【第Ⅰ章 ~ピータバロ 】 最初の出会い
ロンドンから鉄道にのって北に約1時間。
イギリスの小都市、ピーターバロ。
近代的な建物にあおりを受けることもなく、この都市にはまだ、中世期の古い町並みが残されていて、ゴシック様式の大聖堂と、美術館、そして、それに続く通りには、点々と無名画家たちの露店が立ち並んでいる。
ピータバロ市がある地方の秋は短く、艶やかな紅葉が街を彩る期間はわずかで、じきにやってくる冬を予感させる灰色の空に、ナナカマドの実だけが赤く目に映る。
その露店の一つで - キース・L・ヴァンベルト - は、冴えない顔つきで小麦色の髪をかきあげ、恨めしげに通り過ぎてゆく人々に目をやった。
いつかあの豪勢な美術館に、自分の絵が飾れたら。そんな思いで田舎を飛び出し、この町にやって来たまではよかったけど……、
今日も、1枚の絵だって売れやしない。こんなんじゃ、絵具代どころか飯代だって危ういぞ。そういえば、昨日、食った飯は何だった? 売れ残りまぎわの食パンか。
「お前にもろくなもん、食わしてやってないな」
キースは、彼のそばに寝転んでいる彼の相棒 - 雑種犬 - の毛並みをくしゃくっしゃっとなぜた。中型だが、茶色と白の模様はなかなかいいコントラストをしている。それに垂れ下がった茶色の大きな耳が、けっこう可愛い。
「明日は俺の17回目の誕生日なのに、こんなんじゃ、ケーキの一欠片も食べれやしない」
すると……、
小道の向こうから黒髪をなびかせて歩いてくる少女が目に入ってきた。
この辺りじゃあまり見かけない南洋風と西洋風が混ざり合ったようなエキゾチックな顔立ち。
それにも増して、目を引くには、えんじ色のブレザーに白いリボン。胸には鳥のつぐみをデザインしたエンブレム。それは、このあたりでも裕福な名家の子息、令嬢が通う名門美術学校、ピーターバロ・シティ・アカデミアの制服に間違いなかった。
今にも鳴り出しそうなすきっ腹をかかえた青年に、ふと気がつくと、少女は小生意気な目を瞬かせて、露店に近づいてきた。
1枚の風景画を指差し、
「これ、いい絵じゃないの。描いたのはあなた?」
アイドル並みの可愛さで笑顔を作る。けれども、態度は傲慢だ。
「この店に並べた絵はみんな、俺の描いたもんだよ」
少々、むっとした声で答えた若い露店主に、
「夜の風景ね。この店を照らした街灯の黄色が暖かく空の藍色を印象的にしてるわね。季節は5月かな。どう、当たっているでしょう」
「へえ……お前、まだ小学生くらいなのに、よく絵のことが分かってるんだな」
「あなたの隣にいるその犬の名前だって分かるわよ」
「こいつの?」
「ええ、その毛並みとずんぐりした体型、名前はパトラッシュ!」
キースはその答えに天を仰いだ。
フランダースの犬かよ! 俺はまだ、そこまで貧しくねえよ。
そして、これが、この青年 -キース・L・ヴァンベルト- が、絵画窃盗団“ピーターバロ・シティ・アカデミア”にかかわる第一歩だったのだ。
* *
大聖堂の鐘楼から、午後4時を告げる鐘の音が響いてきた。その音と同時に少女のポケットで携帯電話の呼び出し音が鳴った。
「あ、忘れてたわ。4時までに学校に戻らないといけなかったのよ」
その割には、少女はあせって携帯に出るでもなく、それをぷつんと切ると、まだ、露店の絵をあれやこれやと物色している。
「お前、あの金持ち学校のお嬢様なんだろ。呼び出されてんのに、こんな薄汚い露店で道草なんか食ってたら、先生に叱られるぞ」
場違いな奴は、とっとと、どこかへ行っちまえ!
苦々しい気持ちを抑えるように油壷に絵筆をつっこみ、キースはそれをじゃばじゃばと洗い出した。……と、その時また、少女が声をかけてきたのだ。
最初に見かけた風景画を指差して言う。
「でも、これって本当にあなたが描いたの?」
「はぁ? この店に並べた絵はみんな、俺の描いたもん。さっき、そう言ったの、聞いてなかったのかよ」
視線をきりとぶしつけな客に向ける。すると、少女は一瞬、どきんと目を瞬かせた。その若手画家の琥珀色の瞳が、やけに綺麗に思えてしまったからだ。
「そ、そんなに睨まないでよ。この絵、私が買ったげるから。……で、いくらで売ってくれるの」
「……買ったげるって、ふざけんなよ。いくら俺だって、小学生の小遣い程度じゃ大事な絵は売らないんだぞ」
ふぅんと少女は少し考え込むようにして、ポケットから花模様の財布を取り出した。いかにも少女趣味なデザインのそれから、ごそごそと“お小遣い”を引っ張り出して言う。
「これで手を打ってよ」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってくれよっ!」
けれども、キースの手に代金を握らすと、少女は目にも止まらぬ早さで風景画を抱え込み、学校の方へ走り去ってしまった。
ひい、ふう、みぃ……えっ? 50ポンド紙幣が5枚?! って250(約4万2千円)ポンド!
