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World_Connection_Online  作者: 銭子
4章―TURNING―
44/44

43rd-others[1]

今回はちょっと番外編です。

 世界初のVRゲームとして名を馳せる≪World Connection Online≫。


 そのゲームの中で最強の集団として君臨するのは、美麗のハルバード使いアルトリア率いる≪KoRT≫であった。彼女らはゲーム上のレベルやステータスはもちろん、個のプレイヤースキルを見ても最高水準の戦闘力である。アルトリア一人によるワンマンチームではなく、それぞれが他のギルドにいれば圧倒的なエースとして看板を張れるような、そういったプレイヤーの集まりなのだ。


 これは、そんな彼女たちの日常である。





✽     ✽     ✽





「アルトリア、レイラから依頼が届いています。ウエストフェニラ大草原のキングカーネの皮を30以上採取してきてほしいとのことです」

「レイラ……。レイラって誰だっけ?」

「……贔屓の生産職の名前くらい覚えておいてください。レイラ商会のオーナーですよ」




 生産職のなかでも、戦闘と呼ばれるものは存在する。ただあくまでそれは戦闘職におけるフィールド探索やボス討伐のような、戦闘職の沽券に関わるようなものではない。

 言うなれば『決闘』――純粋な力比べだ。


 それが、生産職の決闘の場、『商場争い』である。商人としての己の持つ人脈や商品を存分に生かし、定められた期間の売上を競うというものだ。


 生産職同士の合意の元、彼らは戦士の『決闘』よろしくしのぎを削って争いあう。賭けているのは己の店舗。勝利したプレイヤーは、敗北したプレイヤーを傘下に収め、そのプレイヤーが商売で得る|ディア≪金≫の一部を受け取れるようになる『商会』を設立することができる。

 敗北したプレイヤーも一定期間を過ぎた後ならばまた『商場争い』を挑むことができ、勝利すれば独立となる。


 ≪WCO≫の中でも随一の規模を誇るレイラ商会は、アルトリアたち≪KoRT≫との強いパイプを持っているのだ。


「あー……思い出したし。でもキングカーネくらい、私が行く必要なんてあるのかな?」

「……アルトリアは我々と別行動をしすぎです。確かにキングカーネならば余程の集団に囲まれない限り倒すのは容易ですが、アルトリアを含めた連携も確認したいところです。必ずついてきてください」

「……しょーがないし。でも私だって怠けてる訳じゃないんだよ?|アイツ≪・・・≫に勝つために武器の熟練度を上げないと……」


 上目遣いで言い訳を始めたアルトリアを睨むようにして無言で黙らせたのは、≪KoRT≫のサブマスター、トリスだ。

 アルトリアの戦闘に関する技術や能力は他の追随を許さないが、ギルドの運営に向いているかといえば決してそうではない。むしろ、気乗りしないことにはとにかくやる気を見せないその性格は、運営という雑事とは水と油のようなものだ。

 

 それを影で支えるのは、サブマスターのトリスであった。


 ギルド≪KoRT≫を、ベータテストを含めた草創期から見ていたプレイヤー曰く、「アルトリアが存在する時点で≪KoRT≫の全ギルド中最強は揺らがないが、もしトリスがここから抜ければこのギルドは瓦解する」

