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World_Connection_Online  作者: 銭子
2章-FIGHTING-
22/44

22nd-boss[2]

攻勢に打って出たトウガンだったが、思うように攻めきれないでいた。


原因は攻撃力不足。


新スキルの【儀礼剣】は【宝剣】のデメリットをさらに重くしたものらしく、STRのマイナス補正がよりひどくなったようだ。割合ではなく絶対的な数値でのマイナス補正であるため、レベルが上がるごとに相対的にデメリットが軽くなってしまうのを防ぐランクアップらしかった。


「つっても、この状況じゃ余計なお世話だ…っ!」


烈風のような速さで移動する銀狼を目で追い、的確に躱しながらトウガンは毒づく。


さっきからすれ違いざまに攻撃を入れる方法でダメージを取っているものの、一撃の威力が小さいせいで銀狼の動きを鈍らせるほどではない。

かといって【与符・剛力】でダメージを増やせば剣の耐久値が減りやすくなる。ソロである以上戦いながら武器を変えることは隙の大きさから考えてほぼ不可能であるため、やはり余りにもリスキーだ。


また、戦力として期待していた符の罠としての運用だが、それもなかなかに難しい状況だった。


まず罠を仕掛ける動作自体が隙だ。一瞬でも目を離せばすぐに咬み殺されてしまうのではないか、と思えるほど、逼迫(ひっぱく)した戦闘が続いている。


それでも1度か2度ほど攻撃を覚悟して罠をおいたが、どうやらボスにはフィールドmobより上級のAIで動いているらしく、意図的に罠を避けるような行動を取る。


「クソ…こりゃ詰んでるんじゃないか…?」


走り回って上がってきた息を整えながら、小さく呟く。

打開策は見いだせない。

そんな中でトウガンは、



「ま、それならそれで、足掻けるだけ足掻くだけだな」



軽い調子で、限りなくフラットに、そう呟いた。

そして、前方の銀狼を睨みつけた。




なぜ、今まで息つく暇もなく走り回っていたのに、彼女が止まって息を整えられたのか。

当然、銀狼が攻撃の手を緩めたからだ。

とはいえ、それもわずか数瞬のこと。されど、数瞬だ。今までの間断ない攻めからすれば、一見不自然とも取れる。


しかし、彼女はそれを不自然と思わない。

大概、こういうボス級の敵には、所謂『決め技』がある。

それを念頭において考えれば、この空白は、『決め技』へのタメ(・・)であると気づけるはずだ。


であれば、その『決め技』とは何か。

予想する。

彼女と銀狼の位置関係、今までの戦いの中での行動パターン、このボス部屋の構造……


得られる情報全てから、『決め技』を推察する。


トウガンと銀狼とはボス部屋の端と端に位置する。そして銀狼は直線で限りなく加速し、この部屋は一切のギミックや地形のない、平坦な部屋だ。



「…ほぼ間違いない。

ヤツの『決め技』は開幕と同じ。……強制スタンからの超高速での突撃だ」


直後、


「ウォォォォォォォォォン!!!!!!」

「…っ!」


予想通り、しかし不可避の遠吠えが耳に届く。そして予想通り、体が硬直した。


そして、

予想通りの高速突撃を真正面から受けて、トウガンのHPは0になった。





✽     ✽     ✽





「やっぱダメか…」


あっさりと言えばあっさりと、トウガンは始まりの街へ死に戻った。


「足掻けるだけ足掻く、とか言ったが、何もできなかったな」


そう苦笑しつつ、トウガンは石碑の前から立ち去った。



彼女はその足で研究所に赴き、今回の戦闘を考察する。

まだ改善できる点が残っていることが分かった上でのボス戦であったので、負けることは十分に想定できていた。むしろ、ボスに関する情報をできるだけ得ることが今回の目的だったと言ってもよかった。


RPGで、ボスと一度戦った上で詰めるべき戦力差を明確に把握し、最小限の努力でボスを倒すスタイル、というのを想像できるだろうか。そう考えれば、それはトウガンの性格に一致する。


「まず、一番の問題はヤツの『決め技』なんだよな…。スピードが速いのも既に厄介だが、最初のスタンがかなり厳しい…」


 開幕の一撃については、トウガンは何となく対処の方法を思いついていた。完全に回避できるかは出たとこ勝負だが、勝ちの公算はあると考えていた。

 だが最期の『決め技』は、最初の突撃と同じようでいて微妙に違う。そしてその微妙な違いのせいで、開幕への対処と同じ方法で対処ができない。

 その明確な違いとは、攻撃が当たるまでスタンが解けな(・ ・ ・)かった( ・ ・ ・)ことだ。

 あれでは手の出しようが無い。攻撃が始まってからでは遅いのだ。


「タンクとかいればアレも耐えられるのか…?比較できる対象がいないから分からないが」


トウガンはふと友人のスクードの顔が思い浮かんだが、まだ先に考えることが残っていた。それを解決してからでも遅くはない。


「じゃあそれは取り敢えず置いておくとして…、次はヤツのスピードか」


トウガンの攻撃は、銀狼の素早さによってほとんどダメージとなっていなかった。フィールドmobのカーネとは比較にならない銀狼の瞬足を、トウガンは何とか抑えなければ勝つ見込みは薄い。


「まぁ細かいトコを除けば問題点はこんなもんか。…ま、まずはすぐに出来る範囲でいろいろ準備してみるか」


トウガンは呟き、外へ出る。

ソロでのボス討伐など、並の戦闘職よりバトルジャンキーな面もあるものの、既に彼の本分は《科学者》で、取る行動は“実験”という目的に終始する。

トライアンドエラー、準備と実践によってボスのソロ討伐は可能であろうと考えていた。


しかし、トウガンがふとリアルの時間を確認すると、もう深夜2時を回っていた。

夏休みとは言え、昼夜逆転などは妹の希梗が許してはくれまい。


「言ってもアイツは、夏休み入れば余裕で昼夜逆転しそうだけどな…」


その時の様子を想像して苦笑を漏らしつつ、トウガンはログアウトのコマンドを押した。

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