「おいっ、待てよ! ガキからこんなにもらったら、俺が先生に怒られるだろっ!」
だが、少女の姿はすでに街路樹の向こうに消え去った後だった。
何て子供だ……お金の値打ちが分かってんのか? 俺の絵にぽんと250ポンド?
“この絵って、いい絵よね”
それでも、少女のその台詞は妙に自信に満ちていて、キースはまんざらでもない気分だった。
駄目駄目っ! きっと、後からあいつの学校の先生がやってきて、うちの生徒をカツアゲしたとか何とか言われるに決まってんだ。早めに返しておいた方が身のためだぞ。
“絶対、その方がいい”と、大急ぎで店を片付け、キースはそばにまどろんでいた雑種犬に目を向けた。
そういえば、こいつの名前……まだ、決めていない。ああ、もうこの際、何でもいいか!
「一人は何だか不安なんだ。お前も一緒に来てくれ! ……パトラッシュ!」
そして、キースはパトラッシュを連れて、少女の学校、“ピーターバロ・シティ・アカデミア”へ大急ぎで駆けていった。
* *
Keith & Mildred
“ピーターバロ・シティ・アカデミア”
12世紀に建築されたピータバロ大聖堂と同じ、初期イギリス・ゴシック様式を用いた繊細な彫刻をほどこした正門の石柱。建物の正面であるファサードの上には煌びやかなステンドグラスがはめこまれている。
「本当に、ムカつく建物だよなっ」
学校というより聖堂といった風の校門の前で、キースはちぇっと舌を鳴らした。
髪はバサバサ、油絵具で汚れた上着に破れたGパン。どう見たって、自分はこんな場所にはそぐわない。
あの女の子を追いかけて、来ちまったけど……もらった絵の代金が多すぎたから返します。なんて言ったら、ますます怪しい奴だと思われないか。それでなくたって、近頃のロンドンじゃ、物騒な事件が続いてるっていうのに。キースは眉をしかめた。
そうなのだ。ここのところ、首都ロンドンでは、小さいのから大きいのまで色々な事件が多発している。特に、今、新聞紙上を騒がしている連続殺人事件。さすがに郊外のピータバロ市にまでは、その被害の噂は聞こえていないが、今、おかしな事をしでかしたら、彼らみたいな露天商は、即、挙動不審者として警察に引っ張られてしまいそうだった。
はぁ……と、ため息をもらし、足元にいるパトラッシュに目をやる。その時だった。
「よかった! 間に合ったのね。もう諦めてたのに!」
不意に聞こえてきた声に、キースは驚いて後ろを振り返った。
キャメルのスーツを着こなした、長身のセクシー美女。歳は20代後半か。
ショートカットのブルネット。眼鏡の向こうの知的な瞳。
美女は、目前の青年をはたと見つめなおす。そして、少し気を落した風にこう言った。
「違うわね……、どう見てもその格好は、うちの美術学院の生徒とは思えないわ……で、あなた、この学校に何か用」
どうやら、この美女はシティ・アカデミアの女教師のようなのだ。訝しげな彼女の物言いにムカつきながらも、この際だ。と、キースはポケットに突っ込んであった250ポンドを無造作に差し出した。
「これ、お宅の生徒が俺の絵と引き換えに置いてったんだ。でも、俺の絵はこんな高値で売るような絵じゃないんだよ。あんた、ここの先生? 金持ちのご令嬢かなんか知らないが、もっと生徒に金の値打ちをきっちりと教えた方がいいんじゃないのか」
「あなたの絵を? うちの生徒が?」
一寸、間をおいてから、その美女はふっと意味深な笑みを浮べて言った。
「という事は、あなた、絵描きなのね。なら、聖堂美術館に行ったことはある? あそこの展示物には詳しい?」
“聖堂美術館”
それは、ピーターバロ大聖堂に隣接したこの都市で唯一の美術館だ。いつか、その場所に自分の絵が飾れたら……それが、キースの夢なのだ。
「……そりゃあ、一通りの絵は全部見てまわってるけど……特に、今、特別展示されてる“神秘の降誕”はもう7度も見た」
「“神秘の降誕”! あの絵が好きなの? そう、おあつらえ向きじゃない。なら、私と一緒に来て!」
美女はそう言うと、キースの腕を引っ張った。有無をいわさず、彼を学校の門の中へ引き入れようとする。
「ち、ちょっと、待ってくれよ! 俺をどこへつれてゆくんだよ!」
慌てふためく青年をまるきり無視して、彼女は笑った。
「頼んでいた美術学院の生徒が間に合わないみたいなの。だから、アルバイトさせてあげる」
仕事は、子供たちの絵画鑑賞ガイド。
場所は聖堂美術館。
「報酬は250ポンドでどう?」
また、250ポンドかよ! この学校って生徒も先生も一体、どうなっちまってんだ!
