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World_Connection_Online  作者: 銭子
1章―BEGINING―
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10th-Negotiation

時系列は戻る―――。


リアルでの昼食を終えた藤丸は再び《WCO》にログインする。

意識はログアウトした研究室で覚醒した。


「さてと…まずコイツを試したいもんだが……」

そう言ってトウガンは火薬を手に取る。一つ一つはピンポン玉位の大きさだ。


「…外は夜か。とすると今試すのは厳しいか?」

そう、研究室の窓から外を見ると真っ暗であった。

リースとの狩りを終え、戻ったのがゲーム内時間で16時頃だったため、研究に熱中していた時間を考えれば妥当なところだろうか。


夜の狩りが難しい、というのはシエルから聞いていた。だからこそトウガンはmob相手に火薬を試すのを躊躇った。


「これからもっと研究を続けることを考えると、デスペナを食らうのは面倒だな」

《WCO》のデスペナルティは『全ステータスの半減』だ。

当然、正確な研究を行うために使われるDEX(器用さ)も低下するため、生産活動にも影響は少なくない。


トウガンは結局火薬の試し撃ちは後回しにし、もう一つの完成品を手にとった。


[活力水]


「…となるとこっちが先だな。気になるのはコイツの価値だが…ヒグマのとこにでも持って行ってみるか。





✽     ✽     ✽





「やぁまた会ったねぇ。トウガンちゃんも僕のお店のかねづ…リピーターになってくれたのかい?」

「欲望を隠す仮面くらいしっかり付けとけ!!」

「ははっ…」

先ほどと同じように意地悪げな笑みでトウガンのツッコミをいなす。


「…で、ホントはなんの用事なのかな?」

「あぁ、コレなんだが…」

そう言ってトウガンはアイテムストレージから[活力水]を取り出し、ヒグマに見せる。

それを目視した瞬間、彼は目の色を変えた。


それはまさに商人の目だ。


「…生成アイテムかな?」

「ああ。さっきまで作ってて、どれくらいの価値があるものなのか知りたくてな」

「ふーん……っ!?」


アイテムの効果を確認したタイミングだろうか。ヒグマが顔を強ばらせた。


「…?どうしたんだ」

「どうしたもなにも……現時点じゃ最高回復率だと思うよ?」

「そうなのか?…まぁいいか。で、もしコイツを買い取るとしたらいくらくらいになる?」


事の大きさに気づいていない様子のトウガンを軽く呆れた目で見ながら、ヒグマはなおも活力水を真剣に査定している。


「生産職ならもっと驚いたり喜んだりしてもいいと思うんだけど…。…そうだね、今のところだとオンリーワンでナンバーワン、そうすると…こんなもんかな」

そう言いながら、ヒグマは査定金額を電卓を模したようなアイテムに表示させる。ウィンドウを可視化すればいいものを、彼には本物志向なところがあるらしい。


しかし、トウガンにはそんなところを気にする余裕はなかった。



「おい、桁一つ間違ってないか?」



表示されていたのは…5000ディア。ちなみに材料費は100ディアくらいである。


「いやぁ?大真面目だよ。消耗品で大量生産できることを考えても、これが最低ラインかな」

「でもなぁ…これじゃぼったくりすぎなんじゃないのか?」

トウガンは心配そうな顔をヒグマに向ける。しかしそのヒグマも思案顔だ。


「…うーん、でもこれだと買い叩き過ぎかな?この時期にこんだけのもので交渉されたのが初めてなもんだから相場もはっきりとわかんないや…。」


「いやいやいや!これで大丈夫!十分です!!」

ヒグマの一言にトウガンは両目を大きく見開き、両手を大げさに振る。

女性のアバターでのこの動作はなかなか愛嬌がある。


「じゃあ、これくらいにしとくよ。…でも、これって《錬金術師》にもできるのかな?出来ないなら《科学者》の価値もかなり上がるんだけどなぁ」

「そこら辺を調べるのは、どう考えても俺の専門外だ。ま、誰かが勝手にやるんだろ」

「商いをする身としてはとても気になるね…。人口の少ないジョブでしか作れないアイテムならそれも考慮して値段設定しないとだし。」

「いやもうこれ以上値段を釣り上げられてもしょうがないっていうか……ダメだ、聞いてない」


完全に自分の世界に入り込んで反応のなくなったヒグマを置いて、トウガンは来た道を折り返していった。





✽     ✽     ✽





「さて、これから量産して行こうかね」

[活力水]に相当な価値があると分かれば、それを量産しない手は無い。



かといって最初に作ったのと同じ工程を繰り返すだけなので、描写は割愛させてもらう。


「…疲れた。」

1時間ほど作り続け、手持ちの材料がなくなったとき、トウガンが呟く。


結果、生産に成功したのは10個。そもそもの元手が少なかったこともあり、それほど大量生産というわけには行かなかった。


「まだ時間は…2時半くらいか。ゲーム内で夜が明けるまで、一旦落ちるか」

そう言って、再び研究室で意識を落とした。

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