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World_Connection_Online  作者: 銭子
2章-FIGHTING-
24/44

24th-Goblin[2]

纏っている雰囲気は、先程までとは別物。

下卑た笑いを漏らすことなく、射抜くようにトウガンを見据えている。


「「……」」

「…」


沈黙。

静寂が辺りを支配する。一気に高まる緊張感は、ここがVR空間であることを忘れさせるほどだ。


「「!」」


先に動いたのは二匹のゴブリン。

それぞれの得物、曲刀と棍棒をそれぞれ上段に構え、一気に距離を詰めるとその膂力に任せて勢いよく振り下ろす。その動作に洗練されたものはないが、怪物として持つ高い筋力が放つ攻撃は、生半可な剣士のそれより強い威力が篭っている。


「っ!」


それを察知したトウガンは剣で受け止めるのを断念し、バックステップで距離をおく。


だが、その動作は悪手だった。

ゴブリンはその行動を読んでいた。いや、その行動をとっても仕留められるように為された攻撃だった。


曲刀を持つゴブリンは直前までトウガンがいた場所を力いっぱい切りつけ、それは虚しく空を切った。

だが棍棒を持つゴブリンは違った。振り下ろしかけた得物を途中で止め、退転したトウガン目掛けて今度こそ力いっぱい殴りつけたのだ。


「ぐっ…!」


トウガンは防御が間に合わず腹に打撃をもろに受けた。その衝撃で4メートルほど吹き飛ばされ、HPゲージも3割以上減少した。


トウガンが苦痛で顔を歪めたのと同時、攻撃に成功した二匹のゴブリンは再びニヤリと下卑た表情を取り戻した。

自分たちが本気を出せば人間ごとき、そう思っているかのような表情。


「全く……3Dポリゴン技術の成長ってのも、行き過ぎるとここまでウザったらしくなるもんかね」


苦笑とともにそんな愚痴を吐きながら、トウガンは立ち上がった。

まだ攻撃を受けた箇所に不快感が残るが、戦えないほどではない。そもそも、行動不能になるほどのダメージをVRとはいえ体に与えるのはゲーム的にも有り得ないことだろう。


それを見たゴブリンたちは、呆れたような、興が削がれたような表情でトウガンを見た。


「本当に……コロコロと表情が変わるやつだなぁおい!」

最後は叫ぶように言って、剣を構える。

ゴブリンもまた同じように得物を振るう。


まず迫るのは曲刀。

先程と同じく人外の力が篭っていたのは感じるが、剣筋はなんとなく読めている。技術が無い故に直線的で、トウガンにはそれだけで読みやすかった。


「っ!」


曲刀の刃とトウガンの剣の刃。それをできるだけ水平に当て、剣の腹で曲刀を押す(・・)


刃物はその構造上、鍔競り合いなど垂直方向の力のぶつけ合いならば所有者の筋力が試される。しかし、水平方向の衝撃には対処が難しい。当然、垂直方向に当てるよりもタイミングが難しいため、それを狙って決めるのも至難の業。

西の草原で、突撃してくるカーネを剣でいなし続けたトウガンだからこそ出来た芸当だった。


「キッ!?」


自分の斬撃を軽々と躱されたことに、驚愕と怒りが混ざったような表情を浮かべるゴブリン。それに小さく満足を得るトウガンだが、敵はもう一匹いる。


「キァァ!」


迫り来る棍棒。しかもそれは今までの上段からの一撃ではなく、下から跳ね上げるように振るわれたものだった。


「しまった!」


咄嗟に、トウガンは剣を横に構えて受け止める姿勢をとってしまった。

しかし、棍棒の威力は下段からでも衰えてはいなかったようで、あっさりと剣は弾き飛ばされ、トウガンの手から離れていった。


カァン、とかなり後方で音が響く。どうやら戦闘中に拾いに行くのは無理そうな距離。予備の剣はストレージに入っているが、易々と取り出させてはくれないだろう。


「……チッ!」


大きく舌打ちし、バックステップを重ねて少しでも距離を置こうとした。そしてあわよくば剣の落ちた位置まで―――


「「キヒヒヒヒャハハァア!!」」


もう万策尽きたようだ。後は俺たちがこの人間を嬲るだけだ――――。





「そう思ってるんだろうな…」




トウガンは、急停止する。

曲刀を持ったゴブリンは、それを怪訝に思った。


得物は無い。よしんば隠して持っていても、それを出す隙を与えるつもりもない。

なら、何故ヤツは止まった―――?