「おい、待てよっ! 俺はまだYESとは言ってない!」
「なら、今、YESと言いなさい」
一旦開いた“ピーターバロ・シティ・アカデミア”の校門が、再び閉じられてゆく。校門の外に中型犬を一匹、取り残して。
すわ、相棒の一大事!
そう思ったかどうかは微妙だが……それでも、キースの相棒、名犬? パトラッシュは、クンクン鼻を鳴らしながらその建物の裏手に向かっておもむろに駆け出した。
* *
結局、鑑賞ガイドとやらのアルバイトを引き受けるはめになっちまった。
聖堂美術館の展示室の入口で、貧乏な無名画家は深くため息をついた。
“でも、その格好じゃねえ……ここにうちの美術学院の制服があるから、とりあえずそれに着替えて”
けれども、ブルネットの女教師から渡された、着替えは、“ゆるゆる”で“だぶだぶ”だ。
他のサイズはなかったのかよ! この格好の方が前よりよっほど、変じゃないか。
ぞろぞろと後をついてくる、お坊ちゃん、お嬢ちゃん面をした生徒たちに目を向けて、キースは半ばやけくそで、正面に展示された一枚の宗教画の説明を始めた。
「“受胎告知”……数多くの画家によって色々な作品が描かれているが、これは「マタイによる福音書」の記述を元に描かれた1枚で、天使ガブリエルが降臨し、精霊によりマリアがキリストを身ごもった事を告げる場面を描いたものだ」
すると、お坊ちゃんの一人がこう言った。
「そんな事、聞かなくても知ってるよ。ガイドならもうちょっと、気のきいた事を教えてくれないかなあ」
何て、クソ生意気な子供なんだ。
「なら、どんな説明ならお気に召すんだよっ!」
その時、じろりと睨みつけた目の先に、大きな愛くるしい瞳の黒髪の少女を見つけて、
「お前っ、さっき、露店で俺の絵を買っていた女の子じゃないか。いつの間に列に入ってたんだ? さっきまではいなかったのに」
少女は、訝しげに即席の絵画ガイドを見やる。
「お兄さん、ここの学校の生徒じゃないでしょ。こんなところで何やってんのよ。貧乏が過ぎて偽装アルバイト?」
すると、先程の小生意気な坊ちゃんが口をはさんできた。
「何だ、こいつってミリーの知り合い?」
少女はその問いにぽっと、頬を赤くした。でも、それは、ほんの一瞬で、
「ううん、単なる“通りすがり”の売れない画家よ」
可愛い表情から、繰り出される辛らつな台詞。キースは呆れかえって、もう怒る気にもなれなかった。少女が抱えている白い包みを見て、彼は言う。
「お前、ミリーって名前なのか。その手に抱えている大荷物は何だ? 美術鑑賞にそんなもん必要ないだろう」
四角い形……絵か何かか?
「ミルドレッドよ。みんなはミリーって呼んでるけど。この荷物は……気にしない、気にしない。それより、“受胎告知”の隣にある“風景画”の説明をしてよ。この絵の方がずっと、私は気に入ってるんだから」
「“風景画”? でも、これってたいして名もない普通の画家が描いた模写だぞ」
「いいの! みんなも集まって~! お兄さんの説明を聞きましょ」
ミリーの一声で、列になっていた生徒たちが我先に“風景画”の元に集まってきた。
青と白と黒を複雑にからみあわせた夜空に黄色い星が見え隠れした、ちょっと変わったタッチの絵。
「ち、ちょっと待てよ。この絵より、あっちに展示してある“神秘の降誕”! ほら、せっかく聖堂美術館に来たんだから、あれをまず見なきゃ駄目だろっ」
何をおいても、ここの展示物のメインはやっぱり、“神秘の降誕”じゃないのか。
こいつら一体、どうなってんだ。確かにこの絵は俺も好きだが、説明なんてよく知らないぞ。
「いいのよ。あの絵はレイチェルが見ててくれるから」
ミリーは意味深な笑みを浮べると、“神秘の降誕”を見学する人垣の後ろに立って、彼らたちの方を見ていた、ブルネットの女教師を指差した。
レイチェル -美人で長身のセクシー女教師-
けれども、何かが腑に落ちない。どこかが怪しい……すると、彼女は、そんな青年の心を見透かしたかのように、にこやかな視線をこちらに向けてきた。ミルドレッドといえば、ポケットから携帯電話を取り出して、指先を動かしている。
こんな場所でメール? ……本当に不真面目な奴。美術鑑賞だって、一応は授業だろ。
だが、キースが眉をしかめた瞬間に
ジリリリリリリッッ!!
