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World_Connection_Online  作者: 銭子
1章―BEGINING―
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7th-Gunpowder

「で、嬢ちゃん。この道から来たってことは『死に戻り』でもしたのかい?」


「まぁそんなところだ。…ところで、どうしてこんなところに店を?人なんてそうそう通らないだろうに」

そういって、トウガンはあたりを見渡す。木々が鬱蒼と生い茂り、まだ日が沈みきっていないにも関わらず既にかなり暗い。不気味とも取れる雰囲気で、どう考えても人が好き好んで入ってきそうにはない場所だった。


「でも、嬢ちゃんは来ただろう」

「まぁそりゃそうだが…って、そうか」

トウガンもある可能性に思い至り、ハッとした表情になる。

「どうやら分かったみたいだね。そう、ここに来る()の殆どは『死に戻り』の連中さ。死んだ奴らは悔しい悔しいっていっていろいろ買って行ってくれんのさ」

ヒヒッ、とヒグマは意地悪そうに笑った。


「…商売上手なのはわかったが、ロクなもん扱ってないのにぼったくってるとかないよな?」

「そこは当然。商人にとって、一番大事なのは信頼とリピーターのお金だぜ?」

「本当の一番はどっちだ!?」

つい声を大きくしてツッコミを入れるトウガンに、ヒグマは薄い笑みを浮かべたままだ。


「で、どうする?何か買っていくかい?」

「そうだな…《科学者》の実験に使えそうな素材アイテムってあるか?」

「《科学者》って…嬢ちゃん、ヤっちまったクチかい?ご愁傷様だね。…で、素材アイテムか。多分《錬金術師》と同じだろうから、このへんかな?」

そう言って、ヒグマはトレードウィンドウにいくつかのアイテムを提示する。


「…よくもまぁ最序盤でここまで集めたもんだな」

「βからの商人は、秘密の人脈と情報があるのさ」

「ふーん……お、これとか良いかな」

その後、数分悩んだ末、トウガンはいくつかのアイテムにチェックを入れ、それらを購入した。


「毎度ありぃ!」

「おう、また頼む」

「……"毎度あり"って"毎度来ていただきありがとうございます"って意味だろ?一見さんにいう言葉じゃないような…」

「突然ヘンな自問自答はじめんな!」



最初から最後まで、謎の多い商人だった。





✽     ✽     ✽





露天を出て、トウガンが目指すのは〈研究所〉。早速ヒグマから買ったアイテムを試そうとした。

もうすでに空は暗くなっていて、太陽は見えない。

《WCO》の夜のデメリットは大きい。視野が狭くなり、スキルの命中率もさがる。その上、敵mobの凶暴性も増す。

【鷹目】など、夜のデメリットを打ち消すスキルがあれば別だが、普通のプレイヤーは夜になれば街に戻るのが基本だ。現に、東西南の方向の門からは次々とプレイヤーが入ってきている。



「さて、実験していくかなっと」

何度か使った作業台。今その台には様々なアイテムが転がっていた。

「まぁまず作るアイテムは決まってるんだけどな。」

そう言ってトウガンは転がるいくつかのアイテムに手を伸ばす。



[木の枝]


「うん、実にシンプルだ。」

そう言って、何本かの木の枝を、あらかじめ火をつけていた竈に投げ入れる。だんだんとその姿は黒ずんでいき、あるタイミングでその名称を変えた。


[木炭]


「とりあえずは成功。」

ふぅ、とトウガンは軽く溜息を吐く。


「さて次!」


[木炭]

[硫黄塊]

[硝石]



「…ま、どうせ《科学者》やるなら、世界三大発明くらい作ってみたいもんだろ」


作業工程は、

1.木炭と硫黄塊をすりつぶす。粉々に

2.二つを混ぜ合わせる

3.水を多少加えて、硝石も混ぜ合わせる

4.加工台のプレス機で圧搾

5.適度に水分を飛ばしつつ、適当な大きさに砕く




「完成、かな?」

その3種アイテムの混合物は、トウガンの思い描いていたものに、その名称を変えていた。



[火薬]



「非常にネーミングが安易でつまらんな…」

トウガンはやや苦い笑みをこぼす。

「ま、これで《科学者》にも攻撃手段ができたわけだ。…まぁこれとは別に『着火』の工程が残ってんだけどな」

当然だが、火薬は所詮火薬であり、薬の域を超えない。が、それはトウガンにとって織り込み済みであった。

「【符生成】。対象は【術符・(ともしび)】」

トウガンがレベル5になった際に習得したスキル、【術符・灯】。覚えてすぐに作ろうとしたものの、ステータス不足によるのか、うまく線をなぞれず作成に成功しなかった。

しかし、今のトウガンの目には符に現れた淡い光の模様は、十分に鮮明だった。なぞっていくと、【与符・剛力】よりも多くのMPを消費している感覚を持った。


「よし、ここまではOK。問題はこれから先のことをシステムが認めてくれるかどうかだ。」

そう言うと、トウガンはその完成した符を火薬に(・ ・ ・)押し当てた(・ ・ ・ ・ ・)

すると、触れていた符は、地面に設置した時のように淡く光って姿を消した。


「…見込み通りだな。…そんじゃ、量産していきますか」


結果、


[火薬(火+10)] ×20

火+10というのは火属性ダメージが10%プラスされるという意味らしい。そもそも[火薬]の攻撃属性は爆発属性なので、2属性攻撃アイテム、という扱いだ。


「ま、これくらいで十分かな。試し撃ち、といきたいところだが、外はもう暗いし……明日でいいか」

トウガンは一通りの方針を固めた。そしてそのままもう一種類の実験に移る。


「次は回復アイテムといきますか。」

そういって、また作業台にいくつかのアイテムを並べる。


[HPポーション(小)]

[ブルースライムの体内液]

[カーネの肝]

[リンの実]


「…さっきのでかなり集中持ってかれてるけど、なんとかなるだろ」


工程手順は、

1.ポーションを3本くらい熱して水分を蒸発、回復成分の固体を取り出す

2.リンの実を半分に切り、半分はジューサーのような機材で液状になるまで粉砕

3.残りは形が残る程度に細かく砕く。そしてポーションの粉と混ぜ合わせる。

4.2と3の完成品を、ブルースライムの体内液に投入、温めて粉を完全に溶かす

5.カーネの肝をよく洗って獣臭さを取ったあと、4の完成品に漬け込む


「…手間が、かかる」

思い切り疲れた、という表情でトウガンはつぶやく。

「ただ、これは手間の価値はある、と思っていいんじゃないか?」



[活力水]

(肝の漬け込み期間で効果上昇)

HPを70%回復 2分間STR・VIT上昇



「量産…て言いたいが、疲れた。……一旦落ちるか」

リアルでの時間は12:30を回っていた。

「とりあえず飯食ってこよう…」

そう言って、トウガン、藤丸は現実世界に意識を戻した―――

火薬のつくり方は結構現実に準拠してます

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