そして相方を見た。奇策があるとするなら、やはり協力して攻め込むべきだ、と。


しかし、最も様子がおかしいのは、棍棒を持ったゴブリンだった。

盲人のように、覚束無い足取りで、フラフラと動く。そこに何の警戒の色もなかった。


「ッ!?」


ここでハッとして人間―トウガンに視線を戻すが、既に遅きに逸していた。



「漸く掛かったかよ。釣り疲れて死ぬところだっただろうが」


曲刀を持ったゴブリンは、満面の笑みで右手に小さな火球を持った一人の人間が、仲間のもとに走って行くのを、ただ呆然と眺めていることしかできなかった。


「【術符・灯】」


言うとともに、ただ立ち尽くすゴブリンは火の柱となって消えた。

それは、一匹目が死んだ時とほぼ同じような光景だった。



曲刀を持つゴブリンは意識を戻す。いや、仲間の死に漸く気づき、仇に強烈な殺意を向けた。

しかしこの数瞬の間にトウガンはストレージから剣を装備し、さらに【与符・剛力】までかけ直していた。

そんな万全のトウガンに対してゴブリンが怒り狂って放つ斬撃は、当然彼女に届くはずもなく、敢え無く倒されてしまった。




✽     ✽     ✽





『子鬼との契約が完了しました。【招来符・子鬼】が使用可能になりました』


そのメッセージとともに、トウガンから一気に力が抜けた。既に景色は真っ白な無機質な空間から〈始まりの街〉郊外に戻ってきていた。


「っはー……、危なかった」


そう、心からの安堵の声を漏らすのだった。




あくまで、トウガンが行ったのは罠の運用である。

しかし、戦闘最初に仕掛けた罠を、ゴブリンたちはなかなか踏まなかった。


上級AIとでも言うのだろうか。いや、ゴブリンたちが最終的に罠を踏んだのに対して、ボスである銀狼は一切罠に掛からなかったことを考えると、『半上級AI』というのが相応しかろう。


それゆえ、トウガンの仕掛けた罠は、戦闘の最後の最後まで発動していなかった。そしてバックステップや突撃を戦闘の中で繰り返すうち、都合の良いことにゴブリンの最後の踏み込みが罠に当たった、というだけだった。


それでも、罠にかけるためわざと剣を吹き飛ばさせて誘いをかけたりはしていたのが、結果的には功を奏した。


【呪符・盲目】


使ったのは、この符。

予想通り相手の視界を奪う効果を持っていたのは良かったが、肝心の効果持続時間が分からなかったので不安要素も多かった。


しかし、近接戦闘において一瞬でも生じた隙は、取り返しのつかないほど大きな意味を持つ。今回は更に突然の暗闇というパニックも手伝って、予想以上に大きな成果を上げてくれた。



「ともかく、第一段階はクリア。次は…【泥手】か」


先程までの戦闘を思いだし思わず顔を顰めたが、実際の戦闘自体は大した苦労はなかった。


攻撃するとき以外は地面に潜り攻撃を受け付けないという厄介な性質を持っていたが、地面から飛び出してくるのには法則があり行動パターンが単純だったのが幸いだった。

無警戒を装って泥手をおびき出し、出てくると予想される箇所に【術符・礫】を設置。あとは泥手の攻撃と同時に符が発動し、泥手は内側から石礫に貫かれて絶命(?)した。




連戦を終えてHPやMPという数値的なものだけでなく、トウガン―藤丸自身の精神力も相当磨り減っていたため、トウガンはそのまま研究所に入ってログアウトした。

完全に伏線を仕込み忘れました…なんたる失敗。

一応前話に伏線を入れ直しましたが、なんだかなぁ…申し訳ありません

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