 それだけの地位を、トリスは築き上げてきたのだ。


「……分かってるって。……もー、女の子からならそんな厳しい目線もご褒美だけど、トリスから貰っても怖いだけだし」

「……心底、なんでこんな変態がギルマスをやっているのか疑問に思いますね」


 そうやって恨みがましそうに見るトリスを華麗に無視して、アルトリアはウエストフェニラ大草原へ足を向けるのだった。





✽     ✽     ✽





 アルトリアとトリスがフィールドに出ると、≪KoRT≫の他のメンバーは既に揃っていた。

 最初に声をかけたのは、パーティの中でも一回り小さいにも拘らず、身の丈より遥かに大きい大剣を背負う少女。

「あ、今日はアルトリアも行くんだね」

「トリスに頼まれたからしょーがなく、だし」


 |狂戦士≪バーサーカー≫のキキョウが喜色を浮かべるのに対し、アルトリアは呆れたように諸手を挙げた。


「珍しいのには変わりないけどな」

「ボス戦にしか参加しないものだと思っていたぞ、アルトリア」

「……明日、雪が降る、かも」

「雪よか槍じゃろ、降ってくんのは」

「にしても、ホント珍しー」


「……散々な言いようだし」

「まぁ自業自得ですね」


 アルトリアの存在に気が付いた他のメンバーも、それぞれ反応を示した。


 身長ほどの大きさのタワーシールドを持つ|守護者≪ガーディアン≫のスクード。

 豪奢な空色のローブを身にまとう魔導官≪マギシスタ≫のシエル。

 落ち着いた色合いのメイド服を着こなす|従者長≪バトルリーダー≫のエリス。

 白い道着に金の刺繍が入った黒い帯を締める|拳術狂≪ジャンクラッカー≫のジン。

 真紅のローブにつばの広い三角帽子をかぶった|紅魔導士≪スカーレット≫のリリン。



 数多くのプレイヤーを擁する≪KoRT≫でも、俗に『一軍』と称される最強メンバー達だ。

 

「ボス戦でもないのにこのメンバーが揃うのって久しぶりじゃない?」

「ギルドホームでのんびりするときにはアルトリアいるけど、ジンさんはいないもんねー」

「若いのが語らってる中に親父がいたら迷惑じゃろ、お前ら」


 敵のポップするフィールドだというのにこの和気藹々とした雰囲気を醸し出せるのは、≪KoRT≫の一軍であるという自信でもあり、『最強』アルトリアがいるという安心感でもある。実際、もしも彼女たちを取り囲むように敵mobが突然ポップしたとしても、即座に各々の役割を全うして、ほぼ無傷で勝利を収めるであろうことは疑う余地もない。

 会話が盛り上がってきたところで、トリスがパン、と手を叩いた。


「いつまでもギルドホームみたいなことしていないで、さっさと依頼の品を集めてしまいましょう。普段の雑魚mob狩りとは違ってアルトリアを含めた連携を確認です」


 はーい、と各所から間延びした返事が上がり、それにトリスが小さな溜息で返す。これもこのパーティの日常である。


「じゃ、ちゃっちゃと集めてしまおーか」

「よしっ!」

 アルトリアとキキョウが並んで走る。狙うは視界に小さく映るキングカーネの集団。

 気配を隠すつもりもないその突撃に、当然キングカーネは反応して迫り来る。


「……シッ!」

 全力でキングカーネの集団に向けて走る二人の後ろから、雨のような無数のナイフが追い抜いていき、向かってくるキングカーネの集団の先頭の数匹に突き刺さる。スキル【投擲】の派生スキル、【ダガーレイン】だ。|執事長≪バトルリーダー≫のジョブ固有スキル【メイドの嗜み】によって手持ちのナイフが途切れることはない。


「お先っ!」

 次いでキキョウが【ブースト】を使って一気にキングカーネの群れへと距離を詰め、ナイフで立ち往生していた先頭集団を大剣の横薙ぎで蹴散らした。

「やるじゃん!」

 ニヤリと微笑んだアルトリアは、統制の乱れた群れの隙を手に持つ巨大なハルバードで的確に抉っていく。キングカーネは悲痛な叫びと共に何匹もHPを散らしていった。


「さっすがアルトリア!」

「キキョウも飛び出しが随分早くなってて驚いたし。スピードのある|狂戦士≪バーサーカー≫なんてちょっと手に負えなさそーだし」


ニカニカと笑いあう二人の後ろから声がかかる。


「速いわお前ら。少しは老体を労われい」

「盾より先に出られちゃ、俺の意味がないんだが」


 呆れ顔なのは二人の近接職に先を越されたジンとスクードだ。誰よりも敵に近づくこと、敵と味方の間に入ることを仕事にしているだけに、この戦果には納得がいっていないようだった。


