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薄暗い夕暮れ。部活帰りの学生たちの笑い声や、遊び帰りの子供の別れの言葉があまり車の通らないこの道に響きわたる。
少し早く1日の終わりを告げるように辺りは静かになって行く。何処かさみしげな雰囲気が世界を包み込んでいる。ような、切ない思いを胸に彼はその道を歩いていた。
一人暮らしをしている彼は、今日もそうプログラムされた機械のように、弁当を買いに近くのスーパーに足を運んだ。
「お弁当温めますね」
店員はそう言って彼の返事を聞かずにレンジの中に放り込む。
「○○さん、こんなものばっか食べてると身体壊しますよ? ちゃんとしたご飯食べないと」
あたかも名前を確認するかのように胸についているネームプレートをちらりと見て「料理出来ないんで、それにここのお弁当美味しんですよ。◻︎◻︎さんも食べてみます?」と冗談交じりに彼は返事をする。
食べたことありますよーと笑いながら彼女は言った。
彼女はこの近くに住んでいる高校生。このスーパーで平日のこの時間にバイトをしている。
彼はと言うと深夜に働き寝て起きてまた働く。休みは週に2回。楽しくも辛くも無い。そんな生活を続けて居た。
「そんな事言ってると彼女にフられちゃいますよ」
彼に恋人は居ない。それでも彼女はいつも最後にこう付け加える。
「○○さんかっこ良いんだからダメですよ!」
だから彼もこう返事をする。
「だから彼女なんか居ないって」「嘘だー」「彼女が居たらわざわざ買いに来ないでしょ?」「それもそうですねーじゃあ…あれですね!」「だからあれって何なの?」「あれはあれですっ」
いつもと同じように意味の無い会話を彼女は楽しそうに繰り返す。彼も楽しく無いと言えば嘘になる。
温め終わった弁当を割り箸とお茶と一緒に袋に詰め、笑顔で「もう来ちゃダメですよ!」と店員らしからぬセリフを彼に言った。
「うん、じゃあまた明日」
それが2人のいつもの別れの言葉だった。
いつもと違うのはここからだった。
普段ならそのまま帰路に着く。しかし今日は店の前にならんでいるガチャガチャがなぜか気になった。
よく見る形の箱が幾つも並んでいる。その横に古い、いつ作られたのだろうかと思わせるようなガチャガチャが置いてあった。
『運命』大きくそう書かれていた。
「運命が100円で変えられます。もしも運命を変えたいのなら一回どうですか? 大金持ちや総理大臣、大きな夢や小さな夢が叶うかも。1度お試しあれ。」
声に出して下に書かれた説明を読み上げる。
「運命か」
いつからこのガチャガチャが置いてあったか聞いてみようとしたが、レジには3人が並んでいた。
諦めてもう一度ガチャガチャを見る。
「100円なら一回やってみるかな」
中を覗くと幾つものカプセルが入っている。彼はホッとしながら100円を入れ、ハンドルを回した。
大きな歯車が回るような鈍い音と共に一つの黒いカプセルが出てきた。
彼はそのカプセルを袋に入れ持ち帰った。




