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World_Connection_Online  作者: 銭子
2章-FIGHTING-
25/44

25th-Re:boss

 翌日。


「次は攻撃力不足の解消か…」


 【与符・剛力】があるとは言え、それは一時的な攻撃力上昇でしかない。そもそもボスとの戦闘中に使っている隙があるかも疑問だ。

 故に、目下取り急ぐべき課題でもあった。



 まず考えたこと。

『符を武器に付与すること』


 アイテムである[火薬]に【術符・灯】を付与できたことを考えると、これは可能であろうと思われた。

 しかし、結果は無残なものだった。

 それでも、付与すること自体には成功していた。そしてその符の効果も発動し、威力も増大しているようだった。


 ただ、そこまでだった。

 符の効果はその一撃で消滅して剣は只の剣に戻り、更に耐久値が異常な勢いで減っていた。


 ボス戦には攻撃力上昇も必要だが、長期戦となるためスタミナも必要不可欠。この方法を採用するわけには行かなかった。


「これじゃなぁ…。ま、どこかで使えるかもしれないし知っておいても損はないことか」



 次に考えたこと。

『武器の強化』


 単純明快、一番オーソドックスで確実な方法だろう。トウガンに限らず、RPGでの鉄則だ。

 しかし、この方法はむしろトウガンに当てはまらない。それはデメリットスキル【儀礼剣】のせいだ。


 確認するに、【儀礼剣】の補正はSTR-50。現状、剣を装備してもSTRは5を数えるばかりである。これでは多少質の良い剣を装備しても焼け石に水としか言い様がない。


 ちなみに補足すれば、符の攻撃はINT依存、【与符・剛力】などのバフ系はMEN依存で、更に[火薬]などのアイテムは固定ダメージなため、トウガンの主な戦闘手段にSTRはそれほど大きなウェイトは占めていない。


「いっそ素手で攻撃してやろうかコイツ…」

 

 一人苦い笑いで呟く。当然【儀礼剣】のデメリットは剣を装備しなければ発動しないので、素手であれば関係はない。それでもリーチの面など不安要素も多いので現状は現実的ではないのだが。



 最後に、

『より強力で使いやすいアイテムを発明する』


 これはそうそう達成できそうにない。いや、トウガンには思い浮かぶアイデアはあるのだが、それを実行に起こすには知識が足りなかった。


「レシピにあるアイテムを窯に突っ込めば完成するような簡単な仕様なら良かったんだけどな」


 ぼそりと嫌味のように呟く。

 レシピがないどころか、《科学者》の絶対数がないことは大きなマイナスだった。MMOゲームは多人数で情報を共有しあうことが楽しみでもあるのだ。共有し合う仲間が少ないのは、それだけで厳しい。



「…つまるところ、攻撃力アップは手詰まりってことか」


 はぁ、と溜息をつきながらトウガンは呟いた。


 しかし、トウガンは既に【招来符】という強力な新戦力を得ている。これは大きいことだと彼女自身自覚していた。

 現状ソロで戦うトウガンにとって、手数の増加は何よりも必要なことだったからだ。手数が増えれば、戦術にも幅ができる。


「…ま、順調に器用貧乏の道を進んでるとも言えるわけだが」


 自嘲しながら、そんな風にぼやいた。





✽     ✽     ✽





「さてリベンジだ」


 西の草原、ボス部屋の前。

 トウガンは再び現れた。結局進展したのは【招来符】の扱いと【呪符・盲目】だけだが、それを踏まえて作戦を練り直した。勝利の公算は十分にあった。


 幸い、今日はボス部屋の前に順番を待つパーティはいなかった。当然ながらキス魔も、ストーカーもいない。


 ギィ、と部屋の扉を開く。中の様子は前回と全く同じで、ヤツは入り口と対角線上にいた。



「ウルアァァァァァァッッッッ!!!」

「ハッ…!同じ脅しにそう何度もかかるかよ!」


 同様に吠え猛った銀狼は、スッと地面に飛び降りる。完全に同じ動きであるあたり、やはりゲームシステムなのだと再認識させられる。


(とすると、この先の行動も同じだな)


 トウガンはゴクリと喉を鳴らし、警戒レベルを一気に引き上げた。

 そして、対抗策であるアイテムを握り締める。


「来るッ!」

「ウオォォォォォォォン!!!」



 システム的硬直。その直前に、トウガンは黒い石のようなアイテムを放り投げた。


ダーーーーンッッ!!


 大きな爆発音と共に、黒煙が舞い上がる。

 視界が完全に塗りつぶされた直後―――煙を掻き分けて現れる銀狼を見た。


 爆発の衝撃で、銀狼の動きは1秒にも満たない程度だが鈍っていた。結果、トウガンには本来生じるはずのない余裕が発生していた。


「ハッ!」


 スタンが解除された直後、トウガンは同じように横っ飛びで突撃を回避しようとする。前回は避けきれずに衝突し、ステージの端まで弾き飛ばされたが、今回は違う。ギリギリのところで回避に成功し、転がるように距離をとったあと跳ね起きた。

