終-B
朝のおもちゃ屋、まだ開店していないらしく、シャッターが閉まっている。
「そう言えば、開いてる所見たことないな...」
彼はそう呟きながら関係者専用の入口に向かう。
「開いてないよな...多分」
が、彼の心配は杞憂に終わる。
恐る恐るドアノブを捻ると、侵入を歓迎してるように、力は拒まれること無くドアノブが回り、ドアが開く。
「よかった」
中に入りあの扉を目指す。
半分しか開かない、あの扉を。
早く、しかし警戒しながら。
辺りの音が聞こえない。そう思えるほど、彼の心臓は大きな音をたてていた。
いつも警備をしている場所に出る。周りにはいつも通り子供のためのおもちゃが展示されている。
人気なのか変わった梨の形のぬいぐるみは入荷待ちとなっていた。
他にも納豆豆の形をしたぬいぐるみや、兜をかぶった猫...彼は疑問に思う。
「知ってるよ、そんなこと。今更、なんでおもちゃなんて...死ぬのかも、なんて」
不安を笑い飛ばす。笑いを勇気に変える。
「待ってて」
知っている。しかし初めて来るような感覚を覚えながら扉を目指す。
扉の前。
彼は静かに開ける。
音のならないように。
しかし、高い音が耳に刺さる。
半分も開いていない扉をすり抜ける。
いつものように服が引っかかり破れる。服の一部をドアに残し大きな穴が空いた。その事に彼はもう気づいていない。
「この奥、この奥に」
足が浮いている。そう感じるほどに恐怖で震えている。
足の震えを隠すように彼は前に進む。
無音の道、未知の道を。恐怖に飲まれないようにしっかりと足をつけて。
しばらく歩くと、幾つもの小さな扉と大きな扉が現れた。
扉の上部は窓になっていて部屋の中が確認できた。
防音になっているようで、中の音は何も聞こえなかった。
「女の子!?」
扉の向こうには鎖でつながれた女の子がいた。
扉を捻ったが開かない。中の女の子は恐怖に押しつぶされているようで、こちらを見ようともしなかった。
「待ってて、君も必ず助かるから」
彼は扉の窓を覗いていく。
「いない、いない、いない、いない、いない」
小さな扉の中に彼女はいなかった。
残るは大きな扉一つだけ。
恐る恐る扉を開ける。
心臓が張り裂けそうになりながらも、運命に抗うために。
鈍い音が響く。扉の向こうは大きな広い空間になっていた。
「◻︎◻︎さん!」
見つける。ひどい姿の彼女を。
椅子に縛られ、いたるところに傷を負った彼女の姿を。
「大丈夫!?助けに来たよ!逃げよう」
「◯◯さん...え!?◯◯さん!?どうして!?」
「これ」
彼は携帯を取り出し、ストラップを見せる。
「あ、私の、もらったやつ」
「落ちてた、僕の仕事場に。これ、ここに売ってないから」
そう言いながら彼は縄を解く。
「ここは??」
自由になった彼女は服をぱんぱんと払いながら聞いた。
「んー、おもちゃ屋かな?表向きは?」
周りにあったダンボール。その中には明らかに犯罪の香りが詰まっていた。
「逃げよう!!今のうちなら逃げられるかもしれない!!」
彼は彼女の手を取り全速力で走る。扉。半分開いた扉の前。足が止まる。
焦っているからか、扉の前で戸惑う。この隙間を通れば。
「◻︎◻︎さん!先に...」
背後から声が聞こえる。
「てめぇ、何してる」
「社長!?」
後ろには黒く重い。何かを彼に向けている、この会社の社長。誘拐犯が立っていた。
「お前、確か警備員のやつか。うちの商品どこに持ってくつもりだ??」
誘拐犯は彼女を商品と呼んだ。
どうする、どうする。
彼は考える、そして彼女と誘拐犯の対角線上にたった。
「◻︎◻︎さん。逃げて、早く!」
「でも、」
「早く!!」
彼女は逃げる。隙間の抜けて。彼破れたの服の破片が引っかかっていたおかげで、彼女は引っかからずに済む。
「良かった」
「ちっ」
強烈な破裂音。
耳が聞こえなくなる。
次第に目も。
「あれ?なんか、お腹、熱い?濡れてる。」
そこで彼の意識は途切れる。
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気がつけばそこは見慣れない部屋。
