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World_Connection_Online  作者: 銭子
1章―BEGINING―
13/44

13th-alchemist

翌日、藤丸は朝から《WCO》にログインしていた。


「…ここか」


ヒグマからのフレンドメールに添付されている地図を頼りに、たどり着いたところは一軒家だった。

赤レンガ造りの、洋風の小洒落た家だ。しかし隣の家は立派な数寄屋造りの邸宅が見え、この世界の混沌とした雰囲気は相変わらずだが。


その一軒家の屋根から生える煙突からは黒々とした煙が上がっては、一定時間で消える。



「《錬金術師》、ねぇ…」


そう、ここはヒグマから紹介された錬金術師の工房だ。トウガンは硫黄の精錬方法が結局思いつかず、専門家の手を借りることにしたのだ。


しかし、そのことを決めた中でも、彼女は錬金術師のことを「胡散臭い」、と思っていた。

それはあくまでリアルの世界での『錬金術師』の話で、このゲームにおいては圧倒的にマイナーな《科学者》が言えたことではないのだが。



呼び鈴がないので、コンコン、と扉を叩く。すると、常にもくもくと上がっていた煙突からの黒煙がピタリと途絶え、そして扉が開いた。


「いらっしゃい!こちら[錬金工房サラ]です、なにかご依頼でも?」

快活な発声、見事な営業スマイルだ。

「あ、あぁ。ヒグマっていう道具屋から紹介されてきたトウガンだ。話、通ってないか?」

トウガンは若干たじろぎながらも応答を口にする。

「あ、あなたがトウガンさんね。えぇ、彼から話は聞いてるわ。随分面白いことしてるみたいじゃない」


その女店主-サラというらしい-はトウガンを中に迎え入れながら挑戦的な笑みを浮かべた。

貪欲な向上心と、自身が見え隠れする笑顔だ。嫌いじゃない、とトウガンは思った。

奥へ続く廊下を、サラに先導されながら歩く。



「まぁ、自覚はないけどな」

「そ。自分の過小評価は損するわよ。実際、あの[活力水]だっけ?作ろうと思ったけど、アタシ達錬金術師には無理だっていう結論に至ったわ」


サラは両手を挙げてお手上げのポーズをとる。表情は心底残念そうだ。


「《調薬師》なら出来ると思って知り合いに頼んでも、なんでか無理だったらしいし…どういう条件なのかしらね?」


不意に振り返って、さっきまでとは違う蠱惑的な目で、上目遣い気味にトウガンを見つめる。


「悪いけど、俺にもわかんないな」

「…ちぇー。ま、それがホントかは分からないけど。流石に女の子にこんなことしても意味なかったかなー」


再び前を向いて、手をひらひらさせがなら歩き出す。


「…?」

トウガンは頭に疑問符を浮かべたまま、それについていった。




✽     ✽     ✽





「で、どういう依頼かしら?」

工房についたとき、サラが口を開いた。


「あぁ、この[硫黄]の精錬を頼みたいんだが」


そう言ってストレージから硫黄塊を取り出す。確かに、言われてみれば硫黄の代名詞とも言える黄色とは言い難く、黒褐色に近い。


「なるほど…そうね、純度の高い硫黄塊が欲しいなら、うちの店で買うか、素材持ち込みで精錬するかの二択ね。わかると思うけど、素材を持ってきてもらうほうが安いわ」


「なら、持ち込みで頼む。あぁそれと、作業の様子を見せてもらうことってできるか?」


「…別に構わないけど。見てどうするつもり?」

サラ目を開いて訝しげな声を出す。


「いや、俺の作業の参考にしようと思ってな」


「…参考になることなんてないと思うけど…ま、それくらいなお安い御用よ」


「助かる」




トウガンの目論みとしてはこんなことだった。

純度の高い硫黄塊を"精錬する"という作業工程。その方法は彼女には考えつかなかった。そしてその作業を行える《錬金術師》の仕事を見れば、作業の方法がわかるだろうと思った。

自分でそれ再現できるかは別としても、手がかりにはなるだろう、と。


しかし、



「な、待ってくれ!もう一度頼む!」

「またぁ!?そろそろ面倒なんだけど」

「素材は渡す!」


これで5回目だ。

最初は受け入れ難く呆然としたが、2回目以降は強い拒絶とともに抗議した。


「だっておかしいだろ!なんで炉に素材を突っ込んだだけで出来るんだよ!?」

「知らないわよ!そういうシステムなんだから文句は開発側に言ってよ!」



錬金術師の精錬は、至極単純な(・ ・ ・ ・ ・)ものだった。

素材を炉に入れる。一定時間の経過とともにそれを取り出せば、純度の高い物質の出来上がりだ。


トウガンは手渡された黄色い(・ ・ ・)硫黄を見て呆然とする。


実際の工程がこんなに単純なことはあるまい。彼女の言うように、システムの補助によるものだ。しかし、《科学者》の作業ではやたらと現実に則していることが多い。


「なるほど、地雷職と言われるわけだ…専門知識がなければまともに【実験】もできないってことだし…」


さらに、錬金術師には、「レシピ」なるものがあるらしい。一度精錬に成功した素材はそのレシピに記憶される。

記憶された精錬は、ついに「炉に入れる」という工程すら省くことができるという。当然、純度は落ちるが。


「………厄介だ」


トウガンは一言呟いて、呆然とした。

なんとか週1ペースに戻したいとことですが…努力します。


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