「まーまー、次の集団を見つけたら初手は譲ってあげるからさ」

「ま、このレベルならスクードの守りはいらないかなっ!」

「何を!?」


「おい……そうも言ってられなさそうだ」


 言い争う4人を傍目に、冷静に前を見つめていたシエルが小さく呟いた。

 彼女の視線の先には――――三体のオーガカイザーがいた。


 オーガカイザー。

 ウエストフィニラ大草原において、自然ポップする敵対mobでは間違いなく最悪の敵。身長は4メートルを優に超え、人外の腕の長さと膂力を生かした高い攻撃力と広い攻撃範囲はそれだけで驚異。さらには弱点と言える箇所もなく、非常にしぶとい。正に難敵中の難敵である。


「おいおい……あのオーガカイザーが三体とか、冗談きついぜ」

「アルトリアが来おって槍でも降るかと思ったら……もっと酷いモンが来たみたいじゃの」

「そう言いながら……口元、笑ってるぞ?」


 スクードとジンは、シエルに指摘されて自覚する。この強敵を前に笑っているという事実を。


「アルトリア」

「……なにさ?」

「手出し無用じゃ」

「……とーぜんっ」


 アルトリアの返事にまたニヤリと笑ってから、スクードとジンは弾かれたように二手に分かれて各々の獲物へ飛びかかる。


「シエル、俺の後ろで堂々と詠唱してろ。いちばん長いのでいいぜ」

「言われなくても。あのしぶとい化け物を一撃でやるのはアレ以外じゃ厳しいからな」


 その返答に満足げに頷き、スクードはオーガカイザーの足元に入り込んだ。


「はあっ!」

 盾装備の基本スキル【シールドバッシュ】を発動し、スキルエフェクトで青白く光ったタワーシールドを構えて突撃する。


「グオォ!?」

その直後、2トンはあろうかというオーガカイザーの巨体が、一瞬確かに|浮いた≪・・・≫。それに困惑したのか、オーガカイザーはよろけるように2,3歩下がった。


「どうした!お前の力はそんなもんなのか?」

「ブ……ブモゥァ!!!!!」

 スクードの【挑発】によって、オーガカイザーの敵意は完全に彼に向いた。後ろで無防備に詠唱を唱えるシエルは、もう視界に入っていない。


「ガァッ!」

 オーガカイザーが、ヒトの身長もある太く長い腕を振り下ろす。まともに当たれば盾職のスクードでもHPの7割を削られる威力を持つ一撃を、彼は盾を構えずに待つ。眼光は鋭く腕の動きを追いながら、盾を構えることは無い。

 そして彼に腕が当たるか否かの瞬間、スクードは身の丈ほどもあるタワーシールドを腕と彼の体の間に即座に滑り込ませた。直後、キィン、と明瞭な音が響いて、オーガカイザーは仰け反っていた。それはスキル【ジャストガード】が発動したエフェクト音だ。発動タイミングはシビアだが、攻撃に対して同時に盾を構えることによって威力を100%カットする。


「グ、グォッ!?」

 訳が分からないといったような顔をするオーガカイザー。スクードはその隙を見逃さない。すぐさま盾を体の正面で構え、【シールドバッシュ】を再度発動する。体勢を崩している中で受けたその一撃によって、オーガカイザーはズゥン、と地鳴りをさせながら地面に仰向けに倒れた。


「もう十分だろ?」

「ああ、万事問題ない」


 答えたシエルの背後には、神話に現れる悪魔のように形取られた、禍々しい紫の渦が浮かんでいた。


「【ヘイルジャッジメント】」


 紫の悪魔はその言葉を合図に、オーガカイザーの巨体を包み込むように蝕んでいき……気づけば消滅していた。



「ふぅ……流石の大技だな、ソレ」

「βテストと違って今回はあまり戦闘向きじゃないんだ。次にはリリンを連れて行ってほしいものだな」

「了解。……さて、ジンさんはどーしてっかなっと。……ん?」


 スクードは目を凝らすようにジンの姿を捉えた。

 そして呟く。



「――――あれ、ピンチじゃね?」

何度も名前の出てくるギルド・KoRTのメンバー顔見せみたいなつもりです

チラッと触れてますが、あくまで彼女たちは一軍であって、KoRTはかなり大規模なギルドでメンバー数でもゲーム内随一です。1パーティ分のメンバーしかいないというわけではありません


9/1 読み返したらだいぶ矛盾見つけた&教えていただいたので修正

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