯覚する、照らしてるんじゃなくて、望んでいるんですよ、暗闇の未来を進む自分を、何があるかわからない自分の未来に、少しでも踏み込む勇気を持つことを、それが自分を強くするから、それが先の未来を作るから、私がそれを見せてあげましょう!」


「・・・」


「ですが、もちろんあなたの主導権で動く体ですからあなたが死のうと思えば、簡単に死ねるでしょう、私が見せる未来が気に食わないのであればどうぞ、その時はご自由に、でも、それまでは私の言葉を信じてはくれませんか?」


「ちょ、ちょっと何をするきだ!?」


「簡単です!あなたはアウタースレーブかもしれないですけど、私はれっきとした貴族、だからあなたが貴族だと証明します!そして、あなたが進む、下地を作ってあげましょう!」


「言ってる意味が分かんないんだけど!?」


「二人で一緒、ならばあなたは貴族で私は奴隷、そんなこともあり得るんですよ!あなたは失ったものを取り返し、私は貴族として奪ったものを返す、そうやって過ごせばあなたも生きる気力が湧くはずです!」


「だから!意味わかんないし、どのみち処刑があるんだって!」


「しってます、ゲラルトは私が知る限りかなりの腕を持った騎士ですが、私には遠く及びません、だから、あなたの代わりに私がやっつけてあげます!」


「無理でしょ!?現に主導権は僕にあるって言ったじゃないか!?」


「それはやってみなくちゃわかりません!だってまさに、そういうところを生きることこそ希望とは思いませんか?それを見せると約束した限り、しっかりと見せてあげますよ!」


彼女はむっとした後、コーヒーをぐいっと飲み干し、なんだかんだで気に入ったようで、少しカフェインの余韻を堪能したのち、朝の光に満ち溢れたドアにてを伸ばそうとしていた。


「では、私は行きますね!お会計は済ませておいたので、どうぞ気にせずにくつろいでください!」


おいおい、そりゃあないだろう、だって全然俺は君に質問できていないんだもの。そう思い、彼女の方へ詰め寄った。


「待って待って、君にはまだ質問したりないことがいっぱいあるんだって!これから僕はどうしたらいいんだ?!」


そういうと、彼女は威勢よく言い返した。

しばらくこの書き方でやっていこうと思いますのでご了承ください

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