白い。ほぼすべてのものが白かった。
「死んだかな?」
呟いた瞬間強烈な痛みが腹部を襲う。
「◯◯さん!!良かった!!生きてた!!」
彼女が腹部にしがみついている。
「いったい!痛い痛い!!」
「あっ、ごめんなさい!私嬉しくって」
僕は生きていた。腹を弾丸が貫いて尚生きていた。大した生命力だ。
「◯◯さんが警察呼んでくれたんですよね??ちょっと遅かったけど!ちょうどよかった!◯◯さんが死なずに済んだ!」
「もうちょっと早くき」
「だめ!文句言わないの!」
腹部を撃たれたんだから文句くらい良いじゃないか。そう言ったけど、彼女は嬉しそうにだめだと言った。
僕は幸せだった。
撃たれて良かったかな?何て思った。
「私、◯◯さんが撃たれて良かったです。だってこうやって、逃げられずに抱きしめることできます!逃げるでしょ?◯◯さん」
残酷に嬉しいことを彼女は言う。
「私、幸せだな。また好きな人に会える。私が好きになった人のかっこいい姿が見れた。私を助けてくれた。本当に幸せです」
「幸せか」
「はい!幸せです!!◯◯さんは私のヒーローです!」
運命、変えられたかな。
「あのさ、もし良かったら」
「僕と」
「私と」
「「付き合って欲しい」です!」
声が被る。
被される?。
「ずるいです。◯◯さん。こんなタイミングで、断れるわけない」
「◻︎◻︎さんこそ。断れるわけないよ」
2人で笑う。変えた運命で。幸せに。
「あ、あのさ、名前教えてくれない?下の名前。」
「えー知ってるじゃないですか!」
「彼女になった君の名前が知りたいの」
「...芽衣です」
「芽衣。可愛い名前。」
「◯◯の名前も教えて...」
「僕の名前は...」
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運命。
なんてものがあるとすれば、それは自分が決めるものだ。
変えるも変えないも自分次第。
この物語の彼は、小さなものでも変えようとした。
この潰れたストラップ。もし彼がつけていなければ、彼は死んでいたかもしれないね。
俺のあげたストラップ1つで運命を変えた。
君は運命を変えているか?
自分の意思で決めているか??
自分が幸せになるように考えるのは楽しいと思うよ。
俺のようにね。
運命をお買い求め下さり誠にありがとうございました。
またのお買い上げ、お待ちしております。
次はあなたの運命を。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。調子に乗ってあとがきを書こうかなと思います。
僕は小説を書くのが苦手です。とてもとても苦手でした。
しかし、ちょっと、投稿してみようかな?何か自分の中で変わるかもしれない。
何て思って投稿してみました。
自分の運命を変えたかったのかとしれないです。
結果は大きく変わりました。
とても変わりました。何が変わったか、1番は小説を書くことが好きになりました。
1番かな??
んー、わかんない、それよりももう一つ大きな大きなことが変わったのですが、それは秘密です。
僕の場合は河童のおかげですかね?(笑
運命って言うのは、誰かに決められるものでも、すでに決まっているものでもないと思います。
自分で命を運ぶ。
自分で決めるのです。好きな事も、嫌いな事も、好きな人も、嫌いな人も、好きな物も、嫌いなものも、人に決めてもらう人なんてそういないと思います。
僕は自分で決めた道を突き進みたい。
誰に何を言われても自分の運命は自分で決めたい。
後悔のないように。
この物語を読んで、1人でも、半人でも、自分を信じてみようって思う人がいてくださったら、僕は嬉しすぎて嬉しすぎて、多分、すごく嬉しくなると思います。
プロの方っぽくあとがき書いてみました(笑
最後に、本当にここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また、よろしければ、他の作品で。




