ある祖母と孫の関係
三人称と一人称を交えた今までと少し違う手法で書いております。
短いです。
誤字を修正いたしました。ご指摘、ありがとうございます。
誤字報告、ありがとうございます。
修正致しました。
城の庭園。
そこでは、二人の人間が向かい合ってテーブルに着いていた。
二人の前には、お茶と茶菓子が置かれている。
一方は壮年の女性であり、もう一方は幼い少女だ。
二人は祖母と孫の関係だった。
「わたくしの親愛なるお祖母様」
「何でしょう? 私の可愛いお孫様」
「わたくし、自分がしている事を誰かに邪魔されるのが堪らなく嫌いですの」
「ええ、気持ちはわかりますよ。私もそうですからね」
壮年の女性はにっこりと笑い返し、お茶を一口飲んだ。
「だったら、可愛い孫の可愛い企みを丹念に潰すのはお止めくださいな」
「確かに、自分の伯父を謀殺しようなんて企みを知ったら、私としてはあまりに微笑ましすぎて応援してあげたい所ですけれどね。ただ、私としては可愛い孫と遊びたいという気持ちもあるのですよ。老い先短い身としては、もっと孫に構ってほしくってねぇ」
ごほごほ、と壮年の女性がわざとらしく咳き込む。
「あら、心配ですわ。そのようなお体では、社交にも差し障るのでは? そろそろ引退して養生なさった方がよろしいと思いますわ」
「いえいえ、まだ頑張りますとも。少なくとも、上の王子二人が、可愛らしい姪の企みを指先でちょちょいとで退けられるくらいにならないと、引退なんてできませんからね」
「絶対、伯父様達よりもお父様の方が王様に相応しいですわ」
「似たり寄ったりだと思うのですけどね」
「ふふふ」
「ふふふ」
二人揃って茶器に口をつけ、笑い合う。
「そういえば、お母様は元気にしていますか? 最近、会う機会がなくて寂しいのですけれど? また、お風呂をご一緒したいですねぇ」
「ええ、元気ですわ。よくお出かけになられるので、あまり城にいないのです。この前は、家族三人で、お母様の実家に行ってまいりましたのよ」
壮年の女性の眉がピクリと動く。
「へぇ、そうでしたか。あちらのお祖母様はお元気でしたか?」
「そうですね。歩き難そうにはしておりましたが、元気でした。あの方は優しい人ですからね、わたくしとっても大好きですの。いつも、お風呂をご一緒させていただいておりますのよ」
「お風呂、ですか……。あそこにお風呂なんてあるのですか?」
「御祖父様が山を探索していた時に、たまたま見つけた温泉がございますの。とっても広くって、お母様とお祖母様と一緒に入る事もできるのですよ」
「へぇ……」
「お母様とお祖母様に挟まれて、とても気分がよかったですわ。すっごく甘えちゃいましたの」
「そうですか……。それはよかったですねぇ……」
壮年の女性はスッと目を細めた。笑みを作る。
幼い少女も同じように笑みを作った。
二人の向け合う笑みは、とてもよく似ていた。
「うふふ」
「うふふ」
二人とも、お茶に口をつける。
「ああ、そういえばお祖母様。この前社交パーティの時に、陰でお母様の事を「出自の知れない尻軽女」と言っていた伯爵夫人がいたのですけれど……」
「どこの誰です?」
「あれは確か、北方に領地を持つ方だったと思いますけれど」
「そうですか。少し、身の程を知らせてあげる必要がありますね」
「そうですよ。あんな下劣な品性の方は、不幸に見舞われてしまえばいいのです」
「アハハ」
「ニャフフ」
丁度庭園を通った時、私の娘と母上が話をしている所を見かけた。
互いに微笑みあう姿はとても微笑ましく、すぐにでも絵にしたいと思える程だった。
あの二人は気が合うのか、よく一緒にいる事が多い。
目にするたびに、楽しそうな笑みを浮かべて語らっていた。
あのように、母上が楽しそうな表情を向ける相手など他になく、そんな相手とめぐり合わせる事ができたのならば、私という人間にも少しの価値はあったのかもしれないな。
どのような話をしているのかはわからないが邪魔をしては悪いので、私は声をかけずにその場を離れた。
ニャフフの子供がどのような子なのか、という話を書きたかったので書きました。
なので、成長したお孫さんが出るのはこの話だけになると思われます。