警報が鳴った。
そのとたん、聖堂美術館の明かりという明かりが、すべて消えてしまったのだ。
「何だ、何が起こったっ!」
「皆さん、落ち着いて! 大丈夫です。その位置を動かないで! 明かりはすぐにつきますから」
警備員たちの大きな声が、広い館内にこだまする。慌しく彼らの靴音が響き渡り、すぐに懐中電灯を手にした数名が、あせった様子で“神秘の降誕”ブースに駆けていった。
ざわざわと不安げな人々の囁き。
停電? でも、何で警報が鳴ったんだ。
“絵”……もしかしたら、“神秘の降誕”を狙って?
そういえば、ここのところ、頻繁に新聞誌上を賑わしている不穏な事件の数々。
まさか……な。
キースの脳裏に、そんな事が浮かんだ時、ぱっと館内の照明が点灯した。
どきどきした気分で、絵の展示スペースに目をやる。
「大丈夫だ! 絵は無事です」
思わずあげた警備員の声に、客たちは一斉に“神秘の降誕”に目を向け、ほっと息をついた。
なぁんだ。無事だったのか
ちょっと期待をはずされて、キースは苦い笑いを浮かべた。絵画泥棒の現場に居合わせたなんて話が本当なら、絵描き仲間の中ではかなりの自慢になるのにな。ほっとしたけど、がっかりもした。そんな微妙な気持ちで、”神秘の降誕”が展示してある宗教画のブースに目をやった時、
何だ……あの男?
キースは、別の宗教画の前に佇む、黒ずくめの若い男の姿に眉をひそめた。
バイク用の黒いレザージャケットにブーツ。髪が亜麻色でなかったら闇の中に溶け込んでしまいそうな……絵を鑑賞しに来たにしては随分、不釣合いな格好。それに、その男の周りの空気だけがやけに重い。
……が、その時、
「さあ、電気もついたし、みんな、もう帰りましょ」
いつの間にか絵画ガイドを差し置き、生徒たちを先導しはじめたミリーが声をあげた。
「ち、ちょっと待て。まだ、ほとんど“絵”らしい“絵”は見てないだろ」
「いいのよ。もう飽きちゃった」
「おいっ!」
自分だけを残して、とっとと館を出てゆく生徒の一団。あせって、女教師レイチェルの方を見てみると……彼女も涼しい顔で彼らの後をついてゆく。
鑑賞ガイドって……そりゃあ、こんなんで250ポンドもらえるなら、ぼろいアルバイトだけど……
こいつら……うさん臭すぎるぞ!
キースは、はあ……とため息をついて、先ほどまでミリーたちが見ていた“無名画家の風景画”に目をやった。
その瞬間、
何いィィ!!
あまりの衝撃で心臓が口から飛び出しそうな気分になった。
「俺の絵!!」
“無名画家の風景画”はそこにはなかった。その位置にあったのは、彼の露店でミリーが250ポンドで買っていった、
“キースの風景画”だったのだ。
「な、何で俺の絵がこんな所に!」
まさに晴天の霹靂。キースは、どきどきと辺りを見渡した。
“神秘の降誕”の方に気をとられて、ま、まだ、誰も気づいてないみたいだ。
警備員がやってくる前に、早く出て行かないと、これは、かなりヤバい……。
あまり急ぎすぎても、不自然かもしれない。そろりそろりと忍び足で展示ホールを後にする。こんな状況の中に、自分の大事な作品を置いてゆくのは忍びなかった。けれども、
ごめん。俺の絵!
出口あたりで、キースは、もう一度、自分の風景画に目をやり、それから脱兎のごとく駆け出した。
* *
翌朝、大聖堂に近いカフェテラスで、広げた新聞にすっぽり顔を隠しながら、キースはコーヒーをすすっていた。ミリーが彼に支払った250ポンドは女教師に返してしまったし、バイト料ももらえぬままに帰ってきて、結局、財布の中身は寒いままだ。
とんでもない、誕生日。そう、今日は俺の17回目の誕生日。でも、もうそんな事はどうでもよくなってしまっていた。今日のタブロイド紙の地方版の一面は、数日前のロンドンの殺人事件なんかじゃなくて……
「聖堂美術館ですりかえられた謎の風景画。作者は誰……」
声を殺して、そばに座っているパトラッシュに新聞の内容を読み上げる。
「昨日、聖堂美術館で盗まれたとみられる複製画の後に残されていた、作者不詳の風景画に注目が集まっている。捜査本部は、“何故犯人が、複製画を狙ったのか”という疑問とともに、この残された風景画が事件解決の重要な鍵を握っているとの認識を深め……あああ、本当にこれは、マジにヤバい」
あの絵の作者って……一番の容疑者は俺か?