 銀狼は標的を見失い、トウガンのいた場所の真後ろの壁に激突した。ダメージを負った様子には見えないが、ただでさえ鋭い眼光がさらに恨みを湛えたようにも見えた。


 それをトウガンはフン、と鼻を鳴らして応じる。


「あんまり思い通りにいくと思うなよ!さあリベンジだ」

「ウオォォォォォォォォォン!!!!」



 そこからは、再び前回と同様の展開になった。

 銀狼の突撃を紙一重で躱しつつ、すれ違いざまに切りつける。そして確実に直撃を避けられる位置では罠を設置する。

 しかし、トウガンにはもう一枚手札がある。開幕の突撃にも使用した[火薬]。回避が難しいタイミングで銀狼の正面に投擲することで、銀狼のHPを削りつつ、突撃のタイミングを遅らせることに繋がっていた。


 しかし[火薬]が与えるダメージも雀の涙。蓄積ダメージはそれなりにはなっているはずだが、決め手に欠ける。剣による斬撃は【儀礼剣】でダメージ量が大幅に減少していて、[火薬]以上に心もとない威力である。

 つまり、トウガンにとってこの状況が続くのはジリ貧でしかない。そして、銀狼には『決め技』がある。決着は、遠くない。

 だが、トウガンに焦りの色は無かった。


「…そろそろか?」


 躱しながら、徐々に壁際に追い込まれていくのを、トウガンは冷静に認識していた。突撃が行われた回数は、実に30回を数える。


「来るか!?」


 トウガンは睨み()る。

 その視線の先には、ちょうど対角線上の部屋の端に立つ、銀狼の姿があった。


 『決め技』が来る。



「ウォォォォォォォォォン!!!!!!」

「…っ!」


 強制スタン。これは突撃が当たるまで自身を拘束し続ける。


「…いや違う。突撃が当たるはずの(・・・)時間まで継続するんだ」


 ダンッ!と銀狼の強烈な踏み込みが聞こえた。恐るべきスピードで迫り来る。


「この攻撃だけは、お前の突撃経路はシステムで決められてるんだもんな…。」


 追い詰められた状況で、体の自由がないこの状況で、それでもトウガンは不敵に笑う。




「待ってたんだよ!」




 直後、銀狼が派手に転倒した。

 ちょうど部屋の中央付近。地面から生えた2本の手に前足を掴まれバランスを崩した銀狼は、そのまま前転をしながら横倒しになった。


「…決まりだ、【招来符・子鬼】」


 2枚の符を取り出しながら発したスキル。

 同時に計6匹のゴブリンが、下卑た笑いで銀狼を取り囲んだ。


「…この光景はオマエを哀れに思わないこともないが、悪いな。」


 トウガンは僅かに表情を曇らせる。が、それまでだった。


 トウガン自身に攻撃力が足りないなら、誰かが攻撃すればいい。

 『怪物のように凄まじい膂力で棍棒を振り回す』ような奴に、ピッタリな役回りだった。



「グァァァァァァァァッッ!??」


 銀狼は、西の草原のボスは、大きな断末魔を上げて無数のポリゴンに消えた。





✽     ✽     ✽





 銀狼の最大の驚異は、『決め技』にある。

 発動されれば回避はほぼ不可能で、しかもかなりの高威力。一般的なHPとVIT値を持っているはずのトウガンでさえ、一撃で8割近くのHPを持って行かれて死に戻ったほどだ。


 しかし、最大の弱点もそこにあるとトウガンは踏んだ。


 ボスは上級AI持ちだ。罠を仕掛ければ見抜かれて、そこは絶対に踏もうとしない。

 それはいくら突撃が直線に見えても、その直線上に罠がある場合は位置を変えるほどだった。


 しかし、プレイヤーがある条件を満たした時にのみ発動する『決め技』は、その限りではなかった。


 その条件は、銀狼が一定数の突撃をしていることと、プレイヤーが壁際にいること。

 トウガンはそれを推測して、自分自身を壁際まで誘導したのだ。


 そして『決め技』の特徴はもう一つある。

 プレイヤーの位置と対角線上の部屋の端から突撃を繰り出す、ということだ。


 対角線上を突撃するのであれば、必ず通らなければならない点が、一箇所ある。


 部屋の中央だ。


 後は簡単。序盤のうちに多少ダメージを受けてでも罠を部屋の中央に置いて、後は『決め技』が来るまで逃げ続けてタイミングを見て壁際に行けばいいだけだ。


 罠には【呪符・麻痺】も考えたが、それでは突撃が止まるだけで攻撃につながらない。ならば、ということで採用したのが【招来符・泥手】だった。


 そして予想通り中央で銀狼を転倒させることに成功、討伐と相成ったわけだ。





✽     ✽     ✽




『ボス討伐に成功しました。おめでとうございます』

『初ボス撃破報酬として、〈王都〉を開放します』

『ボスソロ討伐報酬として、【空スキル】を贈ります』



『ドロップ:[イン・ヴォルグの毛皮]*10 [イン・ヴォルグの牙]*10 [イン・ヴォルグの爪]*5 [イン・ヴォルグの心臓]*1』


『レベルが24にアップしました』

『【与符・柔靭】を獲得しました』




これで第2章は終了となります。

そして、大筋にですがエンディングが決まりました。読者皆々様の期待に添える形であるかどうかは、正直自信がありませんが、なんとか完結までこぎつけたいと思います

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