16th-strongest
若干(?)ガールズラブ描写が含まれる気がします。
書いたことないのでどうやったらうまくいくんですかね…?
「ま、これだけあれば目当てのスキルは手に入ってそうだが…」
一通りカーネを蹴散らしたあと、安全地帯で一息つきながら呟く。
「どうせ街に戻ったら暫くフィールドに出るつもりもないし、レベルは上げられるだけ上げとくか」
さらっとニート宣言をしつつ、再び草原に繰り出した。前回苦しんだ剣の耐久不足は剣を複数個ストレージに備えることでカバーする。
しばらく後。
「どこだここ…?」
カーネが大量発生していた丈の高い草原地帯を抜けると、不自然なまでに草が切り揃った場に出た。
いや、それよりもよほど不自然な点を目にし、トウガンは呆然としていた。
黒曜石のような、黒色をベースにした鉱物で作られた石室があった。
緑豊かな自然風景に突然現れた、真っ黒い石室。
「…怪しすぎる」
トウガンは素直にそう思った。
彼女も伊達に長くゲーマーをしていない。が、そうでなくともこの風景を怪しく思わないことはないだろう。
違いは何かといえば、ゲーマーは好奇心の塊だということだ。彼女も例に漏れず、怪しいと思いながらも怖気づいたりせず、むしろ嬉々として近づいていった。
しかし、そこには先客がいた。
5人の女性プレイヤーと1人の男性プレイヤー。遠い上に、円陣を組むように立っているせいで、一人ひとりの顔は見えない。
近づこうか躊躇っていると、その集団のうちの一人の女性がトウガンに気づき、走り寄ってきた。
女騎士、というのが一番ふさわしいだろう。ゲーム序盤ながらも、かなり重厚そうな鎧を着て、長い金髪だけが自由にふわふわと動く。
「もしかして、君もこれからボスに挑むつもりだったのかな?でも悪いね、アタシ達が先みたいだし」
「…あ、ここボス部屋だったのか。道理で雰囲気が違うわけだ」
特徴的な喋り方だな、と思いながら会話に応じる。
「…!へー。探索スキルも使わずにここまで来たわけね。さっきの爆発も君のよーだし、君も、なかなか面白そーだし」
ニカっと八重歯を見せながら笑う。
「…名前は?」
続けて尋ねられ、トウガンははそれに答える。
「トウガンだ」
「ふん、そーか。アタシはアルトリアっていうんだけど、名前くらいは知ってるかもだし」
そう言われ、トウガンは即座に頭の中を浚う。
「…あ、最初のボスを倒したって巷で噂の、アルトリアか」
そう言いながらも、トウガンは違和感を感じていた。「最強」とまで言われる、彼女が思い浮かべていた人物像と、目の前にいるプレイヤーを比べても、うまく一致できないでいたのだ。
この間延びした語り口調が、隙の多いヤツだと認識させていた。
「ふふ、ご明察ー。君の名前も覚えておこーか。ここまで単騎で駆けるなんて、正気の沙汰じゃないし」
「ひどい言い草だな…。まぁ最強プレイヤーに名前を覚えられるなんて光栄なことだが」
「ははー。…あ、そうだ。アタシの名前を知っててくれた君に…」
―――完全に油断していた、という他ない。想像よりも隙の多い「最強」アルトリアに対し、危険極まりないことに、無意識に警戒を外していた。
だから、簡単に接近を許した。
「…っ!アルトリア!!」
一番早く気がついたのは、彼女のパーティの唯一の男性。彼が叫ぶも、遅かった。
「ご褒美、だよ♪」
アルトリアは、トウガンの唇を奪う。
「―――――――――」
シンとした空気が場を包む。
トウガンの思考が再開するのに2秒、彼女が事態を把握するのに2秒、そこから目を見開くまでは、1秒もなかった。
「~~~~~~~~~っ!!!???」
大声で叫ぼうとしたものの、口が塞がれて声にならない悲鳴が響く。
ようやく気がついたアルトリアのパーティメンバーは、またやったのかと言わんばかりに呆れ顔でその景色を見ていた。
やっとのことでアルトリアを引き剥がしたトウガンは荒い息で叫ぶ。
「なっ…な、なななななななああ!!??」
「言葉になってないですよ…トウガンさん、でしたっけ?ウチのアルトリアが失礼しました。」
丁寧な言葉遣いで、彼女のパーティメンバーの女性の一人が話しかける。
この時のトウガンの精神状態では気付く由もないことだったが、この女性はメイド服であった。他のメンバーがフル装備とも言える中で、一人だけ異色な雰囲気だ。
「失礼なことがあるか。アタシが認める実力を持ち、アタシのことを知っててくれたあのコへの軽いスキンシップだし」
「欧米に行けばハグは挨拶とかそういう次元じゃねーぞ!思いっきり舌突っ込んできただろ!?」
思い切り怒鳴り散らすトウガンだが、アルトリアはそれをどこ吹く風とばかりに、むしろ今も肉食獣のような獰猛な視線をトウガンに送る。
「本当にすみません…。彼女は強そうな女性を見ると、あの、襲ってしまうんです」
「まー、そのボーイッシュな口調が好みかな。強気な男の娘ってのも、アリだし」
「絶っっ対ナシだ!」
数分間、トウガンがアルトリアを睨み、アルトリアがトウガンを狙い、メイド服がなんとか仲裁しようとする構図が続いた。
「アルトリア、そろそろ入りませんとボス討伐後に夜になっている可能性が出てきます。茶番はそれくらいにして早く行きましょう」
最初に叫んで以降、静観してきた男性が、アルトリアに声をかけた。
「…茶番という言い方が気に食わないけど、それもそーだし。しょうがない、今回は諦めるね。でも、いつでもアタシは君を狙っているんだし!」
「二度と現れんな!」
トウガンの怒声には応えず、アルトリアは石室の中に消えていった。
「…最強って、なんなんだ」
一気に静寂に包まれたフィールドで、トウガンは独り呟いた。