「どうしよう、どうしたらいいんだ? パトラッシュ」
犬に相談したって面倒みてくれるわけでもないが、とりあえず、そう言ってみた。だって、このままだと本当にフランダースの犬みたく、悲劇の最後を迎えてしまいそうだ。
すると、その時
くわんっ!
と、パトラッシュが一声ないて、キースの膝元を口で噛んで引っ張った。
「え?」
くわんっ!
何だ? 俺に一緒に来いって言ってるのか
キースがその言葉を声にする前に、パトラッシュはもう走り出していた。
「ちょ、ちょっと、待てよ!」
駆けてゆく一匹と一人。その行き先は……
ピーターバロ・シティ・アカデミア。
“僕は見つけたんだよ。
すべての謎はそこにある!“
と、パトラッシュが言ったかどうかは、定かではないが、
それでも、この17歳の誕生日に、キース・L・ヴァンベルトの運命の輪は、確実に違う方向に回りだしていたのだった。
* *
「パトラッシュ、ここって、あの学校の裏じゃないか?」
延々と続く赤レンガの壁。裏手といっても、ピーターバロ・シティ・アカデミアの建物は豪華の一言につきる。だが、キースは鼻先に感じたかすかな香りに、おや? と顔をしかめた。
油絵具の臭い?
彼にとっては、おなじみの香りが壁の向こうから流れてくる。その時、横にいたパトラッシュが、前足でレンガ壁をぼかんと殴ったのだ。すると、あろうことか、壁の一部がいとも簡単に崩れ落ちたではないか。
「おいっ! 壁を壊すなよっ」
そう言ってみたものの、キースは、まじまじと目の前に都合よく出来上がった“出入り口……のような穴”を見つめた。
この豪華な建物の壁が犬のパンチごときで壊れるわけがないじゃないか。
この建物、あの先生、そしてクソ生意気な生徒たち。何もかもが怪しすぎるぞ……畜生! おまけに、わざとらしく作られたこの穴は、何なんだよ。
パトラッシュのくるくるした瞳が、キースに語りかけてくる。
“行こう! 真実を見つけたら、きっと何かが変わるから”
* *
見えない糸にひかれるように、キースとパトラッシュはレンガ壁の穴を通り、学校の敷地内へと入り込んでいった。入ってすぐの場所に、これがまた、下りてください。とばかりに備えられた“地下への階段”が見えてきた。
「行くよ、行きゃあいいんだろうが」
半ばやけくそになって、キースはパトラッシュを伴い、その階段を下りていった。
地下室……?
先ほど嗅いだ、油絵具の香りが漂ってくる。そして、その部屋の扉を開いた時、
「この部屋! ……一体、何なんだよ!」
部屋の中の壁という壁……どちらを見ても、絵、絵、絵!
相当な広さがあるにもかかわらず、地下室の部屋の壁にはおびただしい数の絵画が掛けられている。
おずおずと部屋に入ると、キースは壁に掛かった絵に目をやった。
「ピカソのサインがある……こっちは、ゴッホ? でも、これは……」
また、つんと鼻についてきた油絵具の香り。
その瞬間、キースははっと、目を見開き、部屋中に掛けられた絵をぐるりと見渡した。ところ狭しと壁に貼られた肖像画たちの瞳が、視線を返すように物珍しげに若い侵入者を見下ろしている。
古い絵から、こんなに油絵具の香りがするものか……。という事は、
「贋作! この絵、全部、ニセモノか!?」
驚きすぎて、もう、言葉が出てこない。その時、
「失礼ね。ちゃんと本物も混じっているわよ」
部屋の扉の向こうから、聞き覚えのある、アルトな声が響いてきた。
女教師、レイチェル。
豊満なボディにぴったりフィットしたスーツに身をつつみ、髪と同じの褐色の瞳が、眼鏡の向こうで意味深に微笑んでいる。
「ピーターバロ・シティ・アカデミアにようこそ。ミリーの気まぐれのおかげで、あなたに会えて本当に良かったわ」
「会えて良かった? あんたの台詞の意味がさっぱりわかんないよ。俺はただの売れない絵描きだぞ」
すると、女教師はにこやかに答えた。
「ミリーが、聖堂美術館で、すり替えたあなたの風景画、えらく評判になっているわよ。名うての画商が、どうしても手に入れたいと続々と手をあげている。目下の時価は2万ポンド(約340万円)」
「え? 2万……」
「もちろん、闇での取引だけど。だって、もうプレミア付きだもの。反響の大きさに警察が犯人逮捕の手がかりになるって、あなたの絵、あのまま聖堂美術館に展示される事になったのよ」
そう言って、レイチェルはタブロイド版の新聞をキースに差し出した。
“評判の謎の風景画、聖堂美術館に展示を続行!”
作者は天才? はたまた、美術窃盗団か!
「……で、物は相談だけど」
驚いて二の句がつげないキースに、女教師は有無を言わさず提案する。
「あなた、ここで絵を描かない? 超豪華なアトリエを用意するわ。契約しましょう。ピーターバロ・シティ・アカデミアの専属画家として」
何だか頭の中が真っ白になってしまった。
俺の絵が2万ポンド? 聖堂美術館に展示? ……おまけに専属画家?
その時、
くわんっ。
パトラッシュが一声、鳴いた。
すると、飛び出してしまったキースの心が、やっと体の中にもどってきた。ふぅと息を吐き出してみる。騙されるもんか、こいつらロクな奴らじゃない。
「契約とかより、聖堂美術館の絵を盗んだのはお前たちだな。まず、その事を説明しろよ。何故、“神秘の降誕”を狙わずに“複製画”を盗んだ? それに、俺の絵とすり替えたのはどういう理由だ」
キースの追求にも、レイチェルは、淡々とした態度を崩さない。
「絵のすり替えは、単なるミリーの気まぐれだって言ったでしょ。それにね、あれは“複製画”なんかじゃない。れっきしとした有名画家が描いた本物の絵よ。本当の価値もわからない馬鹿な収集家たちが、バブルの泡に乗せられて買いあさった数々の美術品、その中に混ざり込んでいた逸品。“神秘の降誕”なんかより、ずっと優れた作品なのよ」
「……」
言葉が出せない青年にたたみかけるように、女教師は言う。
「私たちの目的は、そんな隠れた作品を探し出して、本当の価値でこの世に送り出す事。もちろん、あなたのような埋もれてしまっている才能を見出す事もその一つよ」
「……なら、きちんと競売にでも出て、買い取ってしまえばいいじゃないか! 盗む必要なんかないだろ!」
ほほ……とレイチェルは挑戦的な笑みを浮かべた。
「そんなの、ちっとも儲からないじゃない。ここのご子息、ご令嬢の親にも、かなり有名な画商が沢山いるの。欲しい物には手段を選ばない収集家もね、ただし、彼らの目は本物。ミリーなんかもその一人。あの審美眼には驚いたわ。あなたの才能をちゃんと見極めたんだから」
何だよ、それ! うまい事言ってても、結局は金が欲しくて絵を盗んでる窃盗グループじゃないかよ。おまけに生徒たちまで巻き込んでの俗悪集団じゃないか。
「契約なんかお断りだ! どうせ、あそこに掛けてある贋作作りを手伝わせようって腹なんだろ。誰がそんな犯罪の片棒を担ぐもんか!」
怒りにまかせて、そうは言ったものの、相手は犯罪集団だ。キースはかなり不安になってきてしまった。
俺、ちゃんと家に帰れるのか。簀巻きにされて、テムズ川に放り込まれちまうんじゃないのか……。
ところが、
「それは、残念。うちと契約すれば、十分な契約金と豪華なアトリエ、欧州の美術界への強いコネクション、それに……」
セクシー女教師は、意味深な笑みを浮かべながら若手画家に近づき、その完璧ボディを見せつけながら彼の耳元に囁く。
「女の子だって、選び放題だっていうのに」
キースは、ちらりと彼女の胸元を見てから、とことん気色悪そうな顔をする。すると、レイチェルはむっと眉尻をあげて、
「お帰りなんだったら、きちんと正門から出て! 穴のあいた裏門から、小汚い男が出てゆくなんて、それこそ警察に怪しまれかねないんだから」
訝しげに部屋を出てゆくキースとパトラッシュ。その背中越しに聞こえてきた女教師の声。
「言っておきますけどね。あの風景画の窃盗に関しては、あなたはもう第一の容疑者なのよ。今の話を誰にしたって疑われるのはあなたなの」
この女、超ムカつく!
キースは、その気持ちをたたきつけるように、力まかせに部屋のドアをバタンと閉めた。
「気がかわったら何時でも、どうぞ」
ドアの向こうから響いてくる高らかな笑い声。畜生! 馬鹿にしやがって。それでも、今の自分に何ができる?
なす術のない悔しさに、キースはわざと靴音を大きくたてながら、地下室から正面玄関へと続く階段を駆け上がっていった。
くわん、くわんっ!
ちょっと待てよと言いたげに、パトラッシュが、その後を追う。足元にからまってくるふわふわした毛並みを振り切り、キースがホールから正面玄関に出ようとした時、
「あっ、パトラッシュ! 鑑賞ガイドもいる」
見たことのある生徒の集団が、彼らを見つけてわらわらと集まってきた。その先頭にいるのは、キースの風景画を250ポンドで買った……
ミルドレッド……通称ミリー。
「お兄さん、レイチェルに会った? シティ・アカデミアと契約した?」
小悪魔的だけど、超絶に可愛い笑みを浮かべて近づいてくる少女に、キースは、あからさまに嫌な表情を浮かべた。そして、
「そんなもん知るか!」
「……」
一瞬の沈黙。けれども、ミリーは、
「やっぱりね……」
うるうると潤んだ目をキースに向ける。今までとはうって変わって、清純派っぽく迫ってくる少女の雰囲気に、若手画家はちょっとたじろいでしまった。
「な、何だよ。急に態度を変えんなよ……えっと……俺、お前に悪いことでもした?」
焦って、その顔をそっと覗き込む。
「ねぇ、そんな顔されると、俺が困るんだよ」
戸惑ったような琥珀色の瞳に見つめられて、少女は、思わず、後ずさってしまった。その距離、2メートル弱。高まった心臓の鼓動を彼に聞かれてしまいそうだったからだ。
……が、次の瞬間、
「お願い、この学院に来て! どうしてもお兄さんの助けが必要なの」
突然、まくしたててきたミルドレッドの台詞に、キースは、何がどうなっているのか、さっぱりわからない。その時、別の生徒が、言葉を挟んできた。
「日の目を見ない作品や作家を世の中に出す。それには、僕らも賛成なんだ。けれども、レイチェルたちみたいに、金儲けのために作品を集めるのは嫌だ。そんな作品に、僕らの親たちまでが、目の色を変えて飛びついてゆくっていうのにも、もう、うんざりなんだ。僕らは、この学園を変えたい! あのレイチェルを追い出して、僕たちだけのピータバロ・シティ・アカデミアを作り直したいんだよ」
それに付け加えて、ミリーも言った。
「けど、その目的のためにはお金がいっぱいいるのよ。私たちはレイチェルたちや親とは違ったルートでお金をためたい。そして、いつかは聖堂美術館を貸しきって収集した作品を、みんなに見せてあげたい。わかるでしょ? お兄さんの絵はいいわよ。これからもっと価値が上がるわ」
おい、おい。結局はそこかよ。
キースはちょっと複雑な顔をした。自分の絵を褒めてくれるのは嬉しいが、資金集めのために、俺に絵を描けっていうのか。
すると、彼の心を読み取ったように、ミルドレッドーが、
「誤解しないで。お金のためだけに、こんな話をしているわけじゃないの。私、大聖堂通りの露店の絵って、すごく好き。あの中にだって世に出せば認められる作品は沢山ある。けれども、レイチェルや画商たちの集めたがってる絵は、埋もれているといったって、すでに価値が認められている絵だけなんだもの。私ね、いつも遠くから、お兄さんたちを眺めていたの。大聖堂通りの画家たちは皆、活気があって賑やかで……あの人たちなら、何か力になってくれるんじゃないかと。だって、私たちはしょせん、子供だもの。誰か大人の手をかりないと絶対、レイチェルたちにはかなわない。ピータバロ・シティ・アカデミアを変えたいの、だから、ここに来て! 私たちに力を貸して」
こいつって12歳くらいだろ? 小学生にしては、えらく小賢しい事を言うと、キースは、真剣な眼差しの少女を呆れたように見た。そういえば、ここの学校って学力の方でも相当に高いんだっけ。
でも、私たちは、しょせん子供って言われても……俺だって、今日、17歳になったばかりなんだぞ。そりゃ、露店の仲間たちはあれでけっこう頼りになるけど。
それでも……、
「そんな話、簡単に“うん”とは言えない。とにかく、俺は家に帰りたいんだ!」
キースは冷たくそう言って、くるりと踵を返した。
ミリーや他の生徒たちの視線が、背中に痛い。生意気なだけかと思っていたシティ・アカデミアの生徒たちの直向な姿に、このまま帰ってしまうのは、後ろめたいような気分がする。けれども、
「パトラッシュ、俺には関係ない事だよな」
キースはパトラッシュに念を押すようにそう言うと、足早に歩を進め、ピータバロ・シティ・アカデミアの正門を後にするのだった。
* *
翌日、キースは聖堂美術館に展示された自分の絵の前に立っていた。
画家を目指して田舎から出てきた俺が、このピータバロの町に着いた時に最初に描いた、自分でもお気に入りの風景画。
何か変な感じだ。だって、俺の夢はいつか聖堂美術館に自分の絵が飾られて、みんなに認めてもらう事だった……それなのに、夢が実現した今は、それがちっとも嬉しくない。
実際のところ、俺の夢って何だったんだ? 金が欲しかったのか、名声か?
分らない……俺は自分で自分の気持ちが、さっぱりわからなくなってしまった。
その時だった。
「おい、キース、この風景画、絵画窃盗犯が描いた絵だって、えらい騒ぎになってるじゃないか」
背後から急にかけられた声に、びくんと身をちぢ込ませる。振り返ってみると、見知った大聖堂通りの仲間が、気がかりな顔で立っていた。
「……でも、この絵って、お前が描いた絵だよな。なあ、一体、何があったんだ?」
「しっ!!」
キースは慌てて男を黙らせると、まじまじとその顔を眺めた。髪はぼさばさの髭面で、上着は油絵具まみれ。けれども、気を使う必要もないし、そばにいてくれると妙に頼りになるというか……そう、あの聖堂美術館通りの露店主たちって、そういう奴らばかりなんだ。すると、にわかにシテイ・アカデミアで聞いたミリーの言葉が頭に浮かんできた。
“……遠くからいつも見ていたの。あの人たちなら、何か力になってくれるんじゃないかと。
ピータバロ・シティ・アカデミアを変えたいの、だから、ここに来て! 私たちに力を貸して”
俺がやりたかった事、これからやれる事……それって
地位? 名声? ……ううん、そうじゃなくて……。
はっと目を見開くと、突然、キースは身をひるがえし、男に言った。
「今は何も聞かないで。でも、後で理由を話したら、俺についてきてくれるか? 納得がいったらでいいんだ! 無理にとは言わないから」
「え……そりゃ、仲間の頼みなら……でも、一体、何なんだ」
男がその台詞を言う前に、もうキースは駆け出していた。
「パトラッシュ、急げ!」
くわん、くわんっと鳴きながら、帆走する相棒に声をはずませて言う。
迷いが、霧が晴れるように消えてゆく。
絵の価値もわからない収集家に褒められて、自分の絵が売れたって嬉しいはずがないじゃないか! 俺は高値で売るために絵を描きたいんじゃない。絵が好きだ、本当に好きだから、そんな気持ちをみんなに伝えたかっただけなんだ。
ピーターバロ・シティ・アカデミアを変えるんだ! そして、いつかは聖堂美術館を貸しきって、日の目をみない作品やうずもれた才能を、みんなに見せてあげたい。
息を弾ませ駆けながら、キースは少し人の悪い笑みを浮べた。
でも、ミリーたちはやっぱり子供だ。俺の絵だけで、そんな資金が作れるものか。あの小ずるいレイチェルに対抗するには、きれい事ばかりを言ってはいられない。
「お前もついてきてくれるよな。しばらくは、泥泥した世界に足を突っ込んで、夢や理想なんて甘い言葉は言ってられないかもしれないけど、俺は大丈夫だから……」
豪勢な作りのピータバロ・シティ・アカデミアの校門の前で、キースはパトラッシュの頭をくしゃくしゃとなぜた。
それでも、いつかは、夢を現実にする。今はまだ、できないけど……でも、その分は
“好きなだけ描けばいいんだから。自分のキャンパスの中に”
* *
「門を開けますから、少しお待ちになって下さい」
キースが、名前を告げると、シティ・アカデミアの門番はレイチェルから彼の名前を聞いていたらしく、すぐに事務所から外に出てきた。
「この門を入ったら、もう、後戻りはできないんだろうな」
脳裏に貧乏でも楽しかった露店での生活が浮かんでは消えてゆく。すると、不意のあの小生意気なミルドレッドの顔が、その映像の中に紛れ込んできた。
「おぃおい、何であの子が出てくるんだよ……」
キースはちょっと焦ってしまった。泣かせてしまったことへの罪悪感もあった。それを誤魔化すために、そばにいたパトラッシュを撫ぜようと、彼の毛並みに手を伸ばした時、
後ろの通りを、黒塗りのバイクが通り過ぎていったのだ。
「えっ」
キースは、そのライダーの姿に一瞬、気をとられた。
黒いレザージャケット……?
まさか、あれって、王宮美術館で見た黒ずくめの男?
けれども、豪勢な造りの門が、彼と相棒のパトラッシュのために開かれた時、その姿は彼の記憶の片隅へと押しやられてしまった。
門の向こうに聳え立つ超豪華な名門校の建物。
ふぅと一つ息を吐く。それから、キースは、彼の足元にぴたりと寄り添った中型犬に言った。
「行こう! 真実を見つけたら、きっと何かが変わるから」
そして、これが後に、若い芸術家の育成に力を注ぎ、欧州美術界を手広く牛耳ることになるピータパロ・シティ・アカデミア総帥の優秀な片腕となり、画家にして聖堂美術館館長となる男、“キース・L・ヴァンベルト”が正式にこの学院の門を通り抜けた第一歩だったのだ。
* *
以前にシリーズ物で投稿していた作品を一本化して、イラストや修正も加えつつ、連載形式で再投稿してゆくつもりです。より面白い作品を目指して頑張ってます。たくさんの人に読んでもらえばよいのですが。