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World_Connection_Online  作者: 銭子
1章―BEGINING―
8/44

8th-Inferiority

今回は少し視点をずらしてのお話となります。

今日は金曜日。世間は慌ただしく動き、どこか週末にソワソワする。

そんな一日。

それは学生であっても変わりはない。


ガリっ、と歯噛みするのは、一臣希梗。そんな金曜日の最後の授業を上の空で聞いている。

時々教室にかかる壁時計に目を遣っては、恨めしげな表情を作る。今日はそれをずっと繰り返していた。


彼女は、自他共に認める重度のゲーマーだ。彼女が熱中し、やりこんだゲームは学校中の誰をとっても彼女にかなわない。



だが、彼女が未だ納得のいかないゲームがある。

《World Connection Online》-通称《WCO》。今年一…いや、「始めてVRを投入したゲーム」という意味では、ゲーム史でもトップクラスのビッグタイトルだ。

彼女は忙しい学校生活の合間を縫ってβテストを経験し、その中でかなり名前も売れ、一目置かれるプレイヤーになった。

にもかかわらず、いざ迎えた本サービスではランキングの真ん中にとどまっている。理由は単純、『プレイ時間の絶対的な少なさ』だ。

学校生活によりゲームにのめり込めず、思うようなレベリングがこなせなかったのが大きかった。レベル差は開き、きっと近いうちに同じ場所でのレベリングも難しくなるだろう。


だがそれ以上に、いつか仲間から戦力外と通告されてしまう気がして、それが希梗にとってたまらなく不安だった。


希梗は歯噛みする。この学校生活が一日に占める割合は大きい。7月の末になればその制約は解かれるのだが、それまでにあまりに離されれば、休みのスパートをかけても間に合わない。


キーンコーンカーン…


漸く放課を告げるチャイムが鳴り響く。

そのチャイムと同時に掛けられた号令が終わるか終わらないかのうちに、彼女は手に提げて持つタイプの鞄を手にとって教室を飛び出した。きっとこのまま、自宅の部屋に戻るまでノンストップで走り続けていくことは、想像に難くない。


「希梗ー…って、もう帰ったのかアイツ」

クラスメイトの吉川瑞記(よしかわみずき)やや呆れ声でつぶやく。

「あの健脚があれば我らが陸上部も強くなるのになぁ…勿体無い」

「梗ちゃんとにかくゲーム廃人だしねぇ…」

苦笑とともに近づいて来たのは同じくクラスメイトの沙乃楓(さのかえで)

「ま、それはそれでいいけどなー。アイツのキャラな訳だし」

「じゃあ、今日は私と帰りましょうか?梗ちゃんの代わりではありませんけど…」

「ん、いいね!暇だしどっか寄ってくか!」





✽     ✽     ✽





一臣希梗はひた走る。人の目を気にかけることもなく、自宅を目指す。

それほど遠くもない距離だ、まもなくたどり着いた。


家に入って、キッチンの方にそっと目を向ければ、兄である藤丸の食べたと思しき皿が洗浄機に入れてあった。

今日は母が早く帰ってくるらしいので、夕食の準備は任せよう。そう判断し、そのまま2階の自分の部屋へ

階段を駆け上がる。


「サービス開始から3日…。ギルドのメンバーはもう二次職の人も出てきてるのに…」

呟きながら、《Casino》の電源を入れ、起動を今か今かと待つ。


そう言って、希梗‐は《WCO》にログインした。場所は、前日ログアウトした宿屋。

「みんなはもう…ログインしてるよね」

《WCO》の世界に飛び込んだ彼女が真っ先にしたのは、フレンドの確認。βテスト時代からの仲間は、既にかなりのハイレベルプレイヤーになっていた。無論、既にログインをしていたようだ。


「…もう私がみんなに追いつくには、ひとつしかない。」


「スキルスロットの空きは…1枠あったよね。ホントは色々入れたいので悩んでたんだけど…この際仕方ない!」

ステータスウィンドウを弄りながら、独り言というには大きめの声で口にする。

「さてと……スキル屋はどこかなー?」



スキル屋。

文字通りプレイヤーの使うスキルを購入できる商店だ。ちなみに現在まででプレイヤーがスキル屋を経営できるジョブは発見されていないため、店員はすべてNPCだ。

ただ、《WCO》ではレベルアップでもスキルを獲得できる上、ひとつのスキルの購入に必要な金額も馬鹿にならないので、装備等より優先してスキルを求めるプレイヤーは少ない。


「すみませーん、注文いいですかー?」

そんなスキル屋に、希梗がわざわざ足を向けたのは当然理由があった。

「あいよ、嬢ちゃん。で、何をお探しだい?」

店主が姿を現す。

「…【鷹目】あるかな?」

「鷹目だな、あいよ!」

威勢のいい掛け声とともに、店主から黄色い珠が渡される。スキルの力を実体化させたオブジェクトだ。

希梗は代金を支払い、店をあとにする。



「…はぁー、ついに買っちゃったかー。…ここまで来たら後戻りはできないね。」

そう言って、希梗は珠を使用する。胸に押し当てると、その珠は姿を消し、それと同時に『スキル【鷹目】を獲得しました』というメッセージが現れる。


「…よし、今日から実践だね。夜のmobって強いのかなー…?」

希梗はどこか吹っ切れたような、それでいて楽しげな声で呟いた。

遅くなりましたーーー!

本当に申し訳ありません。個人的にリアルが忙しかったというのが言い訳ですが、投稿したくてうずうずしていました(笑

明日、明後日あたりまで連続投稿を予定していますので、お待ちください


3/20 かなり大幅な変更を行いました。

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