暴れん坊幼馴染
前の話のおまけみたいな話です。
短いです。
修正致しました。
感想へのコメント返しは、話を投稿した際の活動報告でさせていただいております。
僕と、僕の幼馴染の話をしよう。
僕の幼馴染は乱暴者である。
女の子だけれど腕っ節が強く、この辺りの子供達に恐れられるガキ大将だ。
とはいえ無法者というわけでなく、特に理由なく人を傷付けるような事はしない。
乱暴ものではあるけれど、友達には優しく頼りになる子なのだ。
ただし、僕以外に対しては……。
どういうわけか、あの子は僕にだけは意地悪で理不尽だ。
妙に絡んでくる。
事ある毎に頭を小突かれる。
よくわからない理由で怒る。
僕は外で遊ぶよりも家で本を読んでいるのが好きなのに、いろいろな場所に引っ張り回される。
とても理不尽である。
物心つく頃から彼女の僕に対する接し方は変わっておらず、それは今になっても変わる事はない。
僕はいつも彼女の理不尽な行いに振り回され続けている。
彼女にそうして振り回されるのが、僕はとても嫌だった。
そしてこのままではこれからもずっとこのままかもしれない。
そう思うととても嫌だった。
どうにか、変えたかった。
だから僕は意を決する事にした。
二人で話をしたいと言って、僕は彼女を近所の空き地に呼び出した。
「用事ってなんだよ?」
彼女は木剣を右手に持って空き地に現れた。
その木剣は最近の彼女のお気に入りだ。
誰かにもらったものらしい。
くれたのは見知らぬおじさんらしく、そのおじさんは彼女と同じ笑い方をするという。
悪夢である。
僕は彼女の笑い方が苦手だ。
彼女は僕に無体な事をする時、よく「がはは」と楽しげに笑うのだ。
苦手にもなる。
彼女が剣を気に入っているのは真新しい玩具だからというだけでなく、そのおじさんの事も気に入っているからのようだった。
「どうでもいいけど、さっさと済ませてチャンバラごっこしようぜ」
彼女は木剣を無造作に振り回しながら言う。
「やだよ。そう言って、また僕を技の練習台に使うつもりなんでしょ?」
「違うぜ。おっさんの使ってた技を実際に試してみたいだけだぜ」
それ、捻りもなく意味が同じだよ?
「もういいだろ? いいからやろうぜ」
彼女は木剣を構えた。
彼女はいつもこうだ。
僕の話を聞かずに、僕の嫌がる事ばかりするんだから。
僕はいつまでもこのままは嫌なんだ。
「やだよ」
「あ? なんだと?」
彼女が僕を睨みつける。
少し怯んだけれど、僕は続ける。
「もう、君とは遊びたくない」
「何でだよ?」
「君はいつも僕の嫌がる事ばかりしてくるじゃないか。すぐに殴るし、怒鳴りつける。そんな人とはもう二度と遊びたくないし、会いたくない。絶交だ!」
僕はそこまでをまくし立てた。
彼女は僕をじっと見ていた。
不意に、その瞳が揺れた。
その目から、涙が零れた。
「何でそんな事言うんだよ?」
そう言うと、彼女の顔がくしゃりと歪んだ。
「何でそんな事言うんだよぉ……」
彼女は木剣を取り落とすと、その場でへたり込んだ。
男の子との喧嘩でも負けた事がなく、殴られたって泣かない彼女なのに。
そんな彼女が、僕の言葉で酷く悲しんでいた。
ボロボロと涙を流していた。
言葉はなく、ただただ泣いていた。
「ごめん」
僕は思わず謝っていた。
それから、僕は泣き続ける彼女をなだめ続けた。
結局、僕は今も彼女と友達でいる。
相変わらず彼女に振り回されながらもいつも一緒にいる。
絶交されるのが嫌ならもう少し抑えてほしいとも思うけど、彼女にそんな様子は無い。
正直、そんな扱いを受けるのは嫌だ。
これからずっとこのままなのかな、と思うとうんざりする。
けれど……。
あの時見せた彼女の泣き顔。
あの悲しみ様を見なくて済むというのなら、それもいいかな、と今は思っていた。
何故か書きたくなってしまった話。
察しの良い読者はお気付きかもしれませんが、彼は彼女の「